闇深い世界で…悪化させた日々 作:不良品の主人公
バスの中と教室、過去回想です。
「起きて、起きてよ、陽哉」
隣の席に座っていた彼女の声に眠っていた俺の意識が少しずつ覚醒していく。身体を揺すられる。何処かダウナーさが混じる女の声に真っ暗だった視界に光が差す。
目が開いた。視界で長くて綺麗な青髪が靡いた。
じっと目の下に泣き黒子のある色白の顔が俺を覗き込んでいる。
「…おはよう波瑠加。今何時?」
「もう7時半だよ。バスに乗ってからずっと寝てた。」
「っ…もう着くのか」
「そうだよ。陽哉の寝顔も良いけどこれ以上寝てたら遅刻するって」
「ふふっ」と笑って俺の顔に手を伸ばす。
今度は頬を触られる。不思議な感触に意識が覚醒する。
窓から外を見ると街の景色が目まぐるしく変わっていく。
「っ…はっ、起きねば」
「やっと目が覚めた」
「今どの辺?」
「次で着くよ」
もう直ぐそこらしい。
バスに乗った時は彼女の方が俺に寄りかかってきたのに気づいたら俺も寝てしまったらしい。
俺は起きた。
バスの中は乗客達で混み合っていた。
周りを見ると同じ制服の人が沢山いた。
どうやら彼らと俺達の行き先は同じようだ。
程なくして目的地にたどり着いた。
バスを降りると立派な校門が待ち構えていた。
そのまま2人でクラス分けが書いてある掲示板まで行く。
彼女は俺の腕を離さなかった。
掲示板を見る。
「あ、あったよ。私も陽哉もDクラス」
彼女が指を差した。
掲示板を見て俺は内心驚く。彼女はともかく俺もDクラス……あの事件が関係してる?
掲示板の上の方を見る。
そこには彼の名前が無かった。
俺がDクラスに配属された恐らくの理由…
…あの事件で俺は二度と俺やその時近くにいた彼女が拉致されないよう、秘密裏に手を回し、あの組織の事を明るみした。
結果彼の父親は逮捕され、彼は別の家に預けられる事になったと報道で聞いた。
恐らく普通の高校に行ったのだろうか。
教室に入る。
生徒が雑談している。自分のネームプレートのある座席を探す。
窓際の一番後ろの席だった。
そこは…彼の座るはずの座席だった。
隣に1人の生徒が座る。
長い黒髪が靡いた。
思わず魅入ってしまう。
「ちょっと」
「あっ、すまなかった。じっと見てしまって、なんでも無いんだ…」
「そう…」
そう言って女子生徒は前を向く。
冷たい隣人。美少女だが歯に衣着せぬ物言いなため、一学期は友達が出来なかった女子生徒…
堀北鈴音…
次々に生徒が教室に入って来る。
彼女の方を見ると雑談には混じらずに俺の方を向いていた。堀北が顔をあげた。彼女と視線が合う。
時間が経ち、ホームルームが始まった。
教室に入ってきた茶柱先生がSシステムの説明をしている中俺は後ろを見た。
監視カメラが教室の後方に設置されており、生徒の行動を見ている。
視線を前に戻す。
一方的に知っている人達の後ろ姿が目に映る。
櫛田桔梗…平田洋介…軽井沢恵…高円寺六助…松下千秋…
程なくして説明が終わり、「質問は無いか」と先生が周りを見渡す。
先生が去っていった。
平田の提案で自己紹介が始まった。
隣人の堀北は須藤が自己紹介をボイコットすると同時に出ていった数人の後を追った。
教室の中央辺りの席、彼女の方を見ると俺が出ていかないのを見て取り敢えず残った様子。
俺の番になった。
「水野月陽哉です。3年間よろしくお願いします」
簡潔な自己紹介にしたが、女子が何人か俺の方を見て目を逸らしてを繰り返している。「綺麗…」とか「美形…」とか聞こえてくる。
池と山内辺りから「ちっ…」と舌打ちがあった。
早くも嫌われてしまったようだ。
放課後になった。既に平田の周りに女子達が集まっていた。俺は平田からのカラオケの誘いを断り帰路に着く。
隣には既に彼女がいる。平田はそれを見て他のカラオケメンバーを連れて行った。
帰り支度を始めた頃にはもう俺の席に来ていた。
