転生したら黒蝕竜だった件 作:転スラ好きのライズ民
ネーロの意識が浮上する。
彼女は、ヴェルシャリカの攻撃によって一瞬で爆散してしまっていた。
やがて爆散した肉片一つ一つが蠢き、一つの形を作ってゆく。
最後に、影に移していた魂を元に戻す。
こうして、ネーロは意識を取り戻した。
(あぁ、死ぬかと思った。それにしても、あの力は反則だね)
彼女達源蟲五神はほぼ精神生命体であり、肉体が滅びた程度では死ぬことなどない。
性質としては精神生命体に限りなく近いのだが、自然と受肉を果たすために実質影響力は有利といえる。
それが
とはいえ、肉体が滅ぼされてしまってはすぐさま現世に影響を及ぼすというのは不可能なのだ。
幸い、ネーロは「並列存在」の権能を応用し、影に
「環境適応」により、滅ぼされてしまった肉体を再構築し、
「並列存在」の権能により残していたバックアップの意識がギリギリ彼女を死の淵から救ったのである。
死んだとしてもその"魂"は
不運なことに今は戦時中。
そんな余裕があるはずもなかった。
自身の技術のみで生き永らえたネーロは息を吐く。
しかし、ゆっくりしている暇など無い。
何故なら、目の前では戦いが行われ続けているからである。
ネーロは立ち上がり、背中から生えている四本の脚を地面に突き刺す。
「情報感知」によって自軍が殲滅されていることを確認すると、ネーロは青褪めた。
そんなネーロに、激励するような
『好きに暴れて構わない。どれだけの破壊を撒き散らしてもいい。死んでも生き返らせてやる。蟲として、全てを喰らってやれ』
(母様、こんな私にまだ道を示してくれるんだね。その思いには絶対に応えないと)
声と同時に、力が飽和するように自身を満たしてゆく。
魂がエネルギーに変換され、乾いた土が水を吸うようにどんどんと
その精神が肉体を凌駕し、周囲の地形を破壊して
肉体が溢れ出る魔力によって作り変えられてゆき、脱皮をするように古い肉体が砕け散った。
使い古された
一瞬の眠気の後、瞬く間にその肉体は強化されたのだった。
負ける気がしない、そう感じるとともに、ヴェルシャリカとの力の差をネーロは感じる。
力を渇望すると、それを手助けするように"魂の力"が形を取り始めた。
それを待ち遠しく思うが、今は戦場の方が大事だとネーロは決心を固める。
各々が好き勝手に戦う戦場で、ネーロは思念を飛ばす。
三人一組を組み、それぞれで敵を殲滅せよ、と。
そして、弱点となる者が多い火、または雷属性の
ネーロもまた、
その
雷が周囲に落ちるが、ほとんどを華麗に避けた。
しかし、掠った雷は弱点属性であるためか、それだけでダメージは大きい。
再生能力によって傷が再生し、油断できない相手だと身構えた。
護竜軍団の中でも最上位の実力者であり、副官のような存在である。
雷のような素早い動きで、
光る雷に対してはネーロの影の能力は相性が悪く、その槍術で対抗をするしかなかった。
しかし、ネーロには覚醒した力がある。
槍を流麗な動きで使い、着実に攻撃を加えてゆく。
魔素がある限り不滅な「無限再生」ほどではないが、「超速再生」を超える尋常ではない回復力を見せる。
光を灯さない黒塗りの瞳は、今もまた無機質にネーロを見ていた。
「これで、終わりッ!」
幾度かの攻防の末、決めたのはネーロ。
槍が
――運命の女神は、どちらに微笑むかは分からない
槍から力を抜いたネーロに、鋭い雷が命中した。
金色の雷は的確に左半身を穿ち、油断していたネーロが崩れ落ちる。
その目に光を宿し、
明確な"意志"が籠ったその目は、今にも死にそうな肉体に反比例するかのように爛々と輝く。
国のために、主のために、その思いはネーロ達のみが持つ覚悟ではない。
長年帝国を護り続けた竜は、その最後の力で吠える。
「グオオォォォォーーーン!!!」
その姿を見た者は、後にこう語った。
それは、言葉に表すとするなら"金雷公"であったと。
身構えたネーロの目の前で、力を使い果たしたかのように
「ッ……やっ……た?」
実の所、あの瞬間だけは覚醒魔王を優に超える出力を
意志の力は究極に届き、黄金の雷は万物を穿つ。
それに耐えられたのは、当たる直前に獲得した新たな権能の効果である。
因果を織るその権能で、ネーロは
――意志は受け継がれる。
黒かったネーロの甲殻が金色に変わり、糸が黄金に輝いた。
