闇深い世界で…悪化させた日々 作:不良品の主人公
「おいお前ら、この試験で2位以上を狙うぞ」
無人島特別試験の二日目。ぎらぎらとした太陽が照りつける拠点において、龍園翔が不敵な笑みを浮かべながら発したその一言から、Cクラスの圧倒的な進撃が始まった。
原作の龍園であれば、ポイントをAクラス用の物資に売りつけて、残りはすべて娯楽に使い果たす破滅的な作戦を選ぶところだった。だが今の彼には、俺から手渡された「完全なる無人島地図」という絶対的な武器がある。勝算を確信した独裁者の号令のもと、Cクラスの生徒たちは統制された兵隊のように動き出した。
Cクラスが次々に占有していった有用なスポットは、またたく間に十カ所を超えた。
自分たちの拠点である「川の上流」を基点とし、Dクラスから力ずくで奪取した「川の中流」を完全に掌握。さらには島内に点在する「釣り具が保管された小屋」や、新鮮な作物が実る「各畑」にいたるまで、価値あるリソースを網羅するように網を広げていく。
さらに、龍園の策略は冷徹かつ用意周到だった。
各スポットの管理端末には、Cクラスの生徒たちの制服の上着がすっぽりと被せられている。外部から残り時間が一切見えないように秘匿し、他クラスが付け入る隙を完全に遮断する徹底ぶりだ。
その防衛体制も強固そのものだった。
それぞれのスポットには、男子生徒や、体力に余裕のある女子生徒を厳選した「二人一組」のペアを配置。彼らは過酷な環境に耐えながら、それぞれの地点で交代を挟みつつ、文字通り付きっきりで見張りを続けていた。
本来なら、この炎天下での分散配置は脱水症状や不満による暴動を引き起こしかねない。だが、そこをカバーする兵站の仕組みも完璧だった。
龍園の忠実な配下である山田アルベルト、石崎、小宮、近藤といった武闘派の面々が、川の上流にある湧き水を煮沸した安全な飲料水を分担して携行。森の中に散らばる各スポットを巡回し、見張りのメンバーへと確実に水分を補給して回っていたのだ。
「龍園の命令は絶対」
恐怖と、そして確実な勝利の予感によって統率されたCクラスにおいて、この過酷なローテーションに逆らう者など誰一人としていなかった。
そして、この強固な陣形を裏から支える最大の生命線が、何を隠そう俺のチート染みた超人的体力だった。俺はこの日から無人島試験最終日に至るまで他クラスの偵察を完全に撒きながら島中を縦横無尽に駆け巡った。ある時は畑から大量のトウモロコシやスイカを収穫し、またある時は夜の海へ飛び込んで大型の海鮮魚を次々と突き、それらの食料を川の上流にある拠点へと、絶え間なく、そして大量に運び込み続けた。
「陽哉、おかえり」
「凄い物量ですね、貴方の身体がどうなってるのか非常に気になります」
「水野月くん、またこんなにたくさん……! 本当にすごいね」
上流の拠点で待つ長谷部は、俺の無事と規格外の成果に目を細める。拠点には彼女だけでなく、椎名ひよりを始めとするCクラスの女子たちが控えている。
俺は運んできた山盛りの食材を前に、彼女たちへ手際よく指示を出す。
「トウモロコシは皮ごと灰の中で蒸し焼きにしろ。魚はこうやってエラと内臓を落として、塩を多めに振ってから火を通すんだ。スイカは川の水でしっかり冷やしておけよ」
今世でこの試験のためだけに蓄えた知識をもとに、過酷な無人島でも効率的に栄養を摂取できる調理方法を優しくレクチャーしていく。
「分かりました、お任せください」
と椎名たちが微笑み、女子たちの手によって次々と見事なスタミナ料理へと形を変えていった。
