エーテルを食え、トリコ   作:双子座流星群

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増えていくUAに心が躍っている所存です。



共鳴芋《レゾネ・ルート》-2

「あぁ、そうなんだよ。新しい食材が見つかるかもしれねぇんだ」

トリコはロードの依頼を受け、出立の準備をしていた。

 

ある程度の準備は終わり今はバレエツインズに入るためのアポ取りをしていた。

 

いくら著名なトリコとは言え、私有地であるバレエツインズに無断で入れば罰則はあるからだ。

 

「たくさん採れたら分けるからよ、バレエツインズに入らせてもらうぜ、市長」

かつては高層商業タワーバレエツインズとして人々が賑わっていたが、ホロウ災害に見舞われ、現在は廃墟とかしている。

 

そこを買取、現在所有しているのがトリコの電話相手である市長だ。

 

「話はわかった、私も君が見つけてくる食材が好きだからね、立ち入ることを許可するよ。」

「助かるぜ、今回の食材を手に入れたら、ワラビー餅と一緒に持っていくからよ」

 

トリコは友人と話すように会話している、相手は新エリー都の市長。

 

つまり、この新エリー都における頂点に君臨する立場の人間であり、もしこの会話を市長を知る人間が聞けば卒倒するだろう。

 

「なに…ワラビー餅もか?それは助かる。アレは私の好物なんだ。そうだ、バレエツインズに行くのならばヴィクトリア家政のライカン達を伴って行ってくれないか?どうも最近、あの辺りがきな臭くてね、調査を依頼しているんだ。」

 

「ヴィクトリア家政か…サービスが優秀すぎて度を越す、なんて呼ばれてる彼処か。」

 

ヴィクトリア家政

 

名前通りの掃除・洗濯・炊事といった事から、従者としての身の回りの世話を行うこともある。

 

個人的なトラブルをクライアントに代わって対応・処理することもある。

 

噂では真っ当な仕事から人には言えないようなものまで、どんな依頼にも対応し優れた成果を挙げるプロ集団

 

それ故依頼料はかなりお高め。

 

「度を越す…耳の痛い話だが、彼等なりに全力を尽くしていることを分かってあげてほしい。」

 

市長の声からは苦笑いのようなものが交じりつつも、その声からは失望の色は見えない。

 

「わかった、この後に寄っていくから連絡しておいてくれるか?」

「了解した、彼等も美食屋トリコの仕事を目の前で観察できる良い機会になるだろう。食運を、トリコ。」

 

 

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「いや、デカすぎだろこれ」

 

トリコはそのあまりに大きな洋館を見あげていた。

 

市長からヴィクトリア家政の従業員達が待機している場所を教えてもらい、足を運んだ先には新エリー都でも屈指の大きさを誇る巨大な洋館が建っていた。

 

華美な装飾は無いものの、見るものを圧倒する大きさと旧文明の様式を用いて作られたそれは芸術品でもあった。

 

「この門は…黒曜樹で出来てるのか、これほどの量を用意出来るなんてな」

 

黒曜樹

 

それはホロウ内部の中心付近に自生することが多い巨大な大木。

 

表皮が黒曜石のように漆黒に輝いており、建材として重宝されている。

 

お値段1㎥で120000ディニー

 

「お……?」

 

トリコが門に見惚れているとカチリと音がなり門がゆっくりと開いていく。

 

重厚な門が静かに開くと、規律の取れた足音が響く。

 

そこに立っていたのは、鋭い白銀の毛並みと深い黒のスーツに身を包んだ狼のシリオンだった。

 

その姿は獣の威圧感を纏いながらも、動作の一つひとつがまるで儀式のように美しかった。

 

彼はゆっくりと片膝を折り、右手を胸に添え、低く頭を垂れる。

 

「お待ちしておりました、トリコ様。私はヴィクトリア家政の統括を任せていただいております、執事のライカンと申します」

 

「その様子だと市長からはキチンと連絡が言ってるみたいだな。

俺は美食屋トリコ、よろしくなライカン」

 

トリコは右手を差し出す。

 

