そして5万UAありがとうございます!!拙作ですがお楽しみください!
バレエツインズ前の船着場にて
ライカンは懐から懐中時計を取り出して時間を確認していた。
「……そろそろトリコ様との約束の時間ですが」
約束していた時間になろうとしていたがトリコの姿は何処にも見えていなかった。
「トリコさんの事だ、想像しない方法でここに来るんだろう」
前回は空から来たしねと呟いたのは何時も通り、ポンプでホロウへと来ていたアキラだった。
「まぁ、空からとは美食屋トリコ様らしい登場ですね」
ニコニコと笑っているリナとは対照的に嘘でしょ?と顔をしかめていたエレン。
「あ、あの…ライカンさん…」
おずおずといった様子でライカンを呼ぶカリン。
「おや、どうかしましたか?カリン」
ライカンは振り向きカリンの方へと目線を向けた。
「あ、あちらから物凄い水飛沫が…」
カリンはそう言うと指を指す。
一同がそちらの方を向くと、そこには爆裂に水飛沫を上げながら近づく何かがいた。
距離が近づき、姿がハッキリ見えるようになるとそれはトリコだと分かった。
しかしおかしいのはここからだった。
トリコは足首から上が完全に海上に出ていた。
何かに乗っているようだったがその何かもおかしい。
それは乗り物の出す水飛沫ではなくバタフライ泳法の水飛沫だったからだ。
そう、トリコはバタフライで泳ぐ何かの背中に乗ってこちらにやってきていた。
しかも速い、人を乗せて出せる速度ではない。
「何……あの…え…?」
そのとんでも光景を見て声を出せたのはエレンだけだった。
「よう、待たせたな」
そんな事は露知らず桟橋へと到着したトリコはその何かの背中から降りてライカン達へと挨拶をする。
陸上へと上がってきた何かはゼェゼェと肩で息をしながら膝に手をついていた。
全身が緑色で背中には甲羅、頭は不自然にツルツルしていてアキラ達の知る既存の生物知識が通用しなかった。
「…お待ちしておりましたトリコ様、…その、そちらの方は?」
沈黙を破りライカンはみんなが気になっているであろう事に突っ込んでいく。
「あぁ、コイツは河童のシリオンのノッシュって言ってな、以前とある食材の調達に出たときに知り合ったんだ。バレエツインズが水辺を越えた先ってのを思い出してな、ミネラルキュウリを用意するって言ったら乗せてくれたんだ」
「左様でございますか」
正直言っていることの1割も理解出来ていなかったがこれが美食屋トリコなんだと無理矢理に納得したライカンだった。
「また太ったでしょトリゴン!前よりめっちゃ重かったんだけど!」
ノッシュは息が整ったのか苦言をトリコへ申した。
「トリゴンじゃねぇよ、トリコだ。最近は美味いもんを沢山食べたからな、仕方ないだろ?約束のミネラルキュウリは何時ものところに卸しておくからよ、助かったぜ」
「やったー!この為だけに来たかいがあったよ!何かあったらまた呼んでね〜!」
そう言うとノッシュは再び海へと飛び込んで帰っていった。
「…嵐のような方でしたわね」
沈黙を破って言葉を発したのはリナだった。
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「やぁ、トリコさん久しぶりだね」
「おう、ムグッアキラか。話はライカンから聞いてるぜングッ、ダチを助ける為に来たんだろ?ゴクン」
一行はバレエツインズ入り口付近まで移動して来ていた。
並んで歩くトリコの片手には直径30センチはあろうかという巨大なおにぎりを頬張っていた。
「あ、あぁ…レインと言う知り合いなんだけど、邪兎屋のニコを覚えているかい?彼女からレインを助けてほしいと依頼があってね」
「そっちも込み入った事情がムグッあるんだな」
話をしている2人を先導しているのはヴィクトリア家政の面々だ。
現在のバレエツインズは市長の管理下にあるため、点検の為時折訪れているので大まかな道は把握しているようだ。
「これは…プロキシ様にトリコ様、少々問題が起きたようです。」
先導していたライカンが立ち止まり、閉まっているシャッターの電源をいじりながら話しかけてくる。
「電源系統に異常が出ており、シャッターが起動しないようです。管理室へ向かい電源のリセットを行わければなりません」
「ゲッ……管理室まで行くのにダルいんだよね……遠いし…」
エレンは露骨に嫌そうな顔を浮かべガリガリと飴を噛み砕いていた。
