闇深い世界で…悪化させた日々 作:不良品の主人公
タイトルのままです。
あれから1週間が経った。
平田の頼みで外村と沖谷が池達を授業に呼んだらしい。
2人は授業にこそ出たが、昼休みも直ぐに教室を出ていくし、授業が終わるとそそくさと帰ってしまう。放課後の勉強会には出なかった。クラスで完全に孤立しており、今でも女子達が陰口を言ってるのを耳にする。
恐らく5月1日の吊るし上げが効いたのだろう。原作ではDクラスの大半が4月の授業をサボっていた為、特定の誰かを吊るし上げる事が殆ど無かったが、今回は俺のSシステムの説明と平田の協力のお陰で池達2人以外が授業を普通に受けていた為、そうならなかった。
櫛田が呼びに行けば2人とも来るだろうが、正直俺は彼女を使いたくない。代わりに堀北との時間を作れと言われたら面倒だった。
平田の勉強会が始まっていた。講師役は平田、櫛田、俺の3人。櫛田は男子や気の弱い女子に、平田は彼目当で集まる女子達に、俺はその他のメンバーを中心に教えに回った。
俺の周りにはいるのは長谷部、三宅、沖谷、須藤、松下、森、小野寺、その他大人しい男子数人と言った所だ。
松下は最初平田の方にいたが、何を考えているのか次第と此方側に来るようになった。彼女はどちらかと言うと講師役側に付いてくれた。森は松下に付いて来た感じだった。
須藤を誘う際にはバスケのプロになるならインタビューの際に英語が必要になる可能性があると適当な事を言っておいた。プロになるためには、高校や大学で優秀な成績を収め、スカウトの目に留まることが重要。特に大学での競技経験や、トライアウトでの実力、主要大会での実績がプロ選手への道を開く鍵となると言っておいた。バスケに対しては真剣な須藤は俺の話を取り敢えず聞いてくれたのでそこを上手く丸め込んだ。代わりに彼の自主練に付き合う事になった。
勉強会に出てない生徒もいる。知ってる中では池と山内の他にも佐倉が出てない。彼女は授業が終わると直ぐに帰ってしまう。佐倉の学力はDクラスにしてはマシな方だった。今すぐレッドゾーンな訳では無いので放置しておく。
テスト2週間前になった。
「水野月君、ちょっと良いかしら」
いつも通り昼休みに須藤に勉強を教えていると堀北に声をかけられた。
…明日の昼を一緒に食べないかと。学食を奢ってあげるからと言って来た。俺は常に弁当を持って来ている為断った。
「来るわよね、でないと貴方の秘密を公開するわよ」
「…堀北がやりたい事は何となく分かるが…」
…秘密と言っても俺は過去及びプライベートポイントを堀北に開示してない。本当に大量のポイントを持ってると言われてもクラスポイントに貢献した前例がある。
恐らく原作の綾小路と同様に昼食を奢って貸しを作り、脅すつもりだろう。内容は多分、池と山内を堀北主催の勉強会に誘うといったところか。その時に強引に俺も誘われるかもしれない。
「池達を勉強会に誘うんだったら、俺と平田以外の人を使った方が良い。俺達が誘っても絶対に来ない」
「話が早いのね。だったら分かってるでしょう、池君達が赤点を取ればクラスポイントは0になるかもしれないのよ。それでも誘わないつもり?」
「…俺は適任じゃない…確執の無い沖谷か外村あたりに頼んだ方が良い。もしそれでも赤点を取られたらクラスポイントは数カ月後に俺が取り返す。これでどうだ」
「そう、誘わないのね。なら貴方のプライベートポイントを私に移しなさい。それで私が池君達を誘うから」
「……4月に授業を真面目に受けていた他の奴らなら兎も角、よりによってあの2人をプライベートポイントで釣るのか?幾ら何でもサービスし過ぎだ。彼奴等の為にもならない」
「それぐらい言われなくても分かってるわ。けどこうでもしないと彼らが来るはずも無いの。赤点になると分かってるのに授業にも出ない愚か者だから。でも退学者を出した時のペナルティが分からないわ。だからこれはDクラスの将来の為には必要だと思うの」
堀北はここで退学者を出したくないようだ。諦めの悪さはある意味彼女の美点でもある。だが、流石にプライベートポイントは渡せないな。
池達とも一応友達である須藤が俺と堀北の間に挟まれて居心地悪そうにしながらも、少し苛立っている。
「ねえ、どうしたの?」
俺と堀北が話し合い?をしているといつの間にか櫛田が来ていた。
「揉めてるみたいだから気になったんだけど、2人共何の話をしているのかな?良かったら私にも聞かせて貰えないかな?」
表向きには天使のような笑みを浮かべて櫛田が堀北を見た後俺の顔を覗き込む。
「…貴方には関係無い話よ、これは私と水野月君の問題なの」