「早く帰ろう」
「寮に帰る前にスーパーにでも寄ってかないか」
「良いよ」
帰り際に食料が売ってある店に寄る。無料コーナーに寄り、2人分の食料を買い揃える。入学前から自炊していた俺にとってはこれくらい容易いものだ。
寮に戻った。
彼女はベッドに座る。俺を隣に引っ張り寄り添うようにしてそのグラマラスな身体を押し付けた。
「陽哉…」
俺の名前を呼んで離れない彼女。
彼女の背中に腕を回す。
肩に頭を乗せてくる。
それを見て俺はやってしまったんだなと思う。
俺の肩に頭を乗せる娘。
長谷部波瑠加
俺は彼女の本来の過去を殆ど知らない。
知っているのは身体の発育が早く同性異性問わず奇異の視線を向けられ人と関わらなくなった事、異性に求める理想像が非常に高い事くらいである。
それ故周りからはお高くとまった印象となり次第と周りが避けるようになった。しかし彼女にとってはそれはそれで良くて人と関わらない1人の日々を過ごして行った。
良い過去ではないが決して暗いとは言い切れない過去である。
それが、転生してしまった俺によって悪い方に崩れてしまった。
良い身体と知性、それに容姿を持って転生した俺は中学生2年生で転校した。その配属先のクラスで彼女の隣になった。
彼女は俺に興味を示してくれたみたいでこちらから話し掛けると答えてくれた。そのまま自然と2人で話すようになり、俺は原作キャラに出会った感動もあって他の異性そっちのけで彼女と夢中になって会話していた。
気が付けば俺が積極的に会話する相手は遊びに誘ってくる数人の男子と彼女だけになっていた。
俺はこの時知らなかった。この身体の能力と容姿は色んな人を惹きつける事を。勉強も運動も卒なくこなす学生。周りからはさぞ素晴らしいものに見えただろう。
そしてその学生がある特定の異性とばかり会話している。
時にそれは嫉妬や恨みを生む…
そして…次第と暗くなっていく彼女の様子に気づいた。
そしてあの事件が起きた。
その日は偶々彼女と同時に登校した。
問題は彼女が下駄箱を開けた時に起きた。
下駄箱を開けた彼女が固まった。俺が近寄ると彼女は慌てて閉めた。そのままスリッパを借りに行った。
俺はその場に残りこっそりと彼女の下駄箱を開けた。
「…!!!」
そこで見た光景に俺は驚愕した。彼女の下駄箱が泥だらけになっており、上履きが使い物にならなくなっていたのだ。
俺はそれを見て学校に持ってきてはいけないあるもので証拠を取った。
教室に入った彼女は俺に話し掛けず俯いていた。
俺は彼女に1枚の紙を送った。
彼女はそれさえも拒んだが「読んでくれ」と頼み込むと取り敢えず受け取ってくれた。
受け取ったそれを見て彼女は何も言わなかった。
その日の放課後、俺は彼女の下駄箱を掃除するのを手伝った。彼女は黙って淡々と掃除をしていた。
その後、部活をしてない俺は彼女を半ば強引に帰りに誘い、俺の家に誘い入れた。そして彼女を部屋に招き入れた。
彼女は俺の部屋を見て驚いていた。俺は彼女にとある物を手渡して話をした。彼女は驚きながらもそれを受け取った。そして俺の話を承諾してくれた。
翌日、体育の授業の後、彼女は保健室にいた。授業は見学していたが、ボールを当てられて怪我をしたらしい。
保健室で手当てをされている彼女からあるものを回収し、また新しい物を渡した。
その日も、その次の日も彼女は女子生徒に嫌がらせをされた。今までは陰口だったが、今度は陰で直接罵倒発言を言われるようになったようだ。
それでも彼女から離れない俺に周りは業を煮やした。
そして遂に彼女を裏に呼び出して暴力を振るおうとし、「学校に来るな」と言うようになった。そして、上から泥水をかけようとした。
見張っていた俺が割って入り、泥水は避けた。
「なんでそいつを庇うの、お高くとまってるそいつの何処が良いの?」
「誰と関わるかなんて俺の自由だ。そしてお前達とは二度と関わらない」
