転生したら黒蝕竜だった件   作:転スラ好きのライズ民

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39:断章、転移

異界への扉を開き、私はそこへ入った。

相変わらずピリピリした雰囲気だ。

ふよふよと飛びつつゆっくり移動していると、見かけない天使を見つけた。

オベーラさんの配下、という訳ではなさそうだな。

覇気がオベーラさん以上だ。

端的に言えば強そう。

近づいて、話しかけてみる。

赤い軍服を着ていること以外特徴がない変な天使だ。

一見すると男性型の天使だが、よく見るとオベーラさんのような妖艶な雰囲気もある。

 

「おや?一体誰ですか貴方は」

「そういうお前こそ。上位の天使だとは思うが」

「やれやれ、また幻獣族(クリプテッド)から面倒な種族が生まれたのですかねぇ」

「人の顔を見て溜息をつくとはいい度胸だな」

 

赤い軍服を着た天使は、私を軽薄そうな瞳で見た後、観察するような目つきになった。

そんなに観察しても何も出てこないぞ?

睨み返してやると、赤い軍服の天使は肩を竦めた。

 

「……まあいいでしょう。私はフェルドウェイです。最も、貴方がその名を覚えていられるかは知りませんがね」

「……それはどういう意味だ?」

「貴方のような、第二のゼラヌスになりかねない不確定要素はいらない、ということですよ。ではサヨウナラ。時空跳激震覇(クロノサルテーション)――」

「ゲェッ!?」

 

やばい。

何か知らないけどやばい予感がする。

よく考えたら、こいつがオベーラさんの言っていたやばい上司か。

案の定やばい干渉波が私に襲い掛かってくる。

全力でその時空干渉波を制御しようとするが、上手くいかない。

このままでは……。

 

「待ちなさいフェルドウェイ!」

「どうしました?オベーラ。私の邪魔をする気ですか?」

「その蟲魔族(インセクター)は私の……その、友、いえ、配下なのです……」

「残念ですが、もう発動してしまいました」

 

私の制御を振り切り、時空干渉波は私をどこかに転送した。

オベーラさんが来てくれたおかげか、ちょっと隙ができた。

その隙にこれをただの空間干渉波にして、時間まで弄られないようにする。

そんな作業をしたのだが、私の視界は次第に暗転していった――

 

 

 

絞られるかのような感覚が全身を襲い、私はどことも知れぬ場所に放り出された。

魔素は制御にそこそこ使ってしまったが、幸いにも"魂の回廊"で転移はできそうだ。

いや、それにしても一人は案外寂しいな……。

ラミリスと思念を繋ぎ、いつでも会話できるようにする。

 

『寂しくなったらいつでもアタシを頼ってね!』

 

寂しさも薄れたので、ゆっくりと立ち上がる。

どうやら異界のような暗黒空間とか、時空の果てとかそんな場所ではないようだ。

ちゃんと地面があるし、光もある。

生き物の気配もあるし、悪い所ではないだろう。

ただ、空は薄暗いな。

生き物の気配のある場所へ私は歩みを進めた。

 

道中、人型の魔物が襲い掛かってきたので撃退。

双剣で首を切ったくらいでは死ななかったので、魔力で全身を爆散させた。

今の私なら、高密度の魔力をぶつけるだけでAランクオーバーの冒険者でも死ぬな。

リムルなんて妖気(オーラ)だけでガイを消滅してのけたからな。

まあ、上位魔将(アークデーモン)とかになってくるときついけど。

この魔物はクソ弱かったので、Dランクもないくらいだろう。

それに反してこの生命力は異常だな。

ラミリスも、「気持ち悪いのよさ……」と言っている。

また数匹出てきたので、双剣に魔力を纏わせて切りつけた。

すると、魔力が体を侵蝕したのかそのまま消えてゆく。

これは中々効率がいいな。

そんなことを繰り返しつつ人のいるところを目指す。

やっと見えてきたぞ。

大きな城塞のような場所だ。

入口と思わしき扉の前に立つと、音声が聞こえてきた。

知らない言語だったので、叡智之王(ラジエル)に翻訳してもらう。

 

『お前は人間か?目的を言え』

「ああ。私は一応人だ。目的は、迷ったからここに来た」

『人……?確かにシャガリは竜人族(デミオルドラ)だけど……』

『……なるほど。とりあえず入れ』

 

扉が開き、私は中に入る。

そこは密閉空間のようで、もう一つ奥に扉がある。

また音声が聞こえてきた。

 

『ワクチンは何か月前に打ったか教えろ』

「ワクチン?なんだそれは」

『……何?』

 

ワクチンとかいうよく分からない言葉が聞こえた。

どうやら何かしらの病気があるようだ。

私には"状態異常無効"があるから病気なんてかからないのでいらぬ心配というやつだな。

それに、もしそれを貫通するような危険なものがあるなら叡智之王(ラジエル)が警告してくれるさ。

 

『……このご時世、ワクチンを打っていないのに感染していない奴がいるのか?』

「ここにいますとも」

『お前は屍鬼族(ゾンビ)に感染していないのか?いや、新手の変異種(ミュータント)か……?』

 

なんだか疑われているようだ。

ラミリスに聞いてみると、外にいたあの魔物じゃないかという意見だ。

私もそう思う。

だが、私をあんなのと一緒にされちゃ困る。

どうやって信用させるか……。

 

「なんかゾンビと人で区別とかつかないのか?」

『<聖術>で消滅しなかったらゾンビではない。だが、あれは大量のマナを使う』

「ちょっくら私にやってくれよ。私を受け入れて悪いことはないぞ」

 

<聖術>か。

神聖魔法みたいな感じか?

