魔王学院のオカシな不適合者   作:SEEDに出会えてよかった

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もうガヴが次回で最終回…もうお別れなんてやだよぉ…


パキッと砕けるチョコレート

 

 

ランゴ達に祝ってもらった翌日の朝、ユウジはウキウキ気分になりながら制服を着ていた。

 

ユウジ「ふふんふ〜ん♪」

 

そして鏡の前で服装をチェックする。

 

ユウジ「よし!変なところ無し!けど、この黒と赤の制服かぁ…もう一個の白い方が良かったなぁ…」

 

ただひとつ、制服の色に不満を溢した。

そして、ふと時計を見る。

 

ユウジ「そろそろ行くか。よしっ!」

 

ユウジは片手で持てるような鞄にお菓子を詰め、部屋を出た。

部屋を出ると、ニエルブと鉢合わせた。

 

ユウジ「あ、ニエルブ兄さん。」

 

ニエルブ「やあユウジ。制服姿、様になってるじゃないか。」

 

ユウジ「そう?本音を言うと、白い方が良かったんだけど。」

 

ニエルブ「まあ、僕らみたいなのはその制服を支給されるからね。そこに関しては仕方ないさ。あ、そうだ。」

 

ユウジ「どうしたの?」

 

ニエルブ「帰って来たら、デンテおじさんの研究室に来てくれないかな?」

 

ユウジ「うん、わかった。じゃあ行って来ます。」

 

ニエルブ「ああ、行ってらっしゃい。」

 

ユウジはニエルブに見送られながら家を出た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウジは学校に着き、指定された自分の教室へ向かった。

 

ユウジ「えっと…確かこっちのはず…」

 

少し大きな扉を抜け、教室の中に入る。

初めての教室に少し緊張しながら辺りを見回した。

すると、アノスとミーシャの姿があった。

2人に気づくと、ユウジは少し駆け足で近寄った。

 

ユウジ「おはよう。アノス、ミーシャ。」

 

アノス「ああ。昨日ぶりだな。」

 

ミーシャ「おはよう。」

 

アノス「そのカバンは何だ?」

 

ユウジ「お菓子だよ。たくさん入ってるんだ。」

 

アノス「ほう。ひとつほど貰っていいか?」

 

ユウジ「うん、いいよ。ミーシャは?」

 

ミーシャ「グミ、欲しい。」

 

ユウジ「すっかり気に入ってもらえたね。良かったよ。」

 

などと話しているうちに、教室の中には生徒が増えていき、その後担任がやって来た。

担任は黒板に魔法で名前を書いた。

 

「2組の担任の、エミリアです。早速ではありますが、まず初めに班分けをします。班リーダーになりたい人は立候補してください。ただし、この魔法を使えることが条件になります。」

 

そう言いながら、黒板に魔法陣を描く。

 

ユウジ「魔法かぁ…魔法は全くわかんないや…」

 

アノス「そうなのか?ならどうやって試験を突破した。」

 

ユウジ「そっか、2人にはまだ見せてないか。まあ、いつか見せる機会があったら見せるよ。」

 

エミリア「初めて見たと思いますが、これは《ガイズ》という魔法です。術者を王とし、配下の軍勢に特別な力を与える物です。実戦は後日授業で行います。今から魔法陣を描き、魔法を行使できた人のみ、班リーダーの資格があります。」

 

ユウジ「なるほど、確かにリーダーの人は使えた方がいいね。」

 

エミリア「それでは、立候補したい方は手を挙げてください。」

 

すると、純血で黒と赤の服を着た何人かが手を挙げる。

しかし、白服で唯一、アノスが手を挙げた。

その行動に周囲は驚きを隠せない。

 

ユウジ(まあ、確かにアノスならリーダーに向いてると思うけどな。人を統率するのは得意そうだし。)

 

しかし

 

エミリア「アノス君、残念ですが、あなたは立候補できません。」

 

エミリアはそれを却下した。

 

アノス「なぜだ?」

 

エミリア「あなたが白服で、混血だからです。」

 

その差別的な言葉に、ユウジはかなりイラっとする。

 

ユウジ(アイツ…教師のくせに差別を…しかも俺の友達を…!)

 

するとユウジは、イライラを抑えるためにカバンからお菓子を取り出す。

そのお菓子はチョコレートだった。

ユウジはチョコレートを頬張り、糖分を摂取した。

 

ユウジ(落ち着け…落ち着くんだ…甘い物を食べたら、少しはイライラもおさまるはず…)

 

アノス「混血だからといって、純血に劣る理由にはなるまい。」

 

エミリアの言葉にも、アノスは動じずに返す。

 

エミリア「それは皇族批判ですか?……もしも、混血が優れていると言うのでしたら、あなたが皇族に勝る事を証明するのですね。」

 

アノス「それができれば、立候補しても構わないという事だな?」

 

エミリア「できれば、の話です。」

 

するとアノスは笑みを浮かべる。

 

アノス「その言葉、《ゼクト》させてもらった。」

 

エミリア「なっ…いつの間に…!」

 

《ゼクト》とは、簡単に言ってしまえば、契約を結ぶための魔法である。

 

ユウジ(頑張れアノス…!そんな奴に負けるな…!)

 

ユウジはお菓子を頬張りながらアノスを心で応援した。

するとアノスは席を立ち、黒板に向かって歩いた。

 

アノス「この《ガイズ》を開発したのは皇族か?」

 

エミリア「ええ。」

 

アノスは黒板の魔法陣を指差して一言言った。

 

アノス「術式の欠陥を見つけた。」

 

エミリア「まさか…有り得ませんね。《ガイズ》は2000年もの間、欠陥など発見されていません。」

 

アノス「ちょうど2000年に見つけたのでな。転生している間は修正できなかった。」

 

ユウジ(転生…?2000年に見つけた…?どういう事?もしかしてアノスって、本物の魔王の生まれ変わりだったりして…)

 

そう言いながら、アノスは少しだけ魔法陣を書き換えた。

そして魔法陣を指差す。

 

アノス「これが完璧な形だ。教員だというなら見れば分かるだろう?」

 

エミリアは魔法陣の書き換えられた場所を見る。

 

エミリア「そんな…たった一箇所書き換えただけで、魔法効率が1割も良くなって…魔法効果が1.5倍…!?こんなことって…」

 

しかし、そんなエミリアにアノスは追い打ちをかけるように言う。

 

アノス「惜しいな。魔法効果は2倍だ。」

 

その後もアノスは色々と語るが、それを聞いたユウジは……

 

 

 

 

 

 

 

ユウジ「………」チーン

 

まるで宇宙の仕組みでも理解したかのような顔をして空間を見つめていた。

 

アノス「なんなら、俺が代わりに教師をやってもいいぞ。」

 

そのアノスの言葉を聞き、ユウジはようやく正気を取り戻す。

 

ユウジ(よ、よく分からなかったけど、いいぞアノス!)

