「あっははははははははは! やれるものならやって見せなさいよぉ!? まぁ、無駄でしょうけれど、ね!」
メーディアは宙に浮いた後、自身の周囲に桃色の爆弾を展開していく。今までよりも桁違いの爆弾の量。それらが全てサイト達へと襲いかかっていく。
ランスはハスタが傷つけられないように淡く発光した氷のドームを作り出し防御して、サイトは全身に漲る
「だぁぁぁぁ!!!!!」
雄叫びをあげ、最大限に力を込めた『業嵐の剣』を振り下ろして反撃するサイト。
振り下ろされた方向へ嵐が巻き起こり、凶悪な獣の牙となってメーディアへと襲いかかっていく。
しかし、メーディアはその嵐を手前に出現させた多数の爆弾を爆発させて爆風を生み出し、相殺させた。
余裕綽々。この程度の荒事は児戯に過ぎないと、嘲笑うメーディア。
その姿に苛立ちを隠さずに、サイトは更に猛攻を叩き込んでいく。
「
風の斬撃が瞬く間にメーディアへと繰り出されていく。
だが、それすらもメーディアにとっては取るに足らない技のようで。
最早爆弾を使うこともなく、するりするりと風の斬撃が見えているかのように躱し、ケラケラと宙を舞っている。
歯軋りするサイト、まるで効果のない攻撃をしてしまう自分にも腹を立ててしまうこの現状。
そこに、ランスも乱入する。
自身の周囲に氷槍を生み出して、それら全てをメーディアへと射出。
鋭く素早く、氷槍は厄者を貫かんと迫りゆく。
しかし。
「無駄よ、無・駄♡」
それらは全て爆弾が接触したことによる爆風で消失してしまう。
どんな攻撃も、メーディアの操る爆弾によって防がれてしまう。
――――くそっ、どうすればいい! どうすればアイツを殺せる! どうすれば、どうすれば、どうすれば!
考えるサイトだが、怒りに頭が支配されている為に良い打開策は浮かばない。
それどころか、渦巻く風が心の中でざわめき続け、怒りのままに敵を屠れと囁いてきている。
サイトはメーディアを、殺したくて堪らない。
――――ハスタさんやランスさんの人生をめちゃくちゃにして、馬鹿にして、笑って……絶対に殺す、殺してやる!
煮え滾る殺意は嵐の様に、轟々と音を立ててサイトの心の中で吹き荒れ続ける。
澱み。それは最早、思考を狂わせるだけの余分にして過分な憎悪に他ならなかった。
『サ■■! ■イト! 落ち■く■だ! 心■乱■な、■て奴■思■壺――――』
ハヤテの言葉すらノイズが混じり、冷静さを欠いた状態のサイト。
そのまま、彼は捨て身の特攻を繰り出さんとした、その瞬間に。
冷や水をぶっかけられるような、低く落ち着いた声が降り掛かる。
「サイト。俺達の為に怒るのは、構わない。だが……冷静になれ。お前のその素直さは、時に危険な状況を生み出してしまう」
「っ、ランスさんでも――――」
「ボーデンでも、焦ってアンチに後れを取っていたのを忘れたか? ……頼む。今一度、落ち着いてくれ。奴を打ち倒す為には、お前の真っ直ぐな力が必要不可欠なんだ」
その言葉に、サイトはランスの方を向く。すると、そこにあった顔は――――酷く落ち着いた、けれどその中に確かにある憤怒。
それを見たサイトは、冷静にならざるを得なかった。それもそうだろう。ランスの気持ちを、肌で感じ取ってしまったのだから。
悔しいのは、自分だけではないに決まっている。
そうして話し込んでいる中に、メーディアの爆弾が飛び込んでくる。
「何を悠長に話しているのかしら〜? ほら、ほらほらほらほら! 足掻いてみせなさいな!」
爆弾は絶え間なく爆発し、辺りを粉々に崩壊させていく。
サイトとランスはどうにか回避して、隙を伺う。奴の弱点はどこなのか。それを探る。
爆弾を展開し、爆風によって攻撃を防ぐ。近付かせないようにして、常に爆弾を空中で展開する。
