闇深い世界で…悪化させた日々   作:不良品の主人公

7 / 11




池と山内に厳しい内容です。
まあ今更ですけど。






0ポイント

 

 

7月1日のホームルーム。

どのクラスもポイントが振り込まれてないと大騒ぎになっていた。登校中も教室でも生徒はポイントの話で持ちきりだった。

俺は彼らを見ながら携帯をしまい込んだ。また借りに来る人間がいると面倒だった。ポイントを使い切ったらしい軽井沢が俺の方を見る。俺は明後日の方を向いた。

 

茶柱先生が教室に入って来た。

 

 

「先生、ポイントが振り込まれてないんですけど〜」

 

「そう焦るな。まず初めに今月のクラスポイントを発表する」

 

 

茶柱先生は厚手の紙を広げた。クラス全員の視線が1枚の紙に集まる。

 

 

Aクラス 1004cp

 

Bクラス  713cp

 

Cクラス  512cp

 

Dクラス  254cp

 

 

クラスの素行がいまいちなせいか原作と比べて伸びが少ない。

先生が言うには中間試験を乗り切った1年生へのご褒美として全クラスに最低100ポイントが支給されているらしい。

ならば、引かれた分は授業態度、生活態度によるものだろう。どのクラスも結構減点されてる。特にBクラスとCクラスは俺達の知らない所で衝突があった為か、5月のクラスポイントからの伸びが少ない。

 

 

「先生、でしたら何故ポイントが振り込まれて無いのですか」

 

「少しトラブルがあってな、ポイントの支給が見送られたんだ。悪いがもう少し待ってくれ」

 

 

平田の質問に茶柱先生は淡々と返した。

もしかすると須藤が俺の知らない所でCクラスの罠に嵌ってしまったのかと思ったが、俺は彼から何も聞いてない。

 

ホームルームは淡々と進み、最後に一言。

 

 

「それから、池と山内は放課後職員室に来るように」

 

「っ…」

 

「な、何だよ、俺…何も悪い事してない…ぞ」

 

 

茶柱先生の言葉に池が苦悶の表情を浮かべ、山内はやや顔を青ざめながら反論する。明らかに後ろめたい事がある様子。どうやら2人に何かあったようだ。

 

 

「それはお前達が判断する事じゃない。残りはポイントが振り込まれるまで大人しく待機するように。トラブルが解決次第ポイントは支給されるはずだ。最も今日発表した分が振り込まれるかどうかは分からないがな」

 

 

茶柱先生は最後にそう言い残して教室を出た。

残された俺達の視線が池と山内に向く。2人共顔を真っ青にしている。クラスメイトはそんな彼らにまたお前達かといった感じで2人を白い目で見ていた。

 

 

 

 

 

 

翌日、茶柱先生から起きた事件の内容が説明された。

 

6月の最終日、池と山内、及びCクラスの女子との間でトラブルが発生した。

訴えはCクラスからで、被害者が言うには池と山内に特別棟で会った際に2人に話しかけられ、離れようとしたら押さえつけられ、身体を触られたと言うものだった。

 

 

「まっ、待ってくれっ、俺とあの娘は相思相愛なんだってっ、確かにそう聞いたんだよっ、触ったのだって悪気があった訳じゃないんだって!!」

 

「そうだよ、きっとあの娘は照れて逃げようとしたんだっ、それで止めた時に転んで少し触っちゃっただけなんだよぉ、問題にされる事じゃねえって!!」

 

 

茶柱先生の説明の途中で2人が焦った様子で慌てて弁明する。

 

 

「Cクラスの奴らに言われたんだっ、俺と春樹の事が好きな人が特別棟で待ってるからって、それで会いに行ったらちょっと事故があってその時に触っちゃっただけなんだっ」

 

「そうだ、お互い好きなんだから合意の上なんだよ!!名前分からないけどCクラスの女子が正直になればいい話だってっ、だから俺は悪くないんだ!!」

 

 

混乱してるのかその説明は稚拙なものだった。クラスはそんな2人を白い目で見ている。

 

 

茶柱先生の説明は終わってない。

 

更にCクラス側には写真という証拠があるらしい。

その写真を取った生徒は偶然通りかかったCクラスの男子でその後慌てて女子を助ける為に池と山内を引き離したとの事だ。

 

 

「ち、違うって、俺達の事が好きなのに平田や水野月の所に行こうとするから止めたんだよっ、その時に足がもつれて転んだだけなんだっ」

 

