何の変哲もない普通のラブコメ   作:ナオ3

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ラブコメらしい修羅場回!


7話

(くっくっくっく……)

 

 

俺は心の中で勝ち誇っていた。

ようやく、ようやく――この白桜学園に入学できたのだ。

 

 

(白桜学園……! 俺はここに入るためだけに生きてきたと言ってもいい!)

 

 

施設育ちの俺が、この学園に入るのにどれだけ苦労したか。

勉強はもちろん、生活態度、礼儀、品行方正、笑顔の作り方まで完璧に磨き上げてきた。

その成果が、いまようやく実ったのだ。

 

 

(ああ、これまで“良い子ちゃん”を演じてきた甲斐があった!)

 

 

学費が無料になる特待生枠。

学力だけでなく、生活態度や教師の評価も重要になる。

だから俺はずっと、先生方の前では完璧な優等生を演じてきた。

人の話を聞き、ノートを丁寧に取り、笑顔で「はい」と返事をする。

心底うんざりしながらも、演じ切った。

 

 

(俺はようやくスタートラインに立ったんだ……!)

 

 

そう、ここはゴールじゃない。

ここは――孤児の俺が世界に名を刻むための、ただの足掛かりだ。

 

 

(白桜学園を踏み台にして、俺はもっともっと上に行く!)

 

 

俺の未来は輝いている。

俺は心の中でこぶしを握りしめ、気合を改めて入れ直した。

 

 

……その時だった。

 

 

(ん?)

 

 

視線を感じた。

俺の横から、じっと、射抜くような視線。

 

 

(なんだコイツ?)

 

 

顔を向けると――そこに居たのは、美しいと表するしかない女が居た。

 

 

長い黒髪に白い肌。

どこか人間離れした美しさで、まるで日本人形がそのまま動き出したかのよう。

イメージとしては、そう……輝夜姫。

月の光に照らされたように儚く、妖しく、そして整いすぎている。

 

普通なら――こんな美少女に見つめられたら、誰だって舞い上がるだろう。

目が合った瞬間に頬を赤らめ、「やべぇ、運命だ!」とか「ラブコメ始まっちゃった?」とか、脳内お花畑な勘違いをするのが男子中学生の平均的な反応ってやつだ。

 

だが、俺は違った。

 

 

(気持ち悪っ!!!)

 

 

思わず心の中で毒づいた。

だってそうだろう。

 

――出来の良い日本人形が勝手に動いて、目をぱちくりさせてこっちを凝視してるんだぞ?

 

白磁のように滑らかな肌。黒曜石のような瞳。漆黒の長髪は背中にすとんと流れ落ち、絵巻物から抜け出してきたような整いすぎた容貌。誰がどう見ても「絶世の美少女」と呼ぶほかない存在。

 

……だが、その「絶世」という単語すら俺には気味悪さの裏返しにしか感じられなかった。

 

 

(人間じゃねぇ……!)

 

 

そう、第一印象はそれだ。

人間じゃなく、精巧に作られた人形。魂の入っていない顔。だがなぜか、俺を凝視してくる。まるで人形に不意に視線を向けられた時の、あの背筋をぞわっと走る不快感そのものだった。

 

 

(うっへ〜……なんだよこれ、気味悪ぃ……!)

 

 

一瞬、呼吸を忘れた。

だがそれは胸が高鳴ったからでも、ときめいたからでもない。

単純に、恐怖だ。

目の前の「少女らしきもの」から、自我がまったく感じられなかった。

 

笑わない。

驚かない。

怒らない。

 

表情筋はきちんと動いているのに、そこに「心」が見えない。

見ているのは瞳のはずなのに、瞳の奥に誰もいない。

 

 

(……なんだこいつ、マジで気味悪ぃ……!)

(マジでツイてねぇ! もっとこう……普通の、美少女で良かったんだよ!)

 

 

地味めで、でも可愛げのある女子。

そういうのが隣なら、俺の優等生オーラを引き立てる絶好の小道具になったのに。

 

 

(あ~あ、出来れば俺に三歩劣る程度の女が良かったな)

(こう、俺様をいい感じに引き立ててくれる“影役”みたいな女!)

