(仮題)ヴィークル・メアを求めて/(旧)母父の名で帰ってきた 作:MenoMash
▽満喫しすぎたようだ
どうも、リュウールドレです。とてつもなく寒い時期ですが、皆さんいかがお過ごしでしょうか。滋賀の冬は千葉より寒く、最近は馬着なるものを肌身離さず装備しております。リュウールドレです。
この馬着なるもの。昔から着てはいたけど、侮りがたし。何かと言われれば、滋賀の冬を舐めてた。勝手に千葉より南にあるから暖かいのだろうと思ってたけど、よくよく人間時代を思い出して見れば、地図帳の緯度は同じくらいだったような気がする。
実家も育成牧場も、山の辺りにあったけど、そもそも千葉は温暖な太平洋側の土地。冬はカラリとしているのが通常運転。の割に、実家にいた頃は珍しくも雪が降って寒い寒いと、ナノハナ姉さんや甥姪達とおしくらまんじゅうしていたのが懐かしい。みんなも今頃、元気にしているだろうか。
なんてことを、誰に言うまでもなく、つらつらと考えていた。
外厩で過ごす日々は穏やかで、ついつい食べすぎてはしまうけれど、なんとなく動く気分ではなくてダラダラしている。この間、会いに来たサトリにはなんか驚かれたけど、馬が横になって寝るのはおかしいのかな。
うーん。あったかい飲み物でも欲しいな。
「リュウ、ちゃん?」
暦の上では春の訪れも過ぎた頃。静まり返った外厩の放牧地に、石端騎手の困惑を隠しきれない声がやたらと響いた。それもそうや。気持ちはわかる。唯良は石端騎手に全力で同意した、心の中で。前回訪れた時の、自分もそうやったわ。それよりアップグレードしてもうたけどな。目の前にはリュウールドレ──石端騎手のお手馬で、昨年ラジオNIKKEI杯を勝った重賞馬や。せやけど、その姿は最早──
「大福?」
大きく、丸々と太り、大福みたいになっとる。2月の滋賀に降る雪が大福の粉感をいや増しとんな。
呆然とする石端騎手を尻目に、大福はモシャモシャとお土産のキウイフルーツや金柑といった旬の果物を使用したマチェドニアなるものを食べとった。外厩のスタッフに話を聞くと、どうも誕生日のお祝いとして与えたんを気に入ったらしいんやと。1番食いつきがええんは、モスカート・ダスティ(イタリアのスパークリングワイン)を使うたんなんやって。なるほど。マチェドニアいうんは、白ワインを使うたフルーツポンチのことなんやな。他に少し温めの紅茶やワインパンチも喜ぶんか。
へぇー、知らんかったわ。ほんで、今の馬体重はいくら位なんです?
あかん。こら、テキが本気出してダイエットさせるしかあらへんわ。
しばらくの滞在の後、唯良は石端騎手と連れ立って外厩からトレセンへと向かった。
「唯良さん」
石端騎手が、おずおずと口を開く。車内には暖房が十分に効いているはずなのに、何故か温かさというものを感じなかった。外厩で見たリュウールドレの姿が、心胆を寒からしめているのかもしれなかった。
「牝馬で580キロ近いの、どう思われます?」
唯良は答えた。その答えはひとつしかなかった。きっと、石端騎手が求めているものとは、違っただろう。しかし、そちらには気が付かないフリをした。その答えがわからなかったから。
「デブですね」
ギネスが好きな馬(ゼニヤッタ)も、シャンパンが好きな馬(ネトワイエ)もいるから、つい出来心で。
4歳・秋の遠征先アンケート(本編の結末は大きく変わりませんが、ウマ娘編の展開には影響あります)
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アメリカ・BC(オールウェザー)
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オーストラリア・メルボルンカップ(芝)