フォーチュン・ライト   作:お じ さ ま

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第七十四話 天火中作戦会議

 会議室には、それから二分ほどで辿り着いた。

 物々しい両扉。その先の部屋には、ソウジと共に来たルシオラと先導組であるガッツを含む他のギルド員や、聖ドゥケレ騎士団らしき面々。そして、『久遠の夜明け(くおんのよあけ)』のギルド員と————会議室の最奥で仁王立つ、ホムラの姿。

 そんな様々な人達の中で、ソウジはある人物達を見て少々驚く。

 ボーデンにて共に戦った、ライアとゼーエン。

 その二人が、会議室の座席に座っていたからだ。

 

 ライアは備え付けられた茶菓子を嗜んでいるようで、非常にリラックスした状態が伺える。

 一方のゼーエンは、相も変わらず警戒の色を崩さずに腕を組みながら目を閉じていた。

 

 ————二人とも、雰囲気が変わらないな……。

 

 などと、思っていたソウジ。

 そんな彼にライアが気が付くと、立ち上がって声をかけていく。

 

「おぉ、ソウジ君じゃないか! 久しぶりだねぇ、ボーデン以来だ!」

「あぁ、久しぶり。ライア達も、ここに来てくれたんだな。すんげぇ頼りになるぜ」

「ははっ、嬉しいことを言ってくれるじゃないか。任せたまえ、しっかりと働くとも。まぁ……私達以上に頑張るヒトは、いるだろうけど」

 

 その言葉と共に、ライアはソウジの後ろへと視線を向けていく。

 それに反応したソウジが後ろへ振り返ると……そこにはホリィもやって来ていた。

 視線を向けられたホリィは、ソウジへと視線を交わして朗らかな笑みを浮かべていき————次いで、ライアにも視線を向けていく。

 その表情はどこか悩ましげになっていたが、すぐに視線を元に戻して聖ドゥケレ騎士団が固まる座席の位置へと歩いていった。

 何とも意味深な視線の向け方に、ソウジが思案していると————横からアヤメがこそりと耳打ちする。

 

「なに、知り合い?」

「ん? あぁ、ボーデンで一緒に戦った奴らなんだよ。簡単に紹介すると、ライアは物知りな奴で、ゼーエンはくっそ強い奴な」

「ふっ、ふーん……そう。ならまぁ、別にいいわ」

 

 小声でボソボソと喋るアヤメに、小首を傾げるソウジ。

 そんな二人を見てニマニマとするソン。彼は少しの間その様子を堪能した後、パンと音を立てて手を合わせていった。

 

「さて、それじゃあワタシ達も席に着きましょうか! しっかり話を聞かないといけないし、ね☆」

 

 そうして、会議は始まった。

 ホムラが取り仕切って、話を始めていく。

 

「さて、それじゃあ会議を始めるとしようか! まず最初の議題は……『アンギョウ組』の狙いについて。それを共有していこうと思うぞ!」

 

 ハキハキとした声色で、ホムラは続ける。

 

「そもそも奴ら『アンギョウ組』、ひいては『ア(・)ラ(・)マ(・)ガ(・)・アンギョウ』の狙いは、俺だ。俺の命を狙って、天火中(あまのほなか)を襲っている。そしてゆくゆくは……ヒノモト全土を支配しようとしているんだろうな。そうなったら、後はもう大変だ。ラピステラ大陸の人々にも進軍を開始して、世界全土をも支配しようとするだろうさ」

 

 深刻そうな内容に反して、ホムラの声には焦りの色はあまりない。

 そんな彼の様子に、ルシオラや他のアストラからのギルド員、ホリィ含む聖ドゥケレ騎士団の面々は訝しげな顔を見せていた。

 ライアは興味深そうにホムラを見つめ、ゼーエンはさほど興味もなく目を瞑っている。

 しかし『久遠の夜明け』のギルド員、アヤメやソンなどはその声色にさして不可思議な気持ちを抱いてはいなさそうだった。

 

 そんな中で、ソウジは黙ってホムラの話を聞き続けていた。

 これから恐らく言うであろう言葉を想像して、少々呆れた視線を送りながら。

 

