ヤムチャしやがってとは言わせない!   作:ヤムチャしやがって……

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原作開始ですが、全く話が進みませんでした。
悟空たちとの本格的な絡みは次回からになると思います。


魅惑のダブルパンチ

 

 

 

 

 

 

 

 エイジ749-9月某日

 

 

 

 千錘百煉と掘られた大岩を背にしながら、ゆったりとした動作で型を一つずつ丁寧になぞっていく。

 頭髪から指先、爪先に至る体の隅々にまで意識を染み渡らせて、一切の妥協を許さず寸分の狂いなく肉体を制御する。

 

 

「────ォォォゥゥウウウ……」

 

 

 大きな音ではないが、妙にはっきりと耳に残る呼吸音。

 まるで狼の遠吠えの残響のような、そんな不思議な呼吸音を響かせながら、流れる水の如く舞い踊る。

 

 その演舞が、不意にピタリと止まった。

 近くの木の枝に引っ掛けてあったタオルを手に取って汗を拭う。

 冷たくも温くもない程良い温度の水を少しずつ体に馴染ませるように口に含み、美味しそうに嚥下した。

 

 

「プーアル」

 

 

 そして、一言。

 幼い友人にして相棒の名前を呼ぶ。

 

 

「はいっ、ヤムチャ様!」

 

 

 先程から声一つ漏らさず、演舞を鑑賞していた猫のような不思議な空飛ぶ小動物、プーアルが元気に返事をする。

 この二年以上もの間、毎日同じことを繰り返しているのに、プーアルは飽きもせずヤムチャ……オレの修行風景をキラキラとした目で見てくる。

 本当に可愛いやつだと思う。

 

 

「突然ですまないが、今日の修行は中止だ」

「え!?ヤムチャ様が修行しないということは…………また悪党が出たんですか?」

 

 

 純粋な目でそう言うプーアルを見て、なんだか少しおかしな気分になってしまう。

 本当なら()()()()()()()()()()()()()?……なんて、そんなことを言っても理解はされないんだろうな。

 プーアルはオレが元野盗であったことは知っていても、足を洗ってからは逆に悪党を倒して人助けをしている姿を見てきた。

 それが本来なら違ったんだと言ったところで、まるで意味が分からないはずだ。

 

 それにしても、やっと来たか。

 二年間の集中的な修行を終えてから、更に待つこと半年。

 いつ主人公一行が来てもすぐに対応出来るようにと、基礎トレーニングの他は技開発を中心とした軽い修行に留めていたが。

 ようやく、それらしい気を感知出来た。

 

 恐らくこれが、孫悟空。

 じっくり探ってみれば、確かに地球人とは少し違う気配だな。

 気の性質自体は無邪気な子供のようで、悪の気なんてこれっぽっちも感じ取れない。

 しかし、戦闘欲とでも言うべきだろうか。

 表面には出ていないが、オレにも覚えのある熱い衝動のような大きな物が奥に見え隠れしていた。

 それ以外は、普通の子供より戦闘力が高いくらいで大した差はない。

 

 側には、女性らしき気が一つ、プーアルと少しだけ似ている気が一つある。

 これがブルマとウーロンだと思われる。

 二人からは結構な邪念のような物も感じるが、どちらも気の質としては間違いなく善性のものだった。

 仮にもウーロンは人攫いをしていた癖に、意外と悪の気は少ないんだな。

 

 どういうわけか、ブルマとウーロンから疲弊した気配を感じる。

 移動速度からして徒歩でこの荒野を渡り切ろうとしているのだろうか。

 流石に細かい内容までは覚えていなかったので分からないが、移動手段を何らかの形で失った可能性が高いな。

 元気いっぱいな様子の悟空ならともかく、他の二人はこのままだと途中で行き倒れてしまうかもしれない。

 

 

「…………様子を見て、ダメそうなら接触するか」

「ヤムチャ様、何か言いましたか?」

「いや、気にするな。それより少し出るぞ。ジェットモモンガを用意してくれ」

「はいっ!」

 

