飴色の瞳に映るのは   作:愚奏ましろ3

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初めまして。愚奏ましろ3と申します。
本作は私自身初めての二次創作小説で至らぬ点・不行き届きな点が見受けられると思います。遠慮のない報告や感想お待ちしております。
本作は「魔法少女ノ魔女裁判」を橘シェリーの視点で書いているため、ゲーム本編のシナリオより、台詞・地の文を引用させていただいております。初めての投稿故、規約の「原作の大幅コピー」に該当するか恐縮ですが理解しておりません。こちらも、報告お待ちしております。


Prologue Case0.1
「これは悪い夢」


 それは不思議な夢でした。

 

 ミステリーオタクの私には、みんなのように絶望したような顔を浮かべることも、みんなのように固まっていることも、もったいなくて出来っこありません!だって、「拉致監禁」これが私の身に起こったのですから!更には同じように集められ、この場にいる12人の女の子たちの中で殺人事件が起こるのだといいます。

 事件が起こったら、私が真相を解明してあげましょう!なにしろ私、橘シェリーは名探偵!ですからね☆

 

 牢屋敷の運営だというゴクチョーさんから牢屋敷のルールを聞いた後、一緒のグループになった、桜羽エマさん・遠野ハンナさん・氷上メルルさんと夕食を食べました。

 そんな中、カッカッと上品とは言えないような音を立てながら勢いよく食べるハンナさんに対し、エマさんはうつむいたまま何度もため息をついていて、どろりとしたスープをよそったスプーンは動いていませんでした。

 

 

「エマさん、スプーンが動いてませんけど、具合でも悪いんですか?」

 

 

「う、ううん。ヒロちゃん、どこに行ったのかなって」

 

 

「ヒロさんといえば……先ほどゴクチョーからのお話で『脱走した』とおっしゃられていた方ですわよね。エマさんは、ヒロさんとお知り合いだったんですの?」

 

 

「うん。ヒロちゃんとは幼馴染で中学も一緒だったんだ。でもなんでか分からないんだけど、ある日を境に距離が開いちゃって……さっき房で久しぶりに会ったんだけど、様子が、なんか変で……」

 

 

「急に見知らぬ場所にいて、気が動転してしまったのでしょうか?」

 

 

「いや、ヒロちゃんは脱走なんてする子じゃないんだ。いつもかっこよくて、正しいことは正しい、正しくないことは正しくないってはっきり言える、正直な子なんだ。だから、房の扉を無理やりこじ開けたときはびっくりしちゃって……」

 

 

「エマさんの話の通りなら、確かに少々妙な話ですわね」

 

 

「もしくは、無理やりにでも房を出なければならない正しい理由があった、とかでしょうか?」

 

 

「なんにせよ、心配ですね……」

 

 

「うん……」

 

 

 そこから先はうまく話も続かず解散することになり、私は用事のなかったハンナさんを誘って,牢屋敷を探検することにしました。なにせハンナさんに聞いてみたいことがあったので!

 

 

「ハンナさんハンナさん!さっき見せてくれた浮遊の魔法、どれくらい続けられるんですか!?」

 

 

「べっ、べつにいくら続けられたっていいんじゃねーかしら?シェリーさんがそれを知って何になるんですの?」

 

 

「いえいえ~、時間次第では地面に足跡を残さない殺人ができるな~と考えてしまいまして」

 

 

「勝手に私を殺人犯にしないでくれるかしら!!!!?」

 

 

「いえいえ~、殺人が可能かどうか検証するために、確認しているだけですよ~!」

 

 

「どーかしらねぇ~?もしそんな殺人が起こったら真っ先に私が犯人だと捲し立てるにちげーねーですわ!」

 

 

「それは現場の証拠次第です~」

 

 

「逆に現場で何か握り潰されたような跡があったら、真っ先にあなたを疑って差し上げますわよ。このゴリラ女!」

 

 

