転生したら黒蝕竜だった件 作:転スラ好きのライズ民
迷宮の中、集会所の奥地。
「冥通閣」と呼ばれる、天を貫く大きな塔がある。
霧が立ち込める不気味な塔であり、歴戦のハンターも近づくことはない。
実際は私がそうならないよう調整しているからなのだが。
協力なモンスターを多数配置しており、頂上に登るのは至難の業だろう。
それでも登ってくる猛者にはプレゼントを用意しているがな。
と、それは今はいいだろう。
今回はここにリムルを連れてきている。
休暇が取れた日を見計らって、デートに誘ったというわけだ。
まあそこに甘い雰囲気なんて欠片もないけど。
何せ、今から戦闘するんだから。
それぞれの強さを確認するため、一発戦っておくという感じ。
リムルは優しいから本気は滅多に出さない。
なので、私の迷宮で完全に不死身な状態でやろうぜという感じだ。
鍵を使い、私達は天蝕宮に足を踏み入れた。
「本当にやるのか?」
「やるさ。面白そうじゃんか」
「俺は別に面白そうとは思わないけど……」
天蝕宮の中心辺り。
黒い城が変化して地面に潜り、完全に平たい地面となった。
少し距離を取り、私はリムルと目を合わせた。
じゃ、始めようか。
「ギュルォ――ォォ――――ォォン!!!」
私が人の姿で放った「
そして、剣を抜いて斬りかかってきた。
それを翼脚で防ぎ、
しかしそれは"捕食"され、逆に斬撃が数発飛んできた。
慌てて避けて、私はリムルから距離を取る。
「驚いた。まさか私の結界を貫通するとは」
「
あれは情報子を喰らうから、そもそも遮断したところで意味ないんだな。
中々面白くなってきた。
私に攻撃を与えらえる奴がそもそも少ないから、ああいうのはマジで厄介である。
「
とりあえず、喰われる前提で放出系の攻撃を放つ。
その隙にリムルに近づき、
さらに、少し遅れて後ろから
「うぉ!?マジでお前はやべーな!」
しかし、その全ては喰われて原型を留めない。
剣撃はリムルの剣によって受け流され、私はリムルから一発を喰らってしまった。
魔力回路とか色々が破壊されてる感じがするが、それは「回帰再生」によって瞬く間に再生する。
ただ、この私が「痛み」を感じるとは。
やはりリムルの権能はオカシイ。
「
「食らい尽くせ、
一瞬で喰いつくされるが、その隙に後ろに向かった。
これを可能とするのが、"瞬間移動"だ。
痕跡を残さず後ろに転移することが可能となる。
「
「朧・百花繚乱」
禁忌の力を宿した剣で乱舞を踊るが、それは百の剣によって相殺されてゆく。
しかし、意志の力を振り絞った攻撃なだけあってリムルの防御を貫いて傷を与えた。
それに怯んだリムルに向かって、追い打ちをかけるように攻撃する。
「
手応えがあった。
しかし、私は嫌な予感がして飛び退く。
リムルの権能、"虚無崩壊"による波動が私のいた場所に散布されている。
あのままあそこにいたら、私は木っ端微塵でもおかしくなかっただろう。
リムルの周囲に虚無が舞い、普通に近づくのも困難になっている。
"シエル"と同調し、アドバイスを受けながら戦っている感じか?
ならこちらもギアを上げていくとしよう。
『いけるな?ユリア』
《お任せを。シャガリ様》
そして、「渾纏」を発動する。
狂竜化【暴蝕】の効果を研ぎ澄ませ、渾纏としてまとめたのだ。
銀虹色の甲殻がメタリックで赤みを帯びた輝きを放ち、肉質が硬化する。
これにより虚無を相殺するのだ。
もう一度咆哮をしてから、私は上空へと飛び上がる。
「
辺りが暗くなり、万能感知も働かなくなる。
私は鱗粉を飛ばしてリムルの位置を把握すると、情報支配で自身を隠蔽した。
目くらましとして分身体をいくつか作りつつ、リムルに近寄る。
雫が地面に落ち、大爆発を起こすと同時に攻撃をしかけた。
喰らえ――天翔空破断!