 

 

なのに目の前にいるのは――輝夜姫。

どう考えても主役オーラ全開。

これじゃあ俺が霞むじゃねえか!

 

 

(……で、コイツ、何時まで俺を見てんだ?)

 

 

その美少女は、俺を凝視し続けていた。

瞬きもせず、ただひたすらに。

 

 

(いや、俺という存在に見惚れるのは自然の摂理だよ?)

(だがな、そんなあからさまに見つめるのは不敬だぞ!)

 

 

しゃあねえ。

優等生らしく、可哀想な女の子に声掛けてやるか。

すっげえ嫌だけど。

 

俺は必殺の「優等生スマイル」を作り、柔らかく声をかけた。

 

 

「どうしたの?」

 

 

しかし――反応がない。

 

 

(おい……俺様がわざわざ声掛けてやってんのに、無礼だぞ!?)

(これはもう“無礼罪”で懲役百年コースだ!)

 

 

暫くして、ようやく口を開いた。

 

 

「私は……紅峰、華音」

 

(……は?)

 

 

いや、誰が名前聞いたよ?

自己紹介なんか頼んでねぇぞ?

 

 

「紅峰って……」

 

 

その名前を聞いて、思わず目を剥いた。

 

紅峰――紅峰財閥。

日本五大財閥のひとつ。

つまり――こいつは紅峰家の令嬢。

 

 

「うん……」

 

 

あっさりと認めやがった。

 

 

「そうなんだ」

 

 

俺は引きつった笑顔で答えながら、心の中で吐いた。

 

 

(うげろぉ!!!)

 

 

なんだよこれ。

よりによって俺の隣が紅峰の令嬢だと!?

 

 

(俺が嫌いなモノは三つある)

一つ、高飛車な女。

二つ、俺より優秀な奴。

三つ――金持ちの家。

 

 

そう、俺は金持ちの子供が大っ嫌いだ。

生まれながらにして何もかもを与えられる存在を見ると、虫唾が走る。

 

 

(ああ、嫉妬さ! 自覚してる!)

 

 

だが認めたくはねぇ。

孤児として這い上がってきた俺にとって、一番憎らしい存在。

その頂点に立つ女が、よりによって俺の隣に居座っているだと?

 

 

(俺の運勢は最悪だ! 間違いない!)

 

 

運が悪い。

いや、運が死んでる。

呪われてる。

 

関わりたくねぇ。

絶対に。

 

ならば――

 

 

(当たり障りなく接して、次の席替えまで耐えるしかねぇ……!)

 

 

俺は決意を固め、優等生スマイルを崩さずに言った。

 

 

「僕は宇生優斗。よろしくね」

(……ああ、よろしくされたくねぇ〜……)

 

 

俺の内心の絶叫をよそに――その女は、にこりと微笑んだ。

 

 

「よろしく、優斗くん」

 

(名前で呼ぶな下郎!!!)

 

 

血管が切れそうになった。

なぜだ。なぜいきなり名前呼びなんだ。

 

――これが、忌々しき紅峰華音との出会い。

俺の不幸の歴史の、始まりだったのだ。

 

 

 

 

 

「ふっふ〜ん、僕と優斗はずっと一緒に居たんだよ!」

 

 

俺はすかさず反論した。

 

 

「テメェが勝手に付き纏ってきただけだろうが!!!」

 

 

ああ……最初は大人しかったのに、段々とエキセントリックになってきやがったんだよコイツ。

その行動の被害者は常に俺。

 

 

「ええ〜、学校行事ではいつも一緒だったじゃん」

 

「そうだな! 担任やクラスメイトがこぞってお前を俺に押し付けたんだよ!」

 

 

そうだ。俺は“紅峰さん係”にされていたんだ。

畜生! 修学旅行で同じ部屋に二人きりにするのは、流石にどうなんだよ!?