龍園の絶対的な独裁と冷徹な配置、石崎たちの確実な水運び。そして俺がもたらす圧倒的な物資と、長谷部や椎名たちによる完璧な調理――。
すべての歯車が狂いなく噛み合い、Cクラスは他クラスを遥か後方に置き去りにしたまま、無人島という盤面を完全に支配しつつあった。
「くくくっ……良い出だしだぜ。水野月の奴を、あのDクラスの不良品共から引き抜いたのは大正解だったな……」
二日目の午前10時。木漏れ日が不気味に揺れる林道を歩きながら、俺――龍園翔は、低く愉悦に満ちた笑い声を漏らしていた。
手元にあるのは、水野月が俺に差し出してきた「完全なる無人島地図」だ。その計り知れない価値は、昨日からの数時間で十二分に証明されていた。奴のチート染みた体力と物資調達能力、そして完璧な拠点運営。Dクラスという泥に埋もれさせておくには、あまりにも勿体ない極上の駒だ。あいつをCクラスに迎え入れる手筈を整えたことは、我ながら最高の投資だったと確信している。
だが、俺の貪欲な進撃はこれだけでは終わらない。
盤面を完全に支配するためには、もう一仕事必要だった。
この「完全なる無人島地図」。そこには、島内に眠る二十箇所以上ものスポットが完璧に記載されている。全て占有出来ればうちのクラスの勝利は決定的だ。
だが、現実は甘くねえ。水野月からこれだけの情報を受け取ったとはいえ、うちのクラスの脳筋どもを動かして、一人のカードリーダーで同時に占有して回るにゃ、現実的に十箇所そこらが限界だ。
残りの半分以上は、どう足掻いても手が回らずに腐らせることになる。
だがよ、せっかくの最高級の情報をただ捨てちまうのは、反吐が出るほど勿体ねえ。
だったら、残りのスポットを丸ごと他のクラスに『売りつける』のが、一番賢い使い道だろ?
溢れるリソースを他人に高値で買わせ、さらにポイントを毟り取る。そのための獲物として、俺は一人、鬱蒼としたジャングルを抜け、Aクラスがベースキャンプに定めている「洞窟」へと向かった。
水野月の奴、とっておきの情報を俺にくれやがった。いつ知ったのか知らねえが利用しない手はねえ。
他クラスの偵察を一切寄せ付けないよう、鉄壁の警戒が敷かれているはずの領域だ。薄暗い洞窟の入り口に近づくと、ひんやりとした空気が肌を刺す。
そこには、予想通りAクラスの絶対的な指導者――葛城康平が、側近の戸塚弥彦を従えて毅然と佇んでいた。
「……Cクラスの龍園か。何の用だ」
葛城の低く、地を這うような声が洞窟内に響く。その眼光は鋭く、侵入者を容赦なく圧殺するかのような威圧感を放っていた。Aクラスを率いる男としての器量と、一切の隙を見せない強キャラ感が、その佇まいだけでひしひしと伝わってくる。
「ここはAクラスが占有するスポットだぞ。立ち去れ」
「くくくっ……そう硬くなるなよ、葛城。お前ら次第では、この特別試験で俺達と一緒に『勝ち組』にしてやっても良いぜ?」
俺は挑発的に肩をすくめると、懐から一枚の紙を取り出し、葛城の目の前に突きつけた。それは、あらかじめ用意しておいた、ある「契約書」だった。
葛城は不快そうに眉をひそめながらも、その紙面に視線を落とす。
【特別契約書】
20XX年8月時点において、龍園翔が配属するCクラス(以下甲)と、葛城康平が配属するAクラス(以下乙)は、以下の契約を締結する。
一、甲は乙に対して、無人島内のスポットを計10カ所割譲する(割譲するスポットの選定権は甲に帰属する)。
一、甲と乙は、互いにこの無人島試験におけるリーダー当て(疑惑の投票)を行わない。
一、乙は甲に対して、クラス生徒一人当たり毎月20,000プライベートポイントを支払う。
「何? ……何だこの契約は……!」
