闇深い世界で…悪化させた日々   作:不良品の主人公

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今回無人島試験のルールについて原作をちゃんと見てないけど独自解釈入ります。






追放・隷属

 

 

 

無人島2日目、午前6時 島の北東にある川の中流スポット

 

 

 

 

「おいDクラス、起きろ!!」

 

 

荒々しい声が川のテントに響いた。その声にDクラスの皆も目を覚ます。

 

 

「っ…何だよ」

 

 

叩き起こされ、苛立った様子でテントから出る。

 

 

俺も皆と同じく今起こされたふりをしてテントの外に出る。女子達も起きたようだ。

 

テントの外に出ると、そこにはDクラスではない男子生徒が8人程立っていた。長髪の男子生徒がスポット装置の近くに立ち、その周りには彼の手下と思われる生徒達。

 

そして1人の男性教員。

 

龍園とその取り巻き、そして坂上先生がいた。彼らはDクラスを睨んでいる。坂上先生は口元だけ薄っすらと笑っているが。

 

皆見知らぬ生徒の登場とその態度に困惑と苛立ちを隠せない。加えて他クラスの教員がいると言う事態に只事では無いと言う焦りが見える。

 

 

「っ…誰だてめえ、ここはDクラスのスポットだぞ!!」

 

「くくくっ…そう思ってるならめでたい奴らだなあ、これを見ろ」

 

「っ…何だってんだ」

 

 

須藤が真っ先に声をあげるが、龍園はスポット装置を指差す。Dクラスの面々はスポット装置に近づいた。

 

 

「えっ…」

 

「…何でだよ…」

 

 

そして驚いた。そこにはCクラスに占有されたスポット装置があった。画面にはCクラスの文字と6時間前に占有された証拠があった。

 

突然のCクラスによるスポットの奪取に頭の整理が追いつかないようだ。

 

 

「俺達は6時間前からこのスポットを占有していた。だがお前等は今に至るまでずっとここを占領し続けた。この意味分かるな?」

 

「…っ…」

 

 

女子達の方を見ると堀北の顔が青褪めていた。リーダーであったにも関わらず寝込んでしまい、他クラスの占有を許してしまった。今の彼女には後悔とクラスに対する負い目が渦巻いているだろう。

ルールを覚えきれてない生徒達もヤバいと直感で気付き始める。

 

 

「他クラスのスポットの無断占領だな。それもクラス全員で長時間の使用。お陰で俺達はここにテントを展開出来なかった。スポットの誤使用は確か-50ポイントだが、この人数で6時間も占領していたとなるとどうなるんだ?これは明確な妨害行為だろう?」

 

「そうですね。Dクラス全員によるスポットの誤使用、及びCクラスのスポット使用権に対する妨害行為としてDクラスには大きなペナルティが課されます」

 

「う、嘘だろ…」

 

 

坂上先生の言葉にDクラスは青ざめる。ルールでは誤使用は-50ポイントだったが恐らくそれは1人、あるいは少数で少し使用した場合だろう。

 

加えてテントを4つも展開している。Dクラスがクラス全員で寝床として占領していた場合は…

 

「他クラスが占有したスポットを許可無く長時間に渡りクラス全員で占領、これでテメエ等はペナルティにより0ポイントだな」

 

 

スポット装置を指差した龍園がテントから俺達Dクラスの面々に言い放った。

 

Dクラスの面々は頭が追いついてない様子で龍園達と坂上先生、スポット装置を見る。

 

そこには6時間以上前にCクラスが占有した証拠があった。

 

 

「問題行動として処理して貰う。坂上だけじゃ不公平だから1年の教師全員に裁いて貰う。お前等の担任も呼んでやるからな。俺達のスポットを勝手に使った挙句、6時間も占拠していたって報告する。お前等、ここ見張ってろ」

 

「待って」

 

 

石崎達に指示して他の教師を呼びに行こうとする龍園を堀北が止める。

 

 

 

 

 

 

 

時は遡り3時間前

 

無人島試験2日目、午前3時に起きた俺は龍園との約束を果たすべく、テントを出た。昨日受け取ったものを持参し、川のスポット装置を確認する。そこにはDクラスのものではないクラスが占有した証拠があった。

 

そのまま木に登り、枝から枝へと飛び移る。

 

夜目の利くこの身体を有り難く思いながら、木々を次々に飛び移り、移動する。懐に持ったそれを広げる。そこにはまだ2箇所しか目当ての物が記載されてない。木々を飛び移る途中、幾つも見つけたある物を記載し、次々に移動していく。上から見る景色を記載するのは地上を歩くよりもずっと正確だった。