担任もクラスメイトも、まるで哀れな豚を屠殺場に送るみたいな目をしていたのを、俺は一生忘れねぇ。

 

 

(あれは「明日美味しく食べられちゃうのね、可哀想に」って顔だった!)

 

 

ゲームをしたり、雑談したりするくらいなら、まあ百億歩譲歩して良いとしよう。

だが――服を脱ごうとしたり、一緒に風呂に入ろうとしたり、俺の布団に潜り込もうとしたり……どういう了見だ、貞操ゆるゆる女!

令嬢ってのはもっと慎み深くあれよ! どうしてお前はそこで果敢に攻めてくるんだよ!?

 

 

「へえ、優斗くん嫌がってるようだけど?」

 

(おっ……お前にしては良いこと言うじゃねえか!)

 

 

だが心の中で俺は叫ぶ。

 

 

(お前と一緒に居る方も嫌だがな!!!)

 

 

華音は勝ち誇ったようにドヤ顔を決め、

 

 

「ふふ〜ん、ことわざにはこんなのがあるんだよ!」

 

 

そして大げさに胸を張って宣言した。

 

 

「嫌よ嫌よも好きのうち!」

 

 

俺は即座にツッコミを叩き込んだ。

 

 

「それは本当は好意がある場合だろうが!!!」

「俺のお前への好感度はゼロどころかマイナスだ!!!」

 

 

ゼロにすら届かねぇ。マイナスだ。氷点下だ。永久凍土の底だ。北極海の海底に沈んでるレベルだ。

 

国語を小学生から学び直せや!

 

……なのに、コイツ、俺より成績が良いんだよな。

 

ああ、神様よ。どうしてそんな仕打ちを俺にするんだ。

 

信じられるか? この紅峰華音、普段からこんなトンチキ発言ばかりで、脳みそにハチミツでも詰まってんのかってレベルの女だ。

なのに――試験の順位は俺より上。しかも毎回。

 

華音は教科書をパラパラと流し読みするだけで、内容をほぼ完璧に頭に入れてしまう。

努力? そんなものは一切していない。

宿題だって、白桜美怜みたいに完璧に仕上げるわけじゃない。

提出物もギリギリ。ノートなんて落書き帳レベル。

 

――なのに。

テストになると、ほぼ全問正解。

唯一の減点は記述式問題だ。

 

しかもそれは「独自解釈」だの「意味不明な創作」だの、そういう出鱈目を書き散らすからであって、知識不足じゃない。

知識は全部頭に入ってるんだ。

頭に入った上で、勝手に「私の答え」を作っちゃうから点を失う。

 

つまり――こいつの頭脳は化け物なんだ。

 

 

(神は才能を与える相手を完全にミスってる)

 

 

いや本当にそうだろ。

 

俺みたいに、夜も眠らず勉強して、ノートを何冊も潰して、赤ペンで要点をまとめて、試験範囲を徹底的に分析して……そうやって積み重ねた奴にこそ才能を与えるべきだろう。

努力の結晶こそ評価されるべきだ。

なのに、現実はどうだ。

 

――白桜美怜。財閥の令嬢にして、学年トップの才媛。

――紅峰華音。何もしなくても、あっさり試験を乗り切る化け物。

 

天才。天賦の才。チート。

 

俺は拳を握りしめる。

 

 

(なんで、こんなトンチキ令嬢どもに脳みそのチートを渡してんだよ! 神様の配分間違ってるだろ!?)

 

 

一人でも手に余るというのに、よりによって二人が俺の両隣に座っている。

毎日が地獄だ。

前を見ても後ろを見ても、どこにも逃げ場はない。

俺が積み重ねてきた優等生の努力なんて、この二人の「異常な資質」に比べたら塵芥みたいなもんだ。

 

まるで、凡人である俺を見せつけるために隣に配置された拷問みたいじゃねぇか。

 

 

(誰でも良いから、俺と変わってくれえええ!!!)

