(仮題)ヴィークル・メアを求めて/(旧)母父の名で帰ってきた   作:MenoMash

12 / 27
しばらくはリュウちゃん(馬)を連載します


シルバーコレクター

 私は所詮、親の七光りでしかない駄馬です!!……取り乱してしまい、申し訳ない。リュウールドレです。

 

 勝てない、勝てないと思って調教を頑張っていたら、脚に違和感が。よくわからなくて取り合えず人を呼ぼうと、扉に向かって後脚を振り上げたところ、丁度よくサトリが来た。相変わらず勘の良いやつ。そこからはお医者さんに行ったり、サトリが3日くらいアイシングを頑張ってくれたおかげで、すぐに治った。ソエというらしい、知らんけど。

 ソエはすぐに治ったけど、菅井調教師がしばらく休みだと言ったせいか、車に乗って知らない場所にやって来た。外厩なる場所だ。トレセンに来る前に来たのとは、違うところだ。しばらく、ここで過ごすのか。

 

 

 

 外厩というのは、いいところだ。ご飯はおいしいし、調教がだるくて動かなくても怒られない。ずーっと、ひなたぼっこしててもいい。なんて自由な場所なんだろう。将来はこんな生活を送るのも悪くない。

 ゆっくり休んでみれば、多少頭も冷えてくる。最近の私はおかしかった。応援してくれる人がいるのなら、それに応えなくてはならないと思い込んでいた。

 それは違う。私はただ走るだけでいい。人間が勝手に夢を見て、勝手に金を賭けているだけだ。私が応えてやる義理はない。同じ人間であった頃なら兎も角、今の私はただの馬なのだから。

 そんなふうに考えつつ、目の前に佇む人間を見やる。いつも上に乗っている人間だ。名前は確か…石端と言っただろうか。

 私が外厩に来てからというもの、何故か石端は頻繁に様子を見に来るようになった。嫌いではないが、ベタベタ野郎程でないにせよ触ってくるから苦手なのだ。

 じゃあ直助はどうなんだって?確かにアイツもハグしてくるが、ウチのテキを見たことがあるやつはいるか?可哀想に。アイツは将来、きっと禿げる。人間のハゲはモテないからな。多少は優しくしてやってもいいさ。

 石端は…まぁ、禿げないだろ。きっと20年たってもフサフサだ。

 

 そんなフサフサの石端だが、どうやら私の前脚が気になるらしい。ふむ。

 

 「えっ」

 

 仕方がないな。お前には特別に触らせてやろう。騎手というのは命懸けの職業らしいからな。安全確認だと思って存分に触るといい。

 そんな気持ちで私から擦り寄ってやれば、石端は珍しく驚いたような声をあげた。しかし、触ろうとはしない。おい、私が触らせてやろうと思っているんだぞ、気分が変わらないうちに触れ。

 ……あ、そうか。サトリに慣れすぎて忘れていたが、人間は表情や言葉でコミュニケーションをとるんだった。そりゃ伝らんわ。

 なんだかムカついたので、前脚で地面をかいてみると漸く伝わったのか、撫でてきた。おい、そこじゃないだろ。うん、そっちだ。

 

 「…ありがとう」

 

 

 

 それからも石端は私が外厩にいる間は外厩に、トレセンにいる時はトレセンに会いに来た。暇なのか。

 元々、私の調教は石端の他にも直助が乗ったりしていたのだが、最近は石端ばかりだ。

 不思議だ。テキと石端は私に全力で走らないことを覚えさせたいらしい。競馬なんて、最初から最後まで1番なら文句なしだと思っていたが違うらしい。厩舎の先輩方と幾度目かの併せ馬をした後、何事か話し合っていた。どうやら追い込みなるプレースタイルを覚えさせたいようだ。何それ、知らん。

 

 ポケーっとしていると、親切な先輩が教えてくれた。最後方辺りを進んでスタミナを残し、最後の直線で全部抜くのが追い込み。へー、なるほど。…よくわかんないけど、前にいっぱいいたら邪魔じゃない?本当に全部抜けるの?あ、その辺は騎手の責任だから気にしなくていい?負けても馬は悪くない、人間も言ってた?そっかぁー

 

 ま、人間の責任ならいっか。下の責任は上が取るって、人間時代に聞いたことあるし、そういうことなんだろう。

 そんな感じで、追い込み以外にも他のプレースタイルを覚えるために程々に練習して。

 

 

 

 2007年11月17日土曜日 JpnIII 東京スポーツ杯2歳ステークス

 季節はもう秋の終わり。冬の訪れを感じさせるような頃。漸く私の復帰戦がやってきた。

 1番人気は4番ゴスホークケン。初めて1番人気から外れた。自分以外は牡馬しかいない。

 ゲートの中、何となく心細くなっていると石端が首筋を撫でた。

 

 「お前はお前なんだ」

 「父親の影なんて振り切ってしまえ」

 

 そっか。

 

 最初に逃げたのはダンツキッスイ。それから先頭は4頭ばかりが馬群を形成した。ずっと後ろで合図を待つ。思った通り、前にいるやつが邪魔だ。第4コーナー、他の馬が外にふくらむ。その内側を走る。直線の坂、鞭が入った。勢いのままにスピードを上げる。

坂上からフサイチアソートがスパートをかけてきた。

 いまいちスピードが乗り切らない、もう少しなのに。

 

 そこから鮮やかに伸びて差し切られた。2着の私にハナ差をつけて、フサイチアソートはデビュー2連勝で重賞タイトルを手にしやがった。




後でちょっと段落下げたりします。

追記
段落下げました。

4歳・秋の遠征先アンケート(本編の結末は大きく変わりませんが、ウマ娘編の展開には影響あります)

  • アメリカ・BC(オールウェザー)
  • オーストラリア・メルボルンカップ(芝)
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。