 

そのまま島全体を一周する。トウモロコシ畑やスイカ畑、イチジク、クロマメの木々等食料のあるスポットを見つけた。次々に記載していく。島の反対側にも川は流れていた。但しその上流は川幅が狭い上に周りが大きな岩だらけなので泳ぐのは危険そうだ。危険な場所である為かスポットにもなってない。

 

Aクラスが占有していると思われる洞窟、Bクラスが占有してるらしい井戸の周りも目視確認した。井戸の周りの木々にハンモックを引っ掛けて寝ている。虫刺されに耐えなければならないが、テントを2つ以上張るスペースが無いので仕方無いだろう。想像しただけで痒みで眠れなさそうだ。

 

4時になった。日が出始める。島の東側から少しずつ明るくなってくる。西側はまだ暗いが。

 

島の中で一番標高が高い場所へと移動する。

塔のような高台のあるスポットだった。朝日が登る。そこからは島全体が見えた。昨日の夜までDクラスのスポットだった川も木々の間から少しだが見える。

 

眠っているであろう彼らを想像すると少し不憫に思う。既に彼らは詰んでいる。

 

川の上流を目指して木々に飛び移る。

 

目的地に着くとお目当ての人物が待っていた。俺は完成したそれを取り出し、彼に渡す。

 

 

「随分と埋まったじゃねえか」

 

「それをどう使うかは龍園次第だ。それとだが…」

 

「くくくっ…たった1日でそこまで嗅ぎ回ってるとはな。てめえのクラスにリーダーさえいれば、上のクラスとも十分戦えたんだが…惜しいところだ」

 

 

龍園は笑いながら完成した島の地図を受け取る。そこには食料がある場所は勿論、合計20カ所以上の島のスポット装置の位置も記載されていた。

 

龍園は自クラスのテントへと行くと何人か起こし始めた。

 

俺はDクラスのいるスポットへと戻る。時計は4時半を指していた。そのままテントに入る。まだ、皆眠っていた。

 

バレずに済んだか?

 

そう思った俺はテントの中で眠っているふりをした。

 

龍園、後は任せた。Cクラスの暴君の実力、見せて貰うぞ。

 

 

 

 

 

 

「ほう、鈴音で合ってるか?お前が前に出て来たって事は、お前がDクラスのリーダーか」

 

「何処の誰だか知らないけど、気安く名前で呼ばないで」

 

「龍園翔だ、覚えておけ。にしてもDクラスは女がリーダーやってんのか。それで俺に何か用か?」

 

「私が言いたいのはスポットの事よ。装置をみる限り貴方達は6時間も前からここを占有したみたいだけど?」

 

「それがどうかしたか」

 

「6時間も前にここを占有し、尚且つ利用するつもりなら私達Dクラスに声をかけて追い払えば済んだ話よ。なのに貴方達はそれをしなかった。故にこれはDクラスの知らないところで行われた行為よ。誤使用は認めるけど、妨害行為にはならないわ」

 

「茶番だな。俺達はスポット占有した後貴様らに声をかけたがお前等が全員でテントの中に籠もって無視しただけだ」

 

「声掛けと言うものは相手に伝わるように話をした上で成立するものよ。夜中誰も貴方達に気付いていない以上貴方達がした事は只の一人芝居よ」

 

「あくまで白を切るか。ならば浜辺にいる教師全員に聞いてみるか?お前等の担任も交えた上での話し合いなら文句ねえよな?」

 

 

それを聞いたDクラスは不安気な表情をする。彼らにとって茶柱先生が自分達に味方をし、弁護する光景が思い浮かばないからだ。きっと茶柱先生も龍園と同様、Dクラスにとって不利な方向に話を持っていくだろうと誰もが思う。

 

 

「…スポットの占有権と独占行為は別のものよ。Dクラス全員でスポット装置を確認する前までは妨害行為とは認めないわ」

 

「くくくっ…往生際の悪い女だ。それなら…さっさと出ていけDクラス全員でな。テントや仮設トイレも邪魔だ。後10分以内にCクラスのスポットから出ていくんだな、もっともこの周辺のスポットは全部俺達が占拠した、真っ直ぐ浜辺に行くんだな」

 

「それは…」

 

 

堀北は言葉に詰まった。

周辺のスポットの全占拠。

それが事実なら、Dクラスはこの森の中に新たな拠点を築くことすら許されない。すべての物資を抱え、体力の限界を迎えた状態で、炎天下の浜辺まで退退却を余儀なくされる。

 

