Overlord ――「遅延転移者〈エクシード〉」 作:パレット24
ナザリック地下大墳墓・作戦会議室。
アインズが玉座の前で言う。
「近隣の村の様子を探ってこい。……お前に任せる、エクシード」
「承知しました。合理的に考えれば、私一人で十分です」
アルベドが一歩前に出る。
「お待ちください、アインズ様! エクシード様を一人で……!」
「いや、いい。万一の時も、あいつなら対処できる」
エクシードは無言で一礼し、黒衣を翻す。
――その足取りは堂々たる賢者のそれ。しかし、その内心は。
(やった……アインズ様のソロ任務……! 忠犬冥利に尽きる!)
エクシードが現れたのは、畑仕事にいそしむ小さな村。
黒衣を纏い、無表情の仮面じみた顔で歩く彼に、村人たちはぎょっとした。
「ひ、ひぃっ……! な、なんだあれは……!」
「魔法使い……? いや、死霊か……?」
エクシードは淡々と村の中央に立ち、手をかざす。
「――害意なし。合理的に説明します」
しかし言い方が完全に脅しである。
「私は“黒衣の賢者”。村の水源が七日後に枯れると予測します。井戸の深度、降水量、土壌浸透率から導き出した結果です」
「な、なんだってぇええ!?!?」(村人大パニック)
村人たちが青ざめる中、エクシードはさらに言葉を重ねる。
「畑のこの区画――十六列目、三列目のカボチャ。四日後に虫が入ります。防ぐなら今のうちに薬を撒くべきです」
農夫が慌ててその場所を確認すると――。
「ほ、本当だっ! もう小さな穴が……!」
「……神か……?」
「いや、死神か……?」
エクシードは真顔で言う。
「合理的に考えれば、私はただの残念な忠犬です」
村人たちの混乱は限界を迎えた。
ちょうどその時、村に立ち寄った冒険者パーティが彼を見咎める。
「おい! そこの黒衣! 村人を脅かしているな!」
戦士が剣を抜き、魔法使いが詠唱に入る。
エクシードは無表情のまま、右手を上げた。
「忠告します。合理的に考えて、あなた方は三秒後に転びます」
「は? 何を――」
ズザァァン!!
冒険者たちが見事に地面にすっ転んだ。
〈言霊演算〉の一言で。
「な、何をした……!? 呪いか!?」
「違います。呪文の発音に少し“滑舌バフ”をかけただけです」
「余計に意味がわからん!!」
結局、村人たちはエクシードを恐れながらも、井戸を深く掘り、カボチャを守り、冒険者たちは泣きながら逃げ出した。
残されたのは、誤解だらけの噂。
「黒衣の賢者は未来を見通す!」
「目が合うと必ず転ばされる!」
「村を救ったのか、呪ったのか……わからん!」
数日後――その噂は王国の城下町へ広がり、
「黒衣の賢者、残念なる予言者」
という妙な二つ名を持って語られることになる。
ナザリックに戻ったエクシードは、アインズに報告した。
「村の信頼を得ました。……多分」
「多分ってなんだ多分って!?」
守護者たちは一斉にざわめく。
アルベド「伝説は……広がったようですわ」
シャルティア「でも“残念なる予言者”って……どういうことですの!?」
デミウルゴス「フフ……戦略的には成功ですな!」
アインズは玉座で頭を抱えた。
「また胃が痛くなる伝説を作ってきやがって……!」