内容を読み進めるにつれ、葛城の顔が驚愕と怒りで険しく歪んでいく。額に青筋を浮かべ、紙を握る指先に強烈な力が込められるのが分かった。しかし、葛城はただの無能ではない。すぐに冷静さを取り戻そうと、鋭い眼光で俺を睨み据えてきた。
「ふざけるな、龍園。我々Aクラスが、なぜお前たちCクラスに毎月莫大なポイントを支払わねばならない? スポット十カ所の割譲と言えば聞こえはいいが、主導権を完全に握られているではないか。こんな不平等条約、呑めるはずがない」
「くくくっ、拒絶から入ると思ったぜ。だがよ、葛城。お前、本当に断れる立場にいると思っているのか?」
俺は一歩、葛城との距離を詰める。そして、その耳元で囁くように、決定的な一撃を放った。
「お前達のカードリーダー……知ってるぜ。――戸塚弥彦だろ?」「っ……!?」
葛城の身体が、一瞬だけ明確に硬直した。
さすがは葛城だ。すぐに表情を鉄の仮面で覆い隠し、何事もなかったかのように「何の話だ。我がクラスのリーダーが誰であるかなど、お前に関係のないことだ」と一蹴してみせた。その動揺を見せない胆力は流石というほかない。
だが、致命的だったのは、その隣にいた男だ。戸塚弥彦の顔から、一瞬にして血の気が引いていた。目を見開き、ガタガタと唇を震わせながら、あからさまに動揺を隠せていない。
「くはっ! バレバレだぜ、葛城。お前がどれだけ隠そうとしても、そこのお荷物のツラを見れば一発だ」
俺は戸塚を指差し、嘲笑う。葛城は内心で舌を打ったに違いない。戸塚をリーダーに据えるというリスクを冒した時点で、この露見は葛城にとっても痛恨の極みのはずだった。
水野月の手土産は地図だけじゃなかった。あいつから他クラスのリーダー情報を聞いた時は、流石に俺も一度は疑ったもんだが……いざこうしてカマをかけて見ればこの有様だ。こんなに簡単に他クラスのリーダーが分かるとはな。水野月の奴、一体どこでこんなネタを掴んできやがった。
「いいか、葛城。もしこの契約を締結するなら、俺たちが確保している有用なスポットを十カ所、お前たちに占有させてやる。これから占有すれば、合計で180クラスポイントが確実に手に入る計算だ。それだけじゃねえ。お前たちのクラスのリーダー当てを、俺たちは『申請しない』と約束してやる。……どうだ? ついでに、この話を他クラスには教えないでおいてやるぜ」
葛城は深く息を吐き出し、腕を組んだ。その眼光はなおも衰えず、俺の提案の裏にある意図を冷徹に分析している。Aクラスの利益とリスクを天秤にかける、重厚な思考の時間が洞窟を満たす。
「……話にならん。仮に戸塚がリーダーだとしても、お前たちがそれを証明する手段はないはずだ。ただのハッタリに、毎月一人頭二万ポイントという巨額の対価を支払う価値はない。我がAクラスは、お前の揺さぶりには乗らん」
葛城の声には、いまだ揺るぎない確固たる意思が宿っていた。簡単に屈しないその強硬な姿勢は、まさにAクラスの防壁そのものだ。
だが、俺にはもう一つの、とっておきの切り札があった。
「なら、とっておきをくれてやるよ。――契約を締結するなら、だ。Dクラスのカードリーダーを、今現在『誰がやっているか』を教えてやる」
「……何だと?」
葛城の目が、わずかに細められた。Dクラスの動向、そしてそのリーダーの正体は、この試験全体のパワーバランスを左右する情報だ。
「いいか、締結するなら教えてやる。サインしねえなら、絶対に教えねえ。加えて、お前たちがここで首を縦に振らねば……俺たちは試験の最終日、リーダー当ての紙に『Aクラス:戸塚弥彦』とはっきりと書くだけだ。そうなれば、お前たちの貯め込んだポイントがどうなるか……ククク、想像がつくだろ?」