その状況を打破するために、サイトが出来ることとは何か。
回避していく中で、考える。今の自分の手札で出来る、突破口を考える。
その中で――――一つだけ、サイトの中にある案が浮かんだ。
その案を実行する為に、サイトはランスへと指示を出していく。
「ランスさん! 少しだけ時間を稼いでほしい! 僕に考えがある!」
「っ! 分かった、お前に任せるぞサイト!」
そうして、ランスは自身に集中させる為に氷の槍を生み出してメーディアへと射出する。
ランスからの猛攻に、メーディアは神経をそちらに割かれる事となった。
その間に、サイトは足元に風の剣を生み出していく。
『柔風の剣』ではあるのだが……サイトはその剣に、少し細工を施す。
そして剣に飛び乗り、後ろの柄側に力を注ぎ込む。
溜めて、溜めて、溜めて、溜めて、溜めて――――一気に力を放出した。
瞬迅。彼は砲丸の如き勢いで、一気にメーディアとの距離を縮めていく。
「あら、考え無しの突貫? でも――――無駄よ!」
メーディアは爆弾を展開して放ち、接近するサイトを撃ち落とさんと襲い掛からせる。
先程と同様に、爆発の衝撃に遮られて終わる。メーディアはそう思っていた。それは当然ではあるのだろう。これまでの攻撃は全てそれによって防いできていたし、事実サイト達も攻めあぐねていた。
だからこそ、慢心をする。だからこそ、彼女は笑みを絶やさない。
余裕など崩さない。自分はしっかりと優位を保っている。そう信じて疑わない程の力も有しているのなら、その様に考えてもなんら不思議ではないのだ。
――――どう足掻いても攻めきれず、じわりじわりと爆発に蝕まれて終わる。貴方達の敗北は必定。あぁ、堪らない!
心の中で、そう決定づけるメーディア。そうこう考えている内に、サイトと爆弾の距離はゼロになり――――けたたましい爆裂音を、生み出した。
邪悪な笑みを浮かべたメーディアは、そのままランスまでもを爆破しようとそちらに向き直ろうとして。
風の吹き荒れる音が、厄者の耳を駆け抜けた。
「っ!?」
――――何故だ。何故、どうして、そんな事が、嘘でしょう?
どうしてあの兎は――――落ちることなくこちらに近付いている。鬼気迫るその表情と、身体中に付いた爆発跡。どう考えても爆弾は直撃していた筈なのに。
「こっちに、近寄るなぁ!」
爆弾を更に生み出して、サイトに放出するメーディア。
しかし、サイトは怯まない。臆さず、退かず、速度を落とさずに。距離をどんどんと縮めて進む。
その身体に確かに爆発は響いているが……メーディアはその受け方に何かの違和感を覚えた。
まるで、覆われた膜が爆発の威力を削いでいる様子。
そこでメーディアは、ある確信を得た。
――――まさか、この兎!?
「自分の体に風の膜を覆って――――」
「だぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
気付いたときには、既に手遅れ。
メーディアの体を、サイトは風の剣で――――斬り裂いた。
「かふっ……!」
斬り裂かれたメーディアは、その体を空中から地上へと落下させた。
それと同時に、ゲルダや王様達を覆っていた脈打つ繭も消え失せていく。
倒れゆくゲルダ達を、ランスは氷を生み出してその体を支え、どうにか救出する。
近寄り、脈を測って安否を確認し……息があるのを確認して、安堵するランス。
静寂。
シン、と。それまでの喧しかった戦闘の音が嘘のように、場は静まり返った。
サイトは空中から地上へと剣に乗りながら降り立ち、そのまま膝をついて肩で息をする。
呼吸がままならない、体のあちこちも痛んで骨の軋む音が響いている。
――――でも、メーディアは、倒した! このまま封印を施せば、全部解決する、筈だ!
