フォーチュン・ライト   作:お じ さ ま

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第五十二話 ポラリス城へと突入せよ

 サイト達がラヴィーネに戻った時には、既に半壊状態に近かった。

 家々からは煙が上がり、壁は破壊されてしまっている。

 それらの被害を引き起こしたのは、骸骨(スケルトン)

 今も尚暴れ続けており、被害は都に住む人々にも迫ってしまっていた。

 倒れ込んだ人がいる。

 そして目の前で、襲われそうになっている人も。

 サイトは瞬時に覚醒石(デザイアギット)の力を使い、人を襲おうとする骸骨の元へと飛び出した。

 

「はぁっ!」

 

 風の剣を振るい、骸骨を粉砕する。

 ガラガラと音を立てて崩れ去る骸骨と、それを目撃して悲鳴を上げる住人。

 サイトはその住人にすぐさま言葉を投げかけた。

 

「ここから逃げて、早く! 凍える龍の理想郷(アルゲオドラコ・アルカディア)のギルド員達が保護してくれるから!」

「は、はいぃ!」

 

 あの後にサイト達には共有された情報が二つある。

 一つは、サイトが言ったように今ラヴィーネでは凍える龍の理想郷のギルド員達が懸命に救助活動に励んでいる事。

 そして、もう一つは。

 

「サイト、ナイスだ! しっかしこりゃ予想よりもそうとう不味いな。骸骨が至る所で暴れ回ってやがる。救助活動をしねぇと、都の住人達があぶねぇ」

「……それに加え、城の結界石(ゲニウス)だ。そっちでも骸骨は蔓延っているし、城の中には王女()()()の様な王族の者もいる。どちらも助けなければならないぞ」

 

 城にある結界石が危ない事。

 フロスティアと数人のギルド員が城へと向かい、どうにか王族達含めた諸々を何とかしようとしているが……厄者やダハーカがいる現状、フロスティア達だけではキツイというのがサイト達全員の判断だ。

 

「つっても、ここから城まで救助に向かうにしてもどうするんだよ? 正門前には骸骨達が溜まってる。正面突破して力を使ってバテたら、ダハーカとか厄者相手に太刀打ち出来ねぇぜ?」

 

 更にソウジが挙げた問題点、正門前をどう突破するかも悩みの種だ。

 どうするべきかを考える。考えて、考えて……ふと、サイトがある事を思いついた。

 共有する為に、サイトは声を上げていく。

 

「あの、一つ案があるんだけど! 僕が()()()()()、城に突入するっていうのはどう?」

 

 その案に、グラディスとランスは首を傾げる。

 が、ソウジだけは思い当たる節があるのか「あぁ!」と一つ声を出していった。

 

「そうだ! 二人とも、サイトは剣に乗って空を飛ぶことが出来るんだよ! そうすりゃ、城まで一気に向かえる!」

「……それは、そうだろうが。俺達全員を乗せて飛べるのか? 恐らくサイトに掴まって飛ぶことになるだろう? となると、サイトの負担がとてつもないことになってしまう」

「そ、れは……大丈夫、なんとか出来そう。いや、なんとかしてみせるよ。こんな非常事態に、四の五の言ってられない!」

 

 サイトはふんすと鼻を鳴らしてやる気を見せていく。

 そんな彼を見たソウジとランスは、笑みを見せていった。

 そうして士気が上がる中、グラディスから一つ声がかかる。

 

「あー、すまんが。俺はここに残って住人の救助に回る。流石に今いるギルド員達だけじゃつれぇだろうし、立地とか諸々頭に入ってる俺なら救助に適任だろ?」

「……そうか、分かった。頼んだぞ、グラディス」

「あいよ。後、ランス。お前ならきっと大丈夫だぜ。んじゃ、そっちは任せる!」

 

 そう言い残して、グラディスは都へと走っていった。

 残ったサイト達も準備に取り掛かろうとした。

 その時。

 

「ややっ! サイトにソウジじゃあないか! ここで会えるとはねぇ」

 