「だが、心配はいらない。何故なら、こんなにも大勢の協力者が来てくれているんだ! アヴァルきっての勇者団体である聖ドゥケレ騎士団。それに加えて、アストラのギルド『不滅の物語(ペルペトゥス・ファーブラ)』の面々! これらの戦力が揃えば絶対に『アンギョウ組』は打ち倒せる! 何より……俺がいるからな! 絶対に守り切ることが出来るさ!」

 

 快活に、堂々とした様子で話していくホムラにこの場の殆どの者が圧倒される。

 絶対的な自信と、それを裏付けるほどの実力を目の当たりにしているからだ。

 そんな中で、『久遠の夜明け』のギルド員から一人の人物が起立して、ホムラの下へと向かった。

 そして、彼の代わりに前へと立ち一つ大きな咳払いをすると、挨拶をしていく。

 

「すみません、少々話が別の方向へいきましたね。ここからは僕、ヒ(・)カ(・)ル(・)・カンナギが進行を務めさせて頂きます」

「むっ、何か不備が……あー、うん、そうだな。俺は少々、先走りすぎる。ここからの説明は、ヒカルに任せておくとするよ」

「そうしてください。では、話を改めて纏めると……『アンギョウ組』の目的は、確かにホムラ様の言う通り、ホムラ様の命が狙いです。出す要求も、ホムラ様の命を差し出しさえすれば天火中を襲うのは止めると言っているのです」

 

 ヒカル、と名乗ったその眼鏡をかけた年若い男性に、ソウジがかなり驚いた様子で目を丸くする。

 が、そんな彼を知ってか知らずか、ヒカルは話を続けていく。

 

「勿論、我々はその様な要求を呑まずに徹底的に抗戦することにしました。ホムラ様を差し出したとしても、天火中を襲わなくなるとは限りませんから。そして現状、『カンナギ組』と『アンギョウ組』として争い合っているという話だったのです」

「……なるほど、そうだったのですね。でしたら我々のやるべきことは、ホムラさんを警護すること、になるのでしょうか?」

 

 この場の全員を代表するようにして、ホリィが挙手をしてヒカルへと訊ねた。

 それに対しヒカルは頷いていく。

 

「えぇ、それも大事です。そして、同時に我々には更にやらねばならないことがあります。それは二つ……『アンギョウ組』の頭『アラマガ・アンギョウ』を討つこと。そして、『タカノマハラ』にある結界石(ゲニウス)を護ることです」

 

 神妙な面持ちで話すヒカルに、この場にいる全員の表情がしっかりと引き締まっていった。

 ヒカルはそんな雰囲気にしっかりと答える様にして、説明をしていく。

 

「まず、結界石に関して。こちらは単純明快に、壊されてしまった場合のリスクを考慮しての事ですね。壊されれば、アンギョウ組の奴らの他に魔獣や封じられている厄者が解放されてしまいますから。それに、『不滅の物語(ペルペトゥス・ファーブラ)』の面々を襲った厄者が侵入する可能性も考えておきたい」

「ふむ、なるほど。確かに、結界石を護る事は優先事項に入るだろうね。では、『アラマガ・アンギョウ』……『アンギョウ組』の頭を討つというのは、具体的にどうするつもりで?」

「それに関しても、既に策を講じてあります。『アンギョウ組』は今、『闇岩蔵(えんのいわくら)』と呼ばれる禁足地にて潜伏しているという情報が捜索班から入っているので……そこへ攻め込む準備を、進めています」

 

 ライアからの問いに答えるヒカル。そして、その話された内容に、周囲はざわつく。

 『闇岩倉』は禁足地と言われるように、ある理由からその立ち入りを禁じられている地域である。

 その理由を含め、ライアが更に質問を重ねていった。

 

「『闇岩倉』は、私も聞いたことがあるね。何でも、とびっきり恐ろしい妖がそこを根城にしてるって文献を読んだ記憶があるよ? その妖が原因で、禁足地として忌み嫌われているとも」

「えぇ、正(まさ)にそこにいる『闇羅(えんら)』という妖が、これ幸いとばかりに嫌っているホムラ様を排除できると思って協力しているのですよ……なんとも嘆かわしいことです」

「闇羅……なるほど。でもまぁ、我々のやるべきことは明確なんだね。ヒカル氏の言う通りなら————」

 

