転生したら黒蝕竜だった件   作:転スラ好きのライズ民

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46:叡智と激怒

ヴェルシャリカは歩く。

悠々と、そしてピリつく空気を周囲に発生させて。

彼女の製造した竜を、闇が濃い真夜中に稼働させた。

待ち望んでいた役目、それに張り切るように竜達は吠える。

作られた命には食べる権利も寝る権利も、ましてや死ぬ権利もない。

常人において禁忌とされる存在、それを遠慮など一切せず、彼女は率いるのだ。

改造手術を施し、彼女の従順な奴隷となった指揮官達がヴェルグリンドの"並列存在"に付いていった。

今回の作戦は、帝国の近くに蔓延る混成軍団(裏切り者)を叩く。

そして、それを率いるユウキ・カグラザカを始末するのだ。

ルドラとヴェルグリンドにゆったりと付いてゆき、とある場所へ。

皇帝の忠実な臣下であり帝国近衛騎士団(インペリアルガーディアン)の団長――近藤達也。

彼が集めた情報によると、ここは帝国へクーデターを仕掛けようとしているユウキ・カグラザカのアジトだという。

 

(どうしてクーデターなどをダムラダが企画していたのでしょう?)

 

しかし、ヴェルシャリカは違和感を感じていた。

ルドラの忠実な臣下であるダムラダ。

だが、ユウキ・カグラザカを唆してクーデターを起こそうとしている。

 

(まさか、陛下の魂の――?)

 

思考を纏めようとするが、その思考は散り散りになり彼女は考えるのを止めた。

違和感はあるが、世界征服を達成するためにはただ邪魔でしかないと判断。

目的地に着き、ユウキ・カグラザカを視界に入れた。

 

「へぇ、まさか竜種が二体いるなんてね。流石皇帝陛下のカリスマってことかな……ん?」

 

傲岸不遜にも、ルドラと竜種二体に対して不敵に言い放つユウキ・カグラザカ。

しかし、その語尾は疑問へと変化した。

その視線の先にはヴェルシャリカを捉えており――

 

「……シャガリさん?いや、違う。目があるし、金髪だ。黒蝕竜(ゴア・マガラ)……まさか」

 

彼女を見てそう呟いた。

その呟きは正しいといえる。

ユウキ・カグラザカはその観察眼で、即座に正体を見抜いた。

それが、彼の前世でのゲームで古龍と呼ばれていた存在だと。

しかし、迷ったのは一瞬。

彼女にとっては戯れのようなものだが、ルドラに向かって攻撃を仕掛けてきたのだ。

それを"鱗粉転移"したヴェルシャリカが受け止める。

エネルギーを奪う系の攻撃だと瞬時に解析したヴェルシャリカは大量のエネルギーを腕に纏わせ、自滅させようと試みた。

しかし、まるでその事象を一度経験したことがあるかのように対応してみせた。

 

「驚いた。思ったより器用なのですね」

「ハッ。同じような手をアンタの娘から受けたんでね」

 

不敵な笑みを浮かべるユウキ・カグラザカに向かって、次は魔力弾を撃とうとするヴェルシャリカ。

しかし、ヴェルグリンドがそれを止めた。

 

「待ちなさい。ルドラが支配するらしいわよ」

「それが陛下の望みとあらば、殺すわけにはいきませんね」

 

ヴェルシャリカは肩を竦め、後ろに下がった。

代わりにルドラが前に進み出て、ユウキ・カグラザカに話しかけた。

いくつか言葉を交わし、ルドラは独特の構えを取った。

 

王権発動(レガリアドミニオン)

 

ユウキ・カグラザカが倒れ伏す。

横にいたダムラダはいつの間にやら跪いており、敵対の意志はないと示していた。

それを見届け、ヴェルシャリカは本格的に混成軍団の始末のため転移する。

全ては、皇帝の覇道を確かなものとする為に――

 

 

 

――――――――

 

 

 

迷宮でラミリスと戯れていると、リムルから会議だと報が来た。

今回はマジな雰囲気だったので参加することにする。

会議室には錚々たる顔ぶれが集まっていた。

リムルの横の席に座り、私はリムルが喋りだすのを待った。

しばらく経って、リムルが口を開く。

帝国への最後の戦いへの決定事項を伝える感じだな。

リムルが「入ってくれ」と言うと、ラプラスというユウキ・カグラザカの陣営の奴が入ってきた。

なんて胡散臭いんだろうか。

とはいえ使者なので勝手にプチッとやってしまう訳にはいかない。

ユウキ・カグラザカのアジトへ連れて行ってくれる役割もあるしな。

 

