ヤムチャしやがってとは言わせない! 作:ヤムチャしやがって……
ウーロンは大好きです。
あのエロガキ感が良い味出してますよね。
そして夜が明けて。
何故か外で眠っていたウーロン。
何故か一階のソファで眠っていた悟空。
何故か夢の中で出会った覚えのないイケメンからの夜這い(未遂)を受けた気がするブルマ。
三者三様に、不思議そうに首を傾げた彼らは朝食を摂り、一路フライパン山に向けて車を走らせていた。
運転手のウーロンは面倒だという感情を隠そうともせず溜め息を吐いており、悟空は暇そうにキャンピングカーの中をうろちょろと物色中。
そして、ブルマはバニースーツ(これしかなかった)を着ていつも以上に拘って化粧に勤しんでいた。
「なあ、ブルマ。おめぇさっきから何してんだ?顔に変なの塗って、頭おかしくなったんか?」
「誰の頭がおかしくなるもんですか!この天才相手に何てこと言うのよ!これは化粧、メイクって言うの!孫くんみたいなお子様には分からないわよ!」
「ふーん、そっか」
すぐに興味が失せたらしく、悟空は小腹が空いたのか冷蔵庫を勝手に漁ってバリボリと食材を丸齧りし始めた。
ブルマも同じく、悟空を無視して真剣な表情で自らをメイクアップしていく。
さて、ここでブルマについて解説しよう。
彼女は西の都に住む女子高生であり、偶然見つけたドラゴンボールを探すため夏休みを使って旅をしている。
勿論その目的は神龍を呼び出して願いを叶えることだ。
その願いとは『素敵な彼氏が欲しい!』という女子高生としてはありふれたもの。
彼女は見目麗しく、裕福な家庭にも生まれて、本人が自称する通り天才的な頭脳の持ち主である。
何でも願いを叶えてくれるなんて、そんな御伽話に頼らなければ恋人を作れないような人物ではないだろうが、高嶺の花として周囲がアタック出来ない可能性も充分に考えられた。
しかし、それとは別の要因もある。
ブルマという少女は、とんでもない面食いだったのだ。
彼女のお眼鏡にかなうイケメンでなければ、恋愛対象としては相手にもされない。
逆に、今の恋に恋するブルマは、イケメンとあらば誰でもいいと言わんばかりに節操がなかった。
ついでに言えば、とても都合の良いように物事を捉える節がある。
その結果、彼女は今朝見た夢に現れたイケメンと近いうちに会えるのではないかと考えたのだ。
いつどこでかは当然分からないし、もしかしたら夢のシーンと同じく自分に夜這いを掛けてくるのかもしれない。
要するに、そんな実現するかも分からない突然の出会いに備えて、万全の準備を整えているのだった。
もしあのイケメンと遭遇した時、自らの魅力で虜にするために。
そんなブルマの妄想は、あっけなく現実のものとなった。
最初に気付いたのは運転するウーロン……ではなく、その側で窓の外を眺めていた悟空だった。
「おい、あれなんだ?」
「へ?……なんだって聞かれても、オレにも分からないな。ただの旅行者には見えねえけど?」
窓の外を見れば、キャンピングカーから少し離れた位置で並走するように走っている車があった。
運転席には短髪の道着姿の男がおり、その横にはウーロンの顔見知りが座っていた。
「いや待てよ?あの男は知らねえが、あいつは知ってるぞ!っていうか、思い出したぜ!昨日はよくもやってくれたなプーアルっ!何したのか分からんが絶対に許さん!」
そう言って、窓を開けて怒鳴るウーロンを見てもプーアルは余裕そうに微笑むだけ。
クイっとサングラスを陽の光に反射させて、華麗にスルーした。
「くっそー!澄ました顔しくさってからに!」
「なんだ?おめえの友達だったんか?」
「違えよ!同じ幼稚園の出身だったってだけだ!昨夜侵入してオレに、その何か酷えことしてきたんだよ!」
ウーロンの言葉に、悟空は今朝見た光景を思い出す。
何故か外から帰ってきたウーロンは、爆撃にでも遭ったのかと言うほどにボロボロの姿をしていた。
本人が何も覚えていなさそうだったので悟空も気にしていなかったが、もしそれがあの男たちの仕業であると言うのであれば話は別だ。
「つまり、悪いやつだな!よしっ、オラがとっちめてやる!」
「あっ、ちょおい!悟空!?」
悟空が身軽な動作で窓から飛び降りたのを目撃して、ウーロンが目を飛び出さんばかりに驚く。
無理な速度を出していたわけではないが、それでも運転中だ。*1
未だに悟空の強さを理解していないウーロンからすれば、全くもって理解不能な突然の死であった。
当然これだけ騒いでいればブルマも様子を見に来る。
しかも、タイミングが良いのか悪いのか、同じくブルマも悟空が飛び降りる瞬間を目撃してしまった。