「こちらこそ、彼の著名なトリコ様にお会い出来て光栄でございます。」

 

ライカンは立ち上がり、トリコの差し出した手を取る。

 

「詳細はご主人様からお伺いしておりますので、先ずは中へ」

 

トリコは案内されヴィクトリア家政の洋館へと入っていく。

 

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「流石、噂に聞くヴィクトリアだな。家具に使われて素材もやはり一流だ」

応接室に通されどう見ても高いソファに座っているトリコ。

 

「お褒めにあずかり恐縮です。トリコ様が我々にとご用意してくださりましたこの茶葉もかなりの一品とお見受け致します。」

 

ライカンは流れるような動作で急須をを傾けた。

 

その仕草には一切の無駄がなく、湯の注ぎ口から立ち上る白い蒸気さえも彼の指揮のもとで舞うように見える。

 

 

カップの中で深い新緑の液体が渦を描き、香り高い茶葉の芳香がゆるやかに広がっていった。

 

「Teaレックスの体毛から採取した茶葉を使った緑茶だ、対応レベルはかなり高いがソイツ自体は草食で大人しいからな、ヘタなことをしなければ茶葉を分けてくれるイイやつだよ。」

 

トリコは飲み慣れているようでズズッと一口飲み、ホッと息をついていた。 

 

「ライカン、今日は依頼で来たわけじゃないからお前も座ってくれ。俺はあんまりかしこまったのが得意じゃねぇからさ」

 

姿勢良くトリコの正面に立っているライカンにトリコは座るように促す。

 

「……トリコ様がそうおっしゃるのならば。お言葉に甘えさせて頂きます。」

 

ライカンは不承不承と言った様子でソファへと座る。

 

「まぁ1杯飲んでみてくれよ、上手く作れたと思うからよ」

 

湯呑にお茶が注がれていくのを見ながらライカンは考えていた。

 

トリコ様はTeaレックスと言ってたよな?と

 

Teaレックス

 

全身の体毛が茶葉になっており、ここ数年で発見されたエーテル食材の一つ。

 

体毛の茶葉はとても高品質でその茶葉を使えばあらゆるお茶は再現できると言われるほどに。

 

対応レベルは10

 

並大抵の人間が飲める代物ではない。

 

かくいうライカンも、とある依頼にて新エリー都でも有数の権力者の方から自慢という形で見せてもらった程度の知識しかない。

 

100グラム80万ディニーと言う驚愕の値段だったと記憶して居たライカンは目の前のお茶に僅かな恐怖を覚えていた。

 

使用人が飲んでもいい価格ではない、しかし飲まなければトリコへの不義理となる。

 

カップを手にした瞬間、湯気の向こうからふわりと立ち上る緑葉の香りが鼻腔をくすぐる。

 

荒々しくも何処か優しい森のような香り。

 

ライカンは静かに一口含み、舌の上でその液体を転がした。

 

瞬間、瞳がわずかに細められる。

 

まるで春先の森をそのまま煮詰めたような、鮮烈な香気。

 

苦味と甘味が完璧な均衡で寄り添い、後味には、朝露を含んだ若葉のような清涼が残る。

 

「……これは――」

 

低く響く声に、感嘆と敬意が混じる。

 

「緑の香気が舌を包み、苦みが己の呼吸を律してゆく……」

 

彼はゆっくりと瞼を閉じ、再び湯呑を唇に運ぶ。

 

白銀の毛並みの奥で、わずかに口角が上がった。

 

「……このような茶を前にすれば、言葉など野暮というものでございます。ただ、深く礼を――申し上げるのみです。」

 

ライカンは深く感動していた。

 

これがエーテル食材なのかと。

 

「喜んで貰えて何よりだよ、コレを手土産にしてみて正解だったぜ。」

 

トリコはニカッと笑うとまたお茶を口へと運んでいた。

 

ライカンもフッと笑みを零すと先程までの硬さは無く、少し柔らかな雰囲気が2人を包んだ。

 

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「――本件につきまして、ご主人様よりご協力の依頼を賜っております」

 

低く、よく通る声。

 

一拍置き、ライカンは胸に手を当て、ほんの僅かに頭を下げた。

 

