闇深い世界で…悪化させた日々 作:不良品の主人公
テストが終わった後の日々です。
中間テストは無事全員乗り切った。
問題の池と山内だが必死に過去問に齧り付いたようだ。
最下位とその上だったがギリギリ赤点ではなかった。
但しその点数は低く、過去問があったにも関わらず、全科目40点前半だった。3日前に配ったんだがな。
ざっと全員の点数を見たが、俺のグループで勉強していた人達の平均点が一番高かった。
須藤に関しては下から4番目になっていた。苦手な英語を60近く取っていた。彼はまた俺に勉強を教えてくれと言って来た。
勉強会でDクラスはある程度交友関係が変わった。
俺の連絡先にも長谷部、平田、櫛田、軽井沢、堀北の他に松下、森、小野寺、三宅、沖谷、須藤の連絡先が追加された。
「水野月君、一緒に食べても良い?」
中間試験が終わった後、松下は何かある事に俺を誘うようになって来た。彼女は軽井沢のグループから少しずつ距離を取ってるように見える。今日みたいに昼食に誘われた時も何回もあった。直ぐに長谷部が俺の手を引いたが。
「ねえ、松下さんと何の話してたの?」
「ああ、中間テストの講師役をやったから、ご褒美をくれないかと言ってた」
「ふうん、何を渡すの?」
「……まあ、ポイントだろうな」
「デートに誘われたりしてないよね?」
「…してない」
実は松下にデートに誘われて断った日の放課後、俺は長谷部に尋問されていた。
因みに俺と他の女子が会話してるとかなり高い確率で此方を長谷部がガン見している。俺の周りに女子が増えて内心焦っている様子だ。
特に松下や堀北と話した後は何の話をしていたのかを必ず聞かれてる。一応隠さずに答えているがその日は思いっきり甘やかさないと機嫌が悪いままだった。
俺はそんなDクラスを見届けながら密かに自室で新たなAIを作成していた。
材料を揃える為にそれなりにポイントを削ったが、スクラップ置き場からも使える材料が合ったので補充した。俺のチート能力に掛かればこんなスクラップでも最新機器に化ける。
それと更にプライベートポイントを増やす為に同時進行で、中学の時考えてた新たな小説を作成していた。イラスト・挿絵も綺麗に仕上がった。これを外に広げる前に誰かに読んで貰いたい所だ。
数週間後。
俺は茶柱先生…では無く、ロボット研究部の顧問の先生に新作品を提出しに行った。
「先生、新作を提出しに来ました」
「水野月君っ、こ、これは…」
「自分が作った発明品です」
「見せて貰おうか…」
先生は俺が作ったAIを見て驚いていた。茶柱先生に提出すると2千万ポイントを渡さないように立ち回りそうなので辞めておいた。それに比べて部活の顧問は理系科目の比較的評判の良い先生だった。
「企業に提出する特例を貰っているのでお願いします」
「成る程、確かに受け取った。」
最新のAI及び護衛用のスパイドローンを新たな作品として設計図等と共に顧問の先生は学校に提出した。
数カ月後には発明対価が来るだろう。学校の外の技術に負けないように日々考えなければならない。
同時進行で完成した小説の方はまだ温存していた。
作成したのは学園物の小説だった。一応、長谷部に読んで貰った。彼女は楽しんでいたが、評価に関してはあまり参考にならなかった。
数日後、完成した本を持って俺は図書室に来ていた。
書いた小説を図書室にいる人間に評価して貰う事にした。図書室で誰か手頃な人物がいないか探していた。
学園物を探してる3年生を4人程見つけて声をかけた。
「先輩方、お忙しい所すみません」
「ん?何だ?」
「実は自分、小説を書いていて新たな作品を出す予定なんですが、出版する前に小説が好きな誰かに読んで頂きたくて…」
「成る程、良いぜ、受験勉強の息抜きに読んでやるよ」
承諾してくれた先輩達に本を渡した。
「イラスト上手いな…」
「タイトルだけ見るとなんだかこの学校見たいな所だな」
「俺、このキャラ気に入ったわ」
その日は先輩に読んで貰って3日後に返して貰うことにした。
3日後、先輩達が俺に本を渡してきた。
「凄く面白いな、続きが出来たら来てくれ。これ、俺の連絡先だ」
「受験の暇つぶしになりそうだよ」
「止まるんじゃねえぞ」