ネーロもまた、上位聖魔霊たる高みに登ったのだ。
彼女は
一方、ラミリスの迷宮での戦いも苛烈を極めていた。
ザラリオとその配下との戦いである。
配下はロッサとトレイニーの姉妹達が相手をし、ザラリオはフウガ、カリス、そしてトレイニーが相手取っていた。
三人がかりで挑んでいるにも関わらず、ザラリオは表情を動かすことなく対処している。
それの最も大きな原因となっているのが、ザラリオの権能だ。
カリスが
しかし、その炎はザラリオの体の表面を覆う結界によって防がれる。
これを破れるのは、因果を操る「確定結果」や次元を断つ「次元破断」のような権能のみ。
そのため、権能を持つロッサはザラリオの配下と戦いながら、隙を見て攻撃をしている。
「確定結果」を持っているフウガは、その意志の力を拳に込めて戦う。
カリスやトレイニーとも見事な連携を発揮するが、それでもザラリオには通じない。
権能に頼り切ることのない、純粋な
それがザラリオは卓越していた。
受け流しや回避でまともに攻撃が当たらないのである。
武器性能の差も、苦戦に拍車をかけていた。
ザラリオの装備している武具は
一撃を喰らえば、間違いなく大ダメージを受ける。
それに対して、ザラリオは究極の力が込められた攻撃のみに対処し、一発当てることができればいいのである。
(まずいですね……。このままでは敗北してしまいます)
(どうする、フウガ。俺達も強くなってる自覚はあるが、進化の反動が――)
不幸は重なる。
ヴェルドラが支配され、迷宮への魔素の供給が止まったのだ。
幸い数分もしない内にシャガリによって補填はされたのだが、ヴェルドラが支配されたことでカリスに焦りが生じ始める。
さらに、何か大事なものが失われた感覚をフウガとロッサは感じた。
それは
その判断の遅れの積み重ねは、致命的な事態を引き起こしてしまう。
ザラリオの攻撃がフウガに命中した。
胴体が袈裟斬りにされ、それにロッサが動揺する。
その瞬間、ザラリオの配下が隙を突いてロッサに攻撃をした。
フウガは致命傷を、ロッサも傷を負い、ある程度優位に戦えていた戦場が崩壊する。
ザラリオの攻撃は
眠気は浅めであったため致命的ではなかったが、間接的に焦りを生んでいたのだ。
奇しくも、魔獣軍団の副官、ナジムと同じ末路を辿ろうとしていた。
カリスとトレイニーが助けに入る。
たとえフウガが消滅したとしても、迷宮の不死性がある限り死ぬことはないのだ。
しかし、ここで時間を稼がなければ負けるのは必至。
二人はその打つ手のない絶望をよく分かっていたが、最後まで諦めることはしないと決意している。
会話や戦闘による時間稼ぎで、また敵に戦士の目覚めを許させた。
アダルマンが目覚め、カリス達のもとへ駆けつけたのだ。
その状況を見て、ザラリオは本気を出して殲滅するか迷った。
ザラリオの役割は陽動である。
ラミリスという真の狙いを悟られないために暴れるというもの。
カリス、アダルマン、フウガ――彼らは間違いなく強者だが、ザラリオの本気には敵わない。
今まで戦えていたのは、陽動という目的をザラリオがしっかり理解していたからである。
しかし、こうも強者が集まってしまえば手加減をしている訳にはいけないと考えた。
シャガリの螺旋斬すら受け止めたその力が解放されようとして――
「
「
後ろから、ザラリオの配下との戦闘に手一杯だと思われていたロッサと死んだはずのフウガの攻撃が放たれる。
決着間近のため油断していたザラリオに、攻撃が命中した。
星粒子を使った、彼らの奥の手である。
攻撃から生き残り、この極限状態で制御を可能としたのは、彼らの新たな権能――
借り物ではない究極の力。
ザラリオは究極の力に目覚めたフウガとロッサを見る。
勝つのは不可能ではないが、先程と比べて困難になった、そう考えたのである。
陽動という役割から離れるわけにはいかないと、その決意を固めようとして……。
ディーノから作戦失敗の報が入る。
それを聞き、ザラリオは引くことを決めたのだった。
マサユキを守るビアンカは、コルヌという天使、突如として参戦したフェルドウェイ、そして操られたクロノア相手に苦戦していた。
ディアブロの配下のヴェノム、帝国の元軍人のカリギュリオとミニッツ、そしてルミナス麾下の"超克者"達。
この者達はコルヌと名乗った天使に対して挑んでいる。
