飴色の瞳に映るのは   作:愚奏ましろ3

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Case1 第1章
第1話「ワクワクの足音」


 ぴちょん、ぴちょんと、水の滴る音が私の意識をほんのりと覚醒させていく。

 

 知らない天井……

 

 ジメジメとした空気に違和感を覚えながら体を起こし、寝ぼけた目をこすりながら辺りを見回します。

 ……これは一体どういうことでしょう?私は昨日、高校の入学式に備えていつも寝ているベッドで21時には寝たはずなのですが、目を覚ますと見たこともない空間にいます。石壁と鉄格子に囲まれた薄暗いこの空間を、私の直感は牢屋だと答えを出しました。更に、私のものじゃないカワイイ洋服を着ていたり、牢屋の雰囲気は中世なのに近代的なモニターが壁にあったり不思議な感覚が拭えなかったのですが、

 

 

「えっ」

 

 

 ベッドには私が寝ていた頭の上にポシェットが置かれていて、その中には私がこれでもかと使い込んでいた虫眼鏡や手帳といった探偵セットが入っていました。ふと知ってるものを見つけてしまって、自然に口元が緩んでしまいます。

 意識がはっきりとしてきて改めて、

 

 

「なぜ私は牢屋に……?」

 

 

「んっ、んんうううぅぅ……」

 

 

 私がポツリと言葉を落とすと、真下から苦しそうな唸り声が聞こえました。私は寝ていたベッドから頭を乗り出し、下を覗き見ます。私が寝ていたのはどうやら二段ベッドだったようで、私の下側では口にマスクをした、いかにも不良という見た目の女の子が眠っていました。

 起こすのは悪いですが、この不可思議な状況について何か知ってることがないか聞いてみましょう!

 

 

「あのー」

 

 

「……」

 

 

「あのー、すいませーん」

 

 

「うぅ、ううんんん」

 

 

 うーん、なかなか起きませんね。壁側に寝返りを打って、こちらに背を向けてしまいました。でも、声に反応したということは、あと一押しかもしれません。もう少し大きな声で呼びかけてみましょう!

 

 

「あのー!すいませーん!ちょーーっといいですかあ!」

 

 

「んああぁ?んだようるせえなぁ……ッヴェアアァ!!!」

 

 

「ようやく起きましたね!」

 

 

 不良の女の子は素っ頓狂な叫び声をあげて飛び起きました。

 私はベッドを降りて、驚いて壁に背をつけている彼女に問いかけます。

 

 

「この牢屋について何か知っていることはありませんか?」

 

 

「な、なに言ってんだお前!頭だけ出してウチをビビらせやがって、タダで済むと思うなよ!……って、牢屋?」

 

 

「ええ、いま私たちがいるこの空間です。私も今起きたばっかりで、気が付いたらここに居たって感じです」

 

 

すると不良の女の子は周りを見回すと微かに震え、一瞬顔が青ざめる。

 

 

「ウ、ウチは……とうとう捕まったのか?」

 

 

その時、鉄格子の向こうから声が聞こえてきます。

 

 

『ねぇ、ここどこなのかな!?』

 

 

不良の女の子はその言葉を皮切りに、必死の形相で鉄格子に向かい、鉄格子を揺らし、殴り始めました。

 

 

「ざけんなぶっ殺すぞおらぁ!出せぇ!!」 

 

 

 他にも同じような声が飛んできます。

 

 

『何を考えていますの!?わたくしをこんなところに閉じ込めるなんて!』

 

 

『少女監禁とか、犯罪だよこれ!誰だか知らないけど人生終わるよ!?』

 

 

 ふむ、どうやら牢屋に捕らえられているのは私たちだけではないみたいで、

声を聴く限り、私たちとほぼ同じタイミングで目を覚ましたようですね。

 これはきっと、拉致監禁事件。そして被害者は推定約十人……ただならぬ事件の予感がします~!

 

 

ブツッ……

 

この牢屋では異質なノイズ音が走り、音がした方に顔を向けると、顔が90度曲がったようなフクロウがモニターに映っていました。

 

 

「あ……もしもし……映像って見えてます……?何せ古くて故障が多いので……やれやれ。私、ゴクチョーと申します。」

 

 

 獄長?ゴクチョー…でしょうか?どうやらここは、牢屋で間違いないみたいですね!