その後、彼女のヘアクリップやヘアゴムに隠して搭載していたお手製の超小型カメラの映像や音声を学校に提出した。
彼女を攻撃していた女子達は処分され、退学、転校になった。
再び日常が戻って来た。
「陽哉、ねえ、陽哉って何作ってるの」
その日以降彼女は俺の家に入り浸るようになった。
突然だが、転生した俺の両親は最新型AIの発明家だった。
その為俺も幼少期から様々な知識を身に着けており、幾つもの新しいAIや機械を設計、作成した事がある。
俺は様々な企業からのスカウトを受けていた。
貯金も既日に数億単位持っており、将来独立出来るだけの知識を既に持っていた。
俺は家に来る彼女に作ったAIの一部を譲り、2人で日々を楽しく過ごしていた。
そんな平和な日を過ごしていた中学3年生のある日だった。
「水野月陽哉だな?」
スーツを来た。サングラスの男達が俺を囲んだ。
「水野月って誰ですか?」
「白を切っても無駄だ我々と一緒に来てもらう」
男達は俺の意見を聞かないまま俺をハイエースに連れ込み拉致しようとした。
仕方無いので抵抗した。
彼らを持ち前の身体能力で地面に叩き伏せ、その場を後にした。
その日はそれで良かった。
また別の日だった。
いつも通り、彼女を朝迎えに行った。
彼女の家に先日見たハイエースが来ていた。
無理やり連れて行かれそうになっていた。
俺は割って入り、男達を再び倒した。そして警察に通報した。警察は彼らを拘束して連れて行った。
翌日、この事でニュースが流れた。
俺は彼女を呼んでこっそりと位置情報が掴めるあるものを渡した。一応彼女にも理由を話しておくと頷いた。
また別の日だった。
俺の玄関に一通の手紙がおいてあった。
《長谷部波瑠加は我々が連れて行った。返して欲しければ昼に指定の場所に来い》
学校をそっちのけで、位置情報を元に追跡する。親に警察を呼んで貰った。
そしてとある施設についた。
セキュリティを得意技でハッキングし解除、そのまま中に入る。
施設の警備員を倒しながら先に進む。
とある部屋が目に入った。
真っ白い施設だった。
そこには白い服を来た子供が沢山いた。
まだ7歳かそこらだ。後天的な何らかの障害を持っているのか時々発狂する子もいる。
俺は取り敢えず見殺しにして奥に進んだ。
奥に進むととある部屋が目に入った。
その部屋も真っ白で中には俺と同じくらいの少年が1人いた。その少年と目が合った。
機械的な視線が俺を捉えた。
奥に進んだ。とある部屋の前についた。
見張りの2人を倒し、セキュリティコードを解除。
ドアを開ける。
「陽哉っ…」
部屋にいた彼女が俺に抱きついて来た。
俺はそのまま彼女を回収し、施設を抜け出す。
途中何人かの大人に囲まれたが反撃して全員を吹き飛ばした。
外には大量の警察がいた。
両親が人脈を駆使して大軍を呼んでくれたようだ。
警察が突撃した。施設の大人は殆ど俺が倒してしまったので、ほぼ抵抗は無かった。
彼女が取った証拠と証言。
更には俺が内部の情報をネットに拡散した事でその施設は壊滅した。
数日後、ニュースが流れた。
ホワイトルームと言うその施設の情報が拡散した。それは多くの反響を生んだ。
施設にいた子供達は解放された。
最高責任者である事が発覚した綾小路篤臣は逮捕された。
その日以降俺のところには人が来なくなった。
「ねえ、高校何処に行くの?」
彼女の受験勉強を見ていると彼女からそんな質問をされた。俺は内心迷っていたが、やはり実際に見たい物があって素直に「東京都高度育成学校」と言うと「私も行く」と言って受験勉強に力を注いだ。
そして2人でこの高校を受験し、合格した。
俺達が配属されたのはDクラス。
原作主人公こそ居なかったが、きっと色んな物が見れる事だろう。
俺は隣で眠る彼女をそっとベッドに寝かせて、夕食の準備を始めた。
雑な文章で申し訳ありません。