 

エミリア「り………立候補を許可します…」

 

アノスの確かなその力に、エミリアは悔しそうに立候補を了承した。

それを見て生徒達はざわつく。

 

「アイツ、何者なんだよ…?」

 

「初めて見た魔法陣の欠点を見つけて書き換えるなんて…」

 

「まだ魔法研究の基礎だってやってないのに…」

 

「不適合者だろ?あいつ…」

 

エミリア「コホン…それでは班分けを始めます。班リーダーに立候補した生徒は自己紹介をして下さい。それでは、サーシャさんから。」

 

すると、1人の黒服の女子生徒が立ち上がる。

金髪のツインテールで、何とも整った顔立ちをした、いわゆる『美少女』の枠組みに当てはまるような人物だった。

 

「ネクロン家の血族にして、七魔皇老が一人、アイヴィス・ネクロンの直系、破滅の魔女 サーシャ・ネクロン。どうぞお見知りおきを。」

 

周囲は拍手をする。

 

ユウジ(なんかミーシャに似てる。目元とか。それに…)

 

小声でユウジはミーシャに聞く。

 

ユウジ「ネクロンってことは、もしかしてあれが?」

 

ミーシャ「うん、お姉ちゃん。」

 

ユウジ「ああ、あれが…ん?ミーシャは白服なのに、サーシャは何で黒服なの?お父さんかお母さんが違うの?」

 

ミーシャ「両親は同じ。」

 

ユウジ「なら、ミーシャは純血なんじゃ…」

 

ミーシャ「家の人が決めた…」

 

ユウジ「っ…!」

 

それを聞いて、ユウジは少しばかり憤った。

 

ユウジ(二人の子供を、片方だけ混血として扱うなんて…しかも…こんなに優しい子を…!!)

 

ユウジは手を強く握りしめた。

その時、アノスに自己紹介の番が回って来た。

 

アノス「暴虐の魔王 アノス・ヴォルディゴードだ。貴様らの信じている魔王の名前は真っ赤な偽物だぞ。もっとも、信じないだろうが、まあ責めはせぬ。ゆくゆく分かる事だからな。よろしく頼む。」

 

ユウジ(偽物?確かニエルブ兄さんから教わったのは…あれ?アノス・ヴォルディゴードだ。ニエルブ兄さんって古い書物とか持ってるし、あの時兄さんが持ってた本も…)

 

『兄さん、その本かなり古いけど、いつの物なの?』

 

『だいたい2000年か、それより少し前の物だよ。』

 

(確か兄さんが2000年前の物だった言ってた。2000年…アノス・ヴォルディゴード…え?アノスって本物?)

 

エミリア「それでは皆さん。自分が良いと思ったリーダーの元へ移動して下さい。班には人数制限がなく、いつでも班を変更できます。班員が一人もいない場合、班リーダーは資格を失います。」

 

生徒達はざわつき、みんな誰の班に行くか相談していた。

ほとんどの生徒がサーシャの班に行く中、ユウジとミーシャは微動だにせず、アノスの班にいた。

 

ユウジ「お姉ちゃんの所にいかないの?俺たちに気を遣ってるなら、そんなのいいんだよ?」

 

しかし、ユウジの言葉にミーシャは首を振る。

 

ミーシャ「二人と一緒の班がいい。」

 

アノス「それは助かる。」

 

ミーシャ「友達、だから。」

 

ユウジ「ふふ…そうだね。」

 

するとコツ、コツと足音を立てながら誰かが近づいて来た。

その人物は、他でもないサーシャだった。

 

サーシャ「アノス・ヴォルディゴードだったかしら?」

 

サーシャは高圧的な態度で話しかける。

 

アノス「ああ。」

 

するとサーシャはミーシャを一瞥し、笑みを浮かべる。

 

サーシャ「あなた、まだ班員が二人しかいないようね。それも…」

 

次の瞬間、サーシャから心無い言葉が放たれる。

 

サーシャ「一人はまだしも、もう一人は…そんな出来損ないのお人形さんを班に入れるなんて。どうかしてるんじゃないかしら?」

 

ユウジ「………は……?」

 

サーシャ「知ってる?その子ね、魔族じゃないのよ。人間でもないの。今言った通り、出来損ないのお人形さん。命もなければ、魂も意思もない。魔法で動くだけのガラクタ人形よ。」

 

その時、『何か』がブツンッ!と激しく音を立てて切れる。

そして次の瞬間

 

ガシャンッ!

 

サーシャの顔の横スレスレをガヴガブレイドが通り過ぎ、サーシャの背後の壁に突き刺さった。

投げたのはもちろん、ユウジだった。

 

ユウジ「あのさぁ…少し黙れよ、お前。」

 

サーシャ「何ですって?」

 

ユウジ「聞こえなかった…?黙れっつったんだよ。」

 

サーシャ「随分度胸があるのね。私にそんな口を聞くなんて。あなた、名前は?」

 

ユウジ「お前なんかに名乗る義理はない。それにお前が誰かなんて知るかよ…けどな、たとえ神だろうと、友達を侮辱する奴を、俺は許さない…!」

 

怒りながらそう言うユウジの目は、紫色に光っていた。

 

サーシャ「あらそう。けど、そんな呪われたお人形さんと一緒にいたら、悪ーいことが起こるんじゃないかしら。ね、分かるでしょ?」

 

ユウジ「そんな脅しが効くのは、お前みたいなガキまでだ。」

 

その言葉に、サーシャはムッとする。

そしてユウジと目を合わせる。

 

サーシャ「ねえ、あなた。死にたいのかしら?」

 

そのサーシャの眼には、紋様が浮かんでいた。

 

これは、破滅の魔眼と呼ばれる物であり、魔眼に特化したネクロン家特有のものである。その気になれば視界に映るもの全てを自滅させることができると言う非常に危険で強力な物だ。

その魔眼を、サーシャはユウジに向けた。

しかし

 

サーシャ「き…効かない…!?」

 

ユウジ「なんだよ?睨めっこは終わりかよ?自分が常に相手より上に居るなんて、決して思わないことだよ。それと、仕方ないから教えといてやる。俺の名前はユウジ・ストマック。ストマック家の末っ子だ。」

 

そう言って、ユウジはサーシャに少しばかり圧をかける。

しかし、ストマック家の者からの圧、それは少しだとしても並みの魔族なら腰を抜かして失神するほどのものだ。

 

サーシャ「…あ……あ……!」

 

サーシャは怯えた様子で、そう言うだけだった。

 

ユウジ(まあ、これくらいにしてやるか。)

 

ユウジは足元にガヴガブレイドを突き刺す。

 

ガシャンッ!