更に、窓の外にいる男こと、今朝夢で見たイケメンの存在にも気付いた。
「さっきから何を騒いで……って孫くん!?しかも、外にいるのは夢で見たイケメンじゃない!?こうしちゃいられないわ!ウーロン早く車止めて!」
「ああっ、もう!どうなっても知らねえぞ!?」
車を止めて下車した二人が見たのは、如意棒を握って男を睨みつけたまま、大量の冷や汗を掻いて身動きひとつ出来ない悟空の姿だった。
一足先に窓からダイナミック下車をした悟空は、問答無用で男たち……ヤムチャとプーアルに攻撃した。
もしかしたら、彼の戦闘民族としての血が相手の強さを無意識に感じ取り、先手必勝で片をつけようとしたのかもしれない。
「伸びろっ、如意棒!」
掛け声に合わせて、棒が目にも止まらない速度で伸びる。
しかし、それはヤムチャたちの乗る車を撥ね飛ばすことはなく、片手を伸ばしたヤムチャによって容易く逸らされてしまった。
同時にハンドルを切りながらブレーキを踏み、ドリフトのように半回転しながら停車する。
「ふぅ……随分なご挨拶だな」
いきなりの攻撃に内心戸惑いながら、動揺を表には出さず車を降りたヤムチャは悟空を軽く睨んだ。
対抗するように悟空も睨み返すが、その頰を一筋の汗が伝う。
恐らく悟空自身も気付いてはいないのか、威勢良く如意棒を突きつける。
「やいやいやい!おめえたち、昨日ウーロンに酷えことしたんだろ!」
妙に好戦的な様子に僅かに首を傾げて、しかしヤムチャにはウーロンをどうこうした記憶はない。
何か出まかせでも吹き込まれたのだろうと納得する。
「なんのことだ?ウーロンとはさっき運転していた豚のことか?」
「あっ、すみませんヤムチャ様。確かに昨夜ウーロンのやつはボクがコテンパンにしたんです」
まあ、ヤムチャじゃなくてプーアルは身に覚えがあったわけだが。
プーアルがウーロンをコテンパンにしたと聞いて、ふと気を探れば悟空とプーアルの戦闘力はあまり差がないことに気づいた。
いつのまにか強くなっていたことに複雑な感情を抱きつつ、プーアルの発言を聞いて視線を鋭くした悟空の動きを制するように僅かに気を解放する。
すると、変化は一瞬で起こった。
「……おろ?な、なんでオラの体、震えてんだ?」
構えたままの姿勢で小刻みに震える体に、悟空は不思議そうな顔をした。
まるで蛇に睨まれた蛙のように硬直してしまい、何故か体を動かすことも出来ないでいる。
全身に汗が吹き出して、呼吸が荒くなる。
あまりにも実力に開きがありすぎて力の差は理解出来ないが、サイヤ人としての本能が目の前の敵とは戦うなと訴えているのだ。
そのタイミングでブルマとウーロンが姿を現す。
ブルマを見た瞬間、ヤムチャの脳裏に昨夜の光景がフラッシュバックしかけるが、即座に頭を振って映像を振り払う。
ほんの一瞬だけ注意が逸れて、絶好の隙が生まれる。
それを見逃さず、悟空が動いた。
「だっ!」
一息でヤムチャに接近して、手加減なしの拳を見舞う。
僅かな隙を突いた見事な奇襲。
だが、その拳はヤムチャの体をすり抜けて、何もない宙を殴りつけるだけの結果に終わった。
「何処を狙ってる?オレはこっちだぜ」
「──ッ、でりゃあ!」
ヤムチャの残像が薄れて消えると同時に、背後から声が聞こえた。
それは間違いなくさっきまで目の前にいたはずのヤムチャの声のはずだった。
振り向きざまに裏拳を叩きつけるが、あっさりと掴まれる。
瞬時に拳を軸にして体を持ち上げて回し蹴りを放つが、もう片手でそれも止められてしまう。
「それっ!」
「へっ……?いいぃーっ!?」
そして、悟空の小さな体はヤムチャによって軽々と空高くまで放り投げられた。
ブルマとウーロンには一瞬にして悟空が豆粒に見えるくらいの高さに吹き飛ばされたかのように見えただろう。
「孫くん!?……ちょっとあんたねえっ!何も殺さなくてもいいじゃないのよっ!!」
「や、やめろって!お前も殺されちまうぞ!?」
ブルマが肩を怒らせて大股でヤムチャに向かって抗議しようとするのを、ウーロンが必死に止めようとする。
しかし、この程度で孫悟空が死ぬと考えるのは早計だ。
「あの程度で死ぬとは思えないがな。ほら、見てみろ」
「えっ、いや孫くんでもあの高さは流石に……」
ヤムチャの言葉に反応してプーアルが、半信半疑ながらブルマとウーロンも空を見上げる。
すると、何故か考える人のポーズで落下中の悟空が何かを閃いた様子だった。
「うーん……あっ、そうだ!こいつを下に向けて……伸びろっ!!」
ギュンッと如意棒が地面に向かって伸びる。
如意棒が容易く地面に突き刺さると、悟空は猿のような身のこなしでスルスルと地上に降り立った。
