Overlord ――「遅延転移者〈エクシード〉」   作:パレット24

4 / 8
第4話「黒衣の賢者、伝説を刻む」

 

 

ナザリック地下大墳墓・作戦会議室。

アインズが玉座の前で言う。

 

「近隣の村の様子を探ってこい。……お前に任せる、エクシード」

「承知しました。合理的に考えれば、私一人で十分です」

 

アルベドが一歩前に出る。

「お待ちください、アインズ様! エクシード様を一人で……!」

「いや、いい。万一の時も、あいつなら対処できる」

 

エクシードは無言で一礼し、黒衣を翻す。

――その足取りは堂々たる賢者のそれ。しかし、その内心は。

 

(やった……アインズ様のソロ任務……! 忠犬冥利に尽きる!)

 

 

エクシードが現れたのは、畑仕事にいそしむ小さな村。

黒衣を纏い、無表情の仮面じみた顔で歩く彼に、村人たちはぎょっとした。

 

「ひ、ひぃっ……! な、なんだあれは……!」

「魔法使い……? いや、死霊か……?」

 

エクシードは淡々と村の中央に立ち、手をかざす。

 

「――害意なし。合理的に説明します」

しかし言い方が完全に脅しである。

 

「私は“黒衣の賢者”。村の水源が七日後に枯れると予測します。井戸の深度、降水量、土壌浸透率から導き出した結果です」

 

「な、なんだってぇええ!?!?」(村人大パニック)

 

 

村人たちが青ざめる中、エクシードはさらに言葉を重ねる。

 

「畑のこの区画――十六列目、三列目のカボチャ。四日後に虫が入ります。防ぐなら今のうちに薬を撒くべきです」

 

農夫が慌ててその場所を確認すると――。

「ほ、本当だっ! もう小さな穴が……!」

 

「……神か……?」

「いや、死神か……?」

 

エクシードは真顔で言う。

「合理的に考えれば、私はただの残念な忠犬です」

 

村人たちの混乱は限界を迎えた。

 

 

ちょうどその時、村に立ち寄った冒険者パーティが彼を見咎める。

「おい! そこの黒衣! 村人を脅かしているな!」

 

戦士が剣を抜き、魔法使いが詠唱に入る。

エクシードは無表情のまま、右手を上げた。

 

「忠告します。合理的に考えて、あなた方は三秒後に転びます」

「は? 何を――」

 

ズザァァン!!

 

冒険者たちが見事に地面にすっ転んだ。

〈言霊演算〉の一言で。

 

「な、何をした……!? 呪いか!?」

「違います。呪文の発音に少し“滑舌バフ”をかけただけです」

「余計に意味がわからん!!」

 

結局、村人たちはエクシードを恐れながらも、井戸を深く掘り、カボチャを守り、冒険者たちは泣きながら逃げ出した。

 

残されたのは、誤解だらけの噂。

 

「黒衣の賢者は未来を見通す!」

「目が合うと必ず転ばされる!」

「村を救ったのか、呪ったのか……わからん!」

 

数日後――その噂は王国の城下町へ広がり、

「黒衣の賢者、残念なる予言者」

という妙な二つ名を持って語られることになる。

 

 

ナザリックに戻ったエクシードは、アインズに報告した。

「村の信頼を得ました。……多分」

「多分ってなんだ多分って!?」

 

守護者たちは一斉にざわめく。

アルベド「伝説は……広がったようですわ」

シャルティア「でも“残念なる予言者”って……どういうことですの!?」

デミウルゴス「フフ……戦略的には成功ですな!」

 

アインズは玉座で頭を抱えた。

「また胃が痛くなる伝説を作ってきやがって……!」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。