闇深い世界で…悪化させた日々 作:不良品の主人公
登場人物達を魅力的に描けない…
8月になった。東京都高度育成学校の1年生である俺達は今、豪華客船にいる。船の中の施設は非常に充実していて、どの生徒も満足気だった。
2週間に渡る豪華客船の旅が始まった。
ある者は船のデッキから海を眺めたり、ある者は施設内の映画館やレストランを楽しんだりと色々だった。
「……」
そんな中、俺はプールサイドに立っていた。今、人を待っているのだ。男子の着替えと比べて女子の着替えは時間がかかる。加えて彼女はプールに入るのは何年ぶりだろうか。
多分今頃ラッシュガードを着てるんだろうと思いながら俺はプールを見渡す。
運動系の生徒達が競泳やバレーボールを楽しんでいた。
BクラスやCクラスの女子が水中バレーを楽しんでいる。
「待った?」
後ろから両肩に手が置かれる。
振り返ろうとしたが、俺の動作に合わせて右へ左へと後ろを動き回り、中々姿を見せてくれない。
仕方無いな。こうなったら。
「それっ」
「きゃあっ」
くるりと一気に身体を回転させる。そして彼女を捕まえた。
青い長髪が揺れる。
「見〜つけ…た…」
「もう、ズルいよ。回転するなんて」
困ったように笑う長谷部が視界に入るや否や俺の視線は固まった。
信じられないくらい大胆な格好をしている。
彼女は白のタイサイドビキニを来ていた。紐の色は黒。
大事な部分を水着で隠してる以外は彼女の美しい素肌が晒されていた。美し過ぎるスタイルだった。
声を上げることも出来ないまま、俺がその全身から目を離せないでいると彼女は顔を赤らめた。
「ちょっと…どうしたの、ねえ…超恥ずかしいんだけど…」
「あ、ああ…すまない。その、全てが…凄く…綺麗…」
言葉が出てこなかった。目に映るその姿に俺の全神経が集中していた。
「んんっ、褒め方がベタだね〜、でもそれで良いと思うよ」
俺の言葉を聞いた長谷部は満足気に微笑んだ。今日の彼女はいちいち仕草が大人びて見える。
そのまま俺の腕を引っ張り2人でプールに入る。
はっと我に返った俺が周りを見渡すと、プールにいる男子が長谷部の方をガン見していた。女子達もチラチラと此方を見ている。男女関係なく彼女の水着姿の美しさは他を魅了していた。
俺は彼女を男子の視線からさり気なく隠した。と言っても四方八方から見られてるので隠し切れないが。
「ねえ、水中バレー用のボール借りて来たの。これで遊ばない?」
「パス回しか?良いぞ」
右手で何処かから借りたらしいボールを俺に見せる。
当然承諾した俺を見てそのまま少し離れてボールを投げた。
そのボールを左手で跳ね返す。ボールは高く弧を描いて飛んでいった。
「ほらよっと」
長谷部の方に跳ね返ったボールを彼女は両手で打ち返した。
その際にジャンプしたせいで、白いビキニで覆われた大きな2つのものが揺れる。凄く柔らかそうだった。
飛んで来たボールを両手で回転をつけるようにして飛ばす。
「えいっ」
長谷部はレシーブの要領で打ち上げた。またも大きく揺れる。完全に犯罪者になった気分だ。
ボールが飛んでくるがそのせいで反応が鈍った。
正面と右側から2つのボールが俺の方に飛んで来た。
咄嗟に両方をキャッチする。
左手で持っている透明な白いボールは俺達のだが、右側から飛んできた青いボールは誰のだろう。
「ごめんね〜、あっ、水野月君?」
ソプラノの声に右側を見ると、そこには水着姿の櫛田がいた。彼女は赤い水着を来ていた。此方も大胆な格好だった。
後ろを見ると10人弱の男女がいる。DクラスとBクラスの生徒達だった。その中にはBクラスのリーダーである一之瀬とその取り巻き、そして神崎もいる。
「…よう、これ櫛田達のか?」
「うん、私、受け取れなくて弾いちゃったんだ。あっ、長谷部さんも一緒なんだ」
右手のボールを彼女の方に投げる。櫛田はそれを受け取った。
彼女と遊んでいたらしいBクラス?の女子達が俺の上半身を見ている。「あの人凄い筋肉だね」とか「見てるだけでヤバい」とかひそひそと色んな声が聞こえてきた気がした。
「なあ、水野月だっけ?2人じゃつまらないだろ、一緒にバレーやろうぜ」
「二人とも、一緒にどうかな?私達は歓迎するよ?」
Bクラスの男子の1人…柴田が気になるのか、チラチラと長谷部の方を見ながら手を振っている。一之瀬も追従した。
どうする?と言う意味を込めて長谷部の方を見ると表情には出てないが、何処か少し不満そうにしていた。チラチラとBクラスの方を見ている。
