ヤムチャしやがってとは言わせない! 作:ヤムチャしやがって……
前回投稿日、2025年11月11日
今回投稿日、2026年10月28日
よしっ、ギリギリ一年前じゃないのでセーフ!
もう忘れ去られてると思うし自分も忘れてたけど、続きが書けたので投稿します!
なお、次回投稿日は未定である。
その後、何故か悟空をチラ見して満更でもなさそうに頬を染めるチチに内心ドン引きしながら、色々と話を聞いた。
・実は、チチは牛魔王の娘であること。
・フライパン山の炎を消化するには、武天老師様が持つ芭蕉扇が必要なこと。
・芭蕉扇を手に入れるため、どこにいるかも分からない武天老師様を探すためにチチが旅に出たばかりであること。
要点を絞れば、こんな経緯でチチはここにいるらしい。
当然だが、牛魔王の娘であると聞いだ時点で悟空はブルマによって顔面ボコボコに腫れ上がるほど殴られており、不承不承ながらチチにしっかりと謝罪をさせられた。
その際にチチから「大きくなったら嫁に行く」と言われて、首を傾げつつ「もらえるもんは、もらう」と答えたことで悟空の未来は決まった。
嫁に行くって言ったけど、何かあげるとは言ってないだろと思ったが、野暮なので口は挟まなかった。
なお、腫れ上がった悟空の顔は1分ほどで元に戻った。
サイヤ人ってすげえ!
詳しい話を聞いて、ブルマも渋々納得したようだった。
まだ武天老師が亀仙人の別称とは知らないため、心配そうにしながらもチチが1人去っていくのを見送る。
勿論オレは知ってるけど、悟空やブルマと亀仙人の関わりを知らないので何も言えない。
それに、どうせすぐに知ることになるので問題ないだろう。
それから更に少し車を走らせて、フライパン山の目の前に到着した。
ここまで近づくと放射熱だけで火傷しそうなものだが、オレも含めて「暑いなぁ〜!」程度で済んでいる。
我ながら、本当に前世と同じ人間なのか疑わしいな。
「う〜ん、なるほど……あのお城かあ……」
「火勢が強すぎるな。あれだと城に入るのは無理なんじゃないか?」
「そうなのよね。飛んで行けば簡単そうに見えるけど……」
「なんだ? あの城に行けばいいのか? 筋斗雲──っ!!! 」
「わわっ、でかい声出すなっちゅーのに!!」
相談というほど相談もせず、即決即断で悟空が筋斗雲を呼び寄せた。
あれが筋斗雲か! なんか感動するぜ……!
なお、大声を出したせいでウーロンがビビり散らしてるのはご愛嬌である。
実際のところ今の声に反応してか、悟空の数倍は確実にある気の持ち主がこちらに向かってくるのを感じるから的外れな指摘ではないんだよな。
悟空が筋斗雲に乗って城に近づいていくのを見送りながら、誰にも気付かれないように背後の気配に意識を向ける。
なるほど、チチの父親だけあって敵意は感じるが悪の気は感じ取れない。
悟空がいるので俺が何かするまでもなく穏便に話が付くだろうし、ここは静観するのが正解かな?
「んもーっ!! あいつ根性ないわねーっ!!」
あまりの熱気に近づくこともできず城から離れた悟空を見て、ブルマが無茶なことを言った直後、背後の気配の敵意が膨れ上がった。
同時にこちらへと飛来する物体に反射的に体が動き、振り向かずに刃の部分を掴み取って受け止める。
誰にも当たらない軌道だったし、別に止める必要はなかったか。
しかし、呑気なことを考えていられるのは俺だけであり、ここに来てようやく背後の気配を感じ取ったらしいブルマとウーロンが錆び付いたロボットのような動きで振り返った。
「「ぎええええ〜っ!!!」」
仲良く汚い悲鳴を上げる二人に思わず苦笑する。
とはいえ、いつのまにか背後にこんなのが居れば、二年前の記憶を取り戻す前の自分も叫んでいただろう。
「おめえたず、こっだらとごでなにすてるだ? 」
こちらを睨み付けながらそう言ったのは、全長三メートルほどの筋骨隆々な大男だった。
とても同じ人類とは思えない体格の良さだが、これでも歴とした人類だ。
まあ、見た目に反して全ての制限が掛かっている状態の俺と比べても気の総量は少ないが、純粋な身体能力は見た目通りに高いはずである。
だからと言って負ける気はしないけどな。
ガタガタ震えて役に立たなそうなブルマとウーロンをさりげなく背後に庇って、受け止めた巨大な斧を大男こと牛魔王に返却する。
それを素直に受け取りながら、牛魔王はじろりと敵意に満ちた目でオレを睨んだ。
「まさか、おらの宝さ盗みに来たんじゃねぇじゃろな。え!? どんだ!? 」
「いいや、見ての通りオレたちは旅の途中なんだ。そしたら燃える山の中に城が見えたもんだから気になってな。悪さをするつもりはないから安心してくれ」
