Overlord ――「遅延転移者〈エクシード〉」 作:パレット24
玉座の間。
アインズが威厳を保ちながら玉座に座り、守護者たちが整列していた。
そこに黒衣の賢者――エクシードが歩み出る。
「アインズ様、本日の議題は特にございません。ですが……合理的に考え、いくつか未来予測を提示しましょう」
「……嫌な予感しかしない」(アインズ)
「やめたほうがよろしいのでは……?」(アルベド)
しかし止める間もなく、彼は杖を掲げて無機質に告げる。
「予測開始」
エクシードが最初に見たのはシャルティア。
「シャルティア。あなたのワイン消費量、三日後に“限界点”に達します」
「げ、限界点って……どういうことですの?」
「合理的に考えれば、血液がワインに置き換わります」
「そ、それは嫌ですわ!!」
「でも、吐息から葡萄の香りが漂うので、ある意味で高級感は増すでしょう」
「誰がそんな未来を望みますのっ!!」
次はコキュートスへ。
「あなたは七日後、廊下で転びます」
「……転ブ?」
「氷で出来たあなたの足裏が、磨きすぎた床に滑るのです。合理的に考えて、磨き担当のメイドを責める未来が」
「……ソレハ……気ヲツケル」
「ちなみに転ぶ姿は“カブトムシがひっくり返った”ように記録されるでしょう」
「余計な未来描写をするな!」(アインズ)
次にデミウルゴス。
「あなたは十日後、“アインズ様のために”と三日徹夜で研究に没頭します」
「それは光栄ですな」
「結果、目の下にクマが発生。合理的に考えれば“黒縁メガネ姿”が誕生」
「……それは……少し恥ずかしいですな」
「なお、村人から“優秀そうな小役人”と誤解される確率72%」
「やめろぉおおお!!」
そしてアルベドへ。
「あなたは五日後、アインズ様の執務室に突撃し、抱きつこうとして机に激突します」
「な、なぜわかりますの!?///」
「合理的に考えれば、今日から五日間我慢できるはずがない」
「くっ……! 否定できませんわ!」
「その際、机が真っ二つになり、書類の再整理に八時間かかります」
「誰がそんな迷惑未来を!!」
「マーレ」
「ひゃいっ!?」
「三日後、あなたの靴紐が切れます」
「ま、またですか!? もう不安で眠れません!」
「アウラ」
「なによ?」
「あなたのペットの狼。来週“寝相であなたの顔にお尻を乗せる”未来」
「やめてよっ!! そんな未来いらない!!」
守護者たちが口々に叫び、場は大混乱に陥る。
しかしエクシードは淡々と続ける。
「これは全て合理的未来予測。回避したければ、私に相談を」
「未来を押し売りするな!!」(アインズ)
「合理的に考えれば、私が残念である可能性は100%。しかし――」
エクシードは玉座を仰ぎ見る。
「――その残念さすら、アインズ様の威光を照らす舞台。ならば私は最狂の未来予測者として在り続けましょう」
「だからやめろって言ってるんだ!!」
ー伝説の拡散
その後――。
なぜか村や冒険者の間で噂が流れる。
「黒衣の賢者は“未来を見通す”」
「彼に見られると、転んだり、机に激突したりする」
「運命をからかわれる恐ろしい存在だ」
こうしてまた一つ、珍妙な伝説が刻まれた。