 

その音でサーシャは正気に戻る。

 

ユウジ「あんな大口叩いてたのに、所詮は口だけか。」

 

サーシャ「あなた…何者なの…!?」

 

ユウジ「2回同じ事を言うのは嫌いだよ。」

 

そう言いながらユウジは席に戻る。

するとアノスが口を開く。

 

アノス「ところでサーシャ、まあまあの魔力を持っているようだが、俺の班に入らないか?」

 

それを聞き、サーシャは驚く。

 

サーシャ「な、何言ってるのよ…私は班リーダーなのよ…!?」

 

アノス「やめればいい。」

 

サーシャ「はあっ!?」

 

アノス「それに、俺の班に入れば、ミーシャと仲良くできるぞ。」

 

サーシャ「っ!そのお人形を妹だと思ったことなんて、一度もないわ!」

 

そう言い残し、サーシャは去って行った。

 

ユウジ「何なんだアイツ…!純血と混血だとしても、自分の妹だろうが…!それなのにあんな…!チッ…イライラする!」

 

ミーシャ「ごめんなさい…」

 

ユウジ「え?何でミーシャが謝るの?」

 

ミーシャ「サーシャはいい子。だから私のせい。」

 

ユウジ(あんな酷い事を言われたのに…ミーシャはサーシャを憎んでないんだ。)

「ところで、人形っていうのはどういうこと?」

 

ミーシャ「…言わなきゃダメ?」

 

ユウジ「いいや、聞いてみただけだよ。」

 

 

 

 

 

そして二つほど授業が終わった頃。

サーシャが再び3人の元へやって来た。

しかし、アノスとユウジは眠っていた。

 

サーシャ「ミーシャ。アノスって方に伝えておいてくれるかしら?」

 

ミーシャ「起こす?」

 

サーシャ「別にいいわ。………ねえ、この二人はあなたの何?」

 

ミーシャ「友達。」

 

サーシャ「そ。楽しいの?」

 

ミーシャ「うん…」

 

サーシャ「あっそ、ふーん。良かったわね。」

 

二人がそんな他愛もない会話をしていると。

 

アノス「それで用件はなんだ?」

 

何の前触れもなくアノスが目を覚ました。

 

サーシャ「きゃあああっ!!い、いきなり起きないでくれるかしら!?びっくりするわ!」

 

アノス「魔力の流れで起きているかも分からないのか。情けないやつだ。」

 

サーシャの眼には、破滅の魔眼の紋様が浮かんでいた。

感情の変化や激しさで自然と出てしまう。つまり制御ができていないのだ。

 

サーシャ「勝負をしましょう。」

 

アノス「俺と?どんな勝負だ?」

 

サーシャ「一週間後に班別対抗試験があるわ。負けた方は相手の言う事を何でも聞く。それでどう?」

 

アノス「それは面白そうだ。」

 

サーシャ「もしもあなたが勝ったら、私が班リーダーを辞めて、あなたの班に入ってもいいわ。」

 

アノス「お前が勝ったら?」

 

アノスが聞くと、サーシャはユウジを指差す。

 

サーシャ「そのストマックの男を貰うわ。彼にはあなた達との縁を切って、私のものになって貰うわ。私には絶対に服従、どんな些細な口答えも許さないわ。ミーシャ、覚えておきなさい。あなたの物は全部私のもの。友達も何もかも、あなたには何一つだってあげないわ。あんな面白いオモチャ、あなたには勿体無いもの。」

 

サーシャが一方的にそう言うと、ユウジの周りからゴチゾウたちが出て来て、サーシャに向けて罵声を飛ばすように騒いだ。

 

サーシャ「キャッ!?な、何よコレ!」

 

アノス「ユウジの眷属だ。菓子の力を秘めているらしい。」

 

ミーシャ「ゴチゾウっていう名前…」

 

サーシャ「へ、変なやつらね…」

 

すると何匹かのゴチゾウは寝ているユウジに、せっせと上着を布団のように被せていた。

 

サーシャ「まあいいわ。さっきは油断しただけだわ。一週間後、首を洗って待ってなさい!」

 

サーシャはそう言い残して去った。

 

アノス「同じ班になったら、仲直りできるかもな。」

 

ミーシャ「だから、サーシャを誘った?」

 

アノス「余計なお世話かもしれぬがな。」

 

ミーシャ「……ありがとう…」

 

アノスの気遣いに、ミーシャは嬉しそうに微笑んでそう言った。

 

アノス「班別対抗試験、3人で共に頑張ろう。」

 

二人がそう話していると、ユウジが目を覚ました。

 

ユウジ「んん……?ふぁ〜…どうしたの?二人とも…」

 

アノス「起きたか。実はな、お前が寝ている間に……」

 

寝ていたユウジに、アノスは事の顛末を話した。

 

ユウジ「寝ている間にそんなことが…確かに、頑張ってアイツを仲間にできたら、少しだけでもミーシャと仲直りさせられるかもね。よし!ミーシャのために頑張ろう!」

 

ミーシャ「ユウジ…ありがとう…」

 

ユウジ「へへ、どういたしまして。」

 

照れくさそうに、ユウジは微笑んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

学校が終わり、ユウジは家に帰宅した。

 

ユウジ「えっと確か、デンテおじさんの研究室に来てって言われたっけ。」

 

ニエルブに言われた通り、ユウジはデンテの研究室へ向かった。

 

デンテ「おお!ユウジか!久しぶりじゃな!」

 

ユウジ「デンテおじさん!久しぶりー!」

 

二人は嬉しそうに抱き合った。

そこへニエルブがやってくる。

 

