ヤムチャしやがってとは言わせない! 作:ヤムチャしやがって……
初投稿です。
気が付いたらドラゴンボールの世界に転生していた。
しかも、原作のキャラクターに。
「このイケメンフェイス……間違いない!ヤムチャになっちまったのか!?」
無駄に長いザンバラの髪、胸に『樂』の一文字が施された緑色の武道着、前世でもあまりお目に掛かったことのない整った顔。
記憶にあるものより幼く見えるが、勘違いはあり得ない。
いやいや、好きな漫画の原作キャラに転生とかそんなベタな二次小説みたいな展開あるわけないだろうって?
「ヤムチャ様ー!……?朝ですよー、起きてください!」
では、逆に聞かせてもらおうか。
目の前でオレのことを『ヤムチャ様』と呼ぶ、この猫だかネズミだか兎なんだかよく分からない生き物はなんだ?
無学なだけかもしれないが、こんな生物は寡聞にして知らない。
精神に異常をきたして幻覚と幻聴を見ている可能性はあるけれど、空中に浮かびながら不思議そうにオレの頬にそのモフモフの手で触れてきた感触からして、幻覚の可能性は低いと思われる。
自分の顔をペタペタ触って、更に眼前の珍妙な生き物をモフる。
嬉しそうな悲鳴を上げる不思議生物を前世で磨いたモフテクによって腰砕けにしながら思考を続ける。
そして、何よりも確たる証拠があるのだ。
他人に対して証明できるものではないが、自分自身に対してはこれ以上ないというほどに絶対的なもの。
────それは記憶だ。
ヤムチャとして生を受け、今日この日に至るまでの過程。
赤子の頃は記憶が曖昧になっているが、生物として当然のことなので違和感はない。
特に昨日の記憶は明確だ。
この猫みたいなナニカが翼竜に襲われているところを颯爽と助けた結果、このように懐かれてしまった。
「……プーアル?」
「はい、ヤムチャ様。どうかされましたか?」
「いや、どうやら少し寝惚けていたらしい。おはようプーアル、良い朝だな」
寝惚けてた、というのはあながち嘘でもない。
感覚的なもので言えばまさしく寝惚けていたような、初めてはっきりと意識が覚醒したような心地だった。
塒から出れば見慣れただだっ広い荒野が広がっているだけにも関わらず、視界に映る景色は明るく色鮮やかで、とても新鮮に感じるのだ。
オレ自身不思議なくらい冷静なのに、どこからか抑えきれない高揚感が湧き出してくる。
恐らく冷静なのは自意識がヤムチャのまま変わっていないからで、高揚感は引き継いだ前世のオタク魂か何かだとは思う。
プーアルに起こされて朝食を食べながら談笑している間、これから未来で起きるであろう出来事について思考を巡らせる。
九割以上確定だが、ここはDBそのものの世界か、偶然似通った世界のどちらかだろう。
もしDB世界だとすれば、オレは極めて大きなアドバンテージを手にしたことになる。
身も蓋もないけれど、原作知識は所謂神視点から俯瞰した特殊な未来予知に等しい力だと言っても過言ではない。
これを活かさない手はないだろう。
「今日は考え事が多いですね?」
「そうか?……まあ、そうかもな。遠い未来について思いを馳せているんだ。このヤムチャ様が誰にも負けない栄華を極めるためにな」
「す、凄いです!流石ヤムチャ様!」
素直で可愛いプーアルの言葉に気を良くしながら、改めて未来ではなく現在に目を向ける。
昨日プーアルを助けたということは、記憶が確かであれば原作開始の二年前だ。
つまり、原作主人公である悟空に出逢うまで猶予がある。
何をするべきか慎重に考えなければならない。
そのためには、まず方針を決める必要がある。
オレは原作に対してどう関わりたいのか?もしくは関わらないという選択肢もあるかもしれない。
まあ、地球滅亡クラスのイベントが目白押しなので期待は出来ないけれど。
敵に対して抵抗している間にメンバーの中に自然と組み込まれている気がするので、結局は無意味な選択でしかなさそうだ。
というか、個人的には関わる以外の選択肢はなかった。
折角この世界に転生できたのだから、原作を側で見ながら楽しく生きたい。
死なないためには強くなるしかなくて、強くなればイベントの方からやってくるのは自明の理。
それなら最初から関わった方が遥かにお得だろう。
「……よし、プーアル。今後の予定を決めたぞ」
キラリと歯を輝かせて告げれば、プーアルはキャーキャーと楽しそうに飛び回る。
それを微笑ましく思いながら、オレはキメ顔でこう言った。
「これから二年間、最低限の生活費を稼ぎながら武者修行をする!夢は大きく、世界一強い武闘家になることだ!」
こうして、オレの第二の人生は始まった。
原作では噛ませ犬扱いの不憫なキャラだが、そんなことは大した問題じゃない。
オレにはこの世界の誰にもない原作知識は勿論、オタクとして培ってきた様々なアニメや漫画、小説などの知識がある。
その知識が必ずオレを強くしてくれる。
地球人ではインフレについていけないと言うなら、オレがその初めての地球人になればいい。
ネタにされることの方が多いが、原作のヤムチャだって地球人という括りの中ではNo.2の戦闘力の持ち主になれたのだ。
素質はある。潜在能力も充分。知識は異次元。やる気は天元突破。
ならば、出来るに決まっている。
悟空の最初のライバルにして、生涯最高のライバルになる。
決して……いや、絶対に言わせてなるものか。
ヤムチャに転生した身の上として、あんな屈辱的な言葉を受けるつもりはない。
「絶対に、『ヤムチャしやがって』なんて言わせるか!」
「何を言ってるんですかヤムチャ様!?」
この物語は、ヤムチャに転生した一人の男が身の程知らずにもDB世界で最強を目指す話だ。
一時間でパッと書いたので短いし、誤字脱字があったら報告してもらえると助かります。
ちなみに元々は自分用だったけど、折角なので投稿してみた感じです。
それでは、感想待ってまーす。