 はつらつな声が、サイト達に対して放たれた。

 声のした方に顔を向けると、そこにはコトノハの姿が。

 手を挙げながら近づいてくる彼に、サイトは驚きの表情で迎える。

 

「コ、コトノハさん!? 何でここに、っていうか避難してくれよ! 危ないから!」

「んー? いやいや、安心してくれたまえよサイト。俺は今、起きている問題を解決する為に動こうとしているのさ!」

「えっ。そっ、それじゃあコトノハさんも……勇者って事!?」

 

 更に驚きが増していくサイトであったが、ソウジはそんな彼とは対照的にあまり驚きを見せていなかった。

 寧ろ、やっぱりとでも言いたげに納得を見せた表情でコトノハを見つめている。

 

「あんた、やっぱり勇者だったのか。足の運び方とか体の動かし方から察するに、一般人じゃないとは思ってたが……何であんな嘘をついたんだ? 自衛の手段を持ってない、なんてよ」

 

 少々訝しげにコトノハを見ながら、ソウジはそう尋ねた。

 今の状況と照らし合わせて、少しばかりコトノハの事が怪しいと思ったから。

 そんな彼の心情を察してか、コトノハはニコーっと朗らかな笑みを浮かべてその疑問に返答していく。

 

「俺にはやるべき事がある。そのやるべき事をする際に、勇者の肩書は不要だからね」

「それ、どういう意味なんだ?」

「……まぁ、俺の事はどうでもいいじゃあないか! 今の俺は一介の吟遊詩人! それよりも! この事態をどうやって収めるかだろ? 君達には何か考えもあるようだし、俺もそれに便乗させてほしいね〜」

 

 陽気にケラケラと笑いながら、コトノハは話を区切ってサイト達の作戦に混じろうとしてきた。

 ソウジはまだ少し考えあぐねているが……サイトとランスはそんなソウジの目をしっかりと見つめて。

 

「ソウジ、僕はコトノハさんも一緒で良いと思う」

「俺も、サイトと同意見だ」

「……何でか、理由を聞いてもいいか?」

 

 疑問を投げかけるソウジ。

 それに、サイトとランスは自身の瞳を煌めかせて答える。

 

「僕はさ、コトノハさんは凄く面白くて、明るくて。それでいて、自分の目的……詩で皆を幸せにしたいって事に真剣なのを知ってるから。だから、僕はこの人を信用出来る。語った熱意が本物だって、信頼出来るから」

「俺は……コイツの魂を視たから、だ。今までも他者の魂を視れてはいたが、今回はより()()に視える様になっていた。明るく、愉快で情熱的。夢に邁進する一人の輝けるヒトだというのが視れたから。無論、それはお前達(サイトとソウジ)も同じだがな」

 

 二人の真剣で、真っ直ぐな想いがソウジに届く。

 

 こんなにも迷いや疑いが無く、はっきりと口に出来るのであれば。

 

 ソウジは後頭部をガジガジと強く掻き、大きなため息を吐き出した後に。

 コトノハへと向き直ると、手を差し出す。

 

「悪い、あんたを疑った。協力してくれ、コトノハ」

「――――あぁ、勿論さ! それで、今からどうするんだい?」

「あぁ、それはねコトノハさん! 僕が今から剣を作って――――」

 

 

 話は纏まり、準備も済んだ。

 三人が注目する中、サイトは目をスッと閉じていく。

 アストラで練習した、あの感覚。

 全身に力を巡らせ、馴染ませる様に。

 暴発させずに、力を少しずつ放出して調整する様に。

 

 剣が、風を吹いて足元へと生まれる。

 四人が乗れる程の、大きな大剣。

 サイトはそれに足を掛け、安全であるかを確認する。

 

 ――――大丈夫。ちゃんと飛ぶ用の『柔風の剣』になってる。これなら、行ける。

 

 完全に剣へと飛び乗り、そのままサイトはソウジ達へと頷いていく。

 その合図を見て、ソウジ達はそれぞれがサイトの体や他の面々へとしがみついていった。

 重量が増え、サイトは顔を顰めていく。

 しかし、どうにか気力を振り絞って剣を浮かせていき……サイトは目をカッと見開かせると、力を解放する。

 

