Overlord ――「遅延転移者〈エクシード〉」 作:パレット24
玉座の間ではなく、今回は会議室。
アインズは不在――代わりに守護者たちだけが集められていた。議題はただ一つ。
「エクシード様について」
アルベドが議長席に立つ。
「皆。至高の御方が新たにお戻りになられたこと、心からの歓喜に相違ありませんわ」
「イエス!」(デミウルゴスが立ち上がって拳を握る)
「当然ですわ!」(シャルティアがワイン片手に頷く)
「ウム……強者……認メル」(コキュートスが厳かに)
アルベドは満足げに頷く。
「しかし……」
全員の視線が集まる。
「……エクシード様、少々“残念”ではありませんか?」
「残念ですの!? 少し言いすぎではなくて?」(シャルティア)
「いいえ、事実ですわ」アルベドが冷静に返す。
「たとえば〈言霊演算〉で“宴会だ”と叫んだ結果……私のアインズ様タイムが酒臭く邪魔されましたの」
「ワタシモ困リマシタ……氷ノマイク……勝手ニ持タサレタ……」(コキュートス)
「ふむ。合理を追い求めながら、非合理を連発する。まるで哲学ですな」デミウルゴスが顎に手を当てる。
「哲学って……それ、褒めてますの?」(シャルティア)
「もちろん! 残念であることさえ戦略的意義を持つのです!」
マーレがおずおずと手を挙げた。
「あ、あの……でも……昨日、僕に“あなたの靴紐は必ず明日切れる”って言われて……すごく不安で眠れませんでした……」
「ひぃっ……!」(シャルティア、思わず吹き出す)
「それは……酷いですわね……」(アルベド顔をしかめる)
「でも! 戦闘力は本物ですわ! 人間を一瞬で蹴散らしたのは確かですもの!」(シャルティア)
「そこは否定しません」アルベドは頷く。
「ただし……忠犬すぎるのも問題ですわ。アインズ様が“座れ”と仰れば本当に犬のように座りますもの」
「……犬?」(デミウルゴスがニヤリと笑う)
「フフ……つまりエクシード様は“アインズ様専用の狂犬”……! それならむしろ使い勝手が良いのでは?」
「言い方が悪すぎますわ!」(シャルティアが机を叩く)
そこへパンドラズ・アクターがドアを蹴破って登場。
「エクセレント! Mein Bruder(マイ・ブラザー)! 至高の御方がまた一人! Ich liebe dich!」
「お前は黙ってなさい!」(全員の総ツッコミ)
ちょうどそのとき、会議室の扉が静かに開いた。
黒衣の賢者、エクシード本人。
「――皆さん、私の話をしていましたね?」
守護者たち、凍りつく。
アルベドは慌てて立ち上がる。
「い、いえ! 決して悪口などではなく……!」
エクシードは無表情のまま頷く。
「大丈夫。合理的に考えて、私は“残念”である可能性が高い」
「じ、自覚があったんですの!?」(シャルティア)
彼はすっと椅子に腰を下ろし、さらりと続ける。
「ちなみに今の会話、記録して解析しました。シャルティアが私を三回“残念”と発言、アルベドは二回。デミウルゴスは一度も否定せず、むしろ肯定寄り」
「やめてほしいですわ! 統計を取らないで!」(シャルティア真っ赤)
しばらく混乱が続いた後、エクシードはふと表情を和らげた……ように見えた。
「ですが……それで良いのです。私は残念で構わない。合理も非合理も、最終的にはアインズ様の御言葉ひとつで変わる」
「……」
「私が“残念”であるなら、その残念さえアインズ様の輝きを引き立てる舞台装置。
――だから私は、最高で、最強で、最狂の“残念”であり続けましょう」
守護者たちは顔を見合わせ……一斉に深く頷いた。
「……やっぱり変ですわ」
「ですが……確かに、至高の御方ですわね」
黒衣の賢者は静かに立ち上がり、会議室を後にした。
その背に、守護者たちは言いようのない安心感と、ほんの少しの胃痛を覚えるのだった。