転生したら黒蝕竜だった件   作:転スラ好きのライズ民

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49:そして一体の龍と成る

"世界の言葉"が聞こえた直後、私は「情報感知」の感覚を失いその場に崩れ落ちた。

体が動かない。

意識が闇へと落ちていくような感覚があるが、なんとかそれを留めた。

「並列存在」の権能の影響か、思考だけはできるようだ。

体が動かないことには戦うこともできないので、内面に意識を向ける。

私に何が起こっているのか、それを確かめなければ。

 

《告。勇者への覚醒(クリスマスパーティ)魔王への進化(ハーベストフェスティバル)邪神への進化(ハロウィンカーニバル)が開始されました。身体組織を再構成し、新たな種族への進化に挑戦します》

 

内面へ意識を向けると、私の"魂"を知覚することができた。

中々に歪な形をしている。

"魂"にある力はリムルやマサユキのような大きなものではないのだが、二人分くらいの大きな魂の容量が合体している感じだ。

その結果、リムルのような大きな容量があるものだと分かる。

そして、魂の周りには輪廻の精魔霊王(セラアウローラ)が変質したと思われる保護膜があった。

それにしても、なんで二人分くらいあるんだ?

 

《確認しました。"意志の力"により、支配系能力の効果を消去。「狂竜ウイルス」を克服しました。これより、「極限化」を開始します》

 

魂を見ると、ユニークスキル「蝕欲者(ネフィリム)」とか究極能力(アルティメットスキル)嵐纏之王(オーディーン)」「精霊之王(エレメント)」が形作られているのが分かる。

そして、「蝕欲者(ネフィリム)」とほぼ同じ位置に「叡智之王(ラジエル)」はあった。

語りかけるも、返事が返ってくる様子はない。

しかし、私の魂の内部に「叡智之王(ラジエル)」に似た気配があった。

 

《各種耐性を再取得します……成功しました。「物理攻撃無効」「自然影響無効」「状態異常無効」「精神攻撃無効」「聖魔攻撃無効」「龍属性耐性」を獲得――成功しました》

 

それは、私のような小さい少女の姿をとって静かに眠っていた。

赤髪の綺麗な少女だ。

……私は、この少女を見たことがある。

 

「……ラジエル」

 

頬を優しく撫でる。

あぁ、消えていなかったのか。

しかし、会話できる様子はない。

原因を探ると、叡智之王(ラジエル)に変なものがついているのを発見した。

これは、支配回路か?

どうにかしてこれを中和できないかと魂を探る。

すると、蝕欲者(ネフィリム)が支配を中和してくれているのを見つけた。

しかしそれは不完全なもので、究極ではないからか完全に中和できている訳ではない。

蝕欲者(ネフィリム)は、元々は強欲者(グリード)に似た能力(スキル)の「貪欲者(アヴァリス)」から作られた能力(スキル)だ。

大罪系というものの亜種って感じだな。

これが両方究極であれば中和に成功する訳だ。

しかし、蝕欲者(ネフィリム)は限りなく究極に近いとはいえユニーク。

何か別のアプローチをしなければ。

別の場所に手を伸ばす。

持ってきたのは、嵐纏之王(オーディーン)精霊之王(エレメント)だ。

私の家族(ファミリア)との絆の結晶。

これを進化させれば、何とかならないだろうか。

叡智之王(ラジエル)の権能、「形貌変幻」を使い、二つの能力(スキル)を統合する。

 

《告。究極能力(アルティメットスキル)嵐纏之王(オーディーン)」が魔王への進化(ハーベストフェスティバル)祝福(ギフト)を、「精霊之王(エレメント)」が勇者への覚醒(クリスマスパーティ)祝福(ギフト)を用いて進化に挑戦――》

 

《成功しました。究極能力(アルティメットスキル)神治之王(デミウルゴス)」を獲得しました》

 

成功、だ。

その効果の使い方が私の脳内を駆け巡る。

これならいけるかもしれない。

神治之王(デミウルゴス)を使い、中和を試みる。

"魂"が脈動し、ラジエルが薄目を開けた。

 

「否。……ワタシはいてはならないのです。主の役に立たない能力(スキル)など……。寄生虫などは、いてはならない……」

 

すると、私から目を逸らして俯く。

私はラジエルを抱きしめ、背中を優しく叩く。

いらない?そんなことはない。

 

たとえラジエルが噛生虫(キュリア)だったのだとしても――

 

薄々気が付いてはいた。

傀異化ができて、劫血やられも発動でき、伏魔響命すら発動できる私。

それは、噛生虫(キュリア)がいなければ成すことができない。

ラジエルがどこから来たのか?