「全員、捕まっててよ……風剣飛翔(エアライド)、出力全開!!!!!」

 

 その言葉と共に、後方にある剣の尖端から風が勢い良く噴出された。

 飛び立つ面々は、吹き飛ばされないようにしっかりとサイトの体にしがみついている。

 その際に、サイトは飛んでいる全員に風の膜を貼り付けてもいた。

 空気抵抗による影響を、限りなく軽減する為に。 

 そのまま、サイト達はしっかりと城に向かって飛び立てていた。

 

 ――――この調子なら、無事に辿り着けそうだな。

 

 城までの距離は、あと少しで玉座の間付近へと突撃出来そうな距離。

 サイトは真っ直ぐに眼前の城へと向かっていく。

 

 ――――その時。

 

「っ、なっ――――」

 

 突如、謎の桃色の丸い珠がサイト達にぶつからんとばかりに飛来してきたのだ。

 その珠はそのままサイト達の前で――――爆発。

 爆風の衝撃でソウジとコトノハの二名がサイトの体から離れてしまい、剣から空中へと落下してしまう。

 

「っ、ソウジ! コトノハさん!」

 

 サイトは手を突き出すも届かず、ソウジ達はそのまま落ちていく。

 しかし、ソウジ達は焦ることなくサイトへと声を張り上げていった。

 

「大丈夫だサイト! 俺らの事は心配いらねぇ、何とかする! お前らはお前らで……頑張れ!」

 

 ソウジの言葉を受けたサイトは、決意を固めた顔で真正面にある城へとそのまま突撃していく。

 飛来してくる珠の数々を避けていき――――やがてサイトとランスは城の中へと突入する事に成功した。

 

 衝突した影響で、辺りに瓦礫が散っていく。

 地面に倒れながらも、どうにか中への侵入には成功した。

 サイトは辺りを見回していく。

 そこでランスも無事に着地しているのを確認し、次いで今いる場所を把握しようとする。

 ここは恐らく、どこかへと繋がる廊下だろうか。高さ的に考えて、玉座近くである可能性がある。

 そうと決まれば、まずはゲルダ達の安全を確認するべきだとサイトは考えた。

 

「ランスさん。ゲルダさん達の魂を確認する事は出来る? 無事かどうか、確かめたい」

 

 サイトの言葉にランスは頷くと、目を見開かせていく。

 辺りを見回しながら数秒が経った頃、ランスの表情があからさまに動揺していった。

 

「……サイト、走るぞ。今の状況はマズイ」

 

 そう言ったのと同時に、ランスは走り出す。

 魂の確認の為に行った行動で慌て出したということは、即ちゲルダ達に何かあった証拠。

 それを察したサイトも続いて走ろうとする。

 が、その際に。

 

「いっつ!?」

 

 足から順に、身体に痛みが走った。

 片膝を地面に付き、息を荒げてしまう。

 動けなくなる程ではないが、それでも無視はできない痛み。

 思わず顔を顰めていく。

 

 ――――風剣飛翔での飛行、思っていたよりも身体に負荷がかかったんだ。おまけにあの丸い球の爆発……くそっ、こんなことで!

 

 悔しげに立ち止まるサイト。

 そんな彼に気づいたランスは足を止め、すぐに近づくと屈んで声を掛ける。

 

「大丈夫かサイト? 先程の飛行で疲労したのかもしれないな……休んでいても構わないぞ」

 

 優しさから来る言葉に、サイトは更に表情を悔しげに歪ませていく。

 ランスはゲルダ達を今すぐ助けたい筈。

 なのに、自分のせいで余計な手間を取らせてしまっている。

 

 そんなのは、良くない。

 

 自分が兄として動いているのならば、尚の事良くないんだ。

 サイトは、わざとらしいぐらいにニッカリとした笑みを作り上げて、ランスに笑いかける。

 

「だい、じょうぶ! 問題ないよ、ランスさん。ほらっ、こんな風に足や腕を動かせるし! いけるよ、ゲルダさん達を助けにさ」

 

