エーテルを食え、トリコ   作:双子座流星群

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大変長らくお待たせ致しました。
まずはお礼を
3万UA お気に入り1000件 日間ランキング16位掲載
皆様のおかげで拙作も大勢の方に見ていただけました。
心からの感謝を
仕事も一段落し執筆出来る環境になりましたのでこの話を持って 執筆の方を再開させていただきます。
前回のアンケートご協力ありがとうございました。
長文の方が望まれている方が多くいらしたので長文で書けるだけ書こうと思いますのでご了承ください。


怒りの一撃

トリコから返信を貰って数分後の一行。

 

「なぁプロキシ、合流する為にも一度ホロウから出たほうがいいんじゃないか?」

 

クレタは瓦礫の上に腰を掛けてアキラに問う。

 

「確かに普通に合流するならホロウの入り口付近で待っていたほうが良いと思うけれど…トリコさんなら予想よりも早く到着してくれそうな気がするんだ」

 

座標も送ってあるしね、と付け加える。

 

「にしても美食屋トリコか…アンドーがあんなにベタ褒めるなんてどんな野郎か気になってきたな」

 

「トリコさんは…なんというか規格外な人だよ。もしかしたらこの仕事が終わった後にご相伴に預かれるかもだね」

 

アキラとクレタの何でもない会話を引き裂くようにアキラが動かしているボンプ、イアスの目元がDANGERの文字に切り替わる。

 

「警告、警告。マスターの居る場所に向かって高速で接近する生命反応あり」

 

Fairyの警告音を聞き各自が警戒態勢へと移る。

 

「エーテリアスか!?」

 

クレタは工業の巨大ハンマーを担ぎ直し、イアスを守るように立つ。

 

ベンとアンドーも各々が武器を構え接近する何かに備えて構える。

 

「Fairy!特定は出来るかい?」

 

アキラの声にも緊張が走る。

 

自分は非力で戦闘において役に立つことはない。

 

だからこそ自分はプロキシとして彼女達の道を照らさなければならない。

 

それなのに気付けなかったという事実に歯痒い思いをする。

 

「対象移動速度およそ時速600キロ、生体反応を検索中……データ一致。接近対象は美食屋トリコです。」

 

そんなプライドを取り戻す為の決意がガラガラと崩れていく音をアキラは確かに感じたと後に語る。

 

「待った、時速600だって?そんな速度を出せる乗り物なんて民間にあるのかい?いくらトリコさんでも……」

 

ビィィィィィィン

 

言い終わるよりも前に何かが振動する音が聞こえてきた。

 

「プロキシ!上から来るぞ!」

 

アンドーの大きな声を皆が聞き、一斉に上を見上げる。

 

瞬間、一瞬何かが通り過ぎたかと思ったその時、

 

とてつもない爆風と爆音が襲いかかってきた。

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぁぁ!」

 

素っ頓狂な声と共に目の前の地面に大きな影が出来上がった。

 

ズッッシィィィィンッッッ

 

と、鈍い音を立てながらトリコは着地した。

 

その足元はひび割れ、一種のクレーターにも見える。

 

「ぬぉッァ……痺れる……」

 

トリコはプルプルと足を震わせその衝撃を堪えていた。

 

「や、やぁトリコさん。随分派手な登場だね」

 

辺りが余りの出来事に静まり返っていたがその沈黙を破ったのはアキラだった。

 

「くぅぅぅ……次からこの移動方法にはパラシュート必須だな…

お、よぉ!アキラ!依頼ありがとうな」

 

トリコはアキラが動かしているイアスを持ち上げようとした時ハッと気づく。

 

「うぉ!コマツがいねぇ!俺よりもずっと軽いから滞空時間がなげぇんだ!」

 

慌てて上を見るとコマツは直ぐそこまで来ていた。

 

「ンナァッァァァォァッ!!トリコさぁぁぁぁぁん!!」

 

くるくると回転しながらコマツが落ちてくる。

 

