転生したら黒蝕竜だった件   作:転スラ好きのライズ民

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52 魔王達の宴、再び

能力の確認を終えた翌日。

古龍として、眠る必要が完全に無くなった訳だが……。

案外眠ってみるのもいいものだ。

状態異常は無効化されるが、自分から瞑想に入る分には寝ることができるからな。

さて、今日リムルはマサユキとの会談をする予定みたいだし、私も参加するとしよう。

ヴェルグリンドとも話したいし。

項垂れるリムルを励ましつつ、私は会場に向かった。

 

「あー、胃が痛い。無いはずの胃が」

「そんな気負わなくても大丈夫だって!」

 

会議をする場所に向かうと、蒼色の髪をたなびかせる美女が視界に入る。

ヴェルグリンドだ。

こちらに近づいてきて、私とリムルを見た。

少し時間を取れないかと聞いてきたので、私は了承する。

リムルは……うん、ビビってるな。

別室にて、三人で話すことになった。

そして要件だが……。

 

「お礼よ」

 

お礼だった。

まあ、私はリムルほどすごいことはしてないけどな。

ルドラだったC君を守ったくらいである。

あの時に戦ったプルチネルラも今は私の頼れる家族だ。

リムルは横で校舎裏がどうとかヴェルグリンドと話している。

ふむ。そういえば聖典(マンガ)にはそんなのもあったか。

 

「あ、そうだ。シャリカとも話したけど、貴女は随分と人たらしの才能があるらしいわね。所構わず家族になれと公言していると聞いたわよ」

「えっ、いや、まあね」

 

おっと、私の行動はそんな風に見えてたのか。

流石に誰彼構わず声をかけてるわけじゃないけどね。

というか、そっちのビアンカは仲良くやっているか?

私はまあうまいこと立ち回ってる感じするが、ビアンカは知らない。

と思ったのだが、意外とマサユキと仲良くやってるようだ。

同じ勇者として何か通じるものでもあるのか?

そういえば、ヴェルグリンドはビアンカと戦ってみたらしい。

結果は、引き分け。

ヴェルグリンドの灼熱竜覇加速励起(カーディナルアクセラレーション)を解析され、無効化されてしまったとか。

それを相殺するのにビアンカはエネルギーを使ったようで、結局引き分けらしい。

 

「ギィみたいな厄介さを感じたわね。恐らく二度と同じ手は通用しないでしょう」

「そりゃあやべーな」

 

ビアンカの総魔素量(マックスエネルギー)はリムルほど多くないし、虚数空間を再現できてるという訳でもないし、"暴蝕"を再現できたとしても無効化は難しかったんだろうな。

ただし、一度見切ってしまえば私の魔素を借りて無効化するかも。

そう考えたら、やっぱり群体ってすごいんだなと思う。

私の家族は全員私と神権発動(アノマリードミニオン)によって繋がっているし、実質全なる一みたいなもんだろう。

全員の存在値を足した数値が、末端の蟲にまで理論上は付与されていると考えれば……。

うん、敵にとっては悪夢でしかないな。

 

そんな話をしていると、時間になった。

ということで席につき、私はリムルの話を聞く流れだ。

ガゼルもなんか乱入してきたが、リムルからしたらこれも計算通りの可能性があるな。

帝国の皇帝にマサユキがなるとか。

それの後ろ盾となる予定のリムル達だが、確かにガゼルがいたら心強い。

流石はリムルだぜ。

というか、マサユキに皇帝なんて務まるんだろうか。

まあ、マサユキだし何とかなるか。

ビアンカとヴェルグリンドが横にいるからな。

 

会議が始まった。

帝国の賠償と終戦協定とかだが、別に賠償金とかはいらないよな。

リムルはしれっと領空権だけを取得している。

随分強かなものである。

そして、これからの帝国の処遇だが……。

マサユキが皇帝になって導いてゆくこととなる。

皆が笑顔である世界、理想論っぽいがマサユキなら実現してのけそうな気がするな。

そういえば、リムルがヴェルグリンドを倒した話はしたけど私が母さんを倒した話はしてない。

する?とリムルに目配せすると、無用な心配を皆にかけさせたくないからしない、と目で訴えかけてきた。

私は"竜種"になったわけだし、災厄の一つや二つ持ってても問題ない。

と思ったのだが、例の炎を放った場所が一面灰が降り積もる死の大地になっていたとかで、私にあまり目立ってほしくないとのこと。

そんなことをテスタロッサがこそっと教えてくれた。

相変わらず人がいいんだから。

 

《むしろ、灰の大地程度で済んだのが奇跡ですね。下手したら時空が歪んでました》

 

……たしかに、私は目立たない方がいいかも。

フェルドウェイとかに目をつけられたら厄介だ。

そういえば、オベーラはさんは元気にしてるだろうか。

また会いたいなぁ。

……おっと、今考えることではなかったな。

 

三国の重鎮が集まっていることもあり、結構スムーズに事が決まってゆく。

あっという間に夕食の時間になり、美味い食事を皆で楽しみながら一日を終えた。

あれ?私参加したはいいけど特に何もしてなくね?