「ありがとうございます」
先輩達に本を返却して貰った。
どうやら上手く描けたようだ。
先輩達が離れたので図書室を去ろうとする。後ろから近づく足音がした。
「あの、すみません。同じ1年生ですよね」
女子の声に振り返る。銀髪が揺れた。眠そうな眼が俺を見ている。華奢な身体の女子生徒が目に入った。下半身は良い身体してるが。
「貴方が持ってるその本、初めて見ました。私も読んでみたいです。何冊も持ってるみたいなので貸してくれませんか?」
「ああ、良い…けど」
「ありがとうございますっ、良ければ私と連絡先交換しませんか?」
「あ、ああ…」
眼の前の美少女に驚いて声が出てこない。携帯を見せると連絡先を登録した。それを見て本を一冊渡した。
「表紙絵も綺麗ですね。ではじっくり見させて頂きますねっ」
「出来れば感想を聞かせてくれると有り難い」
「はい、待っていてくださいね。そう言えば自己紹介が遅れました。私、1年Cクラスの椎名ひよりと言います」
「水野月陽哉だ。クラスは1年Dクラス。よろしく」
Cクラスの才女が俺の本を受け取った。クラスに本を趣味とする人がいないせいか凄く嬉しそうにしていた。
彼女とは読書友達になれそうだ。最も俺は本を作る側だが。
更に数日後の放課後になった。ロボット研究部に通う為に俺は教室を出た。
「水野月君っ」
「椎名!?」
何と教室の外で椎名が待ち伏せしていた。
俺に会いに来たのだろうか。
彼女は俺の作成した本を取り出した。
「読ませて頂きました。とても面白かったです。続きが気になりますね」
「本当に?出版したら売れそうか?」
「えっ、これ、水野月君が作ったんですか?」
「ああ、執筆は俺の特技なんだ。で、小説の方はどうだ」
「はい、最高だと思います。間違い無くライトノベルを読む読者の心を掴むでしょう」
「ありがとうな。次が出来たらまた読んで貰っても良いか?」
「はいっ、是非見せてくださいっ」
良かった。これで微妙ですとか或いは全然小説として完成して無いですなんて言われたらどうしようかと思った。
椎名と少し雑談した後、帰ろうとするとCクラスの方から視線を感じた。
そちらを見ると長髪の男子生徒がじっと俺の方を見ていた。が、直ぐに目を逸らした。趣味で会話してるだけだから大丈夫だと思いたい。
翌日、長谷部と2人で自室で新しく出す予定のゲームをテストしていた。
「このキャラクターの髪色、黒じゃなくて少し紫にした方が綺麗に見えるんじゃない?」
「確かに、その方が良いな。眼の色も変えた方が良いか?」
「うん、赤眼は怖すぎるよ、このキャラクターのイメージは闇なんだし、寒色系の色で良いと思う」
「魔力の数値も高過ぎるな、これじゃラスボスと変わらない難易度だ」
「序盤の最強キャラって扱いが難しいね」
長谷部は中学の時から俺の家に来ていた為、そこそこ詳しくなっていた。このゲームも来月までには作って完成させたかった。
「1部はこんな感じで良いな。次は2部何だが…」
「キャラクター多過ぎるよ。数を増やすんじゃなくてキャラの魔力というか質を上げた方が良いと思う」
「敵1人を数人掛かりで倒す感じか…そっちの方がキャラの格を下げずに済むかもな」
「うん、その方が良いよ。魅力も出るし」
ゲームで現れる敵キャラの魅力も大事だった。成るべくビジュアルも人気が出るように良くしていきたい。
「主人公が敵キャラポジションで始められるストーリーも作った方が良いんじゃない?」
「それも面白いかもな。次いでにストーリーの分岐点の選択肢も必要だな。これを選択するとハードモードになったりするみたいなのがあると面白いかもしれない」
「結構時間掛かりそうだね〜、でも売れればいいかな♪」
「それが一番だな」
それから集中して様々な機能を改良する。2週間かけてやっと出来上がって来た。
出来たゲームの資料と実物を学校に提出する。本来なら外部とのやり取りが出来ないが特例として俺は契約している企業当てにのみ、作品の提出が認められていた。
7月が近くなって来た放課後。
俺は須藤にとある警告をしていた。内容は原作でも起きた須藤とCクラス3人による暴力事件だった。Cクラスに特別棟に呼び出されたら何があっても断るように言っておいた。