ニエルブ「おかえりユウジ。」

 

ユウジ「ただいま、兄さん。」

 

ニエルブ「おじさん、アレを。」

 

デンテ「おお、そうじゃったな。」

 

デンテは棚の中から一つの箱を取り出し、机の上に置いた。

 

ニエルブ「ユウジ、君に渡したい物があるんだ。コレは今後、間違いなく君の役に立つものだ。」

 

デンテが箱を開けると、そこには一つの武器があった。

銃のような形をしているが、典型的な銃とはかけ離れた形状をしている。

 

デンテ「これは名付けて、ヴァレンバスター。武器の役割と変身する為の役割を両方兼ね備えておる。変身に使うのはこれじゃ。」

 

そう言ってデンテは一体のゴチゾウを取り出す。

それはチョコレートゴチゾウ。しかし、普通のチョコレートゴチゾウのは見た目が少し違い、白い袋のようだった。

 

デンテ「こいつをセットして使うと、今までのユウジの力とは違う力を引き出せるはずじゃ。」

 

ユウジ「わぁ…!スゴイ!ねえコレ、一週間後に使ってもいい?」

 

ニエルブ「一週間後に?なんでだい?」

 

ユウジ「実は…」

 

ユウジはニエルブとデンテに事情を説明した。

 

デンテ「なるほどのう…よしわかった!ユウジのために、一週間後までに今よりも完璧に近づけて見せよう!」

 

ニエルブ「ええ。引き続き僕も手伝います。」

 

ユウジ「ありがとう!おじさん!兄さん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして一週間後。

班別対抗試験当日。

 

サーシャ「覚悟はいいかしら?」

 

アノス「誰にものを言っている。」

 

サーシャ「相変わらず偉そうな奴だわ。約束は覚えてるわよね?」

 

アノス「ああ。」

 

サーシャ「口約束じゃ信用できないわ。」

 

するとサーシャはミーシャを指差す。

 

サーシャ「その子に《ゼクト》をやらせなさい。」

 

ミーシャはユウジとアノスを見る。

 

ミーシャ「私でいいの?」

 

アノス「ああ。別に誰がやっても問題はない。」

 

ユウジ「俺は魔法使えないし。」

 

そしてサーシャとミーシャは互いに歩み寄る。

 

サーシャ「私が負ければあなた達の班に入る。私が勝てばオモチャは私の物よ。」

 

ミーシャ「《ゼクト》。」

 

サーシャ「調印。」

 

二人は契約を結んだ。

 

そしてサーシャはアノスに向けて言う。

 

サーシャ「覚えてなさい!あなたの傲慢な態度、後で後悔させてあげるわ!」

 

そして審判役のエミリアが言う。

 

エミリア「それではサーシャ班、アノス班による班別対抗試験を開始します!キングが戦闘不能、あるいは《ガイズ》を維持できなくなれば決着です!」

 

こうして、ついに班別対抗試験が始まった。

 

ミーシャ「作戦は…?」

 

アノス「とは言っても三人ではな。向こうはざっとこちらの10倍の人数がいる。」

 

ユウジ「確かに、数じゃ向こうが圧倒的。ミーシャの意見は?」

 

ミーシャ「私のクラスはガーディアン。《アイリス》の魔法が得意。」

 

《アイリス》。

それは戦闘で重要な魔法であり、魔王城を築く魔法だ。

魔王城を築くことで、キングの力を底上げされ、さらに籠城には有利になる。

 

ミーシャ「《アイリス》で魔王城を建築する。魔王城の加護により、キングの能力が底上げされる。籠城には有利。」

 

アノス「妥当な戦術だな。キングは単独では弱くなる。魔王城の加護を利用するのが定石だ。だが…」

 

ユウジ「まあ、向こうは間違いなくそれを読んでくるだろうね。だとしたら、やることはひとつ。」

 

アノス「ああ。」

 

そして二人は声を揃えて言う。

 

ユウジ・アノス『裏をかく。』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「サーシャ様、敵陣に3つの城が建てられました。」

 

サーシャの班の生徒の一人がサーシャに報告する。

 

サーシャ「おそらく2つは罠ね。この短時間じゃ、いくらミーシャでも完全な魔王城は作れないわ。時間を稼いで、その間に城をより強固にするつもりでしょう。そうなる前に叩くわよ。」

 

サーシャは冷静に分析し、班員へ指示を出す。

 

サーシャ「哨戒中の部隊を敵陣へ。キャバリエとサモナーを1人ずつ、ヒーラーを2人の部隊編成でそれぞれの城に向かってちょうだい。」

 

「了解しました!」

 

サーシャ「ふふっ…城が完成する前に乗り込んでしまえば、それでお終い。ネクロンの片割れに近づくだけあって、バカな勝負をするわね。せいぜい友達くらいは守って見せなさい。自称魔王さまと、ストマックの末っ子さん。」

 

その時、1人の班員が慌てた様子で報告する。

 

「さ、サーシャ様!」

 

サーシャ「どうかした?」

 

「あ、アノス・ヴォルディゴードとユウジ・ストマックが、いきなり城の前に現れました!!」

 

その報告に、サーシャだけでなく班の全員が驚く。

 

サーシャ「はあっ!?いったいどうやって…!?」

 

「分かりません!いきなり現れました!何か、我々の知らない魔法を使ったとしか…!」

 

サーシャ「まさか、失われた魔法《ガトム》…?そんなわけ…でもそれ以外に…」

 

驚きはするも、サーシャは冷静さを取り戻す。

 

サーシャ「いいわ!キングが単独で乗り込んでくるなんて、殺してくれって言っている様なものよ!無謀と戦術を履き違えていることを教えてあげなさい!」

 

その時

 

アノス『それはどうかな?』

 

サーシャの班の者たちにアノスの声が聞こえる。

 

「なっ…!?どう言うことだ!?」

 

「早く原因を解析しろ!《リークス》を傍受されている可能性がある!」

 

《リークス》。

それは味方同士が思念で会話をし、情報を円滑に共有するための魔法である。

 

アノス『原因は組み立てた魔法術式だ。全体的に低次元すぎる。まるで傍受しろと言っている様だ。』

 

「バカなっ!国家レベルの秘匿通信だぞ!?それが傍受できるだと!?」

 

サーシャ「問題ないわ。いくら《リークス》が傍受されても、所詮は加護のないキングと雑兵程度よ!ガーディアン七人で創り上げたこの堅牢な城を、第一層も突破できるわけが無いわ!」