「ただ一つ、僭越ながらお願いがございます」

 

「今回の任務、もしお許しいただけるなら――私の同行者を4 名、連れてゆくことをお認め願えますでしょうか」

 

「同行者か?」

 

その中で、ライカンは微動だにせず、ただ礼を尽くした姿勢を保っていた。

 

白い尾が静かに揺れ、緊張をわずかに溶かすように、彼の言葉が続く。

 

「任務の円滑な遂行と、安全の確保のためでございます。3名は私共、ヴィクトリア家政の従業員。1名は高名なプロキシでございます。ご不快に思われぬよう、礼節は必ずお守りいたします」

 

深々と頭を垂れ、彼はただ、相手の言葉を待った。

 

「俺は構わないぞ、大勢の方が何かあった時に対処はしやすいからな。」

 

トリコはサラッと同行を認める。

 

「――ご許可、痛み入ります」

 

ライカンは静かに一礼した。白銀の毛並みがわずかに揺れ、その金の瞳には深い敬意と感謝の光が宿る。

 

 

「では、同行いたしますのは我が信頼する三名の従業員――ヴィクトリア家政所属のメイドたちでございます」

 

その声と共に扉が開き3人のメイドが入室してくる。

 

彼は姿勢を正し、落ち着いた口調で一人ずつ紹介を始めた。

 

 

---

 

「まずは、リナ――本名、アレクサンドリナ・セバスチャン。

ヴィクトリア家政のメイド長にして、最も古くから共に仕えている者です」

 

ライカンの声に、奥ゆかしい足音とともに一人の女性が一歩前へ出た。

 

柔らかな薄緑の髪を後ろで束ね、クラシカルメイド服を身にまとったその姿は、まるで絵画の中から抜け出した貴婦人のよう。

 

彼女は深々とお辞儀し、穏やかな笑みを浮かべた。

 

「どうぞリナとお呼びくださいませ。家事全般と接待、礼儀作法の指導を担当しております」

 

その声は柔らかく、聴く者の心を包み込むようだった。

 

「祖母から教えられた古い作法が身に染みついておりますが……時代に合わせたおもてなしも心得ております」

 

ライカンは小さく頷き、次の人物へと視線を移す。

 

 

---

 

「次に――エレン・ジョー。ヴィクトリア家政の期待の新人でございます」

 

一歩前に出た少女は、赤みがかった瞳と鋭いギザ歯を覗かせながら、軽く頭を上げた。

 

「あーー…どうも、エレンです…。あたしは喫茶部門と現場サポート担当でーす…」

 

言葉遣いはくだけているが、背筋はしっかりと伸びている。

 

「普段はカフェで給仕してますけど、必要があれば外の仕事も。護衛とか、ちょっとした掃除も得意なんで」

 

その最後の「掃除」という言葉には、目に見えぬ意味が含まれていた。

 

ライカンは軽く咳払いをしつつ言葉を続ける。

 

「……彼女は奔放に見えますが、任務の際は誰よりも冷静です。戦闘対応も含め、私が信頼を置く人材でございます」

 

 

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「そして――カリン・ウィクス」

 

呼ばれた少女は、小柄な体をさらに小さくしながら一歩前へ。

頭の両方に結った髪を揺らし、両手でエプロンの裾をぎゅっと握っている。

 

「……あ、あの……ヴィクトリア家政の、カリンです……」

 

「掃除、洗濯、あと……えっと、戦闘支援とか、も……頑張ります……!」

 

一言ごとに俯き加減になっていく彼女を見て、リナが優しく微笑み、肩に手を置く。

 

ライカンは静かに頷きながら、トリコへと向き直る。

 

「未熟な面もございますが、彼女の献身と誠実さは本物でございます。この三名、いずれも信頼に足る者たち。今回の同行、必ずやお役に立てることでしょう」

 

深く頭を下げ、彼は言葉を結んだ。

 

「――我らヴィクトリア家政、主の名に恥じぬ奉仕をお約束いたします。」

 

「確かに、そこら辺の防衛軍よりも腕が立ちそうだ。俺は美食屋トリコ、よろしくな」

 