「こじ開けるのはだめなのかい?」
シャッター付近までポテポテと歩いていくアキラがライカンへ問う。
確かに管理室まで行くよりかは効率的な意見だ。
「プロキシ様のご意見は最もでございます。ですが、こじ開けたり無理に爆破などすればまだ生きているセキュリティが一斉起動する可能性やホロウの構造が変わりかねません。」
ライカンは目線を下げてアキラへ返答する。
そう、ホロウ内での爆破や構造が変わるような行動はキャロットのセーフティーエリアや脱出口を変えかねないのだ。
だから決して近道だからといって建物を吹き飛ばして道を作るようなことはしてはいけないのだ。
「えっ… えっとぉ…… 管理室には私とリナさんが行きますからプロキシ様とトリコ様はこちらでお待ちくださいぃ…」
「カリン、管理室へは行かなくても大丈夫だぜ。要はシャッターを閉めたまま通れるようにすれば良いんだろ?」
管理室へ向かおうとするカリンとリナを呼び止めトリコは右手を構える。
「トリコ様…?一体何を……?」
リナが不思議そうにトリコを見つめている。
「簡単だ、
トリコは右手をナイフのように構え短くピピッと振るう。
一見、何も起こらなかったように見えるがトリコがシャッターを蹴り抜くと△の形に切り抜かれる。
「これで通れるな」
何事もなかったようにトリコはその穴を抜けていく。
「確かに、セキュリティやホロウ内部の変調はなかったね。リン、僕達も次からはそうしようか」
〈いい案じゃないかなお兄ちゃん、不可能だと言うことに目を瞑れば〉
アキラは呆れつつもその手際の良さに感動しながらトリコのあとを続いていく。
「…本当に人間なのかな」
「エレンちゃん、お客様の前ですよ。」
「はわぁ…!この方法ならカリンでもお役にたてそうです…!」
エレン達もその穴を通り抜けていく。
ライカンのみがその場に佇み、その切り口を撫でていた。
その切り口は一切のガタつきもない
まるでバターを削り取ったかのような断面だった。
もし、切羽詰まり押し通らなければいけない事態になった際に自分はこのような芸当が出来るだろうか。
「……お見事でございます。」
様々な思いを飲み込みライカンも後へ続いた。
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暫く建物を登り続けて、少し広めのエリアに出た。
元々、大きな建物であるバレエツインズがホロウに飲まれ巨大な迷路と化していたここを迷わず進めてこれたのはプロキシであるアキラの力が大きかった。
「ガイド様なしでは成し得なかった事ですわね。ご主人様もお喜びになりますわ」
リナはそう言いながらアキラ、ボンプの頭を撫でていた。
「どういたしまして、プロキシの本分を果たせて何よりだよ」
満更でもなさそうに目のモニターが^^と笑っていた。
「ん?そこに何かあるみたいだ」
アキラは台座の様なところに足をかけステージの様なところに黄色い何かが落ちているのを見つけた。
それはリュックサックであり、アキラにとって見慣れたものだった。
「ッ!これってもしかして…」
そのリュックを拾い上げ疑念が核心へと変わっ
トリコはそのカバンを見つめながら軽食のバナナチップスをポリポリと食べていた。
カリンが興味深そうに見ていたので少し分けて上げたところパァァっと笑顔になり食べていたので少しほっこりしていやがった。
「プロキシ様、お心当たりが?」
ライカンはリュックを探るアキラへ声をかける。
「あぁ、レインのリュックだ。間違いない、何か手掛かりがあるかもしれない」
ガサガサと漁っていた時、カツっとした何かに手が触れた。
「え?」
取り出したソレを見ると数字が表示されていた。
数字が減っていくそれはまるでカウントダウンの様に
「うわぁぁぁぁ!!」
アキラはそれに恐怖し慌ててソレを放り捨て身を伏せた。
庇うようにライカンはアキラへ覆い被さり目線をソレへ向ける。
他の皆々も臨戦態勢を取り何が起こるかを見据えていた。
唯一トリコだけはソレが爆発物ではないと見破っていた為、特に構えては居なかったが。
カチリ
無機質な音がなったかと思うとソレからクラシック調の曲が流れてきた。
「あれ…何も起こらない……」
アキラは起き上がり録音機の下へ歩いていき確認をしていた。
「うん、大丈夫だ。ただの録音機…… 」