それは、ある種の緩み。斬りつけ、致命傷を与え、その上ゲルダ達を解放したことによる安堵も含まれた、勝利の確信。
サイトは、地上に落ちたメーディアの方を向く。様子を確認して、封印をしなければならないから。
――――けれど。
「……はっ?」
そこで見えた光景は、信じ難いもので。
「……ナる、ほド、ネぇ。ワタシに、こコマで手酷イ傷を、与エたノは……ハスタに続イて、貴方ガ二人目よ。兎種ノ、生き、残、リぃ!」
赤黒いローブに、黒と白のファーははだけてボロボロとなり。紅く美しい長髪も、その色味はくすんで色褪せてしまっており、切れて無くなりかけて。
結膜も黒く染め上がり、その血みどろな黒の目と合わさって恐怖を与えてくる。
先刻、美しき姿を保っていたメーディアは……ドロドロに溶け、崩れかけている姿となっていたのだ。
悍ましい姿であっても、まだ生き汚く足掻くその様は、正に怪物と称して差し支えない。
辿々しくなったその口調と相まって、嫌悪感は止めどなく溢れ出てくる。
そうした中で、ランスは素早く足で床を踏み抜き氷を生み出して、メーディアを捕らえようと試みる。
しかしそれは――――突如として発生した衝撃波によって、粉々に砕け散らされた。
その衝撃波の正体は、巨大な黒い珠。メーディアの手前に出現したその珠から発せられた、得体の知れない薄気味悪いエネルギー。それが、氷を砕いたのだ。
「ふ、ハ、は! イイ、わ! モウちょッと、チカラ、は、蓄ぇテオきた、かっタ、ケど。十分、ツカえる、か、ら!」
不敵に、不気味に、笑い上げ。厄者は珠と、融合し。姿形を変貌させる。
角が生え、顔には獣のマズルが伸びていき、身体は筋骨隆々に。手や足の爪は刺々しく、尻尾はどデカく太ましい。
そう。その姿はまるで――――ランスやハスタの様な、獣龍種の姿そのもので。
メーディアは高笑いを起こし、目に映る全てを睨みつけてから叫び吠える。
「あーッはッはっハっはッハっはァ! イイ、イイわ! 昂る、昂ル! これゾ我が
その姿に驚愕を覚える、サイトとランス。
特にランスの驚愕は、想像を絶するだろう。厄者であるメーディアが、自分たち獣龍種の姿を象っているのだから。
だが、何よりは。
メーディアから放たれる圧が、桁違いに跳ね上がっている事。
二人は警戒度を引き上げるが――――そんな警戒を嘲笑うかのように、メーディアは即座に行動を引き起こす。
「おぉおォオォおぉぉぉぉ!」
咆哮と共に、床を足で踏み抜いてまずサイトに突撃していく。
その、スピードは。
「――――っ!?」
超速。目で捉えきれずに、サイトはメーディアの繰り出した右ストレートに撃ち抜かれ、吹き飛ばされる。
反射的に剣で受け止め直撃は避けたものの、それでも衝撃の全てを逃がしきれずに、意識を刈り取られかけた。
そのまま、メーディアの凶撃は止まらない。次々と繰り出される殴打は、サイトを屠らんばかりにその勢いを増していく。
「ぐっ、うぅぁ!?」
「ハハはハハははははハハはハハはははぁ! サぁドうすルのカしラ! このマまダと貴方ハみンチよォ!」
「がっ、くっ、あぁ!」
殴打、殴打、殴打殴打殴打。
続け様の攻撃に、サイトは為す術なく翻弄され押し潰される。
意識も風前の灯。死を予感した瞬間――――氷結がメーディアを捉えた。
身体が凍り付き、動きを止める。
それに比例して、倒れ伏すサイト。意識は朦朧として、動けない。
――――くっそ……! 動けよ、この、から、だぁ!