 震えながらも笑顔で話すサイトに、ランスはジッとその鮮やかな緑の眼で見つめていった後……ふぅ、と一つ息を吐き出して前を向く。

 

「分かった、お前を信じる。だが無茶だけはするなよ」

「うん、分かってるさ」

 

 会話を終え、サイト達は走り出した。

 通路の脇に血塗れになって倒れ込んでいる兵士や侍女の姿を目にし、歯を噛み締める。

 彼等は何もしていないのに、何故こんな目に遭わなければならないのか。 

 怒りを抱きながら、玉座の間へと向かっていく。

 近づいていくごとに、禍々しい気配が肌を刺す。

 そうして、とうとう玉座の間の扉へと辿り着いた。

 

 ――――この先に、厄者がいる。

 

 サイトは確信する。

 隣のランスと目配せをして、ある事を話した後にサイトは扉を押し開けていく。

 どこか重々しく感じられた扉を開けきった先に、見えた景色は。

 

「うん? あぁ、やっと来たのね。待ちわびたわ、我が愛しの騎士(ナイト)の弟さん? それと、風纏う少年の貴方も」

 

 辺りに飛び散るは血飛沫、兵士らしき人が地面に落ちている光景。

 辺りには何かが爆発したかのような跡が残っており、兵士らしき者の鎧にも焦げ付いた跡がある。

 凄惨、という言葉が似合うその場所に、それらはいた。

 一人は、ダハーカ。

 道着の様な服装には血が付いており、この光景を生み出した一人であることが伺い知れる。

 そして、もう一人は。 

 

「私が放った爆弾で、お仲間が二人落ちちゃったわけだけど……気分はいかがかしら?」

 

 赤黒いローブを身に纏い、ダハーカの毛並みを模した黒と白のファーを首元に巻き付け。

 薔薇の様に紅く美しい長髪を有した、大人びた美形。

 目は濃く朱い、血みどろな色合いだ。

 

 そんな傍目から見れば人間と思える存在は、そんな事を口にした。

 しかし、サイトはそれに対し気丈な態度で返答していく。

 

「ソウジとコトノハなら、心配いらない。それよりも……ゲルダさん達はどこだ! 捕らえているのなら解放しろ!」

「あらぁ、なんて勇敢な子なのかしら! けど……それも過ぎれば蛮勇になる。自分の身の程は弁えたほうがいいわよ? 貴方達じゃ私達を倒せない。だから、あの蛆虫共も助け出すことは出来ない」

「何を言ってる!」

 

 サイトの疑問に答えるように、メーディアは上へと手を挙げる。

 すると、宙に突如として黒い繭が姿を現したのだ。

 心臓が脈打つように蠢くその物体に、サイトは冷や汗を流す。

 と、ランスの表情が一層険しくなった。

 繭を凝視して、怒りの形相を露わにしながらメーディアを睨めつけていく。

 

「あそこに……王達が、ゲルダがいる」

「えっ!?」

「洞窟での黒い繭が、一体何なのか。そして同時に、あの場にあった珠の存在。何から出来たものだったのかずっと考えていたが……合点がいった。嫌な感覚がずっとしていたからな」

 

 拳を握りしめながら、ランスは感情のままに叫んでいく。

 

「貴様は……その繭に人を閉じ込めて珠に変えているのだな! そして、例の薬はその珠が材料なのだろう!? 人の感情を原料にした、悍ましい薬……それが『アモール』と呼ばれた愛の霊薬の正体だ!」

 

 ランスの推理に、メーディアは顔を華やかに咲かせながら拍手を打っていく。

 まるでその推理が、正しいとでも言わんばかりに。

 笑顔のままに、メーディアは種明かしをしていく。

 

「うんうん、だいたいは正解よ。まず、適当に人を攫って繭に閉じ込めて珠を作り、そこから私が調整した愛情を増幅させる薬を生み出す。ここまではまぁ面倒くさかったわねぇ。で・も、薬を生み出せた後はかなり楽になったわ」

「楽に……?」

「えぇ。作った薬を人々に飲ませれば、その人達は誰に対しても好きという感情を溢れさせる。そこに私は浸け込んだ。誘惑して洞窟まで誘ってあげれば後は簡単! 繭で包んで珠にして、薬をまた製造していけばいい。そういう計画だったのよ!」