アキラが言い終わるより前にぬらりと大きな影がアキラを包む。
「後ろに!!!」
リナが大きな声を出しアキラへと知らせるがその大きなナニカの手がアキラへと伸びていた。
「ナイフッッッ!!」
アキラへと届く寸前に飛び込んできたトリコが自身の右腕をその手へと振り下ろす。
ガキンッ!と金属がぶつかり合う音が響きナニカは身を翻して距離を取っていた。
その動きは優雅で踊るようだったとアキラは後に語る。
スラリと伸びた脚
スカートのようにも見えるソレには似つかわしくないほどに刃物のようなものが意匠され
完璧なレヴェランスを魅せこちらへ手を差し出していた。
「コイツ!何処から現れたんだ!」
アキラは唐突に現れたナニカに恐怖していた。
「…ダンスの誘いとお見受けいたしました。お相手いたしましょう。」
ライカンは腰に手をやりお辞儀を返す。
それを合図にヴィクトリア家政一同が臨戦態勢へと入る。
「お前がこのバレエツインズの主か、ダンスに自信はないが力比べなら相手してやるぜ」
トリコもべきべきと拳を鳴らして戦闘態勢へと入る。
そう、目の前にいるソレがこのバレエツインズの主
【Marionette Odile solo 推定対応レベル30】
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開戦の火蓋はマリオネットオディールが顔を上げたと同時だった。
エレンが音動機を展開し、高速で接近。
周りの温度が一気に下がり空気に氷が混じりエレンを中心に氷風が巻き起こる。
急速冷凍と呼ばれるエレンの得意技であるがこの利点は高速で移動する際に発生する摩擦熱を軽減し、スピードを維持。
更には生身の相手であれば僅かな筋肉の収縮を狙えて隙を生み出せる。
カリンも遅れまいと音動機を展開し、接近する。
カリンの音動機は中心から開くように設計されており、中から回転するノコギリが現れる。
手に持った大型の回転ノコと合わせ死角から攻撃する為に作られている。
「ふんっ!」
「えい!」
2人が息を合わせオディールへと攻撃を行うが受け流されエレンとカリンはオディールの後ろへと流される。
「チッ!ボス!こいつ相当出来るタイプだよ!」
「はわわわぁ!」
エレンは受け身を取るが、カリンは回転ノコを床に突き刺してギャリギャリと床を削りながら止まる。
「そのようです…ね!」
オディールの矛先がライカンへと向かい、オディールのスカートからナイフのように鋭い衣装を飛ばすがライカンは自身の機械化された脚で優雅に弾き返していく。
「オラァッ!」
トリコは投擲物を避け、懐に入り込みオディールへと拳を打ち込むが、強力な拳を受けたオディールはフワリと中へ浮かび威力を分散させていた。
「打ち込めはするが、決定打にはならねぇか」
距離を取ったオディールを見据えてトリコは呟く。
「気難しいお客様だ……」
ライカンは思案していた。
なぜ突然現れ襲ってきてのか、その要因となる何かは無かったのか。
そう言えば音楽が流れてきてから現れたのはもしや……
「おーい!怪物!こっちだ!」
アキラは突然声を上げたかと思うと短いお手々で先ほどの録音機をフリフリと振っていた。
オディールはそれを見据えるとトリコ達を気にもとめずアキラの方へと走り出す。
「えい!」
アキラはオディールが接近するのを確認すると録音機を吹き抜けの穴へと投げ捨てた。
オディールはそれを追うように吹き抜けへと飛び降り裂け目と消えていった。
「……行ったようですわね」
場の緊張感が消えた時、リナが言葉を発した。
「はぁ……ホロウの裂け目があって助かったよ。音楽に引き寄せられていたみたいだね」
アキラがホッと息をつきながらこちらへと歩いてくる。
「どなたかがけしかけてきた、としか思えません」
「まさかレインが……いや、そんなはずは……うん?」
何処からか何かの発射音のようなものが聞こえたかと思い振り向いたその時。
無数のミサイルが雨のようにアキラへと降りかかった。
「あっ…まずい…」
唐突に訪れた死の気配にアキラは動けなかった。
「…ふんっ!!」
「フォークシールドッ!!」
アキラの眼の前に飛び出してきたのはエレンとトリコだった。
エレンはシザーテイルでミサイルを綺麗に両断していた。
「おい、大丈夫かよアキラ」
トリコはアキラを抱えながら問う。