 

 

 

 

 

 

ユウジ「どう?アノス。」

 

アノス「この城は、どうやらガーディアン七人で作ったらしい。相当に堅牢だ。」

 

ユウジ「そっか、じゃあ、作戦通りでいいね?」

 

アノス「ああ。馬鹿正直に正面から壊してやれ。」

 

ユウジ「了解!」

 

そう言うと、ユウジはヴァレンバスターを取り出し、白いチョコゴチゾウをセットする。

 

『SET CHOCO』

 

さらにレバー部分を操作し、閉じる。

そして銃口を前に向けて引き金を引く。

 

ユウジ「変身っ!!」

 

するとチョコの液体が辺りに満ち、チョコの液体がアルミで包まれた板チョコに変わる。そしてチョコを包むアルミが、板チョコから剥がれ、チョコが目元と胴体に取り付く。

ガヴとは全く違う姿だが、腰には赤いガヴがついたままだった。

 

『CHOCODON PAKI PAKI』

 

アノス「ほう。なんとも妙な姿だな。」

 

ユウジ「ガヴはついたままなのか。まあ、これなら戦いのバリエーションが増えそうだし、いいか!じゃあ行ってくる!」

 

アノス「ああ。俺はここで待っている。」

 

するとユウジはアノスに手を振り、城の門に向かって走る。

そして拳を振りかぶる様にヴァレンバスターを振りかぶる。

 

ユウジ「ハアァァァ…!デリャァァァ!!」

 

そのまま勢いをつけて門を殴ると、爆発の様な轟音と共に門が爆ぜる。

 

サーシャ「な、何の音!?」

 

「ゆ、ユウジ・ストマックが姿を変え、門を吹き飛ばして侵入してきました!」

 

サーシャ「嘘でしょ…!?反魔法も多重にかけているのに何故!?」

 

その時、サーシャ達の居る部屋には、ユウジが城の中を壊して回る度にゴォォン!や、ドォォォン!のような爆音が響いてくる。

 

アノス『ヤツの使っている力は魔法では無いぞ。もっとも、俺とてあの力の原理は分からんが。』

 

「ユウジ・ストマックが、少しずつここへ迫って来ています!しかも、壁だけでなく、階を隔てている床を突き破って階層を飛ばしながら猛スピードで迫って来ます!トラップが意味を成しません!」

 

「さ、サーシャ様!どうしますか!?」

 

しかし、そんなことを言っている間に

 

「あれ?ここかな?フンッ!」

 

ドゴオォォォォォン!

 

ユウジが扉をぶち破って入って来たのだ。

 

ユウジ「お!キング見っけ!」

 

「サーシャ様を守れ!」

 

「相手は1人だ!同時にかかれ!」

 

サーシャ班の生徒達が、武器や魔法で一斉にユウジに攻撃を仕掛けてくる。

 

ユウジ「流石に多いな…けど!」

 

敵の数の多さにユウジは驚くが、冷静にヴァレンバスターで魔法を掻き消し、武器でかかってくる敵には体術で対処する。

 

「な、なんだこいつの武器は!グハッ!」

 

ユウジ「フッ!オラッ!」

 

「今だ!」

 

するとユウジの死角から1人の生徒が飛びかかり、ユウジを羽交締めにする。

 

ユウジ「チッ…暑苦しいのは嫌いだよ!」

 

ユウジは後ろに思い切り跳び、組み付いてきた生徒を壁に叩きつける。

 

ユウジ「ほら、お仲間だよ。キャッチして、ねっ!!」

 

そう言うと、ユウジは壁に打ち付けられて気絶した生徒の襟を掴み、並び立っている2人の生徒に思い切り投げた。

 

ユウジ「飛んでいきなっ!!」

 

そして助走をつけて、三人にドロップキックを喰らわせて窓から外に叩き出した。

 

「「「うわぁぁぁぁぁ!!」」」

 

瞬く間に班員が倒され、サーシャは動揺する。

 

サーシャ「クッ…!あなた、化け物なの…!?」

 

ユウジ「人聞きが悪いなぁ。俺は仮面ライダーヴァレンだよ。」

 

名乗り終えると、割れた窓からユウジは外へ叫んだ。

 

ユウジ「アノスーーー!!いいよーーー!!」

 

するとその直後、城全体がズンッ!!と揺れる。

 

サーシャ「今度は何よ!?」

 

ユウジ「おっと…!じゃ、あとは自分で何とかしてね〜。」

 

慌てるサーシャにそう言い残し、ユウジは窓から外へ出た。

 

サーシャ「ちょ…!待ちなさいよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウジ「よぉ〜〜っとぉ!」

 

窓から飛び出たユウジは地面に着地し、アノスと合流した。

 

ユウジ「お、やってるね。」

 

なんとアノスは、城の壁に手を突き刺し、城を持ち上げていた。

 

アノス「戻って来たか。あと少しだけ待て。すぐに済む。」

 

ユウジ「うん、わかった。」

 

すると、アノスは突然持ち上げた城を振り回し始めた。

 

ユウジ「おお、怪力。」

 

城の中からはサーシャや班員たちの悲鳴が聞こえる。

 

アノス「上手く受け身を取れ。でないと…」

 

その時、アノスは回転を止め、城を少し振りかぶった。

 

アノス「死ぬぞ。」

 

そして力一杯城を投げ飛ばした。

そのパワーで、辺りには強風が吹く。

 

ユウジ「うおっ!?風強っ…!!」

 

投げ飛ばされた城は地面に叩きつけられ、ボロボロになる。

しかし、サーシャたちは無事だった。

もっとも、あまりの衝撃と回転でボロボロの状態ではあるが。

 

アノス「タフだな。」

 

ユウジ「確かに。あんなにされたら俺でも怪我しそう。」

 

するとサーシャはふらつきながら起き上がった。

 

サーシャ「《ジオグレイズ》を使うわ…!」

 

ユウジ「ジオ…なんだって?」

 

アノス「ほう。」

 

《ジオグレイズ》

それは炎属性の魔法の中で最強の魔法であり、そのあまりの強力さから、複数人の魔力を合わせて放つことがセオリーの魔法である。

さらにはその強力さゆえに、成功率は2割にも満たない。

 

「で、ですがサーシャ様!失敗すれば城は崩壊します!」

 

