Overlord ――「遅延転移者〈エクシード〉」   作:パレット24

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第8話「遅延ロードの理由」

 

サービス終了の夜

 

ユグドラシルの最終日。

アインズ――当時は鈴木悟がギルド拠点に残り、最後の時を過ごしていた。

 

そして、もう一人。

黒衣のアバターを纏う男――エクシード。

 

「……終わりか。合理的に考えれば、ゲームは閉じる。しかし、心は閉じられない」

 

彼はモニターを見つめながら苦笑する。

現実では冴えない人生。だが、この世界では至高の一人。

仲間たちと笑い合った日々が確かに存在した。

 

だが、その瞬間――。

 

“接続エラー:ログアウトできません”

 

「……は?」

 

画面が暗転し、次に目を開いた時、彼はナザリックの中にいなかった。

 

 

 

 

彼が立っていたのは――虚無の空間。

時間が止まったかのように、砂粒のような光が漂う。

 

「……ここは?」

 

声が反響する。

自分だけが“遅れて”世界に転移している。

 

(つまり、私は本来の世界から“ワンクッション”外れて落とされた……)

 

その時、頭の奥に鋭い痛みが走る。

 

――知識が流れ込む。

――物語の筋、登場する国、人類の歴史。

――モモンガ…いやアインズ様が歩む“未来の筋書き”。

 

「な、何だこれは……!? なんの記憶だ?」

 

そして彼は理解した。

遅延転移とその副作用。

完全に同期できなかった代償として、“物語世界の台本”を一部インストールしてしまったのだ。

 

 

 

「ならば、合理的に考えれば――未来を知る私は最強」

だが同時に、胸の奥に疼く感情。

 

(……アインズ様)

 

原作知識では、彼は孤独に支配者として歩む。

だからこそ、エクシードは誓った。

 

「私は彼を孤独にしない。合理も、非合理も、すべて彼の隣で支える」

 

それは忠犬の愛であり、同時に“脚本を壊す存在”でもあった。

 

 

 

転移後、彼は時折ふとした瞬間に“未来の断片”を思い出す。

 

王国の戦場、シャルティアの洗脳、帝国との接触――。

それらを知っている自分は、果たして“この世界の住人”なのか?

それとも“傍観者”なのか?

 

彼の合理は常に囁く。

「未来を知っている以上、介入すべき」

「しかし、介入すれば原作が崩壊する」

 

矛盾の果てに彼が選んだのは――“アインズ様の一言に従う”こと。

それだけが、合理と非合理を統合する唯一の答えだった。

 

⸻現在へ

 

玉座の間。

アインズがふと彼を見やる。

 

「……お前は時々、未来を知っているようなことを言うな」

「気のせいです」

「本当にそうか?」

 

一瞬、視線が交錯する。

しかしエクシードはいつものように無表情で答える。

 

「私は合理的で、残念で、ただの忠犬です。

――ですが、未来を知ろうが知らなかろうが、変わらぬことが一つだけある」

 

「なんだ」

「私は、アインズ様の傍に在る。それが“唯一絶対の正解”です」

 

アインズは答えず、ただ静かに頷いた。

 

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