可愛いボンプのボディには傷一つ付いておらず、よく見るとトリコとアキラに巻き付くように透明なフォークのような物が見て取れた。
「フォークシールド…咄嗟にやってみたが上手くいくもんだな」
アキラを下ろし襲撃者の方へと視線を向ける。
「…チッ」
エレンは軽く舌打ちをしたかと思うと音動機を展開させ高速で接近していく。
その間にもミサイルはエレンへと降り注ぐが。
シザーテイルが鋭く開き、閉じる。
巨大な刃はまるで獲物を喰らう肉食獣の顎のように音を立て、迫るミサイルを一瞬で二つに噛み切った。
カチンッ、ギンッ、ガギンッ
エレンはそのすべてを、シザーテイルの鋏刃で噛み切っていく。
刃の軌跡は音動機から溢れる冷気を伴い薄い蒼光を残し、鋭い尾のしなりと共に円を描いた。
「エレン!全て倒しては!」
ライカンが珍しく大きな声を出した時には鈍い音が響き静寂が戻った。
「すげぇスピードだったなライカン、信管を避けて切り捨てて誘爆を防ぐ…か。若いと思っていたがありゃ完成しきってるな。」
顔に手を当ててため息をつくライカンにトリコは軽く言い放つ。
エレンの消えた構造物の裏へと着くとそこには見事全員伸びている賊がいた。
「僕達以外にも誰かいる……?でも一体…あっ!さっきはありがとうエレン」
ライカンは倒れている兵士のような風貌のしている素性を調べるため服などを弄っていく。
エレンはシザーテイルを壁にかけ、壁に寄りかかっていた。
しかし返事をすることなくふらりと倒れ、それをリナが受け止めた。
「おいおい、大丈夫か?」
「エレン!しっかりするんだ!」
トリコも心配そうに顔を覗き込み、アキラは足元でンナンナと慌てている。
「安心してください、エネルギー切れで眠っているだけですわ。」
リナは優しくエレンの髪を整え、撫でている。
「エネルギー切れ……カロリー不足って事か、確かにサメのシリオンっぽいな」
「一度引き返して、この者たちから情報を聞き出しましょうか」
ライカンは一通りの物色が終わったようでこちらへと歩いてきた。
「だな、俺は平気だがライカン達はエーテル侵食の値もヤバいだろうからな。一旦引き上げるのは賛成だ」
トリコは転がっている賊達をエーテル鋼のワイヤーでまとめ担ぎ上げた。
有に300キロ近い重さはあるだろうに軽々と担いでいる様をみたライカンは改めて感嘆の意を評した。
「流石でございます、このライカンまだまだ精進出来ると核心致しました。」
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バレエツインズを一望できる広間のベンチにて
「…んぅ……体おっも…」
ベンチに丸まるって寝ていたエレンが目を覚まして伸びをする。
「起きたか、エネルギーが切れると結構長いこと眠るんだな」
目が覚めたエレンが見たものは自分の隣に座りワシワシと分厚いサンドイッチを平らげていくトリコだった。
「……別に目が覚めるまで居なくて良かったのに…」
エレンは伸び終わるとベンチに座り直した。
「ねぇ、ボスは?」
「ライカンなら今お前がしばき倒した奴らとお話中だ」
厚さ十数センチはあるサンドイッチを二口で食べ進めていくトリコをみてエレンは少しげんなりしていた。
「トリコ様、尋問は終わりました。」
裏からライカンとリナが歩いてきてエレン達の前に来る。
「有益な情報が沢山ございました。後ほどプロキシ様がこちらへいらっしゃるそうですのでお話は後ほど」
どうやらあの兵士達から沢山の情報を得られたようでライカンは少し満足げだった。
ちなみにカリンは念のためということでアキラを迎えに行っていた。
これからの事を話している時にふとエレンの鼻をくすぐるピーナッツバターの甘い香りがしてきた。
それはトリコがカバンから取り出したサンドイッチから発しているようで、エネルギー不足のエレンのお腹をくすぐった。
「ねぇ、トリコそのサンドイッチ1つちょうだい」
ぶっきらぼうに手をトリコへ向けて
「エレン、トリコ様のお食事だ。わきまえなさい。」
ライカンはそんなエレンをみてしかるが当の本人はあげる気満々だった。
「構わねぇよ、コマツに沢山作ってもらったから。それにこのサンドイッチは補給食としてかなり優秀なんだ」
カバンから取り出した2つのサンドイッチをエレンとライカンに渡す。
ライカンの分はリナと2人で1つで良いとのことなので切って渡した。
