闇深い世界で…悪化させた日々   作:不良品の主人公

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Dクラスの結末

 

 

「くそっ……どうするんだよ、これ」 

 

遮るもののない白い砂浜。容赦なく照りつける太陽の下で、誰かが力なく吐き捨てた。 

川辺のキャンプ地から強制退去を命じられ、炎天下の浜辺へと追い落とされたDクラスの面々は、またたく間に干からびるような暑さに喘いでいた。

 

 

「水もないし、日陰もないよ……」

 

「川だったら、まだ魚を捕まえることだってできたのに……!」 

 

 

昼を迎え、砂浜の熱気は最高潮に達していく。ただじっと座っているだけでも、皮膚がじりじりと焼かれ、体力が削られていくのが分かった。水分補給をしようにも、支給されたわずかなペットボトルの水はすでにぬるくなっており、底を突きかけている。

 

そんな限界寸前の極限状態の中、篠原たちが突き刺すような視線を、砂の上に力なく座り込んでいる少女へと向けた。

 

 

「ていうかさ、あんたがスポットの占有時間を忘れたからこんな事になってるのよ! 何とかしてよ、堀北!」 

 

 

篠原の容赦のない怒号。それを皮切りに、周囲の生徒たちからも「そうだぞ」「リーダー面してたくせに」と、一斉に同意を募るような歪んだ同調の波が広がり始める。 

 

非難の矢面に立たされた堀北鈴音は、高熱に浮かされた顔をさらに青ざめさせ、激しい頭痛と目眩のせいで、言い返すことすらできずにただ息を切らしていた。 

 

その光景を少し離れた場所から見つめていた櫛田桔梗は、内心、半分は面白そうにその様子を観察していた。あのプライドの高い堀北が、自分の失策によってクラス全員から吊し上げられているのだ。これほど小気味のいい見世物はない。

 

――だが、ここは日陰が一切ない灼熱の地獄だ。いくら堀北の失脚が愉快でも、自分自身が暑さでやってられないという現実は変わらない。櫛田もまた、整った顔を不快そうに歪め、心底困り果てたように汗を拭った。

 

 

「と、とにかく、ここにいても始まらないだろ。次のスポットを探そうぜ」 

 

 

誰かが現状を打破しようと提案する。だが、その言葉は新たな火種を生むだけだった。

 

 

「探すって、どこをだよ?この周辺はCクラスが占有してるぜ?島の反対側まで歩くのか?」

 

「っていうか、水野月がいないのに、このテントやトイレをどうやって運ぶんだよ!」

 

「長谷部はともかく、水野月取られたのヤバいな…」

 

「あいつだったら1人で2つ以上運べるけどよ…」

 

「ちょっと男子! 文句言ってないでちゃんと運んでよ!」

 

「はあ!? もう朝からここまで運んできて、疲れちまったよ!」

 

 

三宅や須藤など、クラスの中でも力のある男子たちが、荒い息を吐きながら激高した。Dクラスの大半は力のない男子だった、 

 

水野月という圧倒的な効率の司令塔を失った今、残された4つの大型テントや仮設トイレを運ぶのは、文字通りの重労働だった。それを水野月以外の男子全員で、しかも炎天下の中で引きずってきたのだ。すでに全員の体力の限界は疾うに超えている。 男子の言い分に女子たちが噛みつき、それを男子が怒鳴り返す。統率を失ったクラスは、この瞬間、完全に男女間で割れ始めていた。 

 

そんな泥沼の言い争いの中、一人の生徒が、ぽつりと卑屈な呟きを漏らした。

 

 

「ねえ……。ていうか…私達、5万ポイント貰えるんだよね……?」

 

 

その言葉が、砂浜に冷たい静寂をもたらした。 

 

川辺で水野月が龍園と結んだ、自分の身と引き換えの『救済の契約』。試験が終われば、Dクラスの全員に一律5万プライベートポイントが支払われるという、あの条件だ。

 

 

「確かに…何もしなくても貰えるんだよね…」

 

「疲れちゃった…これ本当に1週間も乗り切れるの…?」

 