悔しげに目を鋭くしながら、サイトは倒れ込んでしまう。
動きを止めたランスは、鬼気迫る表情でメーディアの事を睨みつけていた。
そんな獣龍の彼の射抜く視線に、メーディアは好色の笑みを浮かべていく。
「アッ、ハぁ! やっパり、くるわヨ、ネぇ! ランす……ラんスらンスランス! 愛ラシいハスタの弟クン! 貴方もワタしが、愛でテあげルぅぅぅ!」
身体に覆う氷を砕き、標的をランスに変えたメーディアはそのまま彼へと突撃していく。
一気に距離は縮まり、またも繰り出される右ストレート。
ランスはどうにかその凶撃を受け止めた。重く圧しかかる一撃。せめぎ合う両者。けれどその均衡はすぐに揺れ動いていく。
メーディアの押し込みが、徐々に徐々に進んでいく。それはつまり、ランスが押されてしまっているという事。
腕も脚も震え、今にも体勢を崩しそうになるランスであるが、何とか耐えていく。
必死に耐えるその姿を見て、メーディアは醜悪に嘲笑いながら力をより増して押し込めていく。
「ホら、ほラホラホらほラホラ! アガイて、モガいテ! ソシて惨メに……朽ちハテなサイ!」
足が、床にめり込んでいく。
腕や脚の筋肉も、限界に近い。
けど、それでも。ランスは絶対に――――諦める事はしない。
覚悟を、決める。
「――――おぉぉぉおぉぉぉぉぉ!!!!!」
全身から、冷気を放出していく。尋常でない吹雪は、辺りをまた銀世界に染め上げていく。
そしてその冷気は、メーディアを覆うようにして身体に集まっていく。
パキ、パキパキパキ、パキキ。
冷気は氷結と化し、白き靄を放ちながらメーディアを凍らせようとする。
しかし、それをただ黙って見ているメーディアではない。凍らされた所を力で無理やりに破壊して、どうにか脱出しようと試みる。
けれど、ランスはそれを食い止めていく。
自分自身さえ凍り付かせるほどの極寒の冷気を放出させて、メーディアを押さえつけようと歯を食いしばっていき。
その状況に、メーディアは嫌な予感を覚え始めた。
何をしでかそうとしているのか。考える間にも、自身の体は凍り付こうとしていた。
冷気によって体温は低下し、思考が正常に定まらなくなる。その中で、メーディアはある一つの可能性に辿り着いた。
――――コイつ、まさカ!? じブンをギせいにシて、ワタしを封印しようとでも言ウノか!?
ランスは全身から限界突破の冷気を大放出していく。
メーディアは逃げ出そうとするも、氷は既に身体すらも蝕み始めていた。逃げられない。
そんな光景を目の当たりにしたサイトは――――喉から必死な声を絞り上げて、叫ぶ。
「駄目だ――――ランスさん!!!!!」
静止の声も、最早意味はない。
ランスは決意を露わにしたその表情で、メーディアを押し留めんとしたのだから。
自身の右手に槍を生み出して握り、そして勢いよくその槍を――――
「――――『
メーディアの胸元へと、突き立てた。
「アァぁぁァァァああァァァあアァアァアァぁぁ!!!??? ヤメ、な、さイ! ソ、んな、おろ、カなこト、オォ!?」
「お前、を……封じられる、ので、あれ、ば! このいの、ちなど……惜しくは、ない! 俺は……ハスタ、兄さんの、為、に! お前を、ここ、で……止め、て、やる!」
「ヤメ、や、メ、や……めェ゙――――」
氷霧が、辺りに溢れ出し。メーディアは凍てつき、氷像と化して。
そして、ランスは――――ドサリと、床へ力なく倒れていった。
「そん、な。ランス、さん……!」
痛み、震える身体を無理やりに起こしていきながら、サイトはランスへと近づいていく。
体を寄せ、その顔を覗き見る。全く動く気配のない閉じられた瞼に、聞こえない呼吸の音。
嫌な予感を払拭したいがために、左胸辺りに手を置くが……脈動は一切、感じられなかった。
認めたくなどない。サイトは必死にランスの身体を揺すり、起こそうと試みる。
「ランスさん、起きてよ。なぁ、起きろって。ここで寝てる場合じゃないだろ? メーディアも倒したんだ。これからハスタさんともしっかり話し合わなきゃなんねぇのに。これからだって、時なのに。起きろよぉ、ランスさん……!」