 

 

心の底からの絶叫もむなしく、俺の祈りは虚空に消えた。

その時、美怜が氷の女王らしい冷気を纏いながら、甘くも残酷に囁く。

 

 

「今は、私の隣に居るわね? 優斗くん」

 

 

……空気が凍りついた。

 

 

紅峰華音――あのいつも人を食ったような能天気女が、初めて顔を固まらせる。

 

 

「……は?」

 

 

声が震えている。いや、俺が聞き間違いじゃなければ、確かに動揺している。

 

 

(えっ……お前、あの紅峰華音だよな? いつもアホみたいに笑ってるお前だよな? 顔固まってんぞ!?)

 

 

美怜は俺の腕をゆっくりと抱き寄せる。柔らかい感触と高級な香りが漂う。だが俺にとっては呪い以外の何物でもない。

 

 

「ふふ……紅峰さんに負けない思い出を、これからたくさん作りましょうね」

 

「嫌だ!!!!」

 

 

ゼロコンマで拒否した。即答したのに、嬉しそうに微笑む美怜。

一方の華音は――信じられないものを見たように目を見開き、そして……瞳から光が抜けていく。

 

 

(ぎゃああああああ!? おい、ホラー展開やめろ! なんで華音の顔から感情が消えてんだよ!?)

 

 

美怜は一歩も引かない。

むしろ楽しむように、俺をじわじわと追い詰めていく。

 

 

「紅峰さんは別のクラスで思い出を作ったら?」

「もしかしたら優斗くんより格好いい男性が居るかも知れないわよ?」

 

 

――挑発。

その声音は柔らかいのに、言葉の刃は鋭く研ぎ澄まされている。

そして次の瞬間、俺の腕にしがみつきながら、天使のような笑顔で宣言した。

 

 

「まあ、私は優斗くんでいいわ」

「私の秘密、見ちゃった優斗くんならね」

 

 

空気が一瞬にして凍りついた。

笑顔と同時に放たれたその言葉は、甘い囁きに聞こえるのに、俺には重い鎖にしか感じられなかった。

俺の脳裏に、あの惨劇が鮮烈に蘇る。

 

 

「このアマぁ!」

 

 

思わず絶叫した。

テメェの醜態を――人間として一番見られたくなかった姿を――脅迫材料に使うってどういう魂胆だ!?

 

 

「へえ」

 

 

華音の声が低く響いた。重い。重すぎる。

さっきまで能天気に笑っていた少女の面影は跡形もない。

教室の空気そのものが、ぎしりと軋むような重圧を帯びる。

 

 

「白桜さんの豹変って……それが原因?」

 

 

美怜は幸せそうに、まるで花嫁のように微笑んでいた。

その笑みは柔らかいのに、見る者を背筋から凍りつかせる。

 

 

「ええ、そうよ」

「彼は私を助けてくれたの」

「ふふ、助けてくれた恩は忘れないわ」

 

 

そこで美怜は一拍置き、蒼い瞳を細めて言い放つ。

 

 

「一生ね」

 

 

氷の女王が、幸福そうに微笑む。

その声音は甘美で、けれど鎖のように重い。

 

 

(わ、忘れろ! スグに忘れろ!)

(俺も忘れるから、無かったことにしてくれぇぇ!)

 

 

心の中で絶叫する。だが声は喉から漏れない。

まるで言葉すら彼女に縛り上げられているかのようだ。

 

 

(黒歴史はなぁ! 忘れ去られてこそ救われるんだよ!!)

(お前が永久保存版にしてどうすんだよ!?)

 

 

額から冷や汗が流れる。

目の前の微笑みは慈愛に満ちているはずなのに、俺には断頭台の死刑執行人が笑っているようにしか見えなかった。

 

華音はそれまでの能天気な顔から一変し、視線を落とした。

細い肩が小刻みに震え、胸の奥から絞り出すように声を漏らす。

 

 

「……僕だって」

 

 

空気が張り詰める。

ふざけた調子は一片もなく、言葉が教室の温度を数度下げる。

 

 

「僕だって……」

 

 

その続きは言われないのに、背筋が冷たくなる。

普段の軽薄さが嘘のような、重い、重すぎる響きだった。

 

