(仮題)ヴィークル・メアを求めて/(旧)母父の名で帰ってきた 作:MenoMash
正月明けすぐに唯良は、テキ──菅井彦三郎に呼び出された。担当している馬のことだった。
「リュウを放牧にだすんでしたよね」
「ああ。以前から決まってはいたが、取材の前日に烏を蹴ったのは覚えてるな」
「ええ、まあ」
世間では烏に驚いて、ついうっかり等と受け取られたようだが、あれは良くない兆候だ。
「クラシックが始まってからでは、いつ外厩に出せるかもわからん。ここらで一度ガス抜きをしておくべきだろう」
「それで、すみれステークスですか」
「すみれステークスならあまり無理させずに済むし、もし追加で叩きが必要となっても、ぎりぎり皐月に間に合うからな」
苦々しさを隠そうともしないテキは、きっと馬主の言うことに一理あると思いながらも、本心ではリュウールドレを大舞台で走らせたいのだろう。彼女の母父ヒカリデユールも、テキの管理馬だった。その末路について、思うところがあるのは明白だ。
「リュウールドレには才能がある。だが、普段は図太い割に妙なところで繊細だ」
「溜め込むタイプではありますね」
「やっと落ち着いたんだ。暴発されても困る」
テキが心配しているのは、厩舎のボス争いではない。リュウールドレとタニノマティーニの争いは、リュウールドレの勝利に終わった。そうではない。カシノハヤテが地方へ行ったことで、リュウールドレが寂しがらないか心配なのだ。
リュウールドレが懐いている馬は何頭かいるが、以前そのうちの一頭ローザムンディが地方に移籍した際はずっと探していた。その時、なだめていたのがカシノハヤテだったのだ。
「今はケルティックハーブやハニーフラッグとも仲良うしてますし、平気やとは思いますが」
「前もグローバルアイがいたのにダメだっただろう。レースに支障はなかったとはいえ、キタサンユキが来るまでは引きずっていた」
正直に言うんやったら。あの馬は、そないなこと気にしてへんと思う。一緒に飯食おうと思たら、おらへんかっただけやと思う。ほんで、キタサンユキに気ぃ取られて忘れたんやろ。ホンマはグローバルアイ以外、知り合い程度の間柄やと思うわ。知らんけど。
「とにかく、リュウは外厩に行かせる。問題は…」
「こんどは何kg肥えてくるか予想がつかへん事ですね」
「そうだ。前回は10kgだったが、次はどうなるか」
「絞れるだけ、絞らんといかんですね」
前回外厩から帰ってきた時は、10kgも肥えとったのを5kg絞った。肥えては鍛え、肥えては鍛えを繰り返しているが、果たしてリュウの適正体重はどんくらいなんやろか。牝馬としては、いやサラブレッドとしても、大きすぎやせぇへんか。
なまじ、オグリ譲りの頑丈な胃袋があるばかりに丸々と肥え太ってくるんやろう担当馬に、今から気が遠くなりそうや。
なお、本馬的には一緒にご飯食べようとしたらいなかったから、探していただけという。
4歳・秋の遠征先アンケート(本編の結末は大きく変わりませんが、ウマ娘編の展開には影響あります)
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アメリカ・BC(オールウェザー)
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オーストラリア・メルボルンカップ(芝)