「そそそ、そうなんですっ!! ギュ、ギュウちゃんのお城とは知らず、ごごごごごめんなさいっ!!!」
「……あ、あが……あががが……」
オレの背中に隠れている割に、何故か馴れ馴れしくギュウちゃんとか言ってるブルマはどういう情緒してるんだか。
ウーロンが小便をちびるどころか完全に漏らしているのは武士の情けで見なかったことにする。
牛魔王は慌てるでもなく冷静な俺を見て何か思うところでもあったのか、確かめるように下から上まで睨め上げてくる。
すると、武者震いのように全身を僅かに震わせた後、急速に敵意が萎んでいく。
突然の変化に首を傾げていると、牛魔王が何かを言おうとしたところで間が悪く悟空が戻ってきた。
「おーい、だめだー!! 熱くて城には入れねえよーっ!」
「「バッ、バカ!!」」
またしても何も知らない悟空の呑気な報告に、ブルマとウーロンが震え上がった。
ウーロンなんて「もうダメだ、殺されるーっ!!」と頭を抱えている割には、諦め悪くブルマと共に素早く土下座の姿勢に移行しているのが面白すぎる。
当の牛魔王は、最早二人のことは意識から吹っ飛んで悟空に、というより悟空が乗っている筋斗雲に意識が持っていかれていた。
「こ、小僧っ!! それはひょっどすて筋斗雲ではねえだべかっ!? 言えっ!! 誰にもらっただっ!?」
「え? 亀仙人のじいちゃんにもらった」
泡を食って尋ねる牛魔王に対しても、普段の様子と変わらない悟空は大したものである。
この二人が並ぶと、体格差だけなら十倍くらいあるように見えるぞ?
まあ、悟空にとっては「おめぇ、つよそうだな〜」くらいの感覚しかなさそうなのが、なんだか前世の記憶を思い出して懐かしくなる。
悟空の返答を聞いた牛魔王は興奮したように大声で悟空に詰め寄った。
「か、亀仙人っ!? む、武天老師様だっ!! おめえ武天老師様の住んでるとご知ってるだかっ!?」
そんなやり取りを横目に見ながら、オレも密かにワクワクしていた。
なんたって、遂に亀仙人に会えるのだ!
既に戦闘力ではオレの方が大きく上回っているはずだが、武術の腕前では足元にも及ばないだろう。
是非とも悟空と共にご教授願いたいものである。
◆◇◆
(なんじゃこいつ?)
それはワシがヤムチャを初めて見た時の嘘偽りのない感想じゃった。
武天老師と呼ばれるだけあって、ワシは人を見る目には自信があったからこそ尚更驚きは大きい。
しかし、ヤムチャのような人間は過去の自分も含めて見たことがなかったのじゃ。
その若さからは信じられないほどに鍛えられた肉体もさることながら、自然体であるにも拘らず滲み出るような威容!
まるで空腹の巨狼が鋼の理性を持ってワシを観察しているかのようじゃった!
それでいて意識しなければ景色に紛れて見逃してしまいそうな、不思議な気配をしておる!
老いたとはいえ、一人の武芸者として僅かな畏れを塗り潰すような興奮がワシの痩身に満ちた……が、冷静になってふと気付いた。
(あれ?
ヤムチャと戦って勝てるイメージが湧かない。
全盛期のワシならともかく、現在のワシでは猛攻を捌き切れずに押し負けるイメージしか湧かなかったのじゃ。
武天老師ともあろうものがこの体たらく……将来有望な若者を導くこともできないのかと思えば、ワシにも一人の武芸者として意地や誇りが無いわけではない。
フルパワーかめはめ波で勢い余ってフライパン山を消し飛ばしながらも、ヤムチャについて思考に耽る。
もし仮にヤムチャを弟子にしたとして、ワシは何を教えられるじゃろうか。
あれだけ隙なく徹底的に鍛えている辺り、ワシの修行法とは合わないかもしれんが、見た限りでは独学で戦闘経験は少ないようじゃ。
だとすれば、毎日とは言わず時折組み手をして駆け引きを教えるのは良いかもしれんのう。
(もし組み手をするのであれば、ワシも錆び落としをせねばならんの……)
全盛期とは言わずとも、勘を取り戻さなければ相手にもなるまい。
ワシの全力のかめはめ波を見ても恐るどころか目を輝かせ、向上心を燃やすヤムチャを見ればこちらも火が点くというものじゃ。
悟空に修行をつける傍らで、ワシも一つ鍛え直すとしよう。
年甲斐もなく武芸者として浮き立つ心を感じながら、それぞれ悟空とヤムチャに話を取り付けてログハウスへと帰路についた。
ヤムチャは週末に一度ログハウスに行って亀仙人と組み手をする、という感じで修行に加わります。
基礎的な部分では教えられることが少ないと判断した結果ですね。
これには亀仙流の教えを受けたかったヤムチャも残念半分、自分の修行法が認められて嬉しさ半分でした。
それではまた次回、今年中に出せることを祈っていてください。
感想など頂けるとやる気が出るかもしれません!(承認欲求モンスター)