Overlord ――「遅延転移者〈エクシード〉」 作:パレット24
二人会議 ― 静かな策謀
ナザリック、作戦会議室。
アインズとエクシード、至高の二人が対座していた。
「……またお前が妙な噂をばら撒いてきたせいで、人間どもが騒ぎ始めている」
アインズが溜息をつく。
「合理的に考えれば、恐怖は力の拡散手段です」
「いや、あの“残念予言者”って二つ名はどうにかならんのか!」
「結果オーライです。恐れられることに変わりはありません」
アインズは頭を抱えた。だがすぐに、声色を低める。
「……人間の調査隊が再び接近している。しかも今回は“漆黒聖典”の残党と、帝国の魔法詠唱者まで加わっているらしい」
エクシードの眼光が鋭く光る。
「ほう。では、実戦の検証ですか」
「気をつけろよ。俺の顔を立てるためにも、派手にやりすぎるなよ?」
「承知しました。……では、合理的に見て“過剰な勝利”を収めましょう」
トブの森。
木々の合間に黒衣の影が立つ。
その向こう、数十の兵と数名の上級魔法詠唱者。
「奴だ……! 噂の“黒衣の残念予言者”!」
「馬鹿にするな、あれは人類の敵……ここで討つ!」
詠唱が重なり、炎と雷が奔る。
だが――。
「〈無限演算(インフィニティ・ロジック)〉」
エクシードの瞳が光り、数百の魔法陣が虚空に並ぶ。
数式の羅列のような光が渦を巻き、敵の放った魔法の軌道を即座に解析。
「偏差修正。誤差零へ」
放たれた魔法はすべて、彼の周囲で“寸前に逸れ”、地面や木々を焼くだけとなった。
「な、なにィ!?」
「〈再現魔法(リプレイ・アーク)〉――ファイアストーム」
アインズがかつて見せた広域魔法。その劣化模倣であるはずが、エクシードは因果を上書きする。
「〈因果書換(カオス・エディット)〉」
炎が本来より広がり、敵軍全体を包み込む。
熱風が唸りを上げ、兵士たちは次々に悲鳴を上げて倒れていった。
「オリジナルを超える模倣……馬鹿な……!」
後方の魔法詠唱者が青ざめる。
残った敵が必死に隊列を組む。
その光景に、エクシードは静かに口を開いた。
「――崩れろ」
〈言霊演算(コード・オラクル)〉が発動。
敵兵たちの足が一斉にもつれ、陣形が瞬時に崩壊する。
「な、なんでだ!? 俺たちの体が……!」
「合理的結論。言葉は力。論理は支配」
彼は淡々と宣告を続ける。
「――燃えろ」
残りの兵の武具が一斉に赤熱化。
「――沈め」
魔法詠唱者たちの杖が手から滑り落ち、地面にめり込む。
「ひぃぃっ……怪物だ……!」
ただ一人、敵の指揮官だけが残った。
全身に魔力を纏い、叫ぶ。
「俺は人類の希望だ! 死ねぇえええ!!」
突き出された必殺の槍。
しかし――。
「〈因果書換〉」
その刹那、槍の穂先が“わずかに外れる”。
指揮官の一撃は、彼自身の腹を貫いた。
「……な、ぜ……」
「結果の微細な改竄。合理的には……自滅、です」
冷酷に言い放ち、エクシードは指先で軽く弾く。
敵指揮官は地面に沈み、完全に沈黙した。
炎と煙が立ちこめる戦場に、一人佇む黒衣の賢者。
その姿は、恐怖と畏敬を同時に刻み込む。
「合理は結論を導く。残念は笑いを呼ぶ。
――だが今は、“至高”の名に恥じぬ結果を」
静かに振り返り、ナザリックの方向へと歩み去った。
ナザリック。
報告を聞いたアインズは、玉座で深く息を吐いた。
「……本気を出すとやっぱり洒落にならん強さだな」
アルベド「ええ。けれど……やはり残念なことに変わりはありませんわ♡」
シャルティア「むしろそのギャップが怖いですわ!」
デミウルゴス「フフ……合理の暴虐。まさに最狂ですな」
エクシードは無表情のまま一礼する。
「合理的に言えば、勝利。
――ただし、アインズ様の一言で次は非合理を選びましょう」
玉座の間に静かなざわめきが広がる。
“残念”と“至高”を兼ね備えた賢者――その名は、黒衣のエクシード。