不良の女の子もモニターが気になったのか、鉄格子から離れ、私の隣に移動してきました。

 

 

「あなたが私たちを誘拐した、ゴクチョーさんですか!?」

 

 

「詳しい説明がしたいので、ラウンジに集合してください。監房の鍵を開けますので、看守の後についてきてください。抵抗とかは自由なんですが……命とかなくなっちゃうので……はい……。」

 

 

 ここでモニターの映像がプツリと消えました。

 どうやら一方通行の映像だったらしく、残念ながら、私の質問にゴクチョーさんは答えてくれませんでした。

 

 

「通話じゃなかったんですね、まぁ後でお話しできそうですし、その時に聞くことにしましょうか!」

 

 

「……さっきのゴクチョーがウチらをさらった犯人だとして、どうするつもりだよ」

 

 

「それはもちろん、私たちをさらった目的を問い詰めるんですよ!こんな大それた犯行を行うからには何か理由があるはずですからね!」

 

 

「相手はあの化け物フクロウだ、まともに話に応じるとは思えねーけどな」

 

 

「そうですかね~……」

 

 

 不良の女の子との話が途切れたところで、さっき声が聞こえてきた方とは反対側からズズロロロと人の足音とは明らかに違う音が近づいています。おそらくゴクチョーさんが言っていた、看守さんだとは思いますが……

 ついに鉄格子から見えたその姿は、2mを超え、幾つもの腕に刃がうねった鎌を抱え、纏ったフードのついた黒衣に包まれた顔は、ゴクチョーと同じような幾何学的な模様で構成されていました。

 

 

「はーっ……大きいですね~!」

「っ、なんだこいつ……!」

 

 

 不良の女の子は今度こそ青ざめた顔をし、尻もちをついていました。

 

 

「大丈夫ですか?」

 

 

「…………」

 

 

 私は腕を差し出しましたが、彼女は看守さんから目を離せず私の言葉が届いていないようでした。

 看守さんが私たちの監房の前を通る直前、鉄格子からカチャリと音が鳴り、看守さんが通路の奥の方へと進んでいきました。

 

 

「鉄格子が開いたみたいですね」

 

 

「…………」

 

 

 そう言い鉄格子の方を見やったとき、黒い服をまとった女の子が通り過ぎていきました。

 

 

「あれ?」

 

 

 黒い服の女の子は風のように看守さんが現れた方へ消えて行ってしまいました。

 不良の女の子は看守さんが見えなくなり少し落ち着いたのか、立ち上がっていて、

 

 

「チッ……」

 

 

 舌打ちを打ちそそくさと監房を出ていってしまいました、気難しい子なんでしょうか?

 私も監房の外へ出て、それと同時に、右側からいろんな女の子たちが姿を現しました。

 

 

「ぎゃああぁ!触んな化け物ぉ!キモいから!わかった、わかりました、行くから!!」

 

 

 約1名、看守さんに連行される形で出てきた元気な子もいましたが。

 

 

「ま、待ってよヒロちゃん!」

 

 

 通路に張った声が響き、そちらに無理やり顔を向かされます。

 声をあげた桜色の髪をした女の子は、赤い花を髪飾りに着けている少女のもとへ走り追いつきました。

 

 

「ヒロちゃん!」

 

 

「……。」

 

 

「あの、あのね。色々あったけど、ヒロちゃんにまた会えてよかった。ボク、変わったんだよ。もう前のボクじゃない。ヒロちゃんと友だちになりたいんだ。」

 

 

「……。」

 

 

「ボ、ボク諦めないから!」

 

 

「っ……。」

 

 

 鬱陶しさを顔に表し、桜色の髪の少女に振り返り、思い切り突き飛ばしました。

 

 

「あうっ」

 

 

 桜色の髪の少女は突き飛ばした勢いより強めに転がり、石の床で膝をすりむいてるように見えます。

 

 

「君が変わったとして、そのことが、私になんの意味が?私が君を嫌いなことは変わらない。この先永遠に。」

 

 

 赤い花の髪飾りの女の子は物言わせぬ凄みをもった言葉を放ち、早歩きで私の隣を通り過ぎていきました。

 

 

「ま、待ってよ……!」

 

 

「ふむ……。」

 

 

 私は、この空間では特殊だと思えた光景に、これから楽しいことが起こる予感を感じずにはいられなかったのです!

 

 

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