「え~!証拠が潰れてるだけで犯人扱いなんてひどいです~!それに私、ゴリラは嫌ですよぅ~、妖精さんって呼んでください!」

 

 

「お互い様ですわよ、そ!れ!に!あなたのどこに妖精と呼べる要素があるのかしら?」

 

 

「それはもちろん――」

 

 

 ――同い年の女の子と、こんなに楽しいおしゃべりをしたのはいつぶりでしょうか。小学校でも、中学校でも、仲良くしていた子やクラスメイトは親しみを持って「妖精さん」と私を呼び、お話をしたり遊んだりしましたが、どんなときも相手はドーナツの穴を覗いているような、視線の先は私の瞳だけれど、私を見透かしてどこか別の方を見ているような気がしていました。でも、今、目の前に立っている女の子、ハンナさんは、私というドーナツに向き合い、私の瞳に、心で、話してくれている。そう実感できるような満足感がありました。

 

 

「あ、あああぁぁぁっ!」

 

 

「ピ!?」

 

 

「今のはレイアさんの悲鳴、中庭の方からでしょうか?早速事件発生ですか!?高まってきましたね~!」

 

 

「あ、ああ、あなた本当にどうかしてやがるんじゃないかしら?」

 

 

 事件性のある悲鳴を聞いてハンナさんは足がすくみ、顔が青ざめていました。

 

 

「…本当に事件だったらやべーですわ。急いで悲鳴のもとに向かい……」

 

 

「あ゙あ゙ぁっ、あああ゙あ゙あ゙ぁ!!」

 

 

「ぎゃああああっ!」

 

 

「ビッッ……!」

 

 

「今のは…アンアンさんの声?とココさんの声でしょうか?」

 

 

 立て続けに悲鳴が聞こえ、他の女の子の叫び声・怒号も聞こえ、急に静かになりました。その時間は一分にも満たなかったように感じます。

 これは、事件じゃない。直感的に異常事態であると悟り、生まれて初めて全身の身の毛がよだちました。

 

 

 ――何よりも大切なものを、失いそうな気がして――

 

 

 すぐに、廊下の奥から鈍重な足音が聞こえてきました。

 

 

「ひっ、なんなんですの……!」

 

 

 姿を現したのは、黒い異形。血濡れた剣を右手に持ち、その赤い目は底なし沼のようで、見ているだけで吸い込まれそうでした。

 私がこの屋敷に拉致されて初めて見る姿。

 

 

「ふむ。ゴクチョーさんやエマさんが話してた人じゃないですか?」

 

 

 そう自分の記憶に意識を向けた刹那。

 

 

「――!!」

 

 

「あ、ぐ……。」

 

 

 異形は、5m近くあった間合いを一気に詰め、ハンナさんの体を斜めに切り裂いていました。

 

 

「ハンナさん!?」

 

 

 ハンナさんは呆気にとられた様子のまま崩れ落ち、血だまりを作っていました。

 さっきまでコロコロと変わっていた表情と、ハキハキと喋っていた口は、もう動かなくて。

 

 

 あぁ…ハンナさんは死んでしまったんですね。

 

 

 私は、自分の中で湧き上がってくる「何か」に逆らえず、

 

 

 ――私の魔法は「怪力」、武器が無くても戦える。倒すことができれば上出来だ。だって、私の魔法は、人を殺せるんだから――

 

 

 右手を力強く握りしめ、その腕を異形に向けて振りかぶり……

 

 

「あああああっ!」

 

 

ザグッ゙ッ゙――

 

 

 残念ながら拳は届かず、私の腕は呆気なく切り捨てられ、返す刃を肩から切り下ろされました。

 払った剣の勢いのままに私の体は飛ばされて廊下の壁に背中から叩きつけられ、背骨が砕けて体の内臓が割け、場所が入れ替わっているのが分かりました。

 

 

 体って壊れると、こんなに痛いんですね……。

 

 