「そうなんだ、けど話が長引いてるみたいだから私にも教えてくれないかな?」
「…このままだと池君達が、退学になるから勉強会に誘う話をしていたのよ」
「そんな話だったの、だったら私が誘ってみるよ。代わりに堀北さんは私の勉強会に出て貰えないかな?」
「お断りよ。貴方だいだい私の事嫌っているのでしょう。誘うのは水野月君に任せるから話に入って来ないで」
櫛田は堀北を自分の勉強会に引き入れようとしている。ふと思ったんだが櫛田は何のために堀北を誘っているのだろうか。監視とも取れるが自分が嫌いな人間を側に置いてストレスが増えないのだろうか。
「そ、そんなっ、私は別に堀北さん嫌って無いのに」
「そう、でも私は貴方と関わりたく無いわ」
堀北は席についた。櫛田は俺の方を向く。
「水野月君、池君達を勉強会に誘ってくれる?」
「…誘うだけならやっても良いが多分無理だな」
「でも、このままだと2人が退学になっちゃうんだよ?」
「…まさかとは思うが櫛田も堀北みたいに俺のプライベートポイントを払ってでも池達を勉強会に誘えと言うつもりか?」
「えっ、そ、そんなっ…堀北さんとそんな話をしてたの?そんな話だったなんて私聞いてない…」
「そうか。なら、おかしいって分かるな。2人に嫌われてる俺がポイントで釣って勉強会に誘うのは論外だ。池達の退学を何とも思わない訳じゃないが、プライベートポイントを渡すのは違う。平田や櫛田、俺のもだが勉強会に出ている他の奴らの方が頑張ってるんだから」
「……」
「…一応今回の試験は対策を取ってある。次の試験からは知らないが」
俺は須藤に勉強を教え始めた。櫛田は俺と堀北を見てオロオロとする演技をしていたが、やがて自分の席に戻った。
そして数日経った。
朝登校するといつもなら既に隣に居るはずの堀北がいなかった。休みか?と思ってそのまま授業を待っていた。
授業直前になって堀北は登校してきた。
その表情は暗く、何かに絶望した様子だった。
「……」
クラスメイトはそんな堀北の様子を見て、悪口を言うようになった。佐藤達なんか聞こえるように言ってる。初期のDクラスは本当に酷い。隣の堀北を見るとかなり精神状態が悪そうだ。それに動きが悪い。身体が痛そう。
これは…兄に会ったみたいだな。そして恐らくコンクリートに叩きつけられた。
「……」
「…何かしら」
「いや、何でも無い…」
「そう…」
俺の視線に気付いた堀北が一瞬俺の方を見たが、俺が答えると堀北はそのまま下を向いた。罵倒する気力も無いようだ。クラスメイトの悪口は聞こえてくる。
俺は堀北の事は好きではない。だがDクラスの他の連中に肩入れするほど嫌いでもない。あまり原作の後半以降を覚えて無いが彼女が成長する姿を見たせいもある。
だが、今の堀北を見ると成長する姿が想像出来ない。兄に突き放され、打ちのめされた彼女はどうなるだろうか。
今のDクラスの様子を見ると、もしかしたら数週間後には隣の席で虐めが起きるかもしれない。
それで彼女がやられた後も虐めの空気が残ってたら、次に狙われるのは大量のポイントを持ってるとクラスから思われてる俺の番だ。4000万ポイントを貯めるにはもう少し時間がかかる。長谷部と2人で自主退学でも良いが…
少し助けるか…
「……」
堀北はずっと無言だった。授業が始まったがノートを取ってない。
放課後になった。相変わらず暗い堀北の肩を叩く。
「堀北…」
「…何…」
光の籠もって無い虚ろな眼で俺をぼんやりと見た。
俺は堀北に小声で耳打ちした。
「急何だが、堀北はこの学校に兄妹いるか?」
「えっ…」
「居ないなら忘れてくれ、俺はこれから生徒会長の所に行って過去問を買い取りに行こうと思う。一緒に来ないか?」
「…兄さ…ん?」
堀北が弱々しい。精神が不安定なせいかさり気なく兄妹である事を漏らしている。
「やっぱり兄妹なんだな。雰囲気が似てると思った。なら代わりに買い取って来てくれ。」
「…私が…似てる?」
そっちに食いつくのかよと思いながら堀北にポイントを送信する。5万ポイントにしておいた。
「会長、びっくりすると思う。騙されたと思って行って来てくれるか?」
「……」
「実はな、茶柱先生の話を聞いて気付いたんだが、今回の中間試験は毎年同じ問題が出てるみたいだ」
「…そんな事…」
「小テスト…覚えてるか?最後の3問だけ中学で習う問題じゃ無かった。高校3年生の問題だった。けど種が分かってれば解ける問題だ」
俺は小テストの過去問なんて使わなかったけど、そういう事にしておいた。
「貴方の、勘違いじゃない…」
「かもな、だけど良いのか?このままで、何かあったんだろう?」