サーシャ「怖気付いてる場合じゃないわよ!!ユウジは1人で数十人を捩じ伏せて城を壊滅させ、アノスは城を持ち上げて放り投げる様な化け物達よ!」

 

サーシャは班リーダーらしく、班員達を鼓舞して奮い立たせる。

 

サーシャ「炎属性の最上級魔法である《ジオグレイズ》でなければ、あの2人を倒すことなど不可能よ!死力を尽くして臨みなさい。あなた達の生涯最高の魔法を、皇族の誇りを見せてあげなさい!」

 

『了解!!』

 

班員達は立ち上がり、サーシャの言葉に返事をする。

 

アノス「サーシャ・ネクロン。なかなかのカリスマだ。まだ未熟だが、やはり敵にしておくには惜しい人材だ。」

 

ユウジ「じゃあ…仲間にするの?」

 

アノス「ああ。できればそうしたい。」

 

ユウジ「わかった。任せて。ちょっと可哀想だけど、アイツらの全力を真っ向から迎え撃ってやる。」

 

アノス「ほう。その姿のお前の全力を見れるのか。興味深い。」

 

その時、サーシャ達の城がヴンッ!!と鈍い音を立てて揺れる。

そしてサーシャを含めた班員達の魔力が一つに固まり、一つの大きな魔力の球になる。

 

サーシャ「覚悟はいい?みんなの力、みんなの心…私に預けて。」

 

「はい。」

 

「信じています。サーシャ様。」

 

「勝ちましょう…!」

 

「俺たち皇族の力を!」

 

サーシャ「行くわよおぉぉぉっ!!」

 

そしてその魔力の塊が巨大な赤黒い火球になり、ユウジとアノスめがけて飛んでくる。

 

サーシャ「《ジオグレイズ》!!」

 

ユウジ「来た…!」

 

それを見てユウジは、ヴァレンバスターのレバーを引き、迫り来る火球に

向ける。

ヴァレンバスターの先端に、少しずつエネルギーが溜められ、みるみるうちに大きくなる。

 

ユウジ「今だっ!!」

 

そして火球が目と鼻の先まで迫った時、ユウジは再びヴァレンバスターのレバー戻し、エネルギーの塊が茶色いチョコレートの球体になる。

 

ユウジ「ウオォォォォォリャァァァァァ!!」

 

ユウジはヴァレンバスターで、その球体をフルパワーで殴りつける。

チョコの球体は超高速で飛んでいく。

 

『VALEN CHOCO BUSTER!』

 

サーシャ「そんなふざけた攻撃で太刀打ちできる訳が…!!」

 

しかし、ジオグレイズはチョコの塊に容易く押し負け、火球はその場でフッと消える。

 

サーシャ「…嘘…《ジオグレイズ》が相殺された…?あんなふざけた攻撃に…?」

 

「サーシャ様!向こうの攻撃はまだ健在です!」

 

そして、チョコの球体が城に着弾すると、激しい轟音と共にキノコ雲が上がるほどの爆発が起こる。

しかし、瞬間移動魔法の《フレス》でサーシャ達は瞬時に移動し、ことなきを得る。

サーシャ達にユウジとアノスは近づく。

 

アノス「いいぞ。よく城に見切りをつけた。」

 

サーシャ「……まさか…ストマックの者の全力があれ程の物なんて…」

 

ユウジ「ああ、言い忘れてたけど。この武器、ヴァレンバスターって言うんだけど、これ、まだ100%の性能じゃないよ。」

 

サーシャ「……え……?」

 

ユウジ「まあ要は、まだ40か50%の性能しか引き出せてないの。おじさん達は頑張ってくれたけどね。」

 

サーシャ「そんな……その程度の力でも…あんな……」

 

ユウジ「負けたくなかったし、負けるわけにもいかなかったからさ。今のところの全力を出させてもらったよ。」

 

アノス「それはそうと、約束は覚えているな?お前には見込みがある。俺の配下に加われ。」

 

ユウジ「そうそう。自分で約束を覚えてるか聞くぐらいだから、覚えてるんだろうね?ほら。」

 

ユウジはサーシャの前にしゃがみ、手を差し出した。

しかし、その手をサーシャは乱暴に振り払い、破滅の魔眼の紋様が浮かんだ目で、ユウジを睨みつけた。

 

サーシャ「死になさい!!」

 

ユウジ「ヤダ。」

 

その言葉すら、ユウジは軽くあしらう。

 

サーシャ「っ!だったら殺しなさいよ!」

 

ユウジ「はぁ〜〜…ほんっと往生際が悪いね。いいから黙って俺たちの仲間になりなよ。」

 

ユウジは再び手を差し出す。

サーシャは悔しそうに、その手を渋々取る。

 

サーシャ「こんな屈辱、絶対に忘れないわ…いつか強くなって、そうしたらきっとあなたを殺すわ…!」

 

ユウジ「楽しみにしてるよ。まあ、お菓子と悪を食い尽くすまで、俺は死ぬ気はないけどね。」

 

その言葉に、サーシャは少しポカンとする。

 

サーシャ「はぁ…変なやつね。」

 

ユウジに手を引かれて、サーシャは立ち上がる。

 

サーシャ「……いいわ。今の私じゃ、あなた達には到底敵いそうにないし。かといって《ゼクト》には逆らえないものね。けど覚えていてちょうだい。これは契約。あなたに心まで売った覚えはないわ。」

 

ユウジ「はいはい、よろしくね。」

 

サーシャ「……一つ聞くわ。私を誘ったのは、あの子のため?」

 

ユウジ「まあ、そうだね。それはアノスの案だけど。ね?」

 

アノス「ああ。そうだな。ミーシャがお前と仲良くしたそうにしていた。」

 

サーシャ「そ。ふーん…」

 

ユウジ「あ、それと。これは俺の案なんだけど…」

 

サーシャ「なによ?」

 

ユウジ「サーシャの目が、綺麗だったからさ。」

 

その言葉を聞き、サーシャはリンゴのように顔を真っ赤にする。

 

サーシャ「……ぇ……?」

 

顔を赤くしたまま、サーシャはユウジのいる方とは反対を向く。

 

ユウジ「言っとくけど本当だよ。初めて話した時、俺怒ってたけどさ、目が綺麗で少し驚いたんだ。」

 

ユウジはそう言うが、サーシャはそっぽを向いたままでいる。

 

ユウジ「あの〜…聞いてる〜?」

 