彼らはマサユキの権能によって強化され、かろうじて戦線を維持できていた。
しかしビアンカは、マサユキの強化があるとはいえ一人で二人を相手にしていた。
マサユキを抹殺しようと襲い掛かってきたフェルドウェイ。
そして、それを止めようとしたクロノアは、フェルドウェイの権能によって傀儡となってしまった。
妖魔王と、最強と名高い勇者。
マサユキに近づけさせないよう工夫して戦う必要もあった。
ビアンカは双剣を使って勇猛果敢に攻撃を仕掛けるが、超越した技量を持つ二人にはあまり効果がない。
後ろでマサユキが震えていることを意識し、ビアンカは出ないはずの冷や汗が垂れるのを感じた。
ビアンカにとって、マサユキとはただの人間でしかない、ハズだった。
最初は、母シャガリに命令されて仕方なくマサユキを守っていたのだ。
シャリーとして彼と出会い、守りながら戦う日々。
他の源蟲五神と比べて変な仕事であり、華々しいものではない。
活躍をしているフウガなどが羨ましくもあった。
ビアンカは思う。
(源蟲五神の中で一番醜いのが私だ)
人間と関わったからか、理性と本能のうち理性が勝るようになる。
振り切れた他の源蟲五神と比べて葛藤もあり、
マサユキの権能の影響下に入ることのないビアンカは、マサユキの愚痴を聞くことが多かった。
それゆえ、自分の生い立ちをマサユキに相談してしまったのだ。
マサユキはそれを気負うこともなく受け止め、仲間だと認めた。
ビアンカはマサユキを信頼し、マサユキもまたビアンカを信頼していく。
次第にマサユキの仲間も彼女を仲間と認める。
彼女はマサユキに憧れた。
親友であると同時に、彼女の蟲生の目標でもあった。
お世辞にも聖人君子とは言えないが、困っている人がいればなんだかんだで手を差し伸べてしまう、そんな母シャガリや母の兄リムルのような心を眩しく思ったのだ。
いつしか、それは命令から自分の意志へと変わる。
ビアンカ・シャリーというものが自分の名前だと認識できるほどに、彼女はマサユキに魅了されていた。
しかし、そんなマサユキに危機が訪れようとしている。
逃げずに戻ってきたその心が尊敬できるとともに、逃げてほしいという感情もまたビアンカにあった。
攻撃が捌ききれず、クロノアがマサユキに向かって攻撃を仕掛ける。
それを、諦めたのかマサユキは笑顔を浮かべて仁王立ちをした。
(ダメだ!友を殺される訳にはいかない!)
この時、彼女は今までの生の中で最も強く願った。
故に、その願望が形になった
マサユキの
その稼いだ時間が、勝利を分ける。
マサユキの前方に、
スズネはディーノに一度負けてから、勝つことを諦めた。
どちらかと言うと支援系である彼女は、直接戦闘には向いていないのである。
その代わり、ラミリスの補助に回った。
彼女の持つ演算領域を最大限に発揮させ、迷宮内における様々な事象を観測、干渉しているのだ。
戦闘が行われている場所の隔離や、民間人の保護、単純な演算の補助など。
それはまるで彼女自身が迷宮になったよう。
思考加速は倍率が上昇し続け、「並列存在」による並列演算も効率が良くなってゆく。
迷宮に張り巡らされ、さらにその周囲に広がる"根"を通して情報を収集。
解析、記録し、適切な処置を施してゆく。
急に
彼女の権能「
そして、彼女に付与されている「
スズネは蟲達の女王。
故に、その支配力は蟲を統率することだけならベニマルを超える。
そんな彼女であるために、最初に
《力が欲しいですか?ならば裏切らないと誓いなさい》
リムルの中に"シエル"が誕生したのである。
シエルは、リムルと"魂の回廊"でつながっている者達を強化していた。
とはいえ、そんなシエルでも難しいことがある。
それは、間接的にしか"魂の回廊"が無いシャガリの眷属たちへの干渉である。
しかしそれで諦めるようなシエルではなかった。
シャガリの中にある
シャガリの配下が強化されればシャガリも強化され、リムルの得となる。
その機会をみすみすと逃すシエルではない。
(貴方は……いえ、今はそんなことはどうでもいいですねぇ……。リムル様のような気配、怪しいけど悪ではなさそうです。是非、よろしくお願いしますよぉ)
許可を得たシエルはスズネの力の結晶化を手助けする。
自身の中に眠る力を理解したスズネは、その力を統合し始めた。
そして、得たのである。
蟲を統べる究極の力を。
その
その結果、全員が