「川も取られちゃったし…水を購入してもすぐ温くなっちゃう…」

 

「って言うか本当にポイントなんか残せるの…?」

 

「仮設トイレやだ…綺麗なトイレ入りたい…」

 

 

試験を突破しなくても大金が手に入ると分かった瞬間、彼らの心の中にあった最後の防波堤が、完全に崩壊を始めていた。

 

 

「どうせ堀北さんが悪いんだし、私、もうリタイアしたい」

 

 

篠原が、投げやりな態度でそう言い放った。

 

 

「豪華客船の物ってポイント無くても利用出来るんだよね…」

 

「利用しないと損じゃない?」

 

「こんなとこにいても熱中症でリタイア確定じゃない…?」

 

「そう考えると勿体ないよね…こんな所にいるの…」

 

 

どうせスポットを取れずにポイントも殆ど残らず最終日まで持たないのなら、こんな地獄で泥水をすするより、今すぐ30点のペナルティを払ってでも快適な豪華客船に戻りたい。それが彼女たちの本音だった。

 

 

「おい、馬鹿な事を言うな!」 

 

 

すかさず幸村が立ち上がり、声を荒げて応戦する。

 

 

「水野月が折角繋いだんだぞ!!無駄にする気か!!」

 

「何よ!あんたもう引っ込んでてよ!!」 

 

 

篠原は幸村を激しく睨みつけ、その胸ぐらに掴みかからんばかりの勢いで怒鳴り散らした。

 

 

「あんた、口ばっかりで何の役にも立たない癖に、偉そうに威張らないでよ!」 

 

 

もう、クラスの体を成していなかった。 

 

 

「どうするの…これ…水野月君…」

 

 

松下はCクラスの拠点の方を思わず見てしまう。

機能停止した平田、熱で倒れる寸前の堀北。そして、彼らが救世主だと信じた水野月が残していった「5万ポイント」という名の甘い猛毒が、Dクラスという泥舟の底を、今まさに完璧に踏み抜こうとしていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

午後8時。漆黒の帳が下りた無人島の浜辺に、波の音だけが虚しく響いていた。 

 

昼間、俺が授けた作戦を元に、龍園たちが無人島の裏で様々な仕込みを行っていたが、その詳細はまた後だ。今の俺に課せられたルールは、長谷部を連れて、夜の点呼のために一度Dクラスの拠点へ戻ることだった。

 

夜の浜辺は昼間の地獄のような暑さが嘘のように冷えていたが、それ以上に、漂う空気が冷え切っていた。 

 

暗がりの中に佇む人影を見て、俺と長谷部は思わず足を止めた。明らかに、人数が少なすぎる。

 

 

「え……嘘、でしょ……? みんな、どこ行っちゃったの?」 

 

 

長谷部が震える声で周囲を見渡す。昼間あれほど揉めていたDクラスのテント周辺には、人っ子一人いなかった。静まり返った砂浜から、一人の女子生徒がおずおずと俺たちの前に歩み寄ってきた。

 

 

「あ……水野月君。波瑠加ちゃん……」 

 

 

佐倉愛里だった。彼女は怯えるように自分の身を抱きしめながら、消え入りそうな声で切り出した。

 

 

「あのね……みんな、暑いって……もう耐えられないって、船に戻っちゃったの……」

 

「マジかよ……」 

 

 

俺は思わず、乾いた声を漏らした。 

 

テントを開ける。視界に入る範囲にいるのは、佐倉の他に、須藤、三宅、松下、小野寺、櫛田、王美雨、幸村。そして、敷いたタオルの上で、ぐったりと意識を失いかけている堀北鈴音だけだった。機能停止していた平田の姿すら、もうそこにはない。

 

どう見ても、Dクラスのクラスポイントなんて残っていなかった。 

話を聞けば、状況は最悪の極みだった。砂浜に撤退させられたDクラス。「仮設トイレやテントを運べる人がいない事」と、俺の交渉による「一人5万ポイント」が確定したことで、まず初めに我慢できなくなった女子たちが「もう頑張る意味がない」と次々にリタイアしたらしい。 