「……!」
葛城康平は、言葉を失ったように唸った。彼の脳内では、今、猛烈な嵐が吹き荒れているはずだ。Cクラスへのポイント流出という目先の損失と、確実な180クラスポイントの獲得。そして、リーダーを見破られた際のリスクと、Dクラスのリーダー情報というアドバンテージ。
俺の突きつけた条件は、葛城の持つ防衛的かつ合理的な思考を、完璧に逆手に取った最悪の罠だった。
「さあ、どうする葛城。Aクラスの絶対的な安定を取るか、それともプライドを守って破滅へと付き合うか……選べよ」
静まり返った洞窟の奥で、葛城はただ、じっと俺を睨み返し続けていた。その目には、敗北を認めつつも、決して折れない強いプライドと、次なる一手を模索する冷徹な光が宿っていた。
薄暗く、ひんやりとした空気が肌を刺す洞窟の奥。
俺、葛城康平は、目の前に立つ不敵な笑みを浮かべた男――龍園翔を、大岩のごとき不動の姿勢で睨み据えていた。
(……何故だ。何故これほど早く、正確に突き止めてみせた……!)
背中に冷たい汗が伝うのを自覚しながら、俺は必死に思考を巡らせていた。
龍園が突きつけてきた契約書。そこに記された条件の悪辣さもさることながら、俺の胸を最も激しく掻き乱していたのは、我がAクラスのカードリーダーが「戸塚弥彦」であるという絶対的な機密が、早くも破られていたという事実だった。
この無人島特別試験において、リーダーの隠蔽は最優先事項だ。ましてや実戦経験の浅い戸塚をリーダーに据えるという選択は、俺が細心の注意を払って決めた防衛策だった。それが試験二日目の段階で、これほど容易く暴かれるなどあってはならない。
どこで情報が漏れた?
俺の脳裏に、幾つもの不穏な可能性が浮上しては消えていく。
暗い洞窟のどこかに、最初からCクラスの隠密が待ち構えていて、端末の登録シーンを覗き見られたのか。……いや、それはない。俺は周囲の警戒を完璧に行ってから手続きをさせたはずだ。
ならば、クラス内部からのリークか。
真っ先に思い浮かぶのは、入学以来、俺と激しい派閥争いを繰り広げているあの車椅子の少女――坂柳有栖の存在だった。今回の試験、彼女は体調不良を理由に不参加となっているが、その手足となる者たちはこの島にいる。俺を失脚させるため、坂柳派閥の人間がCクラスの龍園へと情報を流したのではないか……。
どれほど考えても、決定的な証拠はない。だが、思いつく余地はいくらでもあった。それが、俺の足元をじわじわと崩していく。
「ふざけるな、龍園。我々Aクラスが、なぜお前たちCクラスに毎月莫大なポイントを支払わねばならない?」
俺は震えそうになる声を完璧に抑え込み、あくまで指導者としての威厳を保ったまま言い放った。
プライベートポイントの流出。それも、クラス全員から毎月2万ポイントという巨額の対価を、卒業まで他クラスに貢ぎ続けるなど、Aクラスのプライドとしても、戦略としても到底許せるものではない。そんな不平等条約を結べば、仮にこの特別試験で勝利したとしても、長期的な損失は計り知れない。
だが――いつまでもこうして、突っぱねているわけにはいかないという冷酷な現実も、俺の肩に重くのしかかっていた。
現在、我がAクラスのベースキャンプであるこの洞窟には、圧倒的に「水」と「食料」が不足していた。ポイントを削れば最低限の確保はできているものの、本格的な物資の調達はこれからという段階だ。生徒たちの体力と精神力を削らないためには、早急に島内を探索し、有用なスポットを占有するか、食料を集めなければならない。しかし、リーダーの情報が完全に龍園に握られている以上、下手に動けば最終日に「リーダー当て」で手痛い減点を食らい、Aクラスの牙城が崩壊するリスクがある。