「任せてくれっ」

ベンはそう言うとコマツの落下地点へ滑り込み毛皮でコマツを包んで受け止めていた。

 

「間一髪、だな」

 

ふぅぅと汗を拭いコマツを地面へと下ろす。

 

「助かったぜ!クマのシリオンがいて良かったなコマツ!着地くらいできるようになれよ?」

 

一安心、と言ったように言うトリコに対してコマツがベンの腕から飛び出してトリコの胸ぐらを掴みグラグラと揺らす。

 

「バカなんですかトリコさんは!!!!危うくスクラップ行きでしたよ!ボンプは!いや!普通はあんな高さからあの速度で落ちたらミンチなんですよこの食欲おバカンナァァ!!」

 

ンナンナとトリコの頬をペチペチ叩いて入るものの効いている様子はない。

 

トリコは悪い悪いと繰り返すだけだ。

 

「取り込み中悪いんだが……アンタがトリコで良いのか?」

 

クレタは毒気が抜けたようにグッタリと武器を下ろし、頭を掻きながら聞いた。

 

「挨拶が遅れたな、俺が美食屋トリコだ。思い立ったが吉日!それ以外は凶日をモットーにやってる……ぜ…?」

 

トリコがクレタに向き直ると暫く固まった。

 

「…?どうしたジロジロ見やがって…」

 

「なぁ…アキラ、今回の依頼主は白祇重工だったよな。嬢ちゃん、その髪の色って地毛か?」

 

マジマジとクレタを観察するトリコ。

 

「確かに今回の依頼主は白祇重工だね、何か接点でもあったのかい?」

 

「いや、以前受けた依頼で会った嬢ちゃんに似た男が居たのを思い出してな。」

 

トリコがそう言うとクレタはトリコに掴み掛かった。

 

しかし身長差は驚異の70センチ。

 

胸ぐらではなくお腹の服の部分掴んでクレタが吠える。

 

「おい!その男はホルスって名前か!?教えろ!なぁ!」

 

「うぉ…!落ち着けって、名前までは知らねぇし、嬢ちゃんと同じ赤髪だって事くらいしかわかんねぇんだ。昔、IHOからの依頼でこの先にある記念公園に来たことがあったんだよ。その時に倒れてた男を見つけたのが俺ってだけだ」

 

くっついてくるクレタを引き剥がす。

 

「くそ!離せ!それで!?その男はどうなったんだ!」

 

「クレタ、落ち着くんだ。トリコさんが困って見たことのない困り顔をしているよ」

 

「社長!落ち着いてくれ!」

 

ベンはクレタの両肩を掴み、落ち着かせようとしてワタワタとしていた。

 

「…俺が見つけた時には心停止の状態だった。」

 

トリコの口から出た言葉に辺りは一気に静けさを取り返した。

 

「そん、な…親父…」

 

先程までの勢いが無くなったクレタはヘタリと地面に座り込んでしまった。

 

空気が重くなりアンドーやベンもなんと声をかけて良いのか分からず見守るしかなかった。

 

その静寂を切ったのはアキラだった。

 

「待ってくれ、その話が本当で、もしホルスさんが亡くなっていたのならばなんで遺族にその話が来ないんだい?」

 

アキラの言う事は最もである。

 

事故であれ事件であれ、故人の遺体は遺族に引き渡されるものだ。

 

「……確かに、親父は死んだと生きてるとも聞かされず行方不明扱いだ、治安局にだって捜索願いとか出したしな」

 

落ち着きを取り戻したクレタはアキラが言った言葉の意味を深く考えていた。

 

「人が消えるってのは尋常じゃない。治安局や公的機関に依頼をしているのに見つからず、トリコさんが推定ホルスさんを発見している……どうやらきな臭くなってきたようだね」

 

イアスの耳が伸びたり縮んだりを繰り返しながらウンウンと頷いている。

 

「もし俺が見つけたのがホルスって奴ならかなりのゴタゴタに巻き込まれてるみてぇだな。コマツ、あん時の依頼内容と結果をアキラに送ってくれ」

 