 

それによって、始まったばかりの2日目にして、Dクラスのクラスポイントは瞬く間に『0』になった。そして、その悲惨な結果を突きつけられた男子たちが、「ポイントが0なら、ここにいても本当に意味ねえじゃん」と、諦めの連鎖を起こして次々に船へ戻っていったのだという。

 

 

「……ハハ、ひどい有り様ね」 

 

 

松下が、自嘲気味に笑いながら髪をかき上げた。

 

 

「私たちがどれだけ引き留めても、誰も聞きやしなかったわ。平田君すら、ゾンビみたいにふらふらと本部の方へ歩いていっちゃってさ。……水野月君がせっかく身を粉にして作ってくれたアドバンテージを、あいつら、一日も持たずにドブに捨てたのよ」 

 

 

松下の瞳には、クラスの自壊に対する深い失望と、困り果てたような色が濃く滲んでいた。三宅も地面を睨みつけながら、悔しそうに拳を握りしめている。

 

 

「すまねえ、水野月……っ! 俺が、俺が力ずくでもあいつらを止めりゃよかったんだ……!」 

 

 

須藤が拳を震わせながら、俺の前に実戦の土下座でもしそうな勢いで頭を下げた。

 

 

「お前が俺たちのために龍園に頭を下げて、奴隷になるような契約まで結んでくれたのに……俺、何もできなくて……!」

 

 

俺は、激しく自分を責める須藤や、絶望に沈むメンバーたちを見つめた。 

 

クラスポイントは完全にゼロ。泥舟どころか、すでに沈没した残骸だ。なのに、どうしてこいつらはここにいるんだ。

 

 

「……お前達、まさか俺を待ってたのか?」 

 

 

俺が問いかけると、三宅がふっと息を漏らし、静かに目を合わせた。

 

 

「ああ。ポイントは0だが……お前が俺たちのために身を売ってくれたのに、お前らが戻ってくる前に、勝手に船に戻るのは何か違う気がしてな。それは人として違うだろ、ってさ」

 

「そうよ、水野月君」 

 

 

小野寺がかき上げた前髪を直しつつ、同意するように頷く。

 

 

「あんたに何度も面倒見てもらっておいて、はいポイントなくなったから終わりー、なんて、そんな薄情なこと私にはできないよ」

 

「私も……水野月君が戻ってくるって信じてました……!」 

 

 

王美雨が涙目で訴えかけ、隣で幸村もメガネのブリッジを押し上げながら「理屈じゃない。お前に報告もせず逃げ出すような真似、俺のプライドが許さなかっただけだ」と不器用につぶやいた。

 

 

「……そうか……」 

 

 

胸の奥が、ほんの少しだけ、熱くなるのを感じた。 

 

俺なんかに報告するために。俺なんかの顔を見るために、わざわざこの灼熱の地獄に残って、待っていてくれたのか。

 

脳裏に、初夏の中間試験の頃の記憶が蘇る。 

 

4月にSシステムを馬鹿にされて、一度は完全に見限ったはずのクラスだった。だけど、過去問を配って、みんなで必死に勉強して、須藤の暴力事件を裏から躱してやった、あの時間。 

 

ほんの少しだけ、「このDクラスでやっていくのも、悪くないかもしれない」と、そんな温かい感情を抱いていた頃の思い出が、彼らの真っ直ぐな視線を通して、俺の中に濁流のように戻ってきた。

 

 

「よし、点呼を始めるぞ」 

 

 

草むらから現れた茶柱先生が、冷酷な声で点呼を終える。彼女はDクラスの惨状を見て、何か言いたそうに俺を睨んだが、俺はそれを無視した。 

 

 

 

 

点呼が終わった。 

 

 

周囲の生徒たちが、これからの飢えと渇きに耐えるように、再び砂浜へ座り込もうとする。だが、俺は制服のシャツを脱ぎ捨て、海へと歩き出した。

 

 

「ちょっと、水野月君!? どこ行くのよ!」 

 

