歌姫よ、夢に溺れること勿れ   作:虚無空間

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完全に不定期投稿。


歌の基

 

 夢を見た。

 

 

 

 うつくしい世界の夢。

 父がいて、仲間がいて、私は彼らの音楽家。

 私の世界はひとつの船だった。半分だけ父とお揃いの色をした髪を結わえてもらったり、家具を叩いて演奏会をしたり。

 

 

 いつしか世界は広がって。小さな村に足を着けた。

 そこで仲良くなったのは、家族ではない男の子、それに優しいお姉さん。競い合って、遊び合って。

 私は変わらず歌を歌っていた。

 

 

 

 また、世界が広がった。

 音楽に満ちた島。優しい国王様。ここに心を移すのが幸せではないかと、父は聞いた。私は横に首を振った。

 

 私は、歌を歌った。

 

 

 

 

 あかい炎。

 世界が燃えていく、消えていく。

 手を伸ばした。

 

 

 

 手を伸ばした。掴んで、声を広めた。

 世界は燃えていて、消えていく。

 

 

 

 

 

 

 世界を閉じた。

 歌が響いていた。

 

 

 

 

 

 

 夢を見た。

 抱き締められる夢だった。

 

 

 私と半分だけお揃いの赤い髪。

 どこで落としたのか、欠けた片腕。

 私の、家族。

 

 

 

 

 

 夢を見た。

 

 あまりにも広すぎる海。青い海。

 遥か見果てぬ、高い空。青い空。

 

 

 

 

 

 夢を、見た。

 下層部生まれの私が見た事なんてないはずの、青色を。

 

 

 

 

 

────────────

 

 

 

 

 

 

 浮上する意識が真っ先に感知したのは、頭に覚える柔らかく暖かな感触。

 

 

 

「……やっっと起きたわね」

「ぜー、れ」

 

 

 

 瞼を上げて真っ先に飛び込んできたのは、幼馴染の呆れ顔。さっきまで何をしていたか遡って、自分が意識を失っていたことに気が付いた。ついでに、診療所の壁際で彼女に膝枕をされているということにも。

 診療所のベッドはもう埋まっている、だけど気絶した私を床に転がしておく訳にもいかないってところかな。

 

 

 

 

 ゼーレがいくら鍛えていて、私より強くても、この体勢で掛かっている負担はそれなりのはず。申し訳なくなって、すぐに上体を起こす。

 

「私、どのくらい寝てた?」

「三十分くらいよ、全く……ショッキングだから見なくていい、って言ってたじゃない」

「それは、ええと……うん」

 溜め息混じりの声に、曖昧に返す。

 ルカの大怪我にショックを受けたのもそうだけど、大きな原因はあの夢──いいや、前世の記憶というべき光景。おおよそ二十年分の情報を思い出したせいだろうか、まだ頭がくらくらしてる気がする。

 

 

 

「ルカの様子は?」

「ほとんど変わってないわ。処置は完璧みたいだけど、ずっと魘されてる」

 彼女の目線が向かう先は、ベッドが隠れているパーテーション。立ち上がって一歩踏み出せば、ぐっと止めるように腕を掴まれた。

 

「見に行くつもり? またぶっ倒れたりしないでしょうね」

「もう大丈夫だってば」

 眉を下げて笑えば、ゼーレはまた溜め息。

 

 

 

 

 

 ベッド横の椅子に膝立ちをすれば、怪我人の──ルカの顔はよく見えた。赤い髪なものだから、顔の青さが目立って痛々しい。

 

 片腕を失った以上、痛みと失血はどうしようもない。その上、裂界の造物なんて化け物にやられたから傷口だって綺麗なわけがない。それでもナタは諦めずに全力を尽くしてくれたみたいだ。

 

 

 

 ……戦っているんだろうか。抗っているんだろうか。

 それともとっくに諦めていて、今は命の炎が絶えるまでの余燼なんだろうか。

 なんて、悲観的すぎるかな。でも、こんな思考も仕方ない。下層部で生きてると、人の生き死にを目にすることは避けられないでいるから。

 

 

 

 

 

 

 もし私が、もう一度。今度こそ。

 ()()()()を作り出せて、みんなをそこに呼べたなら。

 

 

「……はあ」

 悪魔を宿していない今、そんなこと考えたってどうしようもない。

 

 

 

 

「ちゃんとナタにお礼言わせないと。だから早く目覚めてよ、ルカ」

 

 




ベロブルグ組、大好きです。オンパロスにもちょっと出てきてくれて助かりに助かりました。
これ以上ベロブルグに試練与えないであげて♡でも困難にブチ当たったら流離人みたく強化版が実装されるかもしれないのが楽しみというジレンマ。ブローニャ様を最強調和にしようぜ!!!
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