一本目
桜の花びらが散らつく四月の中頃。とある高校の剣道場にて、紺色の剣道着と袴を着て、胴と垂を身につけた青緑の髪の女性が正座をして黙想をしていた。
彼女の名は『ベレス』。この高校の教師で剣道部の顧問を務めている。ベレスは黙想を終えると、竹刀を持って立ち上がり、素振りを始める。
ベレス「・・・33・・・34・・・35・・・」
この日は土曜日の午前稽古を終えた後であり、清掃と片付けを終え、部員達が帰宅した後、ベレスは一人残って自主練をしていた。
ベレス「・・・97・・・98・・・99・・・100!」
ベレスは100回の上下素振りを終える。彼女の顔には大量の汗が流れていた。ベレスは道場の隅に正座し、防具を外すと、水筒を手に取り、一気に流し込む。
ベレス「うっ・・・ぷはぁ!」
すると開けてあった窓と扉から心地よい風が道場に吹き渡る。
ベレス「いい風だな・・・」
???「先生!」
するとそこへ、ややボサボサの赤髪の女子生徒が来る。彼女の名は『ハピ』。剣道部の部員の一人である。
ベレス「珍しいなハピ。いつも一番に帰るお前が、まだ帰っていないなんて」
ハピ「別に。帰ってもやる事ないし、暇だから先生の自主練に付き合おうかなって」
ベレス「良いぞ。私も相手が欲しかったところだ」
ハピ「じゃあ決まり!着替えてくる」
そう言うとハピは更衣室に向かう。その間にベレスは再度防具を付ける。
数分後、白の剣道着と黒の袴に着替え、胴と垂を身につけたハピが、面と小手と竹刀を持って更衣室から出てくる。二人は面を付け、両手に小手をはめる。そして竹刀を持って立ち上がり、道場の中央に移動する。そして互いに正面に向かい合う。
ベレス「では始めるぞ。打ち込み稽古だ」
ハピ「はい!」
二人は互いに一礼すると蹲踞して、竹刀を構え立ち上がる。
ハピ「やあっ!」
ハピは掛け声と共にベレスに打ち込んでくる。
ベレス「はあっ!」
ベレスも掛け声を上げて、ハピに打ち返す。
バシッ!バシッ!っと、竹刀同士がぶつかり合う音が響く。その後も、二人の打ち込みが続く。
ハピ「えいっ!」
ベレス「せいっ!」
ハピの打ち込みが激しくなる。ベレスも負けじと竹刀を振って、ハピの打ち込みに応戦する。
それから30分の間、二人の打ち合い稽古は続いた。
ベレス「ふぅ〜・・・」
ハピ「はぁ〜・・・」
稽古を終えた二人は、正座して小手と面を外し、一息つく。
ベレス「打ち込みが上手くなったな。見事なものだ」
ハピ「べ、別にそんな事ないよ・・・///」
ベレスに褒められて、ハピは少し照れる。
ベレス「今日はここまでだ。次はまたいつかな」
ハピ「はい!ありがとうございました!」
ベレスに挨拶したハピは、面と小手と竹刀を持って更衣室に向かった。
ベレス(愚痴を溢すことの多いハピだが、稽古の時は真面目に取り組んでくれるから、嬉しい限りだ)
ハピの背を見ベレスは心の中でそう思うのであった。
ベレス「さて、私も片付けるとするか」
ベレスも自分の防具を片付けして、道場を後にするのであった。
続く