それは、この無人島試験におけるDクラスの「完全な敗北」の宣告に等しかった。

 

 

「龍園君は優しいですね、さっ、Dクラスの皆さんはどうしますか?後10分以内に出なかった場合、試験のルールに乗っ取って0ポイントとなります」

 

 

坂上先生がそう言った。 

教師という絶対的な審判が龍園の側に立っている。学校側もまた、この過酷な現実を突きつけている。 

 

朝の光が差し込む川辺で、堀北の視界は激しく揺れていた。クラスメイトたちの悲鳴のような視線が、一斉にリーダーである彼女へと集まる。 

 

持ち点はすでに瀕死。拠点は喪失。体調は最悪。 

 

チェックメイトの盤面を前に、堀北鈴音はただ、己の無力さと、龍園翔という男の底知れない悪意に、押し潰されそうになっていた。

 

 

 

 

 

 

 

トン、と。少し遠慮がちに、しかし確かな縋るような強さで、俺の背中が叩かれた。

 

 

「ねえ、水野月君……どうにかならないかな?」 

 

 

振り返ると、そこにいたのは松下だった。 

 

彼女は、俺が配った過去問の意図やSシステムへの理解度から、なぜか俺を過大評価して「真のリーダー」にしたがっている。彼女の後ろへと視線を移すと、そこにはいつの間にか、俺を頼るように多くの生徒たちが集まっていた。 

 

陸上部の小野寺、三宅、森。そして、俺がただ友達に近い関係として、喧嘩沙汰を躱す手伝いをしてやっただけの須藤までもが、縋るような期待の視線を俺に送っている。

 

 

「どうするの? このままだと私達、スポットの誤使用で失格で、0ポイントだよ……」 

 

 

松下が声を潜め、震える声で懇願してくる。 

クラスメイトたちの期待が、じっとりと俺の肌に刺さる。 

 

ただ、クラスを立て直す気がない俺にそんな綺麗な目を向けられても、応えてあげられない申し訳なさで僅かに胸が苦しくなる。俺はもう、長谷部を連れて移籍することを龍園と契約してしまっているんだから。 

 

それでも、ここで何もせずに引き下がるのは、俺と彼女を安全に移籍させるための計画に支障が出る。俺は少し考えるふりをして、ゆっくりと歩を進めた。

 

 

「――分かった。少し待ってろ」 

 

 

俺がそう短く告げると、松下や須藤たちの顔にパッと安堵の光が広がった。そんな盲目的な信頼を背中に受けながら、俺はCクラスの独裁者の前へと進み出る。

 

目の前には、楽しげに堀北をいたぶっていた龍園翔が立っている。 

 

俺たちはすでに裏で繋がっているが、ここでは「互いに知らないふり」を通さなければならない。周囲に怪しまれないよう、俺は努めて冷徹なトーンでその名を呼んだ。

 

 

「龍園……」 

 

 

龍園の獰猛な視線が、堀北から俺へと移った。衆人環視の中、完璧な「敵対者」としての芝居が始まる。

 

 

「俺から提案がある」 

 

 

淡々と、交渉の席に着くように告げた。 

 

すると龍園は、俺の言葉を鼻で笑うように、顔の筋肉を歪めてせせら笑った。

 

 

「ああん? 雑魚が何言ってやがる」

 

 

いつもの狂犬のような罵倒。だけど、その鋭い瞳の奥で、龍園が「さあ、お前のハメ技を聞かせてもらおうか」と愉しげに合図を送ってきたのを、俺は見逃さなかった。俺がDクラスを綺麗に諦めさせるための、最後の交渉(芝居)の幕が上がる。

 

 

「俺をCクラスの兵隊として使え、そうすれば……Cクラスのこの試験での獲得ポイントを、300ポイント以上にしてみせる。代わりに、今回の川のスポットの誤使用による失格を帳消しにしろ」

 

「300だあ? それくらい、俺のクラスの脳筋どもがスポットを占有すればどうにでもなるんだよ」 

 

 

龍園は鼻で笑い、取り合わない姿勢を見せる。当然だ、これだけの衆人環視の中だ。誰もが納得するような、破格の条件でなければ交渉が成立した時に不自然極まりない。

 

 

「――なら、400でどうだ。俺のサバイバル知識を完全にCクラスのために使えば、400ポイント以上を確実にコミットしてやる」 

 

 