ユウジに呼ばれると、サーシャはゆっくり振り返る。

 

サーシャ「聞こえないわよ…バカ…」

 

アノス「フッ、ユウジは天性の女誑しらしいな。」

 

ユウジ「えっ!?」

 

こうして、班別対抗試験はユウジ達の圧勝で幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウジ「はぁ〜、今日は一際疲れたね。」

 

アノス「まあ、確かにお前が1番働いていたしな。」

 

ミーシャ「お疲れ様…」

 

ミーシャはユウジを労うように、頭を優しく撫でた。

 

ユウジ「ありがと〜、少しでも努力が報われたよ〜…」

 

サーシャ「と言うか、どうして私が一緒に帰らなきゃならないのよ?」

 

そう。ユウジ達は今、サーシャを含めて4人で帰っているのだ。

 

アノス「同じ班になったからには、親睦を深めようと思ってな。」

 

するとサーシャは踵を返す。

 

サーシャ「あなたの配下には入ったけど、友人になると言った覚えはないわ。ごきげんよう。」

 

去っていくサーシャの後ろ姿を、ミーシャはどこか寂しそうに見つめる。

するとアノスが口を開く。

 

アノス「班別対抗試験で、俺とユウジがお前の城の前に急に現れただろ。何の魔法を使ったか、見せてやろうか?」

 

それを聞くと、サーシャの歩みがピタリと止まる。

 

サーシャ「《ゼクト》を使うわよ?」

 

サーシャは振り向いてそう言う。

 

アノス「好きにしろ。」

 

ユウジ「はい。」

 

するとユウジはサーシャに手を差し出す。

 

サーシャ「な、なによ?」

 

ユウジ「どうせなら、体感した方が手っ取り早いでしょ。」

 

サーシャ「どうして手を繋がなければいけないの!?」

 

ユウジ「え?さっきは素直に繋いだじゃんか。」

 

サーシャ「さっきのはそう言う場面だったから!」

 

ユウジ「けど、手を繋がないと見せられないらしいし。」

 

そう言われて、サーシャはそっとユウジの手を取る。

 

アノス「ミーシャ。」

 

ミーシャ「ん。」

 

アノス「ミーシャとも手を繋いでくれ。」

 

サーシャ「はあっ!?…もう!」

 

するとサーシャはミーシャに手を差し出す。

しかし、指と指が少し触れ合う程度で、繋いでいるとは言えない状態だった。

 

ユウジ「もっとちゃんと握りなよ。」

 

サーシャ「…もう、ほら!もっとちゃんと繋ぎなさいよ!」

 

そう言いながら、サーシャはミーシャとしっかり手を繋ぐ。

 

サーシャ「こうしなきゃ、魔法が使えないでしょ?」

 

ミーシャ「…ん。」

 

そうすると、ミーシャは嬉しそうに微笑む。

嬉しそうにするミーシャに、ユウジは視線を向ける。

するとミーシャは、ユウジと目を合わせる。

 

ユウジ(良かったね。)

 

ミーシャ(ありがとう。)

 

ユウジ(気にしなくていいよ。)

 

と、2人は目で語り合う。

 

サーシャ「…ねぇ、なに目で会話してるのよ。」

 

ユウジ「ん?混ざりたい?」

 

そう言って、ユウジはじーっとサーシャの目を見つめる。

サーシャは真っ直ぐ見つめられて、再び顔を赤くする。

 

アノス「なるほど。破滅の魔眼のせいで人と目を合わせるのに慣れていないのか。」

 

サーシャ「い、いいから!さっさと魔法を使いなさいよ!」

 

アノス(図星か。)

 

《ガトム》

 

アノスがその魔法を唱えると、瞬きする間に、アノスの家の前に移動する。

 

サーシャ「やっぱり…失われた魔法、《ガトム》…」

 

アノス「ここが俺の家だ。寄って行くか?」

 

サーシャ「そ、そんな事より!今の魔法《ガトム》でしょ!?こんな魔法、いったいどこで!?」

 

アノス「知りたければ、俺の家で遊んで行くんだな。」

 

サーシャ「どうして、私がこんなやつの家に…」

 

アノス「遠慮するな。」

 

サーシャ「してないわよ!」

 

アノス「2人はどうする。」

 

ユウジ「寄っていくよ。」

 

ミーシャ「私も。」

 

アノス「行こう。今日は失われた魔法の話でもするか。」

 

アノスはわざとサーシャに聞こえるように話す。

 

サーシャ「ま…待ちなさいよ!」

 

ユウジ達3人はサーシャの方を振り向く。

 

サーシャ「わ、わたしも…行っていいかしら…?」

 

アノス「ああ。」

 

こうして、ユウジ、ミーシャ、サーシャの3人はアノスの家にお邪魔した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

中に入ると、アノスの母『イザベラ』と、アノスの父『グスタ』が居た。

するとイザベラはアノスの顔に頬ずりをする。

 

イザベラ「すごいわ!アノスちゃん!まだ1ヶ月なのに班別対抗試験で勝っちゃうなんて!今夜はご馳走にするわねっ!」

 

アノス「お、おう…」

 

母親のあまりのハイテンションさに、流石のアノスも困惑する。

 

アノス「それと、今日は客人を連れてきたのだが。」

 

イザベラ「あら!いらっしゃい!」

 

アノスに言われて、イザベラはユウジ達を見る。

すると驚いた表情で

 

イザベラ「アノスちゃんが…アノスちゃんが…!友達だけじゃなくて2人もお嫁さんを連れてきたわよぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

 

と、辺りに響く声で叫んだ。

 

ユウジ「………ねぇ、アノス。」

 

アノス「……どうした?」

 

ユウジ「アノスも…大変なんだね…」

 

アノス「分かってくれて助かる。」

 

すると、グスタが口を開く。

 

グスタ「アノス!お父さん…大抵のことは理解してやれるつもりだった…でもな…お前2人なんて羨ましい!!」

 

ユウジ(パパさん、心の声が漏れてます。)

 

その後、賑やかなまま食事をし、ユウジ達は1日の疲れを忘れて楽しんだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウジ「スゥ…スゥ…」

 

ユウジは腹を満たすと、眠気に襲われ、アノスの家のソファで少し眠りについていた。

 

その側には、ミーシャとサーシャが居た。

 

サーシャ「…ミーシャは、あれが好きなの?」

 