「お前等なんかより俺の方が気に入られてるんだからなっ、勘違いするなよっ!!」

 

 

あくまで事故だと主張する2人。

だが、山内は兎も角、池の主張には焦りと後ろめたさがあった。

 

女子達はあり得ない物を見る視線で2人を見ていた。

 

 

 

…様子からして仕掛けられたのはハニートラップだろう。

 

事件の内容を勝手に推測する。

 

 

1.手始めにCクラスの誰かが池と山内を何らかの方法で特別棟に呼び出した。

2.池と山内が特別棟の一室に行くとCクラスの女子生徒が待ってた。

3.そのCクラスの女子は演技で2人に好意を示しつつ、対抗馬として俺と平田の名前を上手く使って言葉巧みに2人の自制心を揺るがした。

4.上手い所池と山内の理性を無くさせ2人を暴走させた。

5.その際に上手く2人を巻き込んで転倒し、2人が上になる姿勢で身体、あるいは制服に触れさせた。

6.そこに隠れて待ち構えていた男子が写真を何枚か撮り、女子と2人を引き離した。

 

 

と言う感じか?推測出来るのはここまでだ。兎に角事件の全貌が分からない。

 

 

「今回の事件は重大なものだ。緊急を要するものとして審議は今日の放課後行われる。名乗り出る者がいるか分からないが弁護人は2人までだ。審議の結果次第ではDクラスのポイントは全て剥奪される」

 

 

茶柱先生は最後にそう言ってホームルームを終えた。

 

残されたDクラスの面々は2人の方を見たり、ヒソヒソと陰口を呟いたりしていた。

 

 

「な、何だよっ、俺は悪くねえぞ…」

 

「もし相思相愛じゃ無かったとしてもCクラスが嵌めたんだってっ!!そうなんだよっ!!」

 

 

2人の弁解はクラスメイトには届かない。皆白い目で2人を見ている。

 

 

「くそっ、春樹っ、Cクラスに行くぞっ」

 

「っ、そうだなっ、あの娘が正直になれば良いんだっ」

 

 

居心地の悪くなった2人は教室を出てCクラスへと向かった。

池と山内が居なくなった後の教室は2人への不満が蔓延していた。

 

 

「最悪っ、なんであんな奴らと同じクラスなん」

 

「怖い」

 

 

主に女子からの不満が飛び交っていた。男子も呆れのこもった目で2人が行った先を見ている。

 

 

「皆、落ち着いて、何が起きたのか分からないから」

 

「平田君、私無理。あいつ等気持ち悪すぎる」

 

「早く退学になれば良いのに」

 

 

2人に突き放され尚フォローとする平田だが、一向に不満は収まらない。女子達は性的に受け付け無いのか嫌悪のこもった視線で2人の机を見ている。

事件が事件な為、櫛田も結構引いてる。彼女は流石にフォロー出来ないようだ。

堀北が前を向いたまま俺に問いかける。

 

 

「貴方はどう思う。池君達が退学になれば良かったと思う?」

 

「…事件の詳細が分からない以上判断出来ない」

 

 

十中八九、龍園の策略だと思うが、池と山内の性質上、彼らの暴走も混じっていると思う。全てが龍園の作戦通りと言う訳では無さそうに見える。

 

 

ピロンと俺の携帯が鳴る。知らない連絡先だった。

 

 

『猿どもはどうなってる?』

 

 

内容からして龍園だろう。どうやら椎名から連絡先を貰ったようだ。

 

 

『2人を嫌悪している。Dクラスに2人を助けようとする人間はほぼ居ない』

 

 

そう返しておいた。

画面の向こう側で彼は笑っているのだろう。今2人がCクラスに殴り込みに行ってるだろうが、どうなってるのだろうか。

 

 

ピロンと携帯が鳴る。

 

内容を確認すると、件の写真が複数枚添付してあった。

 

 

Cクラスの女子は名前は知らないが整った体型的に運動部と思われる女子生徒だった。

 

その女子生徒が倒れており、上からその胸を山内が掴み、池が両脚を押さえ込んでるように見える写真。

もつれて転んだだけとも取れるが確実に触れている。

 

もう1枚は山内が女子の両手を押さえ込み、池が女子の上に覆いかぶさってるように見える写真だった。

 

一体2人にどんな言葉を投げ掛けてどう誘導したらこの体勢になるのか。山内に押さえつけられた所を何とか池に足払いでもかけたのだろうか。

 