 

松下が驚いて声を上げる。

 

 

「水野月!夜の海は危ねえって!」 

 

 

須藤が慌てて止めようと走ってくる。「少し待ってろ」 俺は振り返らずに手を挙げた。

 

 

「Cクラスではやる事やって来たから、自分の時間くらいはある。……波瑠加、ちょっとこれ持ってて」

 

 

上着を長谷部に手渡すと、俺は何人かが止める声を完全に無視して、真っ暗な夜の海へと勢いよく飛び込んだ。 

 

 

ざばぁ、と波が身体を包む。 

 

普通なら、夜の無人島の海に入るなんて自殺行為だ。だが、俺の頭脳には、この島の潮流、魚の生態、そして理系的な空間把握能力のすべてがデータとして入っている。暗闇の海中、独自の感覚で獲物の気配を捉え、持参したサバイバルナイフを一閃させた。 

 

 

十数分後。 

 

バシャバシャと音を立てて俺が浜辺に這い上がると、その手には、月光を浴びて激しく跳ねる、丸々と太った大物が握られていた。

 

 

「うおっ!?おい、マジかよそれ……!」 

 

 

須藤が目を剥いて叫んだ。

 

 

「これ……カンパチか?」 

 

 

三宅が呆然と呟く。

 

 

「刺身で食べるのはあまりにも危険だからな。須藤、流木を集めろ。焚き火を起こして、カンパチを焼くぞ」 

 

 

俺の指示に、クラスメイトたちは弾かれたように動き出した。すぐに大きな焚き火が起こされ、俺が手際よく捌いたカンパチが、パチパチと音を立てて火に炙られていく。香ばしい脂の匂いが、飢えた砂浜に広がっていく。

 

 

「お前……本当に凄えな……。何でもできるじゃんか」 

 

 

須藤が焼き上がった身を口に運び、感動で声を震わせた。

 

 

「水野月君……流石にこれは予想外だよ。あんた、本当に何者なの……?」 

 

 

松下が驚きを隠せない様子で、感嘆の息を漏らす。他のメンバーも、口々に「美味しい……!」「生き返る……」と、顔に血色を取り戻していった。

 

 

「みんなで分けて食べてくれ。……堀北、お前もだ」 

 

 

俺は、少し離れた場所で身体を起こした堀北に、一番脂の乗った中心の身を差し出した。 堀北は激しい体調不良で顔を真っ赤にしていたが、俺の顔をじっと見つめ、小さく「……ありがとう」と呟いて、魚の身を口に運んだ。 温かい栄養が身体に行き渡ったのか、しばらくすると、彼女の瞳に少しだけ微かな光が戻り、弱々しくも喋れるくらいには回復してきた。

 

 

「水野月君……私は、あなたに何とお礼を言えばいいのかしら……」 

 

 

堀北の掠れた声を聞きながら、俺はカンパチの骨を焚き火に投げ入れた。 

 

すでにポイントはゼロ。俺たちの亡命のプロットは何も変わらない。だけど、火の光に照らされる彼らの笑顔を見ていると、俺の冷徹な計算機のような心の中に、言葉にできない小さな引っかかりが、確かに生まれ始めていた。

 

 

 

 

パチパチと爆ぜる焚き火の音だけが、静まり返った砂浜に響いていた。

 

「陽哉、これあっちにまとめておけばいい?」

 

「ああ。そっちの骨のゴミ、一緒に袋に入れといてくれ」

 

 

俺と長谷部は二人で、食べ終わったカンパチの残飯やゴミを手際よく片付けていた。他の面々は火を囲んだまま、重苦しい沈黙に包まれている。その静寂を破ったのは、膝を抱えてじっと火を見つめていた松下だった。

 

 

「ねえ……水野月君。この状況、ここから何とかならないかな?」

 

 

すがるような、けれどどこかこちらの出方を試すような松下の視線が、ゴミをまとめる俺の背中に突き刺さる。俺は手を止めず、淡々と声を返した。

 

 

「無理だな。ここまで来てしまうと、もうどうしようも無い」

 