 

 さて、この選択が吉と出るか、凶と出るか。

 何にせよ、この世界の主人公である悟空と顔を合わせるのは楽しみだ。

 ブルマは……うん、瞑想の効果を期待するとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 途中でジェットモモンガから降りて、気配を悟られないように目視で確認出来る位置まで近寄る。

 やはりというか、見覚えのある面子だった。

 

 

「女性と子供と……あれはウーロン!?何でここに!」

「知っているのかプーアル?」

「はいっ!あれは南部変身幼稚園に通っていた頃のことです……」

 

 

 記憶が曖昧だったので念のため関係を聞けば、予想以上の愚痴の数々に思わず苦笑い。

 というか、苛めっ子と苛められっ子だったのか。

 同じ幼稚園だか何だかの出身だったことは覚えていたが、関係性そのものは覚えていなかったんだよな。

 当時のことを思い出したのか、プーアルはプンスコと怒っている。

 

 一方の悟空たちはと言えば、ブルマとウーロンが木の枝を杖代わりにしながら必死に歩いている。

 それを見て一つ思い出したことがあった。

 確かウーロンがバイクか何かに変身したが、身体能力は変わらないためペシャンコに潰れてしまうシーンを見たような気がする。

 ホイポイカプセルを何処かに落としてしまったんだっけか。

 

 ああ、そうだ……段々と思い出してきたぞ。

 原作だとヤムチャが自滅からの自滅を繰り返したあと、心を入れ替えたかのように振る舞って気前良く車か何かを譲ったんだ。

 ドラゴンボールの話を盗み聞きして、ブルマたちを尾行するのが目的だったわけだけどな。

 原作では致命的なまでに女性限定であがり症だったから、確かそれを治してほしいと願うつもりだったはず。

 

 しかし、どうしたものか。

 突然現れて前触れもなく車を譲るのは怪しすぎる。

 原作では迷惑料とか、お詫びという形で渡せたからブルマも警戒しなかったのだ。

 流石に年頃の女性として、何の接点もない知らない男に車なんて渡されても気味悪がるのが関の山だろう。

 

 

「ヤムチャ様、どうされるんですか?」

「そうだな……もう少し様子を見よう。へばっているように見えるが、少し休めば回復する程度だ。誰かれ構わず助けるとキリがないから、本当に危なそうなら手を出す。いいな?」

「分かりました!」

 

 

 どう接点を作るか。

 頭を悩ませながら、オレたちは悟空一行を見守り続けていると、気がつけば夜になっていた。

 悟空たちは小まめに休みを取りながら先に進んでいたが、既に疲労は限界だろう。

 ブルマやウーロンは当然として、空腹のせいで悟空も元気がない。

 そんな中で意を決した様子のウーロンが、懐からホイポイカプセルを取り出したことで流れが変わった。

 

 ホイポイカプセルの中身はキャンピングカーであり、一先ず緊急で寝食を摂る分には全く問題のない設備が整っていた。

 というか、何故出し惜しみしていたのか理解出来ない。

 ブルマに奪われるとでも思っていたのだろうか?……あり得なくはないな。

 

 

「ウーロンのやつ、あんな大層なものを隠し持って……!さっさと出してあげれば良かったのに!」

「まあ、そう言ってやるな。何か理由があったのかもしれん」

 

 

 一応フォローはしておくが、どうせ大した理由ではない。

 何はともあれ、これで悟空たちも問題なく荒野を横断出来ることだろう。

 今は恐らくフライパン山に向かっている最中のはず。

 もう普通に偶然を装って旅に同行させてもらうのが一番後腐れがないかもしれない。

 

 そうと決まれば、オレたちも今日は休もう。

 明朝ジェットモモンガで繰り出し、なるべく自然な流れで同行出来るように頑張ることにした。

 予定がガバガバだが、明日のオレが上手くやってくれるさ……とその場を離れようとした瞬間に、強烈な邪念を感じ取った。

 