「……あれ?そう言えばコマツがこのサンドイッチは俺以外に食わせるなって言っていたような気がするんだが… まぁいいだろ」
しかしライカン達は聞き逃していた、このトリコの爆弾発言を
「やりぃ…いただきま〜す」
と言いながら、がぶりと遠慮のない一口。
途端に、彼女の目がぱちりと大きく見開かれた。
普段ダウナー気味で半目のままのエレンが、ここまで目を開くのは本当に珍しい。
「……っ、なにこれ。バナナの甘さ……濃すぎて噛んだ瞬間エネルギーが脳みそに直撃してくるんだけど……」
もぐもぐと口を動かしながら、さらに驚愕が深まる。
「しかも何このバナナ、ねっとりとしていて濃厚なのにくどくない風味と食感。やばっ」
エレンはサンドイッチを見つめ、完全に虜になったように肩を落とした。
ライカンは珍しく饒舌になるエレンをみて手元のサンドイッチに目線を向ける。
鼻腔をくすぐる甘いピーナッツバターの香り、そして濃厚なベーコンの香ばしさに思わず喉がなってしまう。
「……では、失礼して」
その瞬間、金の瞳がかすかに細められた。
まるで衝撃を舌の上で静かに受け止めたかのように。
「……なんと……」
わずかな驚愕。
そして、そのすぐ後に深い感嘆が静かに落ちた。
「バナナの濃縮された甘味……一噛みごとに、体の芯へと染み渡っていく。クルミは香ばしく、まるで滋養そのもの。このベーコンの霜降り……舌の上で溶け、旨味だけを残して消える……」
感服でございますとライカンは頭を下げ、これほどの料理を作るコマツと言うシェフに会いたいと感じていた。
続いてリナも口へと運んでいきウットリと息を漏らす。
「これは…罪ですわね。甘いピーナッツバターにねっとり濃厚なバナナの風味が合わさり、そこへ味を引き締めるベーコンの香り。アクセントのクルミがとても良いですわね」
3人が絶賛している中、トリコだけは未だにコマツの言葉が引っかかっており悩んでいた。
「ゴクッ…ごちそうさま、ありがとねトリコ。素材が良いからかなんかエネルギー満タンって感じ」
エレンはまさかサンドイッチで満足するとは思わなかったのかトリコへ謝辞を述べ自販機で飲み物を買っていた。
「…?エレンが満足するとなるとそれなりの量が必要なはずですが、このサンドイッチにそこまでカロリーがあるとは思えませんね」
「確かに、バナナやクルミ、それにベーコンとピーナッツバターは高カロリーですがこのサンドイッチはあったとしても精々2000キロカロリーいかないくらいでしょうし」
ライカンやリナはエレンの言動からこのサンドイッチにそれほどまでのカロリーがあるとは思えず、素材が良いからかと思案していた。
丁度エレンがミルクティーを買って帰ってくる頃にトリコの口から爆弾が投下された。
「あぁ、このサンドイッチはコマツが俺に作ってくれたホロウでの補給食だからな1つ4万キロカロリーはあるんじゃねぇか?」
カシャン
それはエレンがミルクティーを落とした音だった。
……瞬間。
エレン、ライカン、リナの表情が真顔のまま固まった。
「え……?よんまん……は?なに?え?」
「……トリコ様。失礼ですが、今……四万、と仰いましたか?」
目を細くし直し、落ち着きを保とうとしているが、耳が微妙に反応している。
トリコは当然のように指を折りながら続けた。
「このサンドイッチに使ってるバナナはカロリーバナナって言ってな?1本でなんと1万キロカロリー超えする手軽な補給フルーツなんだ、それでこのクルミはバタークルミと言って一粒で成人男性が10日は動けるカロリーだ、それで白毛シンデレラ牛のベーコンでまた跳ね上がる。まあ軽く食えるように調整してあるが……総カロリーはそんなとこだな」
あっけらかんと答えるトリコ。
そう、何故コマツがトリコ以外に食べてはいけないと言ったのか。
それは総カロリーの多さである。
一般的な人間が取るカロリーを大幅に越してしまうとんでないサンドイッチなのだ。
エレンは激怒した。
必ず、この能天気食いしん坊男を掃除しなければならぬと決意した。
エレンが暴れるのをライカンが止め。
何故怒られたのか理解出来ずに食い続けるトリコ。
リナはカロリーの話を聞いて既に気絶していた。
バレエツインズに一人の少女の恨みと罵声が響いた事をアキラとカリンはまだ知らない。
ちなみにこのサンドイッチですがエルヴィスサンドイッチと言う元ネタがありますので気になった方は作ってみてくださいネ