 

 明るく、愉快に、悍ましく。 

 妖艶に妖しく笑いながら、メーディアは続けて解説をしていった。

 

「球には様々な感情の渦が詰め込まれている。当然、負の感情も。だからそれを災厄様に献上すれば、災厄様の糧となる。素敵な計画でしょう? まぁ、今の私には災厄様へ負の感情を捧げるのと同じくらい素敵な目的もあるんだけど、ね♡」

 

 人々を犠牲にしているというのに、まるで意に介していない態度。

 愉しげに、語尾を弾ませながら誇らしげにメーディアはそう語った。

 どこまでも人を人として見ていない、ただ災厄へと捧げる贄としか人類の事が見えていない彼女の態度に、サイトは果てしない怒りを抱いていく。

 

 そんな彼女の隣では、ダハーカが口を真一文字にして結んでいる。

 何を思っているのだろうか。

 ランスはその真意を問う為に、目隠しで表情の読めない黙った彼へと。

 怒りを滲ませながら、眉間にシワを寄せて鋭い犬歯の見える口を開いていく。

 

「ハスタ。聞いたか、今の話を。一昔前のあんたなら、絶対に許しはしなかった発言と行動だ。なのに、何故あんたは今そこで大人しくしている。何故……黙ったままなんだ!」

「……仕方のない事であり、人々が自らの罪を自覚する為に必要な犠牲だ。何も、問題は無い」

「……本当に、それでいいのか? それがあんたの本音か! あんたの成したい事なのか! 俺は納得がいかない、認められない!」

 

 腕を振るいながら、ランスは叫んでいく。

 自身の想いをぶつける為に、その瞳でダハーカの事をしっかりと見据えながら喉から声を絞り出す。

 

「俺はあんたの事を尊敬している! 今でも、あの時のあんたの姿を鮮明に覚えているんだ! 戦っていた姿よりも、何よりも! 俺の事を笑わそうと懸命に動いていた、あんたの姿を!」

「……いつの話をしている。もう、過ぎた事だ。既に過ぎ去った、甘く蕩けた夢の様な過去の話。そんな泡沫よりも今を見つめろ、ランス。今すべきことを、我はやろうとしているだけだ。だからお主もサイトも、諦めて帰れ。そうすれば、全てが丸く収まる。全てが上手くいくんだよ」

「っ、……ふざ、けるな。ふざけるんじゃないぞ! この馬鹿兄貴が!」

 

 ランスは覚醒石を発動させる。

 彼の感情に呼応するようにして、氷霜がいつもより辺りに舞い散り吹き荒れる。

 彼を辿る線も、いつもよりも増して毛や服を白く光り輝かせている。

 

 そんな彼に続いて、サイトも覚醒石を発動させていく。

 ランスの抱いた想いに、とてつもなく心を揺さぶられながらも。

 彼の気持ちに寄り添えられるように、助力出来るように。

 そして何よりは、目の前の敵を倒せるように全力で。

 これから起きる戦いに、臨んでいく。 

 

「……馬鹿はどっちだ。愛しい弟よ」

  

 そして、ダハーカも。

 威圧感を増幅させていき、マントが外れる。

 服装は変化し、蒼く光り輝く線が通ったその姿は覚醒石所有者の証。

 吐息には冷気が混じり、その周囲にはランスよりも凄まじい吹雪を吹き荒らせている。

 

「あぁ、我が愛しの騎士! 最高の佇まい、最高のクールさ! そんな最高な状態で……愚かしくも愛らしい彼らを壊し尽くすとしましょう! 『恋情爆裂・焦火弾丸(フルスロットルラブ・ボンバレット)』!」

 

 そしてメーディアも、高らかに笑いあげながら醜悪な笑みを浮かべていく。

 彼女の周りに展開されるのは桃色の珠。妖しく発光するその珠は、得体の知れない怖気を感じさせる。

 

 場の空気が最高潮な緊迫感に染められていき、そして。

 戦いの火蓋は、切られる――――。

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