400クラスポイント。他クラスのリーダー看破やスポットの乱獲を完璧にこなさなければ絶対に届かない、領域外の数字。 

それを聞いた龍園は、狂ったように喉を鳴らして笑った。

 

 

「くくくっ……! 面白い。いいぜ、400だ。忘れるなよ、水野月。……それとついでに、てめえの女である長谷部も、俺達の兵隊に加える。お前たち2人で裏で何か作戦を立てられても面倒だからな。それで今回の誤使用はチャラにしてやる」 

 

 

龍園はニヤリと口元を歪め、俺の後ろで不安そうに立っている長谷部を指差した。彼女を巻き込むのは、俺たちが「Cクラスの奴隷」として身を売ったという、Dクラスへの完璧な見せしめだ。

 

 

「ただし、1時間以内に残りの奴らは俺たちのスポットから出ていけ。それが条件だ。……くくく、点呼の時くらいは、水野月も長谷部もDクラスのキャンプ地に帰してやるよ。ルール違反で点数を引かれたらつまらねえからな」

 

「そこまで徹底するなら、俺からも要求がある」 

 

 

俺は一歩も引かず、龍園の目を真っ直ぐに見据えた。

 

 

「試験が終わったら、龍園……お前は俺たちのクラス全員に、200万プライベートポイントを譲れ。池と山内が抜けた今のDクラスは、俺たちを除くと36人。一人当たり5万ポイントだ」

 

「…………」 

 

 

その瞬間、川辺に重苦しい沈黙が走った。 

龍園は品定めをするように俺を睨みつけ、やがて、その獰猛な口元を再び歪めた。

 

 

「……ふん。てめえの働き次第だ。いいだろう、飲んでやる」

 

 

交渉のふりを終えた龍園が、ポケットに手を突っ込みながらDクラスの集団の前へと戻っていく。俺もまた、悲壮な覚悟を決めたような顔を作って、彼の後ろを歩いた。

 

 

「くくくっ……おい、Dクラスの雑魚ども! 有り難く拝みやがれ」 

 

 

龍園は砂浜全体に響き渡る大声で、尊大に言い放った。

 

 

「そこにいる水野月が、テメェらのために頭を下げて面白い取引を持ちかけてきたぜ。俺達Cクラスの力で、お前たちのスポット誤使用による失格を帳消しにしてやる。その代わり、水野月と長谷部の二人を、俺達Cクラスで自由に使わせろ。もっとも、点呼の際にはこいつらは一度Dクラスに戻してやるよ。

更にてめえ等に有利な条件を追加してやる、俺達Cクラス全員の財布から一人当たり5万プライベートポイント、合計200万相当をてめえ等に譲ってやるよ。……ただし、1時間以内に残りの奴らは全員ここから出ていけ!」

 

「な、何だって……!?」 

 

 

須藤が驚愕の声を上げ、松下は「えっ」と言った表情で俺を見た。

 

 

「どういうこと……? 水野月君、私たちのために、自分の身を売ったの……?」 

 

 

周囲の生徒たちがざわめく。盲目な彼らにとって、失格という絶対的な絶望からクラスを救い、さらに試験後に1人5万ポイントもの大金が入る契約をもぎ取ってきた俺は、完全に「自己犠牲の英雄」かもしれない。

 

 

1時間の猶予を与えられたDクラスの連中は、高熱で倒れた堀北を抱え、機能停止した平田を引きずるようにして、すごすごと拠点を去り、炎天下の砂浜へと退却していく。 

 

松下は顔を青ざめさせながらも、去り際に俺の方を何度も振り返り、後悔と申し訳なさの入り混じった目を向けていた。

 

 

 

何人気付いているだろうか。 

 

 

 

この完璧な「等価交換の救済劇」の裏で、俺という手綱を失い、さらに周囲のまともなスポットをCクラスにすべて差し押さえられたDクラスが、この後の灼熱の砂浜で「リタイア続出」による自壊の運命を辿ることを。 

 

そして、どうせ後で俺と長谷部が移籍する予定のCクラスのポイントを400点以上に引き上げさせるという、俺自身の『合理的な未来の設計図』が、今まさに完成したという事実に。

 

 

 






スポットの誤使用について


今作では1人で1回誤使用した場合-50ポイントと判定してます。

よって38人全員で誤使用(テントを張って眠る)したDクラスはポイントを全部吐き出す事になると考察。

もしかしたら本来のルールは全員で誤使用しても一回は一回であり、今回のようなケースでも-50ポイントで済むかもしれません。
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