「では授業を開始するがその前にクラス代表を決めたいと思う」
織斑先生は授業の開始直後にそう言い出した。
「クラス代表とはそのままの意味だ。対抗戦だけではなく、生徒会の開く会議や委員会への出席……まあ、クラス長だな。一度決まると一年間変更はないからそのつもりで」
「はい。織斑君を推薦します」
一人の生徒が手を上げながら言うと次々と賛同の声が上がっていく。
当の本人はボーっとしており別の事でも考えているのだろう。
「候補者は織斑一夏だけか?他にはいないのか?自薦他薦は問わんぞ」
「え、俺っ!?」
一夏は驚きながら立ち上がる。
「ああそうだ。ちなみに他薦されたものに拒否権はない」
「いやでもっ」
「さて他にはいないのか?いなければ無投票当選だぞ」
「「はい」」
織斑先生は一夏の言葉を無視すると二人の少女が手をあげる。
「わたくし、セシリア・オルコットは自薦しますわ」
「私は士織を他薦する」
イギリス代表候補生のセシリアと折紙はそう宣言をするとお互い睨みあう。
「あら折紙さん、士織さんがいくらあのDEM社社長の娘だからとはいえ一般人ですわよ?たしかに一夏さんはお強いですが、対抗戦で優勝しますと景品が出るそうですからここは知識と経験が多いわたくしに譲るべきですわ」
「経験なら士織にもある。それにクラス代表は対抗戦だけではなくクラスを纏める役目もある。それを貴女に出来ると本気で思ってる?」
「そ、それくらい簡単ですわ」
「なら「いい加減にしろ」……」
織斑先生がいきなり折紙に首席簿を降り下ろし、折紙はそれを避ける。
「お、織斑先生暴力はダメだと思います」
「ここでは私が法だ!」
士織が織斑先生の行動に文句をつけるとイラだった様子で織斑先生は言いつけた。
「……織斑先生、代表はどのように決めるのでしょうか?」
セシリアの疑問の言葉により織斑先生の発言によって凍りついていたクラスメイトたちは息を吹きかえす。余程怖かったのだろう、気の弱そうな生徒は未だにブルブル震えていた。
「ふむ。ではクラス代表決定戦を1週間後に行う。織斑とオルコット、五河妹は準備をしておけ」
「織斑先生、それはいくらなんでも無茶がありますわ」
織斑先生は自身の決定を否定するセシリアを睨み付ける
「ほう、私に意見するのか。いいだろう、オルコットそう思う根拠を言ってみろ」
「では言わせていただきますが、わたくしはともかく士織さんはISの操縦をあまり経験してませんわ。それに織斑一夏さんはつい最近まで普通の男子中学生ですわ。余程ISに関心がなければISに関する最低限の知識もありませんわ。ですが先程の授業を見る限り基礎中の基礎も覚えられていないと思われます」
「要約して言え」
「つまり、このままわたくしたちが戦った所で結果は明らかという事ですわ」
「なんだと!?」
セシリアの言葉に一夏が反応する。
「やってみなきゃ結果は分からないじゃないか!」
「ええ、たしかにその通りですわ」
「なら「ですが」」
一夏の言葉に被せたセシリアは一度咳をする
「ですが、技術と経験の差の前にはそのような考えは無意味ですわ」
「たしかにそうかもしれないが、やってみなきゃ分からない!」
「アハハ織斑君、それでも無理だよ。男が女より強かったのは大昔の話だよ?」
「それに男と女が戦争をしたら3日で私たちの勝利だよ?」
セシリアと一夏の会話に女尊男卑に染まった女子生徒たちが混ざってくる。彼女らの言い分に同意する生徒もいるようで時おり頷いている。
「た、たしかに……」
一夏も先程までの発言とは異なり女子生徒の意見に同意しているようだ。
「はぁ……貴女方は本気でそのように思ってますの?」
「どういうことだ?」
セシリアの言葉に疑問を抱く一夏と一部を除いたクラスメイトたち。
「もしもそのような戦争が起こりましたら少なくともわたくしは男性側につきますわ」
「どうして代表候補生が下等な男側につくのよ!」