どんな成り行きで、何故こうなってるのかが分からないが、これは普通に見たら確かに2人の暴走に見える写真だった。

 

他にもCクラスに有利な写真が2枚送られて来ていた。審議で弁護しても無駄だと言う事か。

 

最後にメッセージがついていた。

 

 

『コイツらが退学になればお前の女も少しは安心出来るだろう?』

 

 

ズルい言い回しだ。同意せずにはいられない。

 

『間違い無いな、身体を張った女子へ報酬を渡してやれ』と返信し、10万ポイントを送っておく。『確かに受け取ったぜ』と返信が来る。

 

龍園、悪くないじゃねえか。これで長谷部が少しだけ過ごしやすくなる。ご褒美に何か用意するか。Cクラスは学力がネックだから期末試験対策の模擬テストと解説でも作成して渡しておこう。

 

 

池と山内は授業が始まっても戻って来なかった。

Cクラスの方から聞こえる声からして、まだ訴えの取り下げを諦めてない様子。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昼休み、俺は生徒指導室に呼び出された。

 

 

「遅いぞ水野月」

 

「すみません」

 

 

茶柱先生が腕を組んで待っていた。

 

 

「今回の件についてだがお前はどうするつもりだ」

 

「考える時間がなさ過ぎます。それにCクラス側には証拠があります」

 

「ふっ、そんな事は分かってる。だがお前なら訴えを取り下げる事も可能だろう。プライベートポイントを使ってな」

 

 

茶柱先生は俺のポケットを見ながらそう言った。

 

 

「Cクラスに大量のポイントを渡して訴えを取り下げて貰う算段ですか?他のクラスメイトなら兎も角、次の期末試験で退学になるかもしれない2人です。推定100万単位のポイントを払ってまで救う価値がありますか?」

 

「筆記試験で点数が足りない分はポイントで買えば良い。1点5万ポイントにしてやる」

 

「きりがありません。プライベートポイントの優位性の意味が無くなります。それに今持ってるポイントは次にクラスポイントを増やす為の必要資金です。そうで無くとも、残りの真面目な生徒の為にポイントは温存して置くべきです。」

 

「成る程、それがお前の考えか」

 

 

言いながらタバコを吸う。煙が俺の方にくる。受動喫煙だった。この教師は外側が綺麗でも中身は汚れているのだろう。

 

 

「人数が減れば、Aクラスでの卒業に不利になる可能性がある。それでも助けないか?」

 

「…Cクラスと交渉すれば大量のプライベートポイントを取られます。事件の内容を推測するに示談金として300万は奪われるでしょう。そうすればCクラスの手札が増えるだけです」

 

「お前は今回は動かないつもりだな」

 

「はい、出来る事はありません」

 

「ふっ、なら良い。だが対価として次にポイントを増やす機会が来たらその時は働いて貰う。そうでなければ分かるな?」

 

「…もし、俺が失敗したらどうなりますか」

 

「ふっ、その時はお前のプライベートポイントを全て堀北に預けろ。そうすれば少しは勝ち筋が見えて来るはずだ」

 

「それは嫌ですね…分かりました。クラスポイントを増やして見せます」

 

「そうしろ、でないと私はクラスにお前のプライベートポイントを開示するだろう」

 

「…承知しました」

 

 

何とか誤魔化せた。この先生はやはりろくでなしだった。良いのは見てくれだけだった。

 

表向きには彼女と対立しないまま静かに裏で準備する。

 

それにしても茶柱先生は堀北の何を信用してるのだろうか。少なくとも彼女は今のところただの頭が切れるだけの孤独少女だった。制服の下に隠したボイスレコーダーで録音しながら俺はどのクラスに移動するか考えるのだった。明確なリーダーのいるAかCクラスが狙い目だった。

 

 

 

 

放課後になった。

 

短時間で目撃者を探せる訳もなく審議が始まった。

 

弁護人として平田が立候補した。

彼を慕う女子達が全員で止めに入ったが結局出る事になった。

 

櫛田は出なかった。流石に今の池と山内と関わるのは危険と判断したようだ。

 

 

そして、審議が始まった。服の指紋検査をするまでもなく、Cクラス側には2人が女子に触れてる写真がある為、証拠は充分だった。池と山内の弁明は通らなかったそうだ。

 

 

 

 

 

そして、翌日、茶柱先生からの話があった。

 

 

