ゼンゼロ探偵もの概念 作:オルペウスペロペロ
日が落ちルミナススクエアの人通りが少なくなってきた頃、俺たちは事務所からバー『ムーンライト』へと向かっていた。
これから行くバーは同居人のリサが普段バイトしている所である。
人間も知能構造体もシリオンさえも満足する、知る人ぞ知るルミナススクエアの名店だ。
マスターは寡黙な人で新エリー都全ての人の拠り所になれたらと始めた聖人みたいな人だ。
新エリー都に探偵事務所を構えてから大きな依頼や気分を変えたい時などは決まってこのバーで飲むことにしていた。
最近は探偵業の依頼が少なかったため久々になる。
エクスも久しぶりの『ムーンライト』に歩いてる姿も心なしか喜んでいるように見える。
階段を降り重厚なドアを開けると少し暗めの店内、スポットライトの様に暖色のライトを浴びるカウンターにはマスターがグラスを拭いていた。
店内はテーブル席が3卓そして隅にあるピアノがある。
今日は早い時間に来店したためか客は自分たちだけのようだ。
「いらっしゃいませ、ぴょん」
出迎えたのはバイトのリサである。
いつもの服装とは異なりバイトの時はいつもバニーガール姿である。
なにより独特な語尾はバニー服を着ている時の決まり文句とのことだ。
服装もバーで働くならバニーガールなのは当然と本人が勝手に着ているだけである。
バイトがこんなに自我を出しても許されているのはマスターの器の大きさゆえだろう。
なおこんなにも好き勝手やってるが常に無表情の愛想ゼロである。
「マスターいつものを頼むぞ」
入店するなりエクスが注文しとテーブル席に座った。
エクスに続いて俺もテーブル席に座ると脇にテーブルの脇に置いてあるメニューを手に取り注文を決めた。
「俺は今日のオススメで」
「かしこまりました、ぴょん」
基本的にテーブル席の対応はリサが対応している。
マスターは黙々と注文のお酒を準備していた。
注文してすぐエクスの注文していたエーテル電池がテーブルの上に置かれた。
『ムーンライト』のエーテル電池がエクスのお気に入りである。
なんでもここの電池は市販の物とは異なり特別な味がするとかなんとか。
電池の味に違いがあるのか疑問であるがこの店にやってくるボンプたちからも人気の一品である。
エクスがエーテル電池を両手に持って充電している。
「うーむ、やはりここの電池は格別だな。高級エーテル電池も良い物だがこれはここでしか味わえないからな」
満足気なエクスを横目にインターノットを起動した。
今最も人気な記事が「怪人騒動決着!」と言うもので実は複数で稼働していた怪人は既に全て撃破され解決されたとのこと。
怪人を倒したのはまたしても若き虚ろ狩りの一太刀だったそうだ。
裏には反乱軍やマフィアの新型の実験何じゃないかとインターノットの住人達が話し合っていた。
俺達が1体倒している内に騒動は終わっていたらしい。
「おまたせしました、ぴょん」
「おう、ありがとよ」
テーブルに置かれたお酒は透き通った青色でグラスにはレモンも添えてある。
お酒には詳しくないためどういったものかはわからない。
がマスターの腕は確かである。
「うん、美味しい。流石マスターさんだな」
「それを作ったのは私です、ぴょん」
「まじか、腕を上げたな」
「ええ、リサさんにはもう教える事がない程です。最近は任せられる事が増えて店を開けられる日が増えて助かっています。アッシュさんからリサさんを紹介頂いた時は驚きましたが今では彼女目当てのお客様の方もいらっしゃる程ですよ」
マスターから褒めれてもリサの表情は変わらず無表情だが普段から接している俺から見ればどこか誇らしげにしているように感じた。
リサがここでバイトをすることになったきっかけは、ある日マスターから相談を受けたことからだった。
ちょっとした不注意で腕を怪我したことで長期的に店を休業にすることにしたが、今まで1人で経営していたがまた自身に何かあればお客さんに迷惑がかかる。
この際、休業期間中に従業員を雇おうと思ったとのことだった。
普段から何でも言ってくれと言っていたため募集の手伝いを快く引き受けたのだが
「私で良ければやりたいです」
その相談事を受けてすぐリサが申し出た時はマスターと一緒に驚いたものだった。
最初はマスターはリサの申し出を断ろうとしたが
「マスター、俺はリサがやりたいと言ったことを叶えてやりたいです。良ければお願いします」
その後マスターから営業中の試験の数々を合格し見事バイトという形で『ムーンライト』で働くこととなった。
流石知能構造体ということか何度か通っている内にマスターの作業を見て覚えていたという。
その後、『ムーンライト』は予定より早くに営業を始めることができた。
1番にエクスと一緒に来店した時リサがバニー服を着ていて未だに何故そうなったのか不明である。
まさか可愛いということだけで着るわけがないだろう。
「またのお越しをお待ちしております」
「お待ちしております、ぴょん」
店を後にしてエクスと共に事務所に向けて帰路についていた。
「アッシュ、お前明日からはどうするんだ?」
「あー、明日からは何もないんだな。明日からはまた日雇いの仕事でも探すよ」
エクスから明日からの予定を聞かれた。
依頼も終えたことだし白祇重工の工事も従業員のみで既に作業を進めていく方針とのことで日雇い組の俺はしばらくの間暇になっていた。
「私としてはしばらくの間は拾ってきたあの頭について調べたい。つまらん依頼には私は関与しないからな」
拾ってきた頭。
俺が破壊した偽物の怪人Wの頭についてエクスはしばらくの間付きっきりになるらしい。
エクスの記憶について関係があるものかもしれないなら仕方が無い。
事務所に着くとキャットタワーからキングがにゃんと鳴くとそのまま寝てしまった。
エクスも今日は一度寝るみたいで充電スタンドへ向かって行った。
アルコールを入れたためか少し眠気がある状態で所長椅子に身を預けると俺は意識を手放した。