一人が怒鳴りながらセシリアの胸ぐらを掴み上げる。おそらく過激派な女尊男卑の生徒だろう。過激派の人たちは自分たちの為なら周りの目を気にしない傾向にある。過激な事をしても女性優遇制度により社会的刑罰を受けない事も影響しているのだろう。たとえ社会的刑罰を受けたとしても本来の、女性優遇制度以前の刑罰よりも非常に軽い刑罰になるのだ。
それによりこの10年程度でデモ行進中の人々への大規模爆破やトップの暗殺など昔に比べて非常に危険な国へと変貌したのだ。
更に爆破に巻き込まれたデモ参加者の大半は男性でありデモ内容は「女性優遇制度の撤廃」であった。この事件は異様な速さで解決された。事件発生からわずか3日で“男性のみ”で構成された犯人グループの逮捕。その1週間後に裁判所に送られ、4日後にグループ全員に死刑判決。公にはされていないが死刑執行は1ヶ月後だったそうだ。その捜査に携わった警官は全員女性の上、彼女らの経歴は素人同然。当時は警察のトップが次々に暗殺され新しくそのホストについた女性警察官が大規模な移動を宣言しそれ以前に勤めていた男性警察官の大半が辞職をするという不可解な出来事が起こったのだ。
「なんでですって?つまり貴女はわたくしたち代表候補生や国家代表は女性側につき男性を殺し回れとおっしゃりますの?」
「そ、そこまではいってないわよ」
「いえ、代表候補生が女性側についていなくてはならない理由などそれくらいしか思い付きませんので。あとは戦力を取られないため、ですがISがなければ代表候補生など訓練された軍兵一人すら倒せませんわ」
セシリアの冷徹な言葉に女子生徒は掴んでいた胸ぐらを離す。
「それにわたくしは、いえわたくしだけでなく多くの国家代表や候補生はそのような事の為に今この地位に立っているのではありませんわ。それにそのような考え方をする貴女にはIS操縦者としての「そこまでだオルコット!」」
セシリアは会話に釘を刺した織斑先生を睨み付けながら口を開く
「織斑先生、何故先生は今このタイミングで止めに入るのですか?わたくしはただ事実をお伝えしようとしまだけですのに」
「ほう?事実だと?お前の発言がイギリスの発言になるかもしれないのだぞ?」
「たしかに代表候補生の言葉は時としてその国の言葉へと変わります。それによって外交問題に発展した事もありましたわね。ですが、今回の件に関しましては多少私情も含まれておりますが我がイギリスいえ、United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland、グレートブリテン及び北アイルランド連合王国の総意と受け取ってよろしくてよ」
「…………ふざけるのも大概にしろよ小娘が」
「ふざけている気などないのですが。少々特殊な環境で育ったものでその辺りは許容していただきませんこと?」
「まず教師に対する言葉使いを直せ」
「先程も言いましたがわたくしは少々特殊な環境で育ちましたので、尊敬や教わるに値する人以外には敬いませんの」
セシリアがそう言うと織斑先生は出席簿をセシリアに降り下ろした。セシリアも折紙のように避け……れる筈もなく頭部に直撃した。
「──っ!?」
余りの痛さに両手で頭を押さえるセシリアを見て織斑先生は満足そうな顔をする。
「ふん。私に逆らうからそうなるのだ」
「ねえ折紙」
「どうしたの士織?」
士織と折紙は織斑先生がセシリアを叩いた光景を見ながら小声で会話をする
「さっきまでの会話とかを映像で撮っちゃったんだけど、どうしたらいいかな?」
「ひとまずDEM社に送ったら」
「うん。そうするね」
折紙の意見を聞き先程までの光景を、クラス代表を決めると織斑先生が宣言してからセシリアを叩くまでを写した映像をDEM社のエレンに送る士織。
「では来週、クラス代表決定戦を行う!織斑と五河妹、それからオルコットは準備しておくように」
少し前に同じことを言ったような気もするが織斑先生の宣言にクラスから「はいっ」と声があがる。
「そういえばどうして動画を取ったの?」
ふと先程士織が撮ったという映像が気になった折紙は士織に尋ねると士織は
「面白そうだったから?」
と曖昧な事を言い残した。
別の所に力を入れてしまった!?