「特別棟は監視カメラが無い。お前に暴力を振るわせてDクラスのポイントを減らす気だ」
「俺の部活の奴らがそこまでするか分からねえけど、行かねえでやるよ。小宮と近藤とは仲良くねえしな」
「そうか、なら大丈夫だな。Cクラスには気をつけろ」
「平気だっての」
そう言いながら部活に行く。もしこれで暴力を振るうようだったら理由次第ではDクラスを切り捨てるかもしれない。
まあ原作でも堀北には従順だったし大丈夫な気がする。堀北のポジションが俺になった感じだろう。
須藤に警告してから数日経った6月の末だった。いつも通り、長谷部と帰ろうとすると背中から声が掛かった。
「お前が水野月か」
振り返るとそこには数週間前に見た長髪の男が立っていた。男子生徒と形容し難い見た目の男。獰猛な目が俺を捉えていた。そして隣には椎名もいた。
「そうだが、何か用か?名前は龍園翔で合ってるよな」
「くくくっ…俺の名前を知ってるのか」
Cクラスの王が椎名を連れて俺の前に来た。椎名と関わるなとでも言うつもりだろうか。取り敢えず話を続ける。
「有名人だろ」
「そうか、それは別に良い」
俺と隣にいる長谷部を見て、龍園は口元を三日月に歪めた。
「お前に1つ言う事がある」
「何だ?」
嫌な予感がした。しかし龍園の次の言葉を聞いて俺は驚いた。
「単刀直入に言う、お前、隣の女と一緒に俺のクラスに入らないか」
「えっ」
俺の腕にしがみついていた長谷部が思わず声をあげる。
俺もてっきり、椎名と関わるな、とか、お前を潰す、とでも言うと思っていただけに驚いた。
「噂は聞いている。Dクラスで1人ポイントを稼いでる奴がいるってな。少し調べたら直ぐにお前に辿りついた訳だ」
「…早いな」
「Dの不良品共は口が軽いからな。容易かったぜ」
チラッと椎名を見ると心配そうに俺達を見ている。龍園は再び話始めた。
「お前の考えを当ててやる。Dクラスに貢献する姿勢を見せながら、その裏でポイントを貯めた上で頃合いを見て、隣の女と上のクラスに移籍する気だ」
「……随分と嗅ぎ回ったんだな」
「くくくっ…お前の交友関係を見れば大体分かる。Dクラスの奴らと表向きには話しているが、実際には上っ面だけだ」
龍園には俺の裏切りの素質を見抜かれていた。かと言って今の会話をDクラスに流されると困るので本音を言う気は無いが。
「俺のクラスに来たら、歓迎してやる。実力次第では俺の参謀にしてやっても良いぜ。ひよりも貸してやる。お前達が2人で何か作ってるのはお見通しだ。
俺のクラスの方がDクラスでポイント目当てで集まって来る奴らの財布にされる日々よりは楽しいと思うがな」
「…1つ質問しても良いか?」
「何だ」
俺は少し考えて思った事を口に出した。
「龍園、俺はお前をCクラスの弱点をカバー出来るほど頭がキレると見て良いんだな?」
「く、ははははははっ」
龍園は俺の問いに大きく笑った。
「俺の実力が知りてえか。良いぜ、近い内に見せてやる。だがお前は俺を認める。これは決定事項だぜ。今日はこれくらいにしてやる。俺とDクラスの阿呆共を良く見比べるんだな」
龍園はそう言うと背を向けた。椎名は一瞬俺の方を見たが龍園に呼ばれて彼について行った。長谷部がホッとしたように俺の腕に寄りかかった。
「陽哉、どうする?」
「難しい選択肢だな、Dクラスは確かに過ごしにくいが、Cクラスだって問題を山程抱えているはずだ」
「…クラスポイントだけは向こうのが高いけどね」
「更に俺達を特別扱いしてくれるかもしれない……波瑠加はどっちが良い?」
「え〜、難しいよ。池と山内から離れられるのは良いけど…」
やはり悩みどころだ。Dクラスにいると堀北次第では俺がリーダーを押し付けられるかもしれない。それよりは龍園の下についた方が良いだろう。しかし彼のやり方を考えると安全とは言えない。
遠くなった背中を見ながら、俺は長考していた。
そして…7月になった。
端末を見るとポイントが振り込まれて無かった。
「池と山内は放課後職員室に来るように」
ホームルルームで茶柱先生がそう言った。
7月、或いは8月以降主人公のプライベートポイントが増えそうですね。
6月はこんな感じでした。