それは、池と山内が退学処分になった事。

これにより1人辺り自主退学300cpのペナルティを受け、Dクラスのクラスポイントは0ポイントになってしまった。

 

クラス中で2人に対する愚痴と不満が蔓延していた。

同時にポイントに飢えたクラスメイトのポイントをめぐる攻防戦が始まった。気の弱い女子は軽井沢や篠原のグループの格好のターゲットだった。Dクラスは荒れ始めた。

 

 

なんで…こんな…どうして…僕は…

 

「…平田君…?」

 

 

いつもなら止める平田はブツブツと何かを呟きながら座ったままだった。王美雨が心配そうに見ていた。

 

他からポイントを借りてる軽井沢も平田の方を見て困惑していた。その表情には何処か焦りがあった。折角作ったクラスのリーダーである男子生徒の彼女と言う肩書きが機能しなくなったのだ。内心は焦りまくってるだろう。キョロキョロと周りを見回す。

 

が、何を思ったのか俺の方に近づいて来た。俺の右腕に両手を重ねた。

 

 

「ねえ、水野月君、私もっと水野月君と仲良くなりたいな、いいでしょ?ねっ?」

 

「……」

 

 

急に近づいて来た軽井沢に少し困惑した。彼女は俺の顔を覗き込むようにして話し続ける。

 

 

「あたし、もうポイント無いんだ、悪いんだけどまたポイント貸してくれない?」

 

 

軽井沢の声は決して大きくなかった。俺に聞こえるくらいの小さな声で話したつもりだった。しかしポイントに飢えてるクラスメイトは軽井沢が何をしているのか察したようで俺達の方を見る。

 

 

「…5月の分はどうした」

 

「ああ、アレね。もう使っちゃったよ、ねえ、いいでしょ、水野月君なら結構ポイント持ってそうだし、お願いっ」

 

「……」

 

 

馴れ馴れしく俺の右腕にしがみついてくる。何かを狙ってるような軽薄な笑顔を浮かべている。

長谷部が軽井沢を睨んでいる。松下が自席から振り返って俺達を見ていた。

 

他の生徒も俺達のやり取りを見ていた。ここで折れると皆にポイントを配る事になる。俺は立ち上がり軽井沢の手を払い除けた。そして平田の方を見る。

 

 

「駄目だ。それより自分の彼氏である平田の心配をしろ」

 

「で、でも今は…」

 

「何だ、片方が駄目になったら見捨てる程お前達の関係は薄っぺらいものなのか?」

 

「えっ…あっ、えっと…」

 

「行って来い、お前の彼氏だろ」

 

「……」

 

「行きな」

 

 

偽の彼氏彼女だと知っていた上で軽井沢を追い返す。少なくともこの場では貸さないし渡さない。そうしないとクラスメイトの財布にされる。

 

話はズレるが俺の体格はクラスでは須藤や高円寺の次に大きい。平田や三宅よりは制服の上からでも明らかに身体全体が発達している。顔は綺麗に整ってるとは言え身体から発する威圧感はかなりのものだ。加えて体育の授業で誰よりも高い能力を発揮している。フィジカル面で俺に勝てる生徒はいなかった。だから俺から力づくでポイントを強奪出来る生徒はいない。ましてやDクラスなんて大半が雑魚だった。

 

軽井沢は俺を見てあたふたしていたが、取り敢えず平田の方に向かった。

 

「だ、大丈夫?」とか「げ、元気出して」とかまるで今の平田に触りたく無いかのように感情の籠もってない声掛けをしている。そこには女子のリーダーらしさは欠片も無かった。

 

 

ピロンと携帯が鳴る。送信元は長谷部だった。

『良い感じだよ、何ならもっと強く撥ねつけて良いと思う』と送られてきた。

彼女の方を見るとニコッと笑った。その笑顔に思わず見惚れてしまった。『ありがとう。もう、そうする』と返信する。携帯を見た彼女が微笑んだ。その綺麗さに俺は魅入っていた。

 

 

軽井沢と俺のやり取りを見終えたDクラスは再びポイントの貸し借り、または池と山内に対する愚痴で溢れかえった。櫛田の方を見たが彼女は特に止めなかった。止めるメリットが無いと判断したのだろう。平田が機能しないDクラスはまさに不良品になりかけのクラスだった。

 

 

そして、この日からDクラスはDクラスらしくなっていくのだった。

 

 

 

 







と言う訳で早くも退学になってしまった2人。

これからDクラスはどうなるのでしょう。


  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。