トリコも立ち上がり片手を上げて挨拶をする。

 

硬い雰囲気のヴィクトリアに対して軽く快活なトリコの雰囲気が場を和ませる。

 

「んで?後のプロキシってのは誰なんだ?」

 

ソファに座り直して来ていないプロキシについて尋ねる。

 

「今回同行するプロキシ様ですが、ご本人はここにはいらしておりません。己の身を使わずホロウを案内する伝説のプロキシ、パエトーン様でございます。」

ライカンがこの場に居ないプロキシ、アキラの事について述べていく。

 

「なんだ、高名なプロキシってパエトーンかよ!アイツとはここ最近会いすぎてんなぁ…」

 

トリコのように己の嗅覚でホロウを自由に動ける例外は置いておくとして、本来ならば命を預けるような立場であるプロキシがこの場に居ないことに違和感を覚えたがパエトーンと聞いて納得した様子だ。

 

「トリコ様はパエトーン様とお知り合いで?」

 

ライカンは少し意外そうに聞いてきた。

 

「依頼で何度かな、今度はどんなことに首を突っ込んでんだろうな」

 

トリコは笑いながら答えて。

 

「でしたら話が早い、現場での打ち合わせも円滑に進むことでしょう。」

パエトーンの説明が省け、トリコの警戒が解けたことにライカンは安堵していた。  

 

「それで、出立は何時に?」

 

「明朝、バレエツインズへと向かう予定になります。」

 

「了解した、俺も時間になったら現地で合流するとしよう。」

 

 

 

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「トリコ様、少々よろしいですか?」

 

応接室を出たトリコをリナが呼び止める。

 

「なんだ?伝達漏れでもあったか?」

 

トリコは呼ばれた方に振り返る。

 

「いえ、そうではございません。私が個人的にトリコ様へのご用でお伺いしました。」

「実は私、このヴィクトリア家政の従業員の皆様にまかないを作っているのですが……あまり美味しくないのかあまり食べてくださらなくて。美食屋であるトリコ様に何かご指導頂けたならばと思った所存です。」

 

リナは少し悲しそうに呟いていた。

 

「まかないか…!ヴィクトリア家政のまかないとなると何が出てくるのか気になるな、俺でよければ力になるぜ」

 

ヴィクトリア家政と言う高位の会社で出るまかないが食べられるという下心200%の気持ちであったがトリコは快く引き受けた。

 

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「リナ…これがまかない…なんだよな?」

 

トリコは目の前の皿にある名状しがたいナニカを見つめ困惑していた。

 

「えぇ!そうですわ!何時もはライカンに取り上げられたり、エレンちゃんが1人で食べてしまうので今日の分を少し残して置いたのですわ」

リナはニコニコと楽しそうに笑って皿の上にある紫色のゲル状になっているナニカをバーナーで炙っていた。

 

「………ちなみに、この料理名はなんなんだ?」

 

「…?見ての通りグラタンですが……」

 

リナは不思議そうに首を傾げていた。

 

「…出されたものは全部食う、それが俺の流儀…!」

意を決してスプーンをグラタン(?)に突っ込み紫色のソレを口へと入れる。

 

「ヌヴッッ!!」

 

激痛―!

 

これはジョロキアーモンドの辛味ッ!

 

そしてエグみッ

 

この風味は下処理せずに入れた生魚……サワラ貝…

 

トリコの体に宿るホロウ細胞が警鐘を発していた。

 

このままではやられるッ

 

ならばこの味に適応するのだとッ

 

リナの作ったグラタン(?)に含まれる数十種類の纏まりのない食材が奏でる味の機銃掃射にトリコは抗っていた。

 

その場で新たな"抗体"を生成!

 

見事、打ち勝ってみせたのだ。

 

「トリコ様…何か改善点はございますか?」

 

リナは両手をついて俯いているトリコに問いかける。

 

その手にはメモとペンがあり意欲はあるようで

 

トリコは一言告げた。

 

「今度……コマツを連れてくるよ……」

 

漏れ出た言葉は酷く悲しそうだったとリナは語る。

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