 ライアの言葉と共に、やるべきことを纏め上げていくと以下の様になった。

 

【一 ホムラの護衛は最優先に。人員も信頼の置ける手練れな少数精鋭にしていく】

 

【二 アラマガ・アンギョウを討伐すべく、闇岩倉へと向かう討伐隊も決める】

 

【三 タカノマハラにある結界石の警護にも人員は固めておく】

 

 これらの三点に取り組むのが、現状の自分達が出来る事であろうという結論に至った。

 そして、それぞれの人員も決められていく。

 

 ホムラの護衛には、ゼーエンやソンの二人がライアやソウジ、アヤメやホムラ直々の推薦で選ばれ。

 

 アラマガ・アンギョウを討ち取る役目は、ソウジやルシオラを含むアストラのギルド員のメンバーと、ホリィ率いる聖ドゥケレ騎士団の一部の面々、そして『久遠の夜明け』のメンバーが道案内として向かうことに。

 

 そして、タカノマハラにある結界石の警護にはヒカルやライア、そしてアヤメなどの防御に適しているとされる面々に、ガッツが指揮を取る形として向かうことになった。

 

 後の残るギルドや騎士団の面々も、個別に配置されていく。

 

 メンバーが決定された時、ソウジはかなり眉間に皺を寄せていた。

 それに、アヤメは心配そうな視線を向けていく。

  

 そうして、会議が締めくくられる前に————ホムラから最後に。

 

「皆(みな)、今回の作戦はかなり危険度の高いものだろう! 命を落とす可能性は勿論あるともさ! しかし……希望は、あるぞ! 俺がついている。諦めなければ、必ず道は切り拓けるさ! だから————皆、よろしく頼む!」

 

 その様に、仁王立ちで話していった。

 あまりにも堂々とした立ち振る舞い、一士諤々(いっしがくがく)とも捉えられる威光を示したその姿。

 そんな様子を見た一同の心は————自然と引き締まり、決意を固めさせられていく。

 各々が頷いたり、やる気を出すように声を出していくと、会議室を後にしていった。

 

 ————————————————————————————

 

「ソウジさん」

 

 皆が会議室から出ていく中で、ホリィがソウジへと話しかけた。近くにいたアヤメはその二人を遠巻きに観察する。

 やる気を見せているホリィに対し、ソウジはニッと微笑みながら返事をした。

 

「おぉ、ホリィ。今回の作戦、一緒だな! よろしく頼むぜ」

「はい。絶対に作戦を成功させて……この天火中を、ヒノモトを救いましょう」

「おう。ホリィはさっきの戦いでもすんげぇ強かったから、頼りにしてるぜ?」

 

 朗らかな調子で話し続ける彼らを見て、細い尻尾を所在なさげに揺らしながら観察し続けるアヤメ。

 そんな彼女に後ろからソンが近づくと、その両肩を掴んで話しかける。

 

「どうしたの? 貴女も会話に混ざればいいじゃない」

「……なんか、ソウジにも色んな関係が出来ててさ。あたしとの縁が薄くなっちゃってる気がして。はぁ、こんな考えは良くないって分かってるんだけどね」

「……まぁ、そうなのかもねぇ。でも縁が繋がってる間は、幾らでもその縁を深くさせることは出来るわよ? だから、諦めちゃ駄目。貴女の気持ちを、ちゃんと伝えなくちゃ」

 

 ソンからの言葉に、アヤメは一瞬目を伏せると……そのまま首を横に振った後にソンへと振り返り、力ない笑いをしていった。

 

「ありがと、テンちゃん。でも、今はまだいいかな。作戦会議の後だし、そういった話はあんまししない方がいいだろうから」

 

 そんな彼女に、ソンは慈しむような視線を向けていく。

 が、すぐにニッコリと笑顔を浮かべると、そのままアヤメを連れて会議室を後にしようとする。

 

「じゃあ、あたしと色々お話してくれる? 今回の作戦、ちょっと不安なのよねーアタシ」

「……テンちゃんは強いじゃない。まぁ、いいわよ。話に付き合ってあげる」

「やった☆ それじゃ、食堂でお話しときましょ」

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