 

翌日。

ガゼルは国に帰っていった。

私は、ミリムの方の様子でも見に行くとしよう。

戦争が始まってから会いに行ってない。

……ってかよく考えたら私ってミリムのいとこじゃん。

ミリムがヴェルダナーヴァ……母さんの兄の娘なわけだ。

ということは、うん、いとこだな。

私が"竜種"に進化したことも自慢しに行きたいし、ささっと行くとしよう。

 

……と思っていたのだが、リムルの嵌めていた指輪が光ったことで行動を止める。

ギィから連絡が来たようなのだ。

魔王達の宴(ワルプルギス)を開催すると言っているが……。

その思念に隠れた想定外のことが起きたという動揺。

ただごとではなさそう。

 

「行くか?」

「あぁ、勿論」

 

腕輪からアポピスXシリーズを展開し、双剣も背中に装備する。

準備万端だ。

ラミリスも来たので、一緒に行くとしよう。

リムルは従者としてシオンとディアブロを連れていくみたいだが……。

って、ラミリスはベレッタとヴェルドラか。

じゃあ私は規則を破ることにはなるけど一人で向かうとしよう。

ディーノが裏切ったってことは魔王の席が空いたということだし、魔王にでもなるかな。

そう考えたら悪いものでもないだろう。

目の前に現れた転移門を通して、私は会場に向かった。

 

会場はギィの居城だった。

暴れたような跡があるが、何かあったんだろうか。

リムルとラミリスに既に従者が二人いるにも関わらず入ってきた私を、ギィは怪訝な目で見る。

私はそれにニヤリと笑みを返した。

今ならギィともいい勝負ができそうな気がするぞ。

だからギィなんて怖くないぜ。

……と言おうとしたが、やっぱ怖いな。

ギィから目を逸らし、会場を見回す。

ルミナスとレオンが先に会場に着いていた。

ダグリュールとミリムはもうすぐ来るらしいので、待つ。

 

魔王達が合流し、別室にて大事な話をすることになった。

私はそれについていく。

当然ギィからはお前は従者だろと止められたが……。

 

「私は魔王になろうと思ってるからな。別にいてもいいだろう」

「……おいおい、こんな時に面倒事を増やすなよ」

 

そんなものは無視し、ディーノが座っていた席に座る。

ディーノの裏切りと、ミカエルの天使長の支配(アルティメットドミニオン)とかについて、リムルが解説し始める。

そして、その天使長の支配(アルティメットドミニオン)に支配される条件である天使系能力(スキル)の情報をギィが説明した。

七つの純粋な「美徳系」と、天使たちに与えるはずだった七つの能力(スキル)

それは全てヴェルダナーヴァが作った純粋なスキルなのだと。

これには支配回路が含まれており、ミカエルの支配下になるわけだな。

 

「あー。あと、ヴェルダナーヴァが言ってたんだが、余り物の権能でもう一つ能力(スキル)を作ったらしいんだ。これは完全な余談だけどな」

 

説明が終わるころ、こんなことをギィが言い出した。

なんで余談なんだ?と私が聞くと、その理由を答えてくれた。

 

「その能力(スキル)はな、あまりにも不完全すぎて特殊なんだよ。格としては確かに究極なんだが、その精神性がユニークレベルじゃないと獲得できない。つまり、実質獲得するのは不可能だ。そうだな、例えば複数人の魂が混ざっているみたいにならない限り獲得できない訳だ」

「その能力(スキル)の名前は?」

「『英知之王(ラジエル)』だ」

 

英知之王(ラジエル)だと?

叡智之王(ラジエル)とはまた違うのか?

さっき言及した知識之王(ラファエル)みたいなもんか?

だとしても、その違いは……。

 

「ともかく、この中で誰が天使系を獲得してるか確かめないとな」

 

っと、そうだった。

今は会議の途中だったな。

ギィが傲慢之王(ルシファー)を、ルミナスが色欲之王(アスモデウス)を獲得していることを告白した。

ダグリュールは能力(スキル)は無縁だから除外。

ミリムは憤怒之王(サタナエル)を獲得している可能性が高い。

ラミリスは「神導之王(ヤルダバオート)」を――

って、いつの間にそんな能力を獲得してたんだ。

ギィが目を見開いてラミリスを問い詰める。

 

「おいラミリス。何だ、その能力(スキル)は」

「ギィも気になる?えっとね、シャガリとの絆の結晶だよ」

「……おーい、シャガリ君?」

「あ、私は秘密ね」

 