 

「これは……ウーロンってやつか?」

「ウーロン!ヤムチャ様っ、ウーロンがどうかしたんですか!まさか何か悪さを!?」

「ふむ、なるほど。確かに悪事を企んでいるやつらと似たような気配だな。だが、一体何を考えている?」

 

 

 原作ではヤムチャことオレが何か酷い目にあっていたことは朧げに覚えているが、その詳しい内容は定かではない。

 いや、この時期だとやはり女性絡み、つまりブルマと何かハプニングでもあったのだろうか。

 ウーロンが悪巧みをしているようだが、ここで迂闊に踏み込むわけにはいかない。

 せめてブルマが就寝してからにするべきだ。

 

 そうしてしばらく待っていれば、キャンピングカーの二階に移動するブルマの気が眠りに就いた気配と、同じく一階にいたはずの悟空が眠った気配がした。

 これは少しおかしい気がする。

 悟空はさっきまで元気いっぱいだったのに、突然気絶でもするかのように眠ってしまった。

 そこで、ふとプーアルから聞いたウーロンの過去の話、エッチな悪戯をして幼稚園を追い出されたというエピソードを思い出した。

 

 

「まさかっ、睡眠薬を盛ったのか!?」

「えっ!?……はっ!まさか、あの女性にエッチな悪戯を!?ウーロンならやりかねません!」

「くっ……流石にこれは見過ごせん!行くぞ、プーアル!」

「はいっ!」

 

 

 うら若き女性に睡眠薬を盛る。

 もう字面だけで一発アウトな想像をしたオレを、少し遅れてプーアルが肯定する。

 言うが早いか、オレは瞬時にキャンピングカーに接近して、鍵穴部分に気を浸透させて内部から破壊することで鍵を開ける。

 素早く中へと入り込めば、既にウーロンの気は二階にあった。

 

 

「悟空はっ……やはり寝てるか」

 

 

 気持ち良さそうにソファで眠っている悟空を見て、何とも言えない気持ちが湧き出してくる。

 アニメや漫画でしか見たことのない主人公。

 それが目の前にいるという光景は、現実であるにも関わらず非現実感を強く感じさせた。

 しかし、今はそんな感傷に浸っている暇はない。

 

 

「ヤムチャ様!急ぎましょう、女性を助けないと!」

「……ああ。そうだな、今はそっちを優先するべきだ!」

 

 

 オレに続いて中に侵入したプーアルに背中を押されて、ブルマを起こさないように物音を立たず二階の気配を探る。

 流石にウーロンも一階で何かがあったことには気付いたようだな。

 一時はブルマにかなり接近していたが、今は恐る恐る下の様子を窺っているような気配がする。

 これなら即座におっ始めようとはしないだろう。

 

 

「……プーアル、この少年に変化してみてくれ」

「はい?よく分かりませんが、ヤムチャ様が言うならやってみます!」

 

 

 ポンッと白い煙に包まれたプーアルは、次の瞬間には悟空と瓜二つの姿に変身していた。

 目が点だし鼻もないが、獣人はオレたち地球人を正しく認識出来ないようで、下手くそな物真似みたいな姿になるのがデフォルトである。

 相手も同じく獣人のウーロンだし、特に問題はないだろう。

 

 

「よしっ、その姿でウーロンを外に連れ出してくれ。オレもブル……じゃなくて、女性の無事を確認したら後を追う」

「なるほど!流石ヤムチャ様、素晴らしい作戦ですね!」

 

 

 そう言ってプーアルが上に向かって三十秒ほど経ってから、何故か肥満体型のブルマみたいな女性と悟空に化けたプーアルが降りてきて、そのまま外へと出て行った。

 プーアルはまるで気付いていないようだったが、あれはブルマじゃなくてブルマに変化したウーロンだな。

 恐らく、二階に上がってもウーロンが見つけられなかったが、どちらにしてもブルマと引き離せばいいのだと考えたのかもしれない。

 偶然の行動とは言え、結果オーライだ。

 