「……」
「行って来い。ポイント送った。俺が最後まで聞いてやるよ」
堀北はフラフラと立ち上がった。勉強会の講師役を松下に頼んだ。
「陽哉、何しに行くの?」
「過去問を手に入れさせる」
そのまま彼女を連れて生徒会室の教室に向かう。危ないので後ろから見守った。生徒会室に入った。中の声が聞こえてくる。
「鈴音、何のようだ」
「兄さ…ん、お願いがあります。」
「早くしろ」
堀北の涙声に冷たい声が返ってくる。
「今回の…一年一学期…中間試験とその前の小テストの…過去問を売ってください」
「…何故だ」
「こ、今回の中間試験は、毎年同じ問題が出るんじゃ無いかと先生の言葉と小テストから、考察しました…」
「……」
「……駄目…ですか…」
堀北会長の沈黙が部屋の外にまで伝わってくる。そして、溜息が聞こえてきた。
「15万ポイントだ」
「…っ!わ、分かりました。送ります」
「…携帯を渡せ」
堀北会長の声が聞こえてきた。どうやら上手く行ったようだ。携帯を操作する音が聞こえる。
「用件はそれだけか。さっさと帰れ」
「に、兄さん、ポイントは…」
「帰れと言ってる」
「は、はいっ、ありがとうございますっ」
堀北が生徒会室から出て来た。
交渉が成立して何処かホッとしたような表情だった。携帯を注視している。恐らく兄の連絡先を見て喜んでいるのだろう。そのまま2人で外のベンチに座った。堀北が貰った過去問と小テストのデータを見る。
「同じ問題だな」
「ええ…」
「テスト3日前になったら配ろう、それまでは皆の地力をあげる」
「…そうね…」
「因みに幾ら取られた?」
「…最初は15万ポイント要求されたの、けどそれで買い取ろうとしたら、ただでくれたわ」
「凄いな、ならそのポイントは何かの足しにしてくれ」
「……水野月君…」
教室に戻ろうとしたら堀北が俺の名前を呟いた。
「何だ?」
「今回過去問に気づいたのは貴方の手柄よ、私1人では気づかなかったわ。それに…」
「ん?」
「何でもないわ、戻りましょう…ありがとう」
「?教室戻るぞ」
堀北が何かを呟いたが小さ過ぎて聞こえ無かった。
今回の行動で堀北は多分俺を敵だと思わなくなっただろう。脅される事も減る筈だ。俺も暫くはDクラスにいるから隣人の堀北との関係の修復は必要不可欠だった。
教室に戻ると松下が疲れ切っていた。俺は慌てて代わり、須藤に英語を教え始めるのだった。
翌日の放課後、いつも通り勉強会を開いた。
「私もやるわ」
何と堀北が勉強会に入って来た。
「良いのか?」
「ええ、貴方には借りが出来たわ。それを返すだけよ」
そう言って数学で詰まってる沖谷の所に行った。
様子を見た長谷部が俺の腕を取り教室の外に連れ出して耳元で話す。
「ねえ、堀北さんに何かしたの?」
「ああ、どうやらプライベートな事情で問題を抱えていたみたいでな。少しだけ助言した」
「ふうん、何で堀北さんを助けたの?」
「言ってしまえば俺のプライベートポイントの為だな」
「…脅迫されてたの?」
「ああ、結構な」
「成る程ね〜、やられてる気はしたけど、もう大丈夫そう?」
「ああ、5万ポイントで済んだ」
長谷部を納得させて教室に戻った。堀北の方を見ると順調そうだ。沖谷は物腰が柔らかい上、基礎が出来ているため、堀北に罵倒される心配は無い。近くでは松下が森に理科を教えている。
こう見るとDクラスも捨てたもんじゃ無いなと思ってしまう。池と山内、後は茶柱先生から目を逸らせばの話だが。
まあ他クラスへの移籍の準備を辞めるつもりは無いが。
それから時は流れ、テスト1週間前になった。俺の知らない所で堀北は池と山内を直接誘ったらしい。しかし失敗したようだ。結局俺や平田の勉強会に混じって来た。俺の所に来たときはさり気なく大人しい三宅、沖谷の講師役を頼んだ。
須藤の学力はまだ高校生のレベルに追いつききれてない。やっと小学校高学年のレベルになった所だった。
俺はテスト範囲の変更を茶柱先生に確認した。変更を確認し、手に入れた過去問と同じ範囲であるのをチェックする。
テスト3日前になった。放課後、帰ろうとする皆を止める。
「残り3日間はこの過去問を使って勉強してくれ、先輩によるとこの1年1学期の中間テストは毎年同じ問題が出るらしい」
過去問を手に入れた堀北と前に出て来てくれた長谷部が手伝ってくれてDクラス全員に過去問が行き渡った。これで38人は高得点が取れる。池と山内だが、沖谷と外村に頼んで男子寮の自室で直接渡して貰うことにした。
取り敢えずクラスに貢献する姿勢は見せた。
これで茶柱先生と堀北の目を誤魔化せる。
後は結果あるのみだ。
テスト期間の様子でした。