ミーシャ「あれ?」

 

サーシャ「だから…ユウジよ。」

 

ミーシャ「好き…」

 

サーシャ「ふ、ふーん…どこが?」

 

ミーシャ「優しい。」

 

サーシャ「どこがよ…あんな化け物みたいな強さのやつが。」

 

ミーシャ「サーシャは…?サーシャは、ユウジが好き?」

 

ミーシャのその問いかけに、サーシャはあからさまに動揺する。

 

サーシャ「は、はぁ!?そんなわけないでしょ!ありえないわ!……でも、私の目を真っ直ぐ見られるのは、ユウジかアノスぐらいだわ。」

 

するとサーシャは、ユウジへの考えを話し始めた。

 

サーシャ「ほんと、頭おかしいわ。視界に映るものを勝手に壊そうとする呪いの魔眼なのに。だけど…私と目を合わせて、真っ直ぐ見つめて話してくれる人に、初めて会ったわ。」

 

サーシャは微笑みながら、ミーシャに問いかける。

 

サーシャ「ねえミーシャ。覚えてる?小さい頃、私はこの目を制御できなくて、魔法で作った牢獄に閉じ込められた。誰も私の視界に入ろうとしない中、ミーシャだけが私のそばにいてくれた。」

 

ミーシャ「覚えてる。」

 

サーシャ「ミーシャが手を繋いで、笑いかけてくれた。」

 

ミーシャ「一緒に、練習した。」

 

サーシャ「おかげで目を合わせさえしなければ、うっかり誰かを傷つけることも無くなったわ。」

 

ミーシャ「サーシャは頑張った。」

 

サーシャ「ミーシャ、一度しか言わないわ。……ごめんね、許してくれる…?」

 

サーシャのその問いかけに、ミーシャは優しく返す。

 

ミーシャ「怒ってない。」

 

そして、2人は笑い合った。

そこへアノスがやってきた。

 

アノス「悪いな、待たせた。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ユウジ「じゃあ、2人は俺が責任持って送っていくから。」

 

アノス「ああ、頼んだ。またな。」

 

ミーシャ「また明日。」

 

ユウジとミーシャはアノスに手を振りながら、ミーシャのサーシャの自宅に向けて歩き出した。

 

サーシャ「そういえば知ってるかしら?」

 

ユウジ「何が?」

 

サーシャ「今年は魔王が転生する年でしょ?だから明日の講師は、七魔皇老のアイヴィス・ネクロンなんだって。」

 

ユウジ「ああ、ミーシャとサーシャの家の人か。ところで、その七魔皇老って何?」

 

サーシャ「そんなのも知らないの?2000年前、始祖は自らの血を使って、7人の配下を生み出したわ。始祖の血を引く最初の魔王族をね。その7人の配下を、七魔皇老って呼ぶのよ。」

 

ユウジ「へぇ…そんなすごい人たちなんだ。」

 

そんな話をしているうちに、ミーシャとサーシャの自宅に着いた。

 

サーシャ「わざわざありがとうね。ごきげんよう。」

 

ミーシャ「またね。」

 

ユウジ「うん、またね。おやすみ。」

 

そう言って、ユウジは2人に手を振った。

 

ユウジ(この事、アノスにも話してあげれば良かったな。)

 

すると、ポツポツと雨が降ってきた。

 

ユウジ「帰ろ。」

 

ユウジがふとサーシャとミーシャの自宅の門の方を見ると、そこにはサーシャが立っていた。

 

ユウジ「どうかした?」

 

サーシャ「別に……ありがとう。あなた達のおかげで、ミーシャの仲直りできたわ。」

 

ユウジ「別に俺のおかげじゃないよ。元々はアノスの考えだったんだし。」

 

サーシャ「そんな事ないわ。私に真っ向から向かってきて説得するなんて、そんなことするのあなたかアノスくらいよ。ところで…あなたに聞きたいんだけど。」

 

ユウジ「何?」

 

土砂降りの中、サーシャはユウジに問う。

 

サーシャ「もしも運命が決まっていたら、あなたはどうする?」

 

ユウジ「うーん…嫌な運命なら変えて、嫌じゃなかったらどうもしないかな。」

 

サーシャ「運命が…変えられると思うの?」

 

ユウジ「もちろん。」

 

そのサーシャの問いかけに、ユウジは空へ向けてヴァレンバスターの弾を放ちながら返す。

 

ユウジ「食べちゃえばいい。」

 

ヴァレンバスターの弾が雨雲を吹き飛ばし、透き通るような月明かりが地上を照らす。

 

サーシャ「……ねぇ、ちょっとこっちに来なさい。」

 

ユウジ「ヤダ。」

 

サーシャ「な、何で断るのよ!」

 

ユウジ「命令されるのはあんまり好きじゃないんだ。」

 

サーシャ「もう、わがままね…こっちに、来てくれるかしら…?」

 

ユウジ「いいよ。」

 

そう言って、ユウジはサーシャに歩み寄る。

するとサーシャはユウジの手を軽く引き、自身の顔をユウジの顔に近づける。

 

ユウジ「どうかし…」

 

その時、ユウジとサーシャの唇が重なった。

それはほんの一瞬、心臓が脈打つほどの一瞬。

しかし、サーシャにはその時間が何秒、何十秒、何分にも感じた。

 

サーシャ「と、友達のキスだから…ただのお礼だからね…でも……あなた以外には、したことないわ…」

 

ユウジ「そっか。貴重なものを貰っちゃったね。ありがとう。」

 

サーシャ「やっぱり…変なやつ…。じゃあ、また明日ね。」

 

ユウジ「うん。」

 

ユウジはサーシャに手を振りながら、その場を去っていく。

サーシャはユウジの背中が見えなくなるまで見届けた。

 

サーシャ「……ねぇ、ユウジ。あなたに出会えて…本当に良かったわ…」

 

そう言うサーシャの瞳は、まるで宝石のように輝いていた。

そしてその口には、ユウジとのキスの時の感覚と味が、いまだ残っていた。

甘く蕩けるチョコレートのような、優しく温かい感覚が。

 

 

 

 

 

 






つ゛か゛れ゛た゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!
知らないうちに15000字超えてたし…大変だったぁ…
けどまだ漫画があったからいくらか楽だったわ…
次回も少し先になると思いますが、できる限り早く投稿するつもりなので、是非ともご感想をください!
読んでいただき、ありがとうございました!
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