その時――。

 

ガラリ、と教室の扉が開いた。

担任の教師が入って来る。

 

 

「おーい、ホームルームを――」

 

 

だが、中を見て固まった。

教室に居るのは俺と美怜と華音の三人だけ。

 

 

「……しつれいしやっしたー」

 

 

そそくさと出て行こうとする担任。

俺は美怜の腕を振りほどき、優等生タックルをかました。

 

 

「マテやぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

自分でも驚くほどキレッキレの突進だった。

ラグビー部に入れば全国優勝だって夢じゃねぇ。いや、マジで今の俺は花園で暴れてる選手並みに輝いていた。

 

 

「ぐあああああ! 宇生! 優等生らしくない行動するなぁ!」

 

 

担任が苦鳴を上げる。

だが知るか! 優等生? そんな肩書き、今この瞬間に俺の辞書から消えたわ!

 

 

「今の俺は、優等生をしてる場合じゃねぇんだよぉ!!」

 

 

魂の咆哮が教室に轟く。

クラスの奴らが見たらドン引き間違いなしだが、今はプライドも評判もクソ喰らえだ。俺の命と精神の方が百倍大事だ!

 

 

「いや、わかるよ!? でも俺だって命は惜しいんだよぉ!」

 

 

担任の情けない声が耳に刺さる。

おっさん……! 今こそ教師の威厳を見せる時だろ!?

 

 

「先生なら生徒のために頑張れよ!!!」

 

 

俺は怒鳴る。いや、怒鳴らずにいられなかった。

この地獄を作った元凶は白桜美怜と紅峰華音。そいつらが同じ空間で修羅場ってんだぞ!?

担任が叫ぶ

 

 

「白桜と紅峰が修羅場ってるなんざ、死亡率180%じゃねえか!!!」

 

 

180%!?

頭の中で瞬時に換算する。

つまり――死ぬだけじゃ済まない。死ぬより酷い、想像もしたくねぇ地獄が待ってるってことだ!

 

 

「さっさとホームルームやれよ!」

「そして俺を寮に帰らせろぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

魂の叫びだ。ここでグダグダされて長引けば、確実に爆死する!

 

 

「そんなに帰りたきゃさっさと帰ればいいだろ!?」

 

 

担任が弱々しく言い返す。

……甘い。甘すぎる。

 

 

「俺は特待生だから生活態度に問題ある行動は出来ねぇんだよ!」

 

 

特待生は成績だけじゃなく生活態度も監視されてんだ!

ここで「ホームルームをサボった」なんて記録が残ったら、最悪特待生枠から外されちまう!

勉強も生活態度も完璧にやってきた俺が、そんなつまんねぇ理由で評価を落とすわけにはいかねぇ!

 

 

「担任にタックルかますのはええんか!?」

 

 

……痛恨のツッコミを受ける。

ぐっ……! 確かにそれを言われると弱い。

 

 

「可愛い生徒のお茶目な行動ぐらい大目に見ろやぁ!」

 

 

俺は咄嗟に言い返した。

これは教育現場におけるスキンシップ、愛情表現の一種だ! いわば教師と生徒の信頼の証!

……たぶん!

 

もう俺は限界だった。

この場の空気を一秒でも多く吸っていたら精神が崩壊する。

担任、いいからさっさとホームルームを終わらせろ。

そうじゃなきゃ、俺は――帰れねぇんだよ!!!

 

 

「……畜生、妻と娘に……俺は立派な教師だったと伝えろよ……!」

 

 

顔は蒼白。瞳孔は開ききり、すでに死を覚悟している。

その姿に俺は胸を打たれ――るわけがねぇ。

 

 

「ああ、わかったよ! 美化しまくって伝えてやるから、さっさとホームルームをやれぇぇぇぇ!!!」

 

 

俺の絶叫が教室に響き渡った。

――ここは学園。

だが今の教室は戦場だ。

 

 




ちなみに,優斗くんが特待生から外れることは絶対ありません。
転校しようとしても、あの手この手を使って学校が引き止めます。
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