転生したら黒蝕竜だった件   作:転スラ好きのライズ民

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41:断章、欲望

突如として現れた美女は悠然とそこに立っていた。

その目は天使を見つめ……。

 

「まだ生きていたのね、プルチネルラ」

「な、な、なぜヴェルグリンド、貴様がここに……」

 

威圧のこもった瞳で天使……プルチネルラを見る美女、ヴェルグリンド。

ヴェルドラのお姉さん、だよな?

なんでこんなところに……。

 

「シャガリ、ルドラを守ってくれてありがとう」

「私とアンタは初対面のはずなんだが」

「……あぁ。そういえばシャガリはそんなことを言っていたわ。私は未来の貴方と会ったことがあるのよ」

 

驚きの発言である。

どうやらヴェルグリンドは私と会ったことがあるらしい。

信じられないが、こんなに親しげだとそれもそうかと思ってしまうな。

で、そのプルチネルラとは面識があるようだが。

そしてルドラとは何だ?

 

「アイツは前に私が滅ぼしたはずの妖魔もどきよ。ルドラは、今貴方が抱えているでしょう」

「C君のことか?」

「そうよ。あの攻撃から貴方が守ってくれなかったらルドラは魂が砕け散っていたと思うわ」

 

C君、ルドラなんて名前だったのか。

守ってよかったと思うと同時に、もう冷たくなってるのを見てサァッと顔が青くなる。

私が守り、余波もその護石のおかげで軽減され……魂は元気なままだ。

恐る恐る振り向くと、ヴェルグリンドはもうC君が死んでしまったのを知っているようだった。

というか、気づいていたのか。

なんだか悪いな……。

 

「さて、プルチネルラ。今度こそ終わりなさい。灼熱竜覇加速励起(カーディナルアクセラレーション)

「こんな所で拙者が終わるわけには!逃げるのである!」

 

肝心のプルチネルラだが、ヴェルグリンドの必殺技に貫かれ……。

て、ないな。

いきなり逃げやがった。

転移の予兆もなかったし、なんだあの出鱈目な転移は。

 

「チッ。逃がしたわね。シャガリ、私はルドラを連れてそろそろこの世界を去ろうと思ってるけど、貴方一人でプルチネルラを倒せるかしら?」

「舐めないでほしいな。ヴェルグリンドは遠慮せず去るといい。後顧の憂いは私が絶とう」

「感謝するわ。それじゃあね」

 

ヴェルグリンドは去っていった。

プルチネルラを残す形にはなったが、私が奴を倒して終わりにしよう。

ゾンビももう残っていないし、プルチネルラさえ倒せばこの世界は救われるはずだ。

それにしても……ルドラを失って、なんとなく私は悲しい気持ちになっている。

 

『ほんの少ししか関わってないのにね……』

『あの、人の良さは何故かマサユキっぽい感じもあった。良い奴だったよ』

『プルチネルラだか何だか知らないけどメッタメタのギッタギタにしてやるのよさ!』

 

翼脚をはためかせ、プルチネルラのいる上空へ飛び立った。

情報は記録してあるので、位置情報は丸見えだ。

たとえそこが奴の作った異界だとしてもな。

無理矢理空間をこじ開け、私はその異界へ侵入する。

それを見てプルチネルラはめっちゃ驚いた顔をしている。

 

「なっ!?いや、しかしヴェルグリンドではないのか。ならば拙者でも狩れる!」

「舐めんな。私は強いぞ?」

 

そう口上を述べ、私は双剣で斬りかかる。

プルチネルラはそれを錫杖で受け止めた。

ハンッ、武器の差なんてハンデを帳消しにしてやるよ。

何度も打ち込み、反撃の隙を与えさせない。

プルチネルラは顔を歪ませ、私に向き直った。

……危険な予感がして、私は飛び退く。

 

「ほう。拙者の「慶弔之王(ネルガル)」の炎を見切るか」

究極能力(アルティメットスキル)だと……?」

「如何にも。白髪の女に生き返らせてもらい、拙者はここまで努力を重ねたのである!」

 

……これは、想定を上回ったな。

まさか究極の力に目覚めているとは。

そこまで予想していなかった。

白髪の女について気になるが、今はそれどころじゃない。

プルチネルラの周囲が熱を帯びている。

つまりは……そう、あいつは炎を使うというわけだな。

相性メッチャ悪いじゃん!

こんなことならカッコつけずにヴェルグリンドに任せればよかった。

とりあえずは、叡智之王(ラジエル)に解析させつつ戦うしかない。

 

「フハハハハハッ!どうであるか、拙者の力は!」

「厄介この上ないな」

「そうであろうそうであろう。何せ、ゾンビウイルスをバラ撒きそれに対抗する術を教えたのはこの拙者なのだから。華麗なマッチポンプであろう!」

「あのダンジョンもお前が?」

「うむ。拙者の努力の賜物よな。拙者の権能"慶弔世界"によって様々なことが可能になっておるのだ。かつて聖霊を信仰する立場だった拙者が聖霊を支配する、実に素晴らしい!」

 

なんか勝手に情報を吐いてくれるので、放置して聞き耳をたてる。

そのうち弱点とかも語ってくれるかも。

 

双剣を振りつつ、熱収束砲(ニュークリアカノン)を放つ。

ブラフと本命を入れ替えながら戦っているのだ。

そして、隙を見つけて大魔法とか<ヴェルドラ流闘殺法>を放つ。

神話級(ゴッズ)の装備に傷をつけるよう、意志の力を込めて。

んだが、何だかなぁ。

……こいつ強くなってないか?

