Overlord ――「遅延転移者〈エクシード〉」   作:パレット24

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第7話「至高の二人、合理と死の饗宴」

 

王国と帝国の国境付近。

草原地帯に仮設陣営が築かれていた。

そこには、帝国の魔法詠唱者部隊と、スレイン法国の密偵部隊が合同で潜伏している。

 

「“黒衣の賢者”と“死の支配者”。二体の怪物が存在すると? 馬鹿げている……」

「だが、冒険者や村人の証言は一致している。残念なる予言者と、不死なる王」

「残念、などと舐められてはならぬ。我らが討ち果たす!」

 

人間側は知らない。

その瞬間、既に“観察者”が彼らの存在を掴んでいたことを。

 

深夜、月光を背に二つの影が草原に降り立った。

 

一人は、死を象徴する骸骨の王。

――アインズ・ウール・ゴウン。

 

もう一人は、漆黒の外套を纏う賢者。

――エクシード。

 

「敵の数、百二十。魔法詠唱者は八名。合理的に見て、殲滅可能です」

「ふむ……だが俺の役目は“恐怖を刻む”ことだ。お前の合理と俺の威厳、両方を見せる必要がある」

 

二人の声は静か。しかしその静けさは、嵐の前触れに過ぎなかった。

 

敵陣に突如、死の霧が広がった。

「〈デス・フォッグ〉」

 

緑の瘴気が兵士たちの肺を焼き、咳と悲鳴が草原に響く。

指揮官が必死に叫ぶ。

「魔法詠唱者! 防御を張れ!」

 

だが、次の瞬間。

「〈グレーター・マジック・シールド〉」

アインズが放った結界が、まるで檻のように敵陣を閉じ込めた。

 

「逃げ場はない……さあ、見せろ、エクシード」

 

エクシードが一歩前に進み、指先を弾く。

 

「〈無限演算(インフィニティ・ロジック)〉――予測完了」

 

虚空に展開する光の数式。

それは敵兵一人ひとりの未来の行動をシミュレーションし、即座に“破滅の答え”を導き出す。

 

「〈再現魔法(リプレイ・アーク)〉――フレイム・カタストロフ」

 

紅蓮の火柱が複数同時に立ち上がり、敵兵の逃げ道を焼き払った。

人間たちは絶叫する。

 

「オリジナルより威力が劣る? ――では、〈因果書換(カオス・エディット)〉」

 

炎の軌道が“有効範囲を拡大する結果”に書き換えられ、炎の壁が敵陣全体を飲み込んだ。

 

「アインズ様、左翼突破を試みる三十。私が抑えます」

「よかろう、右翼は任せろ」

 

エクシードは言葉を吐き捨てた。

「――転べ」

 

〈言霊演算〉。

敵兵三十名が一斉に地面に倒れ込み、その直後に炸裂した火球が彼らを一掃する。

 

一方のアインズは、右翼へ死の宣告を放つ。

「〈デス〉」

次々に兵士が膝を折り、命を奪われていく。

 

二人の力はまるで表裏一体。

死の王が“威厳と恐怖”を刻み、黒衣の賢者が“合理と狂気”で補完する。

 

生き残ったのは帝国軍の指揮官、そして法国の高位詠唱者二名。

彼らは必死に魔法を詠唱し、巨大な光槍を顕現させた。

 

「これで……終わりだァ!」

 

放たれた光槍は、アインズへ直進する。

その刹那。

 

「〈因果書換〉――外れろ」

 

光槍は軌道を逸れ、天空へと消えた。

 

「馬鹿な!? 必中のはずが……!」

「結果を編集しただけ。あなたの“必中”という前提が誤りに変わったのです」

 

エクシードは冷ややかに歩み寄り、指を鳴らした。

「――沈め」

 

法国の詠唱者が一斉に地面に叩きつけられる。

そのままアインズの死の呪文が彼らを呑み込み、灰すら残さなかった。

 

指揮官は膝を震わせ、最後に叫んだ。

「怪物ども……!」

 

「違う。我らは――至高だ」

 

二人の声が重なった瞬間、指揮官の命は潰えた。

 

戦場には死と炎の残滓だけが残る。

月明かりの下、二人の至高は静かに立っていた。

 

アインズが口を開く。

「……やはりお前がいると戦場が効率的すぎるな。俺の見せ場が削られる」

「合理的に考えれば、効率の良さは至高の証。ですが――」

 

エクシードは玉座の主を仰ぎ見て告げる。

「――私の合理は、アインズ様の威厳を輝かせるために存在します」

 

骸骨の王はわずかに沈黙し、やがて静かに笑った。

「……ふむ。それなら良い」

 

 

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