転生したら黒蝕竜だった件 作:転スラ好きのライズ民
ヴェルシャリカは目を開く。
鱗粉によって支配していた者達全員の反応が途絶えた。
星の管理者であるラミリスの迷宮では位置情報のみが送られてきていたが、それすらも途絶えている。
そして、地上。
そこで起こった出来事は、彼女を動揺させるには十分だった。
大魔法、敵軍の精強な兵士達、そして――
二十人の究極保持者。
瞬時にそれを解析したところ、上位者から権能を借り受ける権能があるということだけが分かった。
つまり、その究極保持者には上位者がいるということ。
彼女が慕う王、ルドラのように。
ルドラもまた
それを二倍以上の数貸し与えていた、その上位者について考察する。
「やはり、
しかし、その答えは出ない。
思案する彼女の脳裏に、ふと可能性がよぎる。
それは、"娘"が
"娘"の情報はまるで意図的に隠蔽されているかのように極小であり、その中には権能に関する情報など無いに等しい。
しかし、彼女は一つの証拠を持っていた。
それは、ギルドカード。
帝国からのスパイが迷宮内にて入手したという謎の板。
ルドラでさえ高度な隠蔽がかかっているとして解析を諦めた物質である。
――ヴェルシャリカは、それを知っていた。
彼女の生まれた世界こそ、このギルドカードが存在する世界である。
その世界はこのようなギルドカードが大量に存在していた。
このような隠蔽は無かったが、これを持つ人間が技術のみで大いなる力を持つ存在と争う世界だ。
そこで彼女は
このギルドカードには彼女の鱗粉とほぼ同じ成分が含まれており、それが"娘"の作り出したものであるという証拠になっている。
上位者はまず間違いなく"娘"である、そう結論付けた。
ヴェルシャリカはまた目を閉じる。
彼女の生まれ育った世界での出来事を思い出して。
彼女はその世界で会ったことがある。
人間とは思えないほどの力を持つ、人間の頂点に。
自らの力を吸いに来た寄生虫を逆に取り込み、その力を我が物とした彼女は世界でも頂点と等しい存在だった。
人間など矮小なる存在だと信じてやまなかった。
そこに現れたのが、人間を超えた人間。
動きは美しく、一瞬のブレもない。
その身には数多のモンスターの力を宿し、ただ悠然と舞う。
彼女の攻撃は当たる寸前に何度も回避され、ただ傷は増えていくばかり。
"竜種"すら超えるような異端な存在だと彼女は認識している。
しかし、討伐されてその存在を危ぶまれていた所を彼女は幸運に恵まれた。
「おや、君には期待していたのだがな」
突如として暗転した視界に男が現れたのだ。
赤い衣を纏ったその男は尊大な態度で彼女に近づき、取引をしよう、と言ってきた。
「私は人間が奮闘する姿やモンスターの神々しい姿が好きでね。君はその位に至れると思ったのだ。さて、生き延びて見せよ、新参の古龍」
彼女は赤衣の男に誘われ、その強い意志で世界を渡った。
戦い続けるという
さらに、彼女は愛した。
まだ自分を生かしてくれたという世界全てを。
――ユニークスキル「
――ユニークスキル「
彼女は魔素溜まりから精神生命体として生まれた。
生まれながらにしてユニークスキルを二つ持ち、
何より彼女は赤衣の男によって生まれを調整されていた。
――竜種、その五体目として生まれたのだ。
その後、姉たるヴェルグリンドと衝突し、意気投合。
帝国に協力することとなった。
元帥補佐という役割を与えられ、ヴェルグリンドの想い人、ルドラの野望を手伝うと決めた。
「懐かしいです。全員が平等に生きる社会、それが楽しみ」
帝国で研鑽を積み、彼女は究極の力に覚醒した。
その力を使って、ルドラの野望――世界を平定し平等な社会を作る――を本気で信じている。
……だが、彼女は悟っていた。
ルドラの友ではあるが、それについてはルドラから何か言及されたわけではない。
「そろそろ陛下の魂も限界でしょうし、早く世界を平定しなければ」
そこまで考えるも、大事なことには気づかない。
究極の力――
それは、とある事柄を意味していたのである――
――――――――
生き返らせはしたが、実際約百万もの人材を失えば帝国はボロボロだろう。
私の軍勢からしたら百万くらいなら痛手ではあるけど壊滅には程遠い。
……それは私の軍勢が蟲だからなんだけどな。
人を使うとなったら百万なんて大損害だぞ。
リムルはその大量の魂を使い、配下を進化させた。
ベニマルとシオンは何か変わらなかったから置いとくとして……。
ゼギオンとディアブロ、あれはヤバイ。
どっちも
ゼギオンは今でも大概な強さなのに、どうなっちまうんだ。
で、ディアブロだが……。
この私をもってして倒せるか分からん。
というか確実に私より強いだろう。
よくリムルは平然とした顔で行えるな。
色々ヤバかったが、最後は私への褒美か。
今回は裏方だったが、戦車とか開発したの実質私だからな。
「お前、いつの間にあんな大戦力を……」
「え?報告してなかったっけ?」
「細かくは聞いてないぞ。報連相は大事だから次から気をつけろよな」
「あぁ、今度からは気を付けるとするさ」
リムルと小声でこんなことを話す。
戦車があったから犠牲者は皆無で、怪我人もほぼゼロだったからかリムルの表情は厳しくはない。
ただ迷惑をかけたのは悪かったと思ってる。
これでも王女だから、戦場に軽々しく出られないのがネックだな……。
「今回の戦での技術提供により、我が軍は絶対的な勝利を手に入れた。俺は兄として誇りに思う。妹であるが故に"王"は名乗らせられないが、代わりに別の称号を授けよう」
「感謝す……します。リムル……お兄様」
「うむ。これからは
なんかこう丁寧な言葉って、むずいな。
だが、普通に称号は嬉しいぞ。
エキセントシスター……常軌を逸した妹?
あれ?……うーん、まあいいか。
ここは黙ってニコニコしとけばいい。
そうしてると、シュナが横から新しい服を持ってきてくれた。
これも褒美か。悪くないな。
ありがたく受け取るとしよう!
私の出番も終わり、後ろに下がる。
その途中で、鱗粉が特殊な反応を察知した。
これは……帝国周辺の鱗粉か?
私が再現した竜のよう。
そこまで考えて、それが
しかし、微妙に違う。
まるで機械のような――
……危険だ。
まだ行動に移してはいないっぽいが、この
まず間違いなくまともな生物ではないだろう。
帝国方面ということは、乗り込んでドカーンするのが一番いいだろうな。
後でリムルに提案することを決めて、私はどこか寒気のする