最初に比べて、明らかに動きが最適化されていってるような気がする。

錫杖を二つに分け、二本の棒で攻撃、みたいな感じになってるな。

後は、やはり身のこなしが軽くなってる。

背中の羽も活用して攻撃してくるようになったし、なんだか羽が骨格を持っているような――

 

「……まさか」

「そのまさかである、と拙者は思うぞ」

 

思わず口から出た言葉に、プルチネルラはニヤリと笑いながら反応する。

戦いのため反射神経やカウンターなどにのみ集中していた思考を元に戻す。

すると、どうして今まで気づかなかったのかというほど……。

 

「双剣か。中々に使いやすい武器であるな」

 

逆手に二本の短い棒を持ち、全身からは赤いオーラが舞っている。

私に攻撃を加えてくる動きは、突進し切りつけるもの、空中を舞うように飛ぶもの、踊るように振り回すもの……。

双剣だ。これは双剣の動きだ。

赤いオーラはまごうことなき鬼人化。

しかも、背中から生えた羽はまるで腕のようだ。

それは羽というより翼脚で……。

 

「お前、私の動きを模倣しているな?」

「その通りである。圧倒的な力で一撃で殺されない限り、拙者は観察をして勝つのである。この世界を支配していた旧神もそれで排除したが、力がまたリセットされたのは痛手であった」

「面倒なやつめ」

 

究極能力(アルティメットスキル)だから模倣できたと考えたとして、どうしてコイツは隠蔽をかけているはずの私の能力を模倣することができる?

いや、違うな。

コイツはただ見える私の技術を盗んでいるだけだ。

鬼人化や翼脚は模倣されていても、私の能力(スキル)は模倣されていない。

どれだけ隠蔽しても、私に翼脚があるのを隠せないように。

そういう、"隠せない部分"だけでここまで模倣をしているのか。

どれだけこいつは努力を積んだというんだ。

……ギィ・クリムゾンは何故それをしなかったのかという感じだが、アイツは私より技術があるからやる意味がなかったんだろう。

しかしプルチネルラは貪欲に、この私のように上位存在から力を求めているの。

やはりコイツを倒すには一撃でやるしかない。

禁忌のあの技は……駄目だ。消耗が激しすぎる。

他にも何かないか、威力の高い技は。

……やはり、原点に戻るしかないか。

 

「む?動きを止めるとは、何か作戦であるか?」

「あぁ。一撃でお前を滅してやるよ」

 

私は今嵐を纏っている。

内から溢れる龍気を属性に変換したり、感情を力に変換して能力を高めたりもしている。

その上から重ね掛けするように、私は特殊なオーラを纏った。

そのオーラは私から結界系の魔力を吸い、攻撃能力へと変換してゆく。

さらに、双剣に氷の力を持つ魔力もたまっている。

次に、凶化首飾(デストロイペンダント)を発動して血の巡りを変化させた。

それで軽く地面を殴ると、血が活性化していく。

自分の狂竜ウイルスも活性化させよう。

角が額に生えたのを感じた。

最後に、私は欲望を一部開放した。

その欲望は体を駆け巡って、私から生命力を吸い取ってゆく。

しかしそれを上回る速度で私は体を再生し、無効化した。

アハハハハ……続けると精神に悪影響だな。

これが今の私の双剣の全力。

再現したスキルは――

天衣無崩、龍気変換、激昂、業鎧【修羅】、冰気錬成、伏魔響命、血氣覚醒、狂竜症【蝕】……。

そして、狂化奮闘、だ。

 

《告。正気保持時間――三百秒です》

 

纏めて狂竜化【暴蝕】とでも呼称しよう。

鉄蟲糸をプルチネルラに命中させ、一気に引く。

 

「ムッ!?危険であるな!正邪滅神光撃(せいじゃめつしんこうげき)ッ!」

 

全部、ブチ破ってやる。

 

 

 

螺旋斬(ラセンザン)――ッ!!!」

 

 

 

高速で螺旋を描くように回転し、神話級(ゴッズ)の法衣を貫いて、私はプルチネルラを切り裂いた。

全ての結界を破壊し、手に持つ錫杖さえ粉砕して――

どれだけ時間がたったか、案外一瞬かもしれない。

回転が治まり、私は地面に着地した。

狂竜化【暴蝕】を解除し、プルチネルラを見やる。

見るも無残な姿になっているが、まだ生きているのか……。

 

「拙者は、拙者は、王になるのだ……死ぬ訳には……」

「全く、煩わせやがって」

「何故だ……何故……」

 

プルチネルラの姿を見ていると、力への欲望に溺れている時の私と似ていて気持ちが悪い。

 

『コイツ、どうするの?』

『どうしよっかなぁ……』

 

死にかけのプルチネルラを見ると、トドメを刺すという決意が鈍る。

私はこんな奴に情けを?

……クソッ、共感なんてするんじゃなかった。

 

《……告。一時的な主導権委託を推奨します》

 

……そろそろ、楽にしてやらなきゃ。

剣を持つ。

そして、プルチネルラの首筋まで持ってきた。

剣閃が煌めき――

 

「力が……欲しい……」

 

……あぁ、もう。

 

 

 

「止めだ。止めにしよう」

 

私は剣を地面に放り投げ、プルチネルラを回復させた。

神聖魔法:死者蘇生(リザレクション)

その意志の強さで魂は消滅していなかった。

回復したのを確認すると、私は手を差し出す。

そんなに力が欲しいなら、私の家族になれよ。

 

「王にはさせてやれないが、支配者にはさせてやれるさ。その代わり、私の家族になれ」

「……いいのか?」

 

力が欲しい。

それは私達共通の願い。

その願望がコイツに究極の力を宿したのだろう。

そんな奴をここで失うのは惜しい、そういうことにしておく。

プルチネルラ、悲しい男。

これからは私の友であり、家族だ。

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