「ワイが同時に連れていけるのは六名やけど、リムル陛下とワイを抜いて残りの四名は誰を連れていかはるんで?」

 

リムルはそれに対してベニマルを見た。

ベニマルはニヤリと笑みを浮かべる。

どうやら進化して強くなったみたいだな。

次にディアブロとシオンを指名し、三人を最高戦力で固めた。

最後は私。

ソウエイは後から付いてくる感じになっている。

 

さて、次の議題だな。

ガゼルのとこと協力して帝国へ武威を示すわけだが、それを行う軍団を選出する。

ガビル率いる飛竜衆(ヒリュウ)とベニマル率いる紅炎衆(クレナイ)という全員がAランクオーバーの少数精鋭だ。

そこに私が発言をする。

 

「私のとこの龍教蟲師団を出そう。まあ、百万くらいいれば武威は示せるんじゃないか?」

「おいおい。百万くらいって、一体何匹いるんだそいつらは」

「現在進行形で増えてるけど、前見た時は一千万は超えてたな」

 

マジもんの死なない肉の壁だ。

こういう時に有効活用してなんぼだろう。

そんな感じで出撃するメンバーが決まってゆく。

すると、ガドラが新型の魔王の守護巨像(デモンコロッサス)を試したいと言ってきた。

研究担当(ラジエル)と色々やってたっぽいが、迷宮のボス用じゃないやつはどんな性能になっているのやら。

ベスターも静かに興奮しているし、ここは許可することになった。

 

そんなこんなで会議も終わり、夕方。

リムルと飯を食っている。

私が今食べているのはからあげというものだな。

鳥を油で揚げたものだが、なんとも衝撃の美味さだ。

味付けとしては塩を振りかけただけなのだが、私は好み。

リムルとベニマルが横でワイワイ話しているのを見ながら、私はからあげを食べる。

しかし、こんな平和な時間は長くは続かなかった。

 

ラプラスが食堂に飛び込んでくる。

どうやらこいつの仲間がピンチで、かなりヤバイ状況らしい。

リムルが監視魔法:神之瞳(アルゴス)を発動させると、混成軍団と思わしき軍団がヴェルグリンドによって放たれた赤い柱によって虐殺されていた。

ヴェルグリンド……なんでまたそんなことを。

……まさか、あのヴェルグリンドは未来の姿だったとか?

なんかそれっぽいこと言ってたよな。

だとすれば、ここで私達は知り合ってヴェルグリンドは過去へ飛ぶ、と。

つまり味方とは全く思えん。

しかもこれは、あれだな。

前、私がやったのと同じようなやつだ。

重力崩壊(グラビティーコラプス)で数万を虐殺し、その死体を妖死冥産(バースディ)でなんかしようとしてるんだろう。

その推測をリムル達に説明すると、ラプラスは正解だと驚いていた。

いやぁ、それほどでも。

正確には私の相棒が提案した術式だからな。

って、そんなこと言ってる場合じゃない。

ヴェルグリンドの足止めにウルティマ師匠達、悪魔三人が向かうことになった。

ガビル達をリムルが転送術式で送り出したので、さっさと帝都へ向かうぞ。

随分と慌ただしい……が、今回もなんとかなるだろう。

リムルがいるし、何も問題は――

……頬が、痒い。

何故か、嫌な予感が止まらない。

この戦争が始まる前からあった嫌な予感は強まり、どうしてか体の震えが治まらない。

 

永い夜が、悪夢が、今始まった――

 

 

 

ラプラスに連れられて帝都へと転移した。

ここが秘密基地だと紹介するラプラスの声は尻すぼみになり、何か良くないことが起きたのだと分かる。

周囲を見回す。

豪奢な絨毯の敷かれた、立派な広間だった。

騙されたのかと思ってラプラスを見るも、そんな雰囲気ではない。

何が起こったのか確かめるため威圧感を感じる方を向くと、そこにはヴェルグリンドがいた。

……そこで私は、気が付いてしまった。

これ、あれじゃね?