 神経がほぼ繋がっていない瞼を上げて、ぼんやりとした視界の中で傍らに立っていた異形、、、二階堂ヒロさんは、優しくつつくだけで今にも泣きだしそうな表情を浮かべていた気がします。

 

 

「あ……あはは……やられちゃいました。」

 

 

『ハンナさん、ごめんなさい……』

 

 

 私は零れ落ちていく意識の残滓に縋り付き、どんな時も友達の前では笑顔でいようと、薄く開いた瞳で最後にハンナさんを見ながらそう伝え、闇の中へと落ちていきました。

 

 

「!!!!!ッッ!!」

 

 

 シーツを蹴飛ばして飛び起きる。ここは……いつも生活している自室……?

 頭がくらくらしてて自分の状況がまだよく分かりません、とりあえず電気をつけましょう……

 重すぎる足で何とか蛍光灯をつけて部屋を見まわす。

 

 

「うわっっ!!」

 

 

 ベッドが信じられないくらい濡れている、おかげで柄にもない叫び声をあげてしまいました。

 衝撃的なものを見たことで意識もはっきりしだしたのか、自分に今何が起こっているのか分かってきましたよ。

 まず、体から滝のように汗が流れています。ベッドが見たことないくらい濡れているのはそのせいでしょう。次に、体全体が異常に重たいです。汗をかいてるのと合わせて、シンプルに風邪でしょうか?最後に、今まで生きてきた中で一番嫌な目覚めを迎えたこと。夢を見ましたけど、どんな夢でしたっけ?目覚めが悪かったので、悪夢だとは思うのですが……。もしかして、お化けか、もしくは幽霊が出てきて、追われる夢でも見たんですかね?ん~、だとしても私はお化けに会えたら喜ぶような人間のはずなのに。それこそ夢だから、でしょうか?

 なんにせよ悪い夢だったのは間違いなさそうです。

 

 今は……まだ朝の6時前ですか。ずいぶん早起きをしてしまったようです。いつもなら朝早くに起きれた日には人手の少ない街に出てのんびり散策するのがお決まりなんですが、風邪をひいてるみたいなので療養に努めた方がいいですね。あいにく春休みで時間はたっぷりありますし、お風呂で汗を流して体をあたためて、もうひと眠りするとしましょうか。

 ふと、部屋の中に置かれたスタンドミラーが目に入って、

 

 

「ひどい顔です」

 

 

 こんな顔はみんなに見せちゃいけない、少しでも早く体調を戻そう。

 1週間後は4月1日、世界の多くが嘘で溢れる日。名探偵の私としてはワクワクする日だけど、今年はそれよりももっとワクワクする日。そう、高校に入学する日!新しい制服、新しい校舎、新しい学び、新しい出会い。高校では、「友達」を作ることができるかな?恋なんて……しちゃったりするんでしょうか?ワクワクして、想像が止まりません!!

 そういえば、昔入っていた施設に居た女の子の先輩方は、今頃どうしているんでしょう。皆さん高校に入ったと同時に施設も抜けられていきましたが、里親が決まっていたのでしょうか?その里親のもとで一流企業で働いていたり、伴侶を見つけて同棲していたり……?高校・大学に入学して、行動範囲が広がったら会いに行ってみましょう。先輩方はよく、「牢屋敷」について噂してましたっけ?私も気になって自分なりに調べたんですけどあまり有力な情報は得られなかったんですよね~。この噂も先輩方と会った時の話題にしましょうか。

 あ、風邪を早く治さなきゃいけないのに思案してしまいました。お風呂に入って、もう一度寝て早く元気になりましょう!ひどい顔でいるより、笑顔でニコニコしているほうがいいですからね!

 

 

 来る4月1日、橘シェリーは、高校の門をくぐることはなく、足を踏み入れたのは、絶海の孤島に聳え立つ、あの夢に見た牢屋敷だった。




規約違反等に引っかからなければ、続きを投稿予定です。
(投稿予定時期;一か月以内)
9/8 加筆修正を行いました。
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