その視線の先は…一之瀬だった。彼女も借りてきたのか大胆な水着を来ている。
成る程。これは駄目っぽい。
まあ俺もDクラスは兎も角、Bクラスに混じる気無かったし、無しで良いか。
「悪いが、今日は無しだ。俺達の事は気にしないで続けてくれ」
「えっ、そうなのか、別に良いけど…」
柴田達は再び競技を再開した。俺はそれを見届けてから長谷部を連れて少し離れた。
1時間毎の水質安全確認の為にプールサイドに上がった。
俺達は監視員の清掃を見ながらプールサイドのベンチで待っていた。
「ねえ」
「うん?」
俺は昨日起きたとある事が原因で思考の海に入っていると、横から長谷部が肩を叩いた。彼女は俺の顔を覗き込んでいた。
「昨日帰った時からずっとボーっとしてるよ。何かあったの?」
「いや、大した事じゃ無いんだが」
俺は再びプールの方に目を向ける。
肩を揺らされた。
「絶対に何かあるでしょ。誰に何を言われたの?」
思わず彼女の顔を見る。
まだ何も話して無いのに彼女には内心を見透かされていた。
「言ってみ。陽哉って頭は良いけど、その割に判断力が無いから」
俺の右手を両手で握りながらじっと俺を見詰める。
彼女に白を切るのは意味が無い。寧ろより心配かけてしまうだろう。
俺は話す事にした。
「実は…」
俺は昨日の放課後の事を話し始めた。
ロボット研究部の先生に呼ばれた帰り、再び放送で俺は生徒指導室に呼び出された。
「来たか水野月」
「夏休み前に何の用ですか?」
「ふふっ、そう身構えるな。お前に助言してやろうと思ってな」
茶柱先生は不適な笑みを浮かべながら俺を正面に座らせた。
「先日、とある男がこの学校に接触してきた。お前も知ってるだろう例の施設の関係者だった」
「……」
「その男は私にこう言った。水野月陽哉を退学にさせろと」
出た。恒例の茶柱先生の脅しだった。綾小路がいない代わりに俺に脅しをかけているのだろう。
恐らく、無人島試験、及び船上試験ででDクラスを勝たせろと言うつもりだ。俺の退学をちらつかせて。だが綾小路と俺には明確に違う部分がある。
「…退学になったところで、俺には何も問題無いですよ」
「ふっ、お前はそうだろうな。だがお前のパートナーは別だろう」
「一緒に退学すれば何の問題もありません」
本当にそうだった。最初は傍観者のふりをしてこの学校を楽しむつもりでいたが、原作の綾小路と別の動きをした結果、次々に予想外の災難に見舞われている。少なくともDクラスにいたいとは思えなくなっていた。
「ふっ、それがお前の考えか。だが甘いと言ってる」
茶柱先生は怪しく笑いながら俺を見た。
「担任である私がお前の退学を受理するとしよう。しかしお前の相方である長谷部の退学の方を受理せずにそのままこの学園に残す事は可能だ。そうすれば彼女はどうなるか、頭の良いお前なら分かるだろう?」
ニヤリと笑う。この人、本当に教師だろうか。とんでも無いことを言ってる。
「恐らくクラスメイトからは虐められ、私がそれを黙認すれば彼女の苦痛はこの学校にいる間ずっと続くだろう。退学したお前は彼女を見る事も出来ない。それでも退学するつもりか?」
「…茶柱先生、貴方それでも教師ですか?」
「ふっ、そうだ。お前の意見等、私は聞いて無いのだ」
茶柱先生は俺を嘲笑うように見ていた。
本当に最低の教師だな。
「だが、助け舟を与えてやらんでも無い」
「その方法は?」
俺が屈したと思ったのか再びニヤリと笑う。…今に見てろ。
「明日以降お前達にはバカンスの旅がある。そこではクラスポイントをあげる試験がある。そこでDクラスを勝たせろ。そうすればあの男から私がお前達を護ってやらんでも無い」
完全に原作の綾小路ポジだった。恐らく例の施設の人間が来たと言うのは真っ赤な嘘だろう。
そもそも本当に施設の人間が来たのなら茶柱先生如きで彼らの手から俺達を護れるはずも無かった。
「DクラスをAクラスに上げろ。それが今のお前に出来ることだ」
「俺にそんな力はありません」
「ほう、ならばもし結果が振るわなければ、分かってるな?約束通りお前のプライベートポイントは全て堀北に管理して貰う」
「それは出来ない相談ですね。分かりました、必ず勝たせて見せます」
茶柱先生は脅しが効いてると思ったのか俺を解放した。俺はボイスレコーダーのデータを保存しながら考えるのだった。この無人島試験をどうするのかを。