ユウキ・カグラザカがふてぶてしい態度でなんか言ってくるが、明らかに正気ではない。

それを一瞬で見抜いたリムルがラプラスを安心させ、疑心暗鬼は避けられた。

玉座からそれを見る男が一人。

こいつが、皇帝か。

マサユキに似てるが、別人だろう。

確かルドラとかいう名前だったはず……。

あれ?ルドラといえばC君の名前じゃ……?

 

皇帝が用意した椅子に素早く座ると、礼儀がなってないとヴェルグリンドに怒られてしまった。

まあ座ってしまったものは仕方ない。

横にリムルが座り、後ろにはベニマル達が立った。

そして、会話がリムルと皇帝の間で始まる。

今回の作戦について、皇帝は事細かに楽しそうに語ったのだ。

"元帥"――ヴェルグリンドが複数人いるかのような内容がある。

やはり……。

 

「「――『並列存在』――?」」

 

私とリムルが同時にその言葉を放った。

リムルも、私も、その効果は良く知っている。

何故なら……それは私も持っている権能なのだから。

私が呆然としていると、皇帝の後ろに立っている人物と目が合う。

フードに隠れていて分からなかったが、見事な金髪だった。

そいつはフードを脱ぎ――

 

「私……?」

「いいえ。貴女の母ですよ。我が娘」

 

私はそれを聞いて勢いよく立ち上がる。

母?母、だと?

次第に、頬が痒くなってくる。

まさか、帝国にいたなんて――

横で行われているリムルと皇帝の会話も決裂気味だし、これってヤバイんじゃないのか。

そんなことを考えていると、ヴェルグリンドと母が目を合わせて消えた。

会話の流れから遡るに、ヴェルドラに最大戦力で挑むといった感じか?

ただし、見た感じ苦戦はしてるが勝てそうなもんだが……?

私のそんな思いを無視して、事態は最悪の方向へと進んでゆく。

チラリと、また後ろにいる者と目が合った。

あれ?アイツ、どこかで……。

赤い軍服を着た男。

 

「フェルドウェイ?」

 

私がそう呟くと、そいつは笑みを浮かべて喋り始めた。

 

「やはり、こんな所にあったのですね。落ちこぼれの『英知之王(ラジエル)』は」

 

《……!》

 

ズキンと、魂の奥底で痛みが走る。

何かが、何かが私を蝕んで――いや、違う!

 

《……告!主様(マスター)、これは――》

 

私がこの世界に生まれ落ちてから共に過ごした相棒。

叡智之王(ラジエル)の反応が消え失せる。

その勢いで私の体は操られ――

 

「く、クソッ!」

 

何故か叡智之王(ラジエル)と私の繋がりが切れていて、私は操られなかった。

だが……叡智之王(ラジエル)が反応を示さない。

そんな、そんな、馬鹿な。

 

「ふざけるなよ、ちくしょう!」

 

気が付けば、ヴェルドラの気配も消え失せていた。

映された画面を見る。

そこには操られたヴェルドラがいた。

リムルは叫び、皇帝へ殴りかかる。

しかし、それは役目を終えたかのように消えてしまった。

 

――ふざけるな

 

叡智之王(ラジエル)、返事をしてくれ。

叡智之王(ラジエル)、教えてくれ。

叡智之王(ラジエル)、頼む……。

あぁ、叡智之王(ラジエル)――

 

「は、ははっ。ははははっ」

 

リムルもまたヴェルドラを失った怒りに燃えているが、それにベニマル達が駆け寄った。

だが私はどうだ。

叡智之王(ラジエル)は、もういない。

私は、一人だ。

 

――許さない。許さない。ゆるさない。ゆるさない。ユルサナイ――

 

蝕欲者(ネフィリム)嵐纏之王(オーディーン)を準備する。

叡智之王(ラジエル)……。

私はもう一人で敵を殺せるよ。

だから、戻ってきてくれよ。

魔素増殖炉、発動。

 

――力を――

 

魔素がどんどんと私を満たしてゆく。

しかし心は満たされることなどない。

帝国、お前らはよくも私の相棒を奪ってくれたな。

この報いを、絶対に受けてもらう。

私の口は弧を描き、瞳など無いはずの瞼からは一筋の水滴が零れた。

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