リムルと私は秘密。

そりゃそうだ。

リムルは虚空之神(アザトース)豊穣之王(シュブ=ニグラト)とかいうやべー能力(スキル)獲得しちゃってるし。

私も渾纏之神(ウボ=サスラ)神治之王(デミウルゴス)だもん。

これは秘匿しなきゃ不味いだろ。

ラミリスが自分の力をポロッと言ったのはビビったが、まあ字面だけだと迷宮創造(チイサナセカイ)とそんなに変わらない感じだろう。

まだセーフか。

そして、最後のレオンだが……。

まさかの純潔之王(メタトロン)を獲得済み。

バッチシ天使系だな。

これは誰か監視をつけないといけない、そう思う所だが……。

 

 

 

『おい、ディーノ。聞こえるか?』

『うぇ!?』

 

やはりな。

いつぞやにディーノに付与した大悪魔の支配(エゴイスティックドミニオン)

まだ効果が続いているようだ。

てっきり他の支配系能力の影響下に入った時消え失せたものだと思っていたが……。

 

《何人たりとも、主様(マスター)神権発動(アノマリードミニオン)からは逃しません》

 

案外これが続いていたことに気付いた。

というか、そもそも狂竜症をディーノに発生させていない。

ウイルスというのは潜伏期間が厄介なもので、私の鱗粉(これ)も例外ではない。

潜伏していたから誰も気づいていなかった、というだけだ。

そして、私は気づいたことがもう一つある。

この大悪魔の支配(エゴイスティックドミニオン)だが、名前からして天使長の支配(アルティメットドミニオン)と何か関係がありそう。

その推測だが、恐らく効果としては対みたいな感じなんだろう。

悪魔系の能力(スキル)には支配回路なんてものは無いので、狂竜ウイルスを摂取した者に支配効果を及ぼすって感じだったのだが……。

それってユニークレベルの話だったんだよね。

叡智之王(ラジエル)による支援もあったが、本質としてはユニーク。

それが究極に進化したもんだから……。

ミカエルの支配を上回っても不思議ではない。

……竜の因子を取り込んだミカエルの権能を上回れるかは賭けになるけども。

別に、ディーノに何かを強制するつもりはないから問題などない。

 

『お、おい。黙るなよ。こえーだろ』

『ああ、すまんな。別に用はない』

『えぇ……』

 

レオンについては、私の鱗粉を吸わせて支配すればいいだけである。

今は敵側に情報を与えないために黙秘するが、いざ支配された時は行うとしよう。

それに、最終手段としてリムルがいるからな。

リムルさえいれば大抵のことはどうにかなる。

 

皆が困っている様子を後目に、私は優雅に紅茶を飲む。

うーん、美味い。

さて、次の議題は何だ?

 

「実は、心配事があるんだが……」

 

そう言ってリムルが切り出したのは、支配されたカガリが行った妖死冥産(バースディ)によって生み出された妖死族(デスマン)に天使を受肉させるという話だった。

始原の七天使という奴らはもう受肉していたようで、天使之軍勢(ハルマゲドン)とかいうルドラの権能によって生み出された上位天使を受肉させたらやべーんじゃねーのと。

それってさ、要するにプルチネルラと同じ状態だよな。

アイツも元は天使が受肉したっぽい奴だし、あんなのが生み出されると考えたらすごい恐ろしいものだ。

そういえば、天使之軍勢(ハルマゲドン)って私もできる?

 

《同系統の「神霊之大戦(フィナーレ)」が世界創造(イツワリノセカイ)にて発動可能となっております》

 

なんかできそうだが、それってどんな感じの権能なんだ?

 

《精神生命体の召喚です。悪魔でも天使でも精霊でも、何でもとりあえず創造できますね》

 

……えぇ。

思ったより、というかユリアだから予想はついていたが、とんでもない権能だった。

これって肉体さえあればミカエルのやってることと同じことができてしまうって認識でいいんだろう。

とりあえず、今は保留で。

あまりにも規模が大きすぎて使いこなせる気がしない。

 

私が考えてる間に、会議は新しい話題になっていた。

ラミリスの迷宮に入ってきた三妖帥という奴らの話題だ。

ザラリオもいたっぽいし、油断ならないな。

オベーラさんもその一人だとか。

……コルヌは死んだって?

あれはヴェルグリンドだったから仕方ない。

とか思っていたら、ミリムが衝撃の情報を吐いた。

 

「実はな、オベーラという奴が――」

「オベーラだと!?」

 

思わず私は椅子から立ち上がってしまったよ。

オベーラさん。

その名を私は忘れるはずもない。

というか、ずっとオベーラさんのことを考えていたのだ。

思えば、フウガとスズネに出会えたのもオベーラさんのおかげだ。

私の師匠のような人でもあり、友だと私は思っている。

オベーラさんは元気にしているようだ。

私は胸をなでおろし、椅子に座った。

 

それにしても、グダグダな会議である。

思考加速をして考え事をしていた訳でもないのに、まだ終わっていない。

これじゃあ終わるのはいつになることやら。

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