「そんな、キッパリ言わなくても……」

 

 

隣で袋を広げていた長谷部が苦笑交じりに呟くが、俺は構わず現実を突きつける。

 

 

「実際問題、ポイントはゼロだ。Dクラスがここから逆転を狙うなら、他クラスに紛れてリーダー当てをする程度しか出来ない。――なぁ、誰か他クラスのリーダーを見抜く自信がある奴はいるのか?」

 

 

俺の問いかけに、誰も何も言わない。俯く佐倉、悔しげに拳を握る須藤、ただ静かに火を見つめる三宅や幸村。

 

 

(正確には、やれる奴なら一人いるがな……)

 

 

俺の視界の端で、悲しそうな表情を浮かべている櫛田桔梗。彼女の情報網なら他クラスのリーダーを探ることも可能だろうが、それをやれば一クラス分の信頼を失う。承認欲求の塊である彼女が、自分の価値を下げてまでクラスに尽くすはずがなかった。

 

 

「……Cクラスの配下になった俺達の事は気にしなくて良いぞ」

 

 

ゴミ袋の口を縛りながら、俺は冷えたトーンのまま彼らに言葉を投げかけた。松下と三宅が顔を上げる。

 

 

「他のメンバーが勝手に自滅してリタイアしたんだ、仕方が無い。……お前ら全員がここでリタイアして船に上がっても、俺は文句は無いからな」

 

 

それが、Cクラスへの移籍を裏で進めている俺が、このクラスに残った「マシな連中」にかけられる、小さな情だった。俺の言葉が決定打となったのだろう。全員の肩から、張り詰めていた糸がぷつりと切れるのが分かった。

 

 

「……そうだね。もう、私達もあがるよ……」

 

 

松下が力なく笑い、諦めたように呟いた。

 

 

「ああ、ここまでだな。体調を崩す前に、俺も船に上がる」

 

 

三宅も静かに立ち上がり、泥を払う。テントの奥で倒れている堀北の様子を気にかけながら、須藤もついにがっくりと首を垂れた。

 

極限状態の中、俺が差し伸べた「カンパチ」という最後の慈悲を受け取った彼らは、これ以上足掻く気力を失い、静かにリタイアを受け入れ始めた。

 

 

 

 

 

 

「……行っちゃったね、みんな」

 

 

長谷部は、砂浜を離れて船の方へと歩いていくメンバーたちの後ろ姿と、それをただ静かに見つめている俺の顔を、不安そうに交互に見ていた。

 

 

「陽哉……」

 

 

衣服を小さく引かれ、俺の名前を呼ぶ長谷部の声。だが、俺は「……」と沈黙を返しただけで、彼女の問いには答えなかった。

 

ただ、遠ざかっていく彼らの背中を見つめる俺の胸の奥では、一つの冷徹な、けれど確固たる決意が形を成していた。

 

俺たちが4000万ポイントを使って龍園クラスへと移籍する。だが、それで終わりでは無い。

 

 

(見捨てられない……か)

 

 

心の底にこびりついたその引っ掛かりの正体を、俺は自嘲気密に受け入れた。

 

あいつらは、あの極限状態のDクラスにあって、最後まで腐らずに足掻こうとしたマシな連中だ。ここでただ脱落させ、使い捨てにするにはあまりにも惜しい。

 

 

俺は決めた。

 

この無人島特別試験、そしてこの後に控える船上試験――それら全てが終わったタイミングで、松下や三宅、須藤、佐倉たち、俺と交流のあったメンバーを個別に呼び出す。

 

 

(あいつらもいずれ、俺たちの仲間として、龍園クラスに引き込む……)

 

 

そのためには、移籍後に龍園のクラスでも俺は稼ぎ続けてポイントを蓄える、更にクラス内での発言力を高めて彼らを迎え入れるだけの強固な地盤を作らなければならない。

 

Dクラスを切り捨てるという冷酷な計画の裏で、俺は彼らを「真の仲間」として救い上げるための、新たな冷徹な策略を練り始めていた。

 

 

 

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