霊子を操るんだとしたらその術のむずさはやばいだろうな。

それをやってくれれば解決しそうなもんなのに……。

ま、やってくれるまで待つとするか。

一日くらいは待ってやると通告し、私は地面に座った。

 

『ラミリス、どう思う』

『ここが噂に聞くパンデミックとかそんな感じのやつね……面白そうだわ』

『ゾンビがいっぱいいるなら、別に、全て私が滅ぼしてしまっても構わんのだろう?』

『魔素も薄いし、そんなに強くはなさそうね』

 

しばらく待つと、防護服のようなものを着た奴が出てきた。

そいつは恐る恐る私に近づいてくる。

そんなに恐れなくても攻撃なんてしないって。

ある程度近づくと、そいつは詠唱を始める。

そして、私に向かって手を突き出した。

 

「失礼します……清浄なる癒光(ディバインヒール)!」

 

弱弱しい魔力が私を包む。

別に何も起きない。

ゾンビじゃないし当たり前なんだけど。

 

『……どうやら本当に感染していないようだ。ようこそ、コロニーへ』

 

いい感じに疑いも解け、私にコロニーとやらに案内されることになった。

私を浄化しようとした奴、聖職者が奥まで案内してくれるらしい。

いくつかの扉を超え、エレベーターを降りる。

そして広い所に出た。

天井は光の塊が浮いているだけなので、ここは地下のようだ。

たくさんの人間があくせくと働いているのが分かる。

鱗粉をバラ撒こうかとも思ったが、流石に案内されたばっかりだしやめておく。

聖職者に宿のようなものを紹介してもらったので、私はここで過ごすことにする。

どうやら聖職者ランクを上げていけばもっといい宿に泊まれるらしい。

聖職者ランクとはなんぞやと聞いたが、どうやら私の世界におけるHRや冒険者ランクみたいなものらしい。

この聖職者はCなのだと。

ダンジョンを攻略してマナを増やし、ランクを上げていくとか……。

 

『アタシを差し置いてダンジョンとはいい度胸ね!』

『いっちょ攻略してラミリスの方が上だと証明してやるか』

 

ゼギオン並のやつがいたらやばいが、まあ流石にいないだろう。

早速攻略するとしよう。

Cランク聖職者にF級ダンジョンを案内してもらった。

ダンジョンは一つじゃないんだな……。

扉のような形状をしているから、ラミリスの迷宮と似通っている。

さて、それじゃあ入るとしよう。

扉を開けて入ると、聖堂のような場所に出た。

何か声が聞こえてくる。

 

《新規入場者を確認しました。マナを付与……》

《付与、ふ、ふよふふふよ》

《失敗しました。妨害を確認》

 

あれ?

マナを付与とか言ってるが、なんか失敗したっぽいぞ。

元々魔力自体はあるし問題はなさそうだが。

とにかく、さっさと攻略するとしよう。

出てくる精霊のような魔物は襲い掛かってきたのでぶん殴って爆散させる。

いかにも精霊だ、みたいな見た目してるのに、拳で討伐できるとは。

他の聖職者見習いの横を通り過ぎてゆき、十階層くらいまで一気に進む。

そういえばこれ、何階層まであるんだろ。

十階層はボス部屋っぽいけど。

とりあえず一回りデカい精霊っぽいやつを一発で殴り殺した。

これで終了かな?

気配としてはもう奥底みたいな感じだ。

……まだなんかある気がする。

空間を裂き、隠し通路を見つけた。

そこには、なんか魂のようなオブジェクトがある。

なんかよく分からないからとりあえず破壊してみよう。

 

《ガガガガ……ピー……深刻なエラーが発生。ダンジョンコアに機能障害が発生しました》

《……何!?一体誰だ、拙者の努力の結晶を破壊するような不届き者は!》

 

無機質な声の後、感情のこもった声が聞こえた。

このダンジョンを作った奴かな?

なんか悪いことをした気がするので、ダンジョンコアという名前のやつを直す。

鱗粉で覆い、補修した。

これでよし、と。

もう声は聞こえてこないが、あの声は一体何だったんだろうか。

これ以上得るものもないだろうし、声は怖いから帰ろう。

私は外に転移した。

それにしても、簡単に転移を許すとは中々ガバガバだな。

ラミリスなら防ぐことも可能だろうに。

ランクを上げる処置をしてくれる教会へ行き、F級ダンジョンを攻略した旨を伝えた。

最速でEランクへと昇格した天才とは、この私のことだ。

マナを測る水晶玉みたいなものもあったが、破壊してしまいそうだから使うのはやめといた。

 

さっさと上のダンジョンに行こうか。

特に代わり映えはしなかったので敵を粉砕しつつボスを殴り殺した。

魔法や双剣を使うまでもないぞ。

階層はランクが上がるごとに十階ずつ増えていくが、それも普通に壁を破壊して下へ向かうことによって解決。

宝箱もなければ迷路も単調だし、圧倒的にラミリスの迷宮の方がいいな。

三時間ほどでA級ダンジョンのボスを殴り殺し、晴れて私はSランク聖職者となった。

これでキレイな宿に住めるぜ、とか思ってたら、責任者に呼び出された。

なんだろう、面倒な依頼とかしてこないといいけど。

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