それは、私が死ぬときに遡る。

あの時、私は狂竜ウイルスと噛生虫(キュリア)、両方に蝕まれて死んだ。

狂竜ウイルスは生物ではないが、噛生虫(キュリア)は完全な生物である。

私が死んだ余波で私の中にいた噛生虫(キュリア)は死に、私と融合して転生した。

思えば、ラジエルが「情報者(メグルモノ)」であった時代から意志のようなものがあったのはそれが原因なのだろう。

魂が二人分あるのもそれが原因かな?

 

――貴方の相棒、大事にするのよ。克服することをオススメするわ――

 

プロトの言葉を思い出す。

これを全部知っていたと思うと、やはり恐ろしいな。

克服――つまりは、噛生虫(キュリア)を克服するということ。

無茶を言う。

 

「ラジエル、この機に正式に名付けをしよう」

「――!?乱。……プロンプトを処理できません」

 

存在を認めて、受け入れ、そして克服する。

これをするなら"名付け"が一番ちょうどいいだろう。

そうだな……キュリアだから――

 

「お前は、ユリアだ」

「――!!!!!」

「よろしくな、ユリア」

「……はい。私はユリア。ありがとうございます」

 

橙色の妖気(オーラ)が魂を覆い、私の"魂"がさらに強靭に作り変えられてゆくのを感じた。

精神は肉体の限界を超え、ため込むばかりだった魔素が私を満たす。

貪欲に、まだ足りないと。

傀異克服。

私は、古龍の仲間入りをした、ということでいいのか?

じゃあ、これからはヴェルシャガリとでも名乗るとしようか。

 

邪神への進化(ハロウィンカーニバル)に成功しました。個体名:ヴェルシャガリ=テンペスト・アルカーノは黒蝕竜(ゴア・マガラ)から進化します――》

《確認しました。「渾黒龍(ミラ・マガラ)」に神化しました》

 

それを聞いて、私は満足した。

これは新種だな。

 

主様(マスター)、それでは不埒者を排除しに行きましょうか」

「母のことか?確かにそろそろ動きを止めないとな」

 

ユリアの案に同意し、私は精神世界から現実世界に戻る。

求めていた(ユリア)も戻ってきたわけだし、さっさと終わらせるとしよう。

 

 

 

母が横で立っているのを「情報感知」で認識。

どうやらまだ連れていかれているわけではないようだ。

なんだか縛られているが、私を捕獲するつもりか?

四肢を切断しようとしてくるが、それを弾く。

今の私の甲殻は全てが究極の金属(ヒヒイロカネ)でできているからな。

ゆらり、と起き上がり、肉体を急速に変質させてゆく。

斬られそうだった四肢のみを先に変化させたし、今度は全身を進化させなければ。

私の甲殻にヒビが入り、隙間から赤紫色の妖気(オーラ)があふれ出す。

やがて橙色へと変化し、龍気の赤も混じる。

その余波で、私を縛っていた鎖は勝手に塵になった。

ピタリと妖気(オーラ)の放出を止め、私は古い甲殻を脱ぎ捨てる。

中から現れたのは、虹銀色で妖しい赤いメタリックな輝きを放つ甲殻。

金色ではなく、銀色に変化したっぽいな。

人化をしてみる。

虹色の妖気(オーラ)が体を覆っていたが、どうやら裸のようだ。

流石にこれはまずいな。

周囲の妖気(オーラ)と古い甲殻を統合し、服を創造してみる。

さしずめ、アポピスXシリーズといったところか。

さて、私の見た目だが、身長は随分伸びて、少し癖のある黒銀色の髪が肩まで伸びている。

プロトみたいな見た目になったな、と思う。

アイツは白い髪だがな。

双剣を呼び出してみるが、コイツも進化している。

この装備と双剣の強さは?