トリコがそう言いうとコマツがピクンと跳ねる。

 

「無茶ですよトリコさん!あの依頼はIHOからの指名依頼です!強力な漏洩ブロックルーチンが掛けられていてIHOの幹部しか開けませんよ!」

 

ンナナと抗議すコマツだがトリコは気にしないようで

 

「いいだろ別に、IHOが何かを隠してるのは事実だ。なんか言ってきたらもうお前のところには卸さないぞって突き返してやれ」

 

ンナ無茶な…と言いつつもコマツはアキラのノックノックに件のデータを送付していた。

 

「おっと、届いたみたいだね。解析はこの依頼が終わってからするよクレタ」

 

「……ありがとよ、プロキシ。それに……トリコ」

 

自分の父親の謎に迫れると言ったところだったが今は依頼優先と切り替えたクレタはトリコへ礼を述べる。

 

「構わねぇよ、それにいつも文句ばっかり言ってきやがるIHOに一泡吹かせられそうでご機嫌だぜ」

 

トリコはパキパキと体を鳴らしながらプロトタイプの方へと向かっていった。

 

「よし、やろうぜ皆!さっさと終わらせて飯だ!」

 

「おうよ!トリコの兄貴!」

 

アンドーはプロトタイプ発掘のために連れてきていた

 

デモリッシャー「グレーテル」

 

デュアルショベル「ハンス」

 

パイルドライバー「フライデー」

 

この3台に壊れかけているモニュメントを支えていたプロトタイプの回収を命令していた。

 

トリコ自身も腕力を使い重機の動きの妨げになりそうな瓦礫をヒョイヒョイ退かしていく。

 

あらかた片付き始め、いよいよプロトタイプの撤去に取り掛かる。

 

「…親父、あんたはここで一体何を知ったんだ……」

 

撤去が終わり後はもう撤収と言ったところでクレタは改めてモニュメントを見つめ呟く。

 

「直にわかるだろうよ、こっちには伝説のパエトーンがついてんだからな」

 

トリコはクレタの肩に手を置き諭すように伝える。

 

「2人とも、撤去は終わったようだからそろそろ行こうか。エーテル濃度の限界も近いだろうし。」

 

アキラが2人の足元に立ち言った。

 

「だな、帰ったらグレースにも伝えてやんねぇとな。」

 

3人がモニュメントに背を向けたその時。

 

ガラリ

 

何かが落ちる音が響く。

 

何の気無しにクレタは振り返った。

 

そして見てしまった。

 

崩れていたモニュメントから伸びる手のような物を。

 

「…!トリコ!構えろ!」

 

咄嗟に声を荒らげ起きている異変をトリコに、皆へと伝える。

 

トリコは既に警戒態勢を取り標的を見据えていた。

 

ガラガラと崩れていくモニュメントから現れたのは。

 

人のようなナニカだった。

 

 

 

ぞあっっ

 

 

 

手足はまるで人間のように伸びているが何処か機械的で生物らしい見た目なのに生命を感じさせない。

 

ナニカはこちらを見据えるとクレタに向かって突貫して来ていた。

 

「ヤバい!!来る!なのに…震えて動けねぇ!」

 

突然の事だったのと、余りにも生命を侮辱しているその姿に思わず怯んでしまったクレタは動けずに居た。

 

あぁ、終わる。

 

自分の命が。

 

自分も親父と同じように消されてしまうのかと消極的な考えが浮かんだ。

 

 

「……クソ喰らえだ!!

 

終わってたまるか、消えてたまるか。

 

「全てを解き明かすその時までアタシは終わらねぇ!」

 

クレタは持っている愛用のハンマーを握り直し構えを取る。

 

5連……釘パンチ!!