攻めるべきか、守るべきか。
俺がその狭間で猛烈に葛藤していると、龍園は俺の迷いを見透かしたように、愉悦に満ちた笑みをさらに深め、再度押しの一言を放ってきた。
「くくくっ……。1位か2位を取れる可能性があるってのに、まだ不満か? なら、とっておきをくれてやるよ」
龍園は一歩前に踏み出し、自信に満ちあふれた目で俺を見つめてくる。
「お前達の洞窟には食料も水もねえだろ? 俺達が占有してるスポットから、直接ここへ輸送してやるよ。ようは、分けてやると言ってるんだ。大サービスだぜ? Aクラス全員が、腹一杯食えるくらいの量を保証してやる。何なら、海から獲れたての大型の海鮮魚類を送ってやっても良いぜ?」
「……何……だと……!?」
俺は思わず絶句し、龍園の目を凝視した。
他クラスへの物資の補給、それもこの過酷な無人島で「全員分を満足に食わせる」ほどの食料を融通するなど、通常であればただのハッタリ、夢物語だ。
だが、龍園の目には、狂気的なまでの絶対の自信が宿っていた。嘘をついているようには、どうしても見えない。Cクラスには、それを可能にするだけの「圧倒的な兵站」がすでに構築されているというのか。
それでも、俺はまだ迷っていた。
ここで引けばAクラスの敗北を意味するのではないか。何か、この窮地を脱する別の方法はないのか。
俺が唇を噛み締め、必死に思考の迷路を彷徨っていると、龍園はそれまでの嘲るような表情を消し、急に冷徹な、真面目な顔つきに変わった。
「ついでに、良いことを教えてやるよ。……橋本と鬼頭を監視しておけ。そいつらは他クラスにリーダー情報をいつ流してもおかしくねえ。坂柳の派閥のやる事くれえ、俺にだって少しは分かるさ」
心臓が、ドクンと大きく跳ね上がった。
橋本正義、そして鬼頭隼。いずれも坂柳派閥の中心人物であり、実力者だ。やはり、俺を追い詰めるために裏で糸を引いていたのは彼らなのか。龍園の口からその名が出たことで、クラス内の内紛という現実が重く突きつけられる。
「いいか葛城。最終日にお前達のクラスが、俺の譲るスポットをちゃんと占有していれば、400以上のクラスポイントを確実に取るための方法を教えてやる。……これでも駄目なら、俺はもう行くぜ。取引は決裂だ。お前らはここで干からびるか、最終日にリーダーを当てられて破滅しろ」
龍園は冷たく言い放ち、興味を失ったように背を向けようとする。
400以上のクラスポイント。
それは、現在のAクラスが喉から手が出るほど欲しい、圧倒的なアドバンテージだ。これがあれば、坂柳派閥からの突き上げを黙らせ、俺の指導者としての地位を不動のものにできる。食料の確保、リーダー発覚のリスク回避、そして莫大なクラスポイントの獲得。
支払うべきプライベートポイントの代償は大きすぎる。しかし、ここで拒絶すれば、待っているのは内憂外患によるAクラスの確実な崩壊だ。
俺は閉じていた目をカッと見開き、拳を血が滲むほどに強く握りしめた。
屈辱に歯を食いしばりながら、去ろうとする独裁者の背中に向かって、絞り出すような声を響かせる。
「待て、龍園……!!」
その言葉に、龍園がピタリと足を止め、ゆっくりと振り返る。その顔には、再びあの悪魔のような不敵な笑みが戻っていた。
俺は深く、重い呼吸を一つ吐き出し、敗北の味を噛み締めながら告げた。
「契約を……締結する……」
それが、Aクラスの絶対的な安定と、背後に潜む坂柳の影に対抗するため、俺が下した苦渋の、そして唯一の決断だった。