 修行した結果出来るようになった『隠』によって気配を完全に消して、物音を立てないように気を付けながら二階に上がる。

 すると、そこには気の感知で分かっていたことではあるが、布団に一つの膨らみがあった。

 特にシーツが乱れた様子もないし、何とか無事だったらしい。

 ほっと胸を撫で下ろしていると、頭までシーツを被せられていたブルマが寝苦しそうに身動ぎした。

 

 

「────ッッッ!!!??」

 

 

 それを見て、叫ばなかったオレ自身を褒めてやりたい。

 大雑把にはだけたシーツから覗く、白くてスベスベな柔らかそうな肌。

 母性の象徴は一般的な観点からしても大きな方であり、男を惑わすように蠱惑的に揺れる。

 そして、その先端に見える桃色の…………ッ!!

 

 この二年間で鍛えた身体能力からくる視力を遺憾なく発揮して、完全にブルマの裸体を記憶に焼き付けてしまいながらも、鋼の意志でシーツをそっと肩まで掛けてあげる。

 シーツを摘む手が震えるのはご愛嬌というものだ。

 

 てか、間近で見たブルマ可愛すぎるだろ!

 何でこの子ドラゴンボールで彼氏ゲットしようとしてるんだ!?

 余裕で都会の3K揃ったイケメン捕まえられるって!

 女性に耐性の弱いオレにとって、ブルマという無防備な姿の美少女はあまりにも目に毒だった。

 常日頃から瞑想による精神統一をしていなければ致命傷だったな……。

 

 とんでもない精神的な疲労感にげっそりとしながらも、無事にこの場を乗り切ることが出来た。

 しかし、事件はまだ終わらない。

 謎の達成感に包まれながら踵を返そうとした瞬間のことだった。

 

 ボカン!と外から爆発音のような音が響いた。

 なんだ今の音は?

 プーアルは大丈夫なのかとまず初めに考えた時、背後で人が動く気配がした。

 

 

「んあっ……孫くん?」

 

 

 きゅっ、と服の裾を掴まれた感覚に身を固める。

 どうなってる……まさかウーロンが薬の分量を間違えたのか?

 ゆっくりと振り返れば、少し涎を垂らしたブルマが寝ぼけ眼で身を起こしてオレの袖を掴んでいた。

 睡眠薬のお陰か、或いはまだ意識がぼんやりしているのか。

 ほとんど目が開いていないのは不幸中の幸いではあるが、そんなことはどうでも良かった。

 

 ブルマが、()()()()()()いたのだ。

 片手はオレに伸ばされており、もう片方の手は自分の体を支えている。

 つまり、体を隠すには手が足りない。文字通りの意味で。

 

 薄暗闇の中で、魅力的な女性の肢体が惜しげもなく晒される。

 淡い月明かりが柔らかく部屋を照らし、その透き通るような白い肌を幻想的にライトアップしていた。

 オレの服を掴んでいた手を離して眠たげに目を擦れば、ぷるんと双子山が揺れる。

 顔が、体が、血が沸騰したように熱くなるような錯覚がした。

 

 

「────」

 

 

 それが、オレが今夜最後に見た光景だった。

 

 

 

 

 

 

 





結局こうなる運命なのよね。
初期のヤムチャと言えば、この話を入れないわけにはいかない。
ここの転生ヤムチャは一度までなら耐えられた。
しかし、隙を生じぬ二段構えのラキスケパンチには耐えられなかった。
それもこれもウーロンってやつが悪いんだ!

なお、失神したヤムチャはプーアルによってアジトまで連れ帰られました。
ちなみに外で聞こえた爆発音は、プーアルがかつての恨みを晴らさんとウーロンに放った気弾が着弾した際の音だったりする。
当然ウーロンは朝まで野外で気絶したまま放置。


現時点での戦闘力

・プーアル
通常時→5
戦闘時→15
???→150

実はこっそり修行をしていたプーアルさんなのであった。
悟空より強いってマ?
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