「そっか、そんな事があったんだ」
長谷部にだけ聞こえる声で話した後、彼女は天井を見上げた。
「なんて言うか、私が言えた事じゃ無いけど。Dクラスは担任もDクラスだね」
「あれは特別だろ」
「ふふっ、そうだね。はあ〜」
彼女は大きく脚を伸ばした。
そして元の姿勢に戻ると俺に質問した。
「陽哉はどうする気?」
「ん?」
「試験の事。こんなDクラスを勝たせる為に本気でやるの?」
「出来ない事は無いと思うが、どうしようか迷ってる」
Dクラスを上位にするかそれとも最下位にするかは原作を知ってる俺にかかってると思う。もし結果が悪かった時、茶柱先生がどう脅して来るかにもよるが。
「ふ〜ん、でももうそんな必要無いと思うよ」
「そうか?」
「うん、だってもう移籍できるんでしょ?なら思いっきり、うちのクラスを負かせて良いと思うよ。無理にクラスの味方を演じる必要なんて無いって」
彼女は座ったまま俺の眼を見ながらそう言った。
もう既にプールの検査は終わり、生徒は再びプールに入り始めていた。プールサイドにいるのは俺達2人だけだ。
彼女の言葉を理解する。言われて見ればそうかもしれない。だけどDクラスには…
「確かに陽哉はクラスに友達みたいな人多いと思うよ。でもね、その人達だって今のDクラスなんか好きじゃないと思う。心の何処かでは負けても仕方無いと思ってる。だから同情する必要なんて無いよ」
須藤や松下、佐倉の事だった。彼らはDクラスの中ではまともな部類の人間だ。正直彼らを置いて行くのは気が引けた。思った以上に俺は情が掛かりやすいようだ。
「それに…」
「なんだ?」
「なんなら友達を護る為に私を置いて言っても文句は言わないよ。私のポイントじゃないもん」
「そんな事出来ない」
笑顔でとんでも無いことを言い出した。護れるわけ無いだろ。そう言った方向の長谷部の実力なんて櫛田はおろか、篠原達にも遠く及ばない。
「ふふっ、嬉しい。そう言うと思った。半分冗談だよ」
ということは半分は本気か?俺に長谷部を置いていけなんて無理な話だ。
「でも、陽哉がそんなに気になるんだったら…」
彼女は俺に耳打ちした。俺はそれを聞いて少し決意が固まった気がした。
長谷部とそれぞれ更衣室で着替えた後、船のデッキに移動した。後1時間以内で目的地に着くと思う。
隣で美しく靡く青髪を視界に入れながら海を見ていた。
「よう、水野月」
デッキから外の景色を見ていると後ろから声が掛かった。
振り返るとそこには龍園が取り巻きを連れて来ていた。
「龍園か、何か用か?」
「くくくっ…用がなきゃお前に接触しちゃいけねえ理由があるのか?」
龍園は俺を見た後、隣の長谷部をチラリと見た。
「相変わらずその女に熱いな」
「まあな、この場所だけは誰にも渡さないと決めているからな」
「くくくっ…そうかよ。変わらねえな。なら良い。おいお前ら、邪魔だから行くぞ」
龍園は取り巻きを連れて離れて行った。空気を読んでくれたのだろうか。多分、接触して来たのは俺の移籍の意思が変わって無いかを見るためだろう。
「う〜ん、なんて言うか、私あの人どうなんだか分からない」
「それで良いと思う。あまり深く考えるな」
「なあにそれ」
長谷部が龍園達を見て難しい顔をする。確かにいい人には見えないな。あれで、色んな役割をこなしているのだから凄いと思う。
『生徒の皆様にお知らせします。お時間がありましたら、是非デッキにお集まりください。間もなく島が見えて参ります。暫くの間、非常に意義のある景色をご覧頂けるでしょう』
突然そんな奇妙なアナウンスが船で流される。デッキにいる生徒の大半はそれでも楽しそうにはしゃいでいた。船の中にいた生徒も次々にデッキに顔を出し始める。
やがて小さな島が見え始めた。
船はその島に近づくと異様な速度でその島の周りを航行する。
島を観察していると注視すれば確かに色んなものが見えた。
『これより、当学校が所有する孤島に上陸いたします。生徒達は30分後、全員ジャージに着替え、所定の鞄と荷物をしっかりと確認した後、携帯を忘れずに持ちデッキに集合してください。それ以外の私物は全て部屋に置いてくるようお願いします。また…』
アナウンスが流れたので俺達も部屋に戻り準備をする。その際に携帯のロックが厳重になっているかを再確認した。
同室の須藤と三宅が着替えてるのを横目に、俺は鞄の中を整理する。
さあ、無人島試験の始まりだ。
キャラクターの魅力が再現出来ない。
難し過ぎる。