「ふぃ〜!びっくらこいたぁ〜!」
実際かなり肝が冷えたのだろう。
額の汗を袖で拭った悟空だったが、今度はヤムチャを見つめるだけで構えを取る様子はなかった。
何かを確認するかのように視線を合わせて動かない悟空の背後にウーロンが隠れたところで、不思議そうに首を傾げて口を開いた。
「おめえ、実は悪いやつじゃねえのか?」
突拍子もない悟空の言葉に、特にウーロンが目を見開いて驚く。
悟空は、自身とヤムチャの間にある絶対的な力の差に気付き、加減されていたことを身を以て理解させられた。
本気であればとっくに悟空は無事では済まなかった。
だからこそ、ヤムチャから敵意を感じないことを確認して、戦闘態勢を解除したのだ。
その質問に、プーアルは何を今更と憤慨した様子を見せる。
だが、ヤムチャは面白そうに笑った。
「逆に聞くが、何故オレが悪人だと思った。初対面のはずだが?」
「おめえたち泥棒と違うんか?ウーロンから夜中に侵入したって聞いたぞ」
ようやく合点がいったのか。
ヤムチャは一つ頷いて、首を横に振った。
「なるほど、そういうことか。だが、それは誤解だ」
「ごかい?なんだそれ、美味えのか?」
「何言ってるんですか?誤解というのは食べ物のことではなく、誤まった認識のことです!ヤムチャ様は泥棒なんかではありませんっ!!無許可で侵入したのは緊急事態だったからです!!」
ブルマだけは何の話をしているか分からずにクエスチョンマークを頭上に浮かべているが、事ここに至ってウーロンが焦った表情を見せた。
ある可能性に気が付いてしまったのだ。
「な、なあ、話は後にしようぜ?今は先を急がなくちゃ…………ひぃえ!?」
当然話を止めようとするが、ヤムチャに軽く睨まれただけで金縛りにあったかのように口を開けなくなる。
恐怖によるものか、股がじんわりと湿っていく。
そんなウーロンは置いて、プーアルが昨日のことを事細やかに説明する。
徒歩で荒野を渡ろうとしている三人を心配して後をつけていたこと。
夜になってウーロンがポイポイカプセルを出したのを確認して、その場を離れようとしたこと。
漏れ聞こえてきた声からウーロンの邪な企みに気付いたこと。
ブルマを助けるためにやむを得ず扉を破壊して中に入ったこと、などを包み隠さずに話した。
そうすれば、あっという間に立場は逆転する。
青い顔で震えるウーロンに対して、絶対零度の視線を向けるブルマと呆れたように溜め息を吐く悟空。
更に、再び過去の記憶を思い出したのかプーアルが怒りに震えて睨み付ける。
完全に四面楚歌であるが、自業自得だった。
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数分後、そこには顔面を無数の殴打で腫らして気絶するウーロンと、スッキリした顔のブルマとプーアルがいた。
ヤムチャと悟空は暇だったので、軽い組み手をして時間を潰していた。
しかし、サイヤ人が戦いの中で強くなるという話は事実らしく、僅かではあるが悟空の戦闘力が上がっていることにヤムチャは内心で舌を巻いていた。
その後はお互いに謝ったり、礼を言ったりして自己紹介。
ブルマが旅の理由を話し、悟空がヤムチャの強さに目を輝かせながら話をねだり、プーアルがヤムチャの武勇伝を語って、ヤムチャが旅への同行を打診する。
勿論ブルマと悟空は大歓迎だったので即承諾。
気絶しているウーロンを置いて、新たにヤムチャとプーアルが旅の仲間に加わった。
なお、フライパン山に向かう道中のこと。
何故かヤムチャたちの車に同乗しているブルマの猛アピールによって、ヤムチャが天国と地獄を同時に味わう羽目になったのは余談である。
更に余談の余談だが、瀕死の重症(ギャグ補正)のエロ豚が死にそうな顔で運転しながら、「リア充爆発しろ」と呟いたのを聞いたのは悟空一人だけだった。
ウーロンは好きだけど、薬盛るのは犯罪。
というわけで、インガオホー。
ブルマとプーアルの報復を一身に受けて、ウーロンはしめやかに爆散した(生きてます)
なんやかんやで旅について行くことになった転生ヤムチャ。
果たして、その目的とは……?
あと、今朝日間ランキングに載っててビックリ仰天!
まさか一瞬とはいえ8位になれるとは、投票してくれた方やお気に入り登録してくれた方……ありがとうございました!
感想は時間がある時にまとめて返すので、今後もよろしくお願いします!
現時点での戦闘力
・孫悟空
通常時→12
大猿→120
ヤムチャとの間に力量差がありすぎた結果、僅か数分の組み手で戦闘力二割増。
やっぱりサイヤ人は化け物って、はっきりわかんだね。