 

神話級(ゴッズ)ですね!》

 

そっかー、神話級(ゴッズ)かー。

普通に凄まじい武具になったな。

新しいカッコイイ名前を考えなければ。

虹銀色に変化した双剣は……うん、暫定だが虹刻之蝕刃(エクリプスwithフェイト)と呼ぼう。

そんなことをしていると、母が後ずさったのが見えた。

 

「……あれほどの攻撃を加えたというのに」

「ふっ。私には頼りになる相棒がいるからな」

 

見えた、見えた、か。

今の私は瞳があり、景色をしっかりと"見る"ことができる。

力も溢れるようだ。

今なら炎だって笑って耐えられる気がするぞ。

母の言葉に笑って返答し、武器を構えた。

母も人化して双剣による攻撃を加えてくるが、思考加速の速度が数億倍になっている私にとっては遅い。

余裕を持って"瞬間移動"し、後ろから斬りかかる。

母は反応できずに翼脚が切り裂かれた。

それに飛び退く母だが、また後ろに移動して斬る。

卑怯は誉め言葉だ!

 

「くっ、生意気ですね。仕方ない。暴走の危険性があるので使いたくなかったのですが――」

 

母は何か覚悟を決めたのか、懐からカプセルを取り出した。

そのカプセルを放り投げる。

かなり危険なものだと分かるが、私に比べればそうでもないな。ふふん。

 

「開封、護竜(ガーディアン)鎖刃竜(アルシュベルド)!」

 

母が叫ぶ。

すると、カプセルが白い鎖を纏った護竜(ガーディアン)に変化した。

どうやら二対一のようだが、卑怯だなぁ。

まあ私もユリアがいるし問題ない。

 

「これで終わりとは思わないことですね。護竜(ガーディアン)雷狼竜(ジンオウガ)!」

「……ん?」

 

母がまた叫ぶも、雷狼竜(ジンオウガ)が来る気配はない。

チラリと戦場の方を見ると、ネーロが吸収していた。

結局二対二か。

 

《お任せを!》

 

母が悔しそうにしながら私を貫いた大技の準備を始める。

そして、鎖刃竜(アルシュベルド)と呼ばれたモンスターが私に襲い掛かってきた。

鎖の攻撃を駆使し、私を捕えようとしてくる。

だが、甘いね!

 

神治之王(デミウルゴス)――「世界創造(イツワリノセカイ)」発動。能力再現「絶対切断(アブソリュートエンド)」!」

 

リムルがベニマルに与えてたやつをパクった。

しかし、その効果は絶大。

鎖だろうが何だろうが、切り裂いて鎖刃竜(アルシュベルド)に傷を与えた。

次は黒蝕之鱗粉演舞(シュヴァルツマーチダンス)を活用するとしよう。

竜星閃光波(ドラゴ・レイ)を付与し、発射。

鎖刃竜(アルシュベルド)の甲殻に傷を与えてゆく。

怯んでいる隙に、私は空気を体に取り入れて龍気に変換する。

そして、地面の龍脈とリンクさせて龍脈破滅覇(デモンアナイアレイト)を放った。

 

天廻冥滅終束淵獄(アポカリプス・シャングリラ)!」

 

そんなことをしてるうちに母の準備が完了したようだ。

前のような、即席の力ではない。

しっかり力を貯めたバージョンだ。

ふむ。じゃあ全力で正面から破壊するとしよう。

ブレスを生成し、純粋な破壊のエネルギーへと変換する。

それは自然と炎を形作るが、炎が平気になった今だからこそ使える技だな。

原点にして、頂点。

 

 

 

 

 

劫火(ザ・フレイム)

 

 

 

 

 

その炎は全てを焼き尽くし、鎖刃竜(アルシュベルド)を破壊して母に致命傷を負わせた。

口の中がチリチリする。

炎は効かなくなったと思ったが、これは別らしい。

さて、それじゃあ母の支配回路を破壊するとしようか。

なんか母も見た感じ支配されてる。

この支配回路を消せば、母も正気を取り戻すだろう。

致命傷ではあるが、竜種だし最悪の場合も滅びることはない。

 

「ご、ふっ。まさか、あの男のような……禁忌に……」

「ん?まあ近い感じではありそうだな」

 

母に触れ、その権能を確認する。

やはり、支配回路がある。

さっとそれを消去し、再び語りかける。

 

「あ、れ?なぜ私は……陛下は?」

 

なんか放心してしまった。

話しかけても反応が返ってこない。

ユリアに聞くも、正常に支配回路の破壊は完了している。

単純に混乱しているだけか。

とりあえず、リムルに「倒した」と伝えなければ。

私はリムルの元へ母を連れて"瞬間移動"した。

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