 

 

瞬間、クレタに迫っていた異形は目の前から消えた。

 

代わりに目の前には先程までのトリコの腕とは思えないくらいに隆起した腕があった。

 

「……スン…僅かな脂肪酸の匂い…それも酷くストレスを感じ怒りを覚えている人間特有の匂い…」

 

トリコは異形を殴り飛ばした手の匂いを嗅いでいた。

 

トリコは軍用犬の何十倍もの嗅覚を持ち、そこから得られる情報を下に理論を組み立てていく。

 

「納得がいったぜ……アイツ等の仕業か……!!!」

 

辺り一面にビリッとした電気のようなものが走った。

 

「トリコさん…アレは一体なん……!!」

 

アキラは思わず声をかけるのをやめてしまった。

 

それは生物ならば誰もが持っている危機反応だった。

 

触れれば死ぬ、そう思わせるほどにトリコには怒気が出ていた。

 

 

「コマツ!!映像記録は取れてるか!」

 

空間を引き裂くような大声が辺りに響く。

 

「はいトリコさん!バッチリ撮れてますよぉ!」

 

コマツは目元のカメラを録画モードに切り替え隠れながら現場を抑えている。

 

トリコはバキリバキリと指の骨を鳴らし怒りを顕にしている。

 

強大な一撃を喰らった異形は未だに立ち上がれていなかった。

 

「今回は捕獲じゃねぇ……駆除だ!」

 

トリコは脚に力を込め踏みしめると足元のアスファルトにヒビが広がる。

 

脚の力を解放し全力で飛びかかるトリコ。

 

その様はまるで獲物に襲いかかる豹のよう。

 

「ナイフッ!」

 

クレタにはトリコの構えた右腕が巨大なナイフに見えたと思うと共にトリコと自分の力量差を改めて感じ取った。

 

異形はその一撃を躱したが、躱しきれず左手と思わしき部分を切り取るに至った。

 

「速いな…!耐久はないスピード特化型か!」

 

更に距離を詰め追撃を食そうとした瞬間。

 

「uMoaaaaaaaaaaaaaaaaa!!」

 

突如強烈な咆哮を上げた。

 

「くぅぅ!体がビリッと来た!!」

 

異形に近かったクレタは全身がビリビリと震えるような咆哮をくらい、体が硬直していた。

 

「っ!!バインドボイスか!」

 

一番至近距離で聴いていたトリコも突然のバインドボイスをもろに受けてしまい僅かな硬直が生まれていた。

 

「グゥッ!なんだ!」

 

アキラはポンプを通して見ていたはずなのに視界にノイズが走る。

 

それは生身のアキラにも同じことが起きていた。

 

その異形はその隙を見逃さなかった。

 

異形は眩い光に包まれ近くにいた

 

グレーテル ハンス フライデー

 

そしてプロトタイプをエーテル結晶の中に引きずり込んだ。

 

「野郎…!グレーテル!ハンス!フライデー!応答しろ!」

 

駆け寄ってきていたアンドーが怒りの声を上げた。

 

「シグナルロスト!エーテル指数増大!気を付けろ社長ォォォ!」

 

ベンが持っていたタブレットで彼らのバイタルをチェックしていた。

 

彼らの反応が消えた瞬間を目撃してしまったベンは怒りを抑え、まずは彼の者に近いクレタへと警告を飛ばした。

 

 

GmOAAaaaaaaaaaaaaaaa!!

 

 

一瞬の静寂を破りエーテル結晶の中から現れた異形はもはや人の姿をしていなかった。

 

腕や胴体は異様に発達していた。

 

蛍光の黄緑の管が身体の内側から外に走ってる。

 

まるで心臓の代わりに電力が流れているように。

 

背後の機械、巨大なアーム、鋼鉄の脚部。

 

「あれは!融合している……エーテリアスと機械が……!」

 

アキラはその光景に恐怖を抱いていた。

 

4台の工事用機械を取り込んだソレは先程までの体躯とは比べ物にならない程の巨躯へと変貌を遂げていた。

 

「未確認複合融合侵食体…ゼノシスとでも名付けようか…」

 

トリコは未だに身体から怒りを溢れさせその異形…ゼノシスを見つめていた。

 

 

【未確認複合融合侵食体Unit-XENOS 】

 

【 対応レベル 推定20 】

 

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