その声は震えてしまう。
無力感に苛まれながらも諦めきれずに、何度も何度も身体を揺すっていくサイト。
そんな彼の耳に――――足音が、聞こえた。そちらへと顔を向けると、そこには。
「っ! ハス、タ、さん?」
ハスタが、サイト達の方へと歩いてきていたのだ。
ゆっくりと、一歩ずつ。
警戒をしていくサイトであったが、既にボロボロなうえに敵意も感じられないハスタの様子を見て、近づいてくるのを静観していく。
近づききり、サイトの真ん前に立ったハスタは……そのまま膝をついて座り込むと、自身の目元に巻いた布を取り払い、ランスの頬に手を添えていく。
数秒の間が空いた後に、ハスタはゆっくりと口を開いていった。
「……まだ、間に合う」
「えっ?」
「まだ、ランスは助かると言っているのだ。我の力を使えば、コイツは生き返る」
その言葉に、サイトは目を見開いて驚く。
兎の少年の反応を知ってか知らずか、ハスタはそのままランスをサイトから引き離し、丁寧に抱き寄せて床へと寝かしつけた。
そして――――自身の指を噛んで血を出すと、その血で何かの陣を描き上げていく。
ランスを中心として描かれるその陣には、未知の言語が書かれてあり。サイトはただ黙って、その行動を見守っていく。
そんな行動の最中、ハスタはポツリポツリとサイトに向けて話し出す。
「本当に、すまなかった。我のせいで、お前もランスも、こんなに傷つき苦しんでしまって」
「……それは、結局メーディアが全部悪かったで済む話だよ。確かにあんたのやってきたことは、許されないことかもしれない。でも、あんたを完全な悪として責めることは……僕には、出来ない」
サイトの言葉に対し、ハスタは振り向いて反応する。
ランスと同じ緑色の瞳は、優しげで柔和な雰囲気を醸し出しており、先ほどまで戦っていた恐ろしい覇気は欠片も持ち合わせていなかった。
そんな彼の瞳を見たサイトは、ふと、何かを感じ取る。
その何かとは、形容すれば
嫌な予感がして、ハスタの行動を止めようと声をかけようとする。
が、それは出来なかった。
ハスタの優しげな瞳に、言葉を噤まされてしまったからだ。
止めないでくれと、言外に伝えてくるかのように。
そうしていると、ハスタは血の陣を描き終えた。
サイトへと背を向けたまま、彼は言葉を出していく。
「サイト。優しいお主に頼みがある。我のこれから行うことを、しっかりと見届けてほしい。浅ましく愚かな男の償いを、その眼で」
「っ……! 分かっ、た。ちゃんと、見るよ」
「感謝する。では……始めよう。芯技、解放」
言葉と共に、パンと音を鳴らしながら手を合わせていくハスタ。
すると――――血の陣が青く光り輝き、眩く辺りを照らし出していく。
「我ら龍族に旧くから伝わりし秘伝。その器に魂を宿し、命の灯を与え給う。我が身を代償として、今ここに奇跡の祝福を芽吹かせん!」
詠唱と同時に、青い光はランスを包み込むようにして淡く優しく輝いていく。
儚げで、その中に確かにある美しい光景。
青に染まった今の場では、光の粒子が陣から吹き出ており、まるでそれは青い花弁のようだった。
サイトはその光景を、ただひたすらに見つめていく。
忘れぬように、記憶に刻み込ませるように。
そして、ハスタは叫ぶ。
「
魂の叫びが、王広間へと響き渡って。
輝きは最高潮に達し————そして、青い光は徐々にその輝きを無くしていった。光の粒子も消えて無くなる。
静まり返る空間。腕で目を覆っていたサイトは、輝きが収まったのと同時に陣の中心へと目を向けていく。
すると。陣の中心で横たわっていたランスの身体が、ピクリと動き出した。
サイトは思わず笑顔を浮かべて、ランスへと駆け寄っていく。
「ランスさん、ランスさん!」
「……うっ、サイ、ト? 俺は、メーディアを封じる為に、命を失った筈、じゃ?」
「良かっ、たぁ……! ハスタさんが助けてくれたんだよ! 凄かったんだ、さっきの芯技! ねぇ、ハスタさ――――」
振り返るサイト。
その目に映ったハスタの姿を見た彼は、絶句する。
何故ならば――――ハスタの身体は透け、消え始めていたのだから。