「そこか!朧・地天轟雷!」
「鬼人空舞!血風独楽!」
上空から剣を避けられること前提で一発薙ぐ。
しかし、予想外にリムルは剣を放ってきた。
どうやら下から剣撃を当て、私の体勢を崩すようだ。
それに無限思考で対応し、リムルに剣が触れた瞬間空中で私は舞った。
地面についたと同時に体を回転させ、剣を当ててゆく。
何回か当てて、最後の交差した斬撃でリムルの剣を弾き飛ばした。
「やばっ!」
「
がら空きになったリムルに、私は奥義を放つ。
螺旋を描くように高速で回転し、結界を貫通してリムルの体を裂く。
しかし、精神生命体にとってこの程度では傷にもならない。
だから、確実に滅ぼす。
リムルに焦りが見えたタイミングで、私はさらに奥の手を出した。
「時間停止」だ。
見たところ、リムルはまだ時間停止に対応できてないからな。
「
最後に、渾暴蝕でリムルを喰らった。
そして時間停止を解くが……あれ?
喰ったはずのリムルのエネルギーが、低い。
「油断したな」
後ろから声が聞こえて、私は振り向く。
そこには喰ったはずのリムルがいた。
まずい。さっきのはまさか分身体だったのか?
「ズルした気になるが、勝つためには使うぞ――」
リムルは既に剣を構え、私に向けていた。
この状況では動けない。
時間停止――は、さっき解いたばっかりで準備できてない!
構えからして、朧・百花繚乱と似た感じの技なのが分かる。
つまり、たとえ防御力を上げたとしてもやられてしまうかもしれないのだ。
これは――
「虚崩朧・千変万華」
リムルの、勝ちだ。
虚無を宿した千にも万にも届く斬撃が私を貫き、私は粉々に粉砕された。
肉体は塵も残らず虚空に消え、
私は滅びた。
「リムル、やっぱり強いな」
「いやいや、分身体を出してなきゃ滅びてたのは俺の方だった」
スペアの肉体によって復活した私は、リムルと先程の戦闘について話し合う。
そもそも、よくあの状況で私は奮闘できたものだ。
放出攻撃は有効な場所で使わないとどんなに強い火力でも牽制程度にしかならず、生半可な攻撃は結界によって無効化され、挙句の果てには虚無を使った攻撃をデメリット無しに放ってくる。
自ずと対抗手段は剣技に限定され、リムルの土俵で戦うことになるわけだ。
ベニマルの朧黒炎・百花繚乱を元にして作ったというあの技はやばかった。
一発一発が
私の結界を貫通して、
私も私で放出系の攻撃は喰えるが、防御力が高くても攻撃力がないと意味ないよな。
前まではリムルにも喰われない技を開発できたが、進化した"魂暴食"に対抗するのは無理である。
「そういえば、<
「虚無を帯びた
私の奥の手の一つ、伝説の龍、
あれならリムルに与えるダメージは確かに大きいが、私の肉体にもダメージが入るし、大きな隙ができる。
そんな危険は冒すわけにはいかない。
相手を拘束して、動けないみたいな状態の時に放つべきだ。
もしくは、圧倒的実力差があるとき。
実際は都市殲滅用の技だからな、アレ。
対個人なら螺旋斬がお手軽で強い。
私はリムルと別れた。
リムルは忙しいし、時間がとれただけいい方だろう。
それに対して私は暇だが、暇なときこそ休むべきだ。
天蝕宮にある玉座に寝そべり、目を閉じる。
目を閉じて視界が暗くなるという体験も、目が見えるからこそ。
本当に、上手く進化できてよかった。
「どうやら上手くいったようね」
横から声が聞こえて、私は目を開ける。
そこには、白いドレスの少女――プロトがいた。
随分久しぶりである。
ていうか、そんな知ってそうな口ぶりなら助けてくれても良かったのに。
「"紅"が持ってきた奴を撃破したそうね。退屈してなさそうで何よりだわ」
プロトは私の発言を当然のように無視し、一人で変なことを呟く。
退屈、か。
たしかにしてないな。
「"煌"は参加してないのだけど、"煉"と"黒"には気をつけなさい」
「なんだそれは」
「うふふ、秘密。けれど誇りなさい、貴女はこの私が遣わしたのだから」
「誰がお前のことで誇るか」
意味深に笑い、勝手に冷蔵庫の中にあったアイスを食べるプロト。
あー、それは私が保存してたやつなのに。
神秘的な見た目に反してがめつい奴だ。
「あ、貴女の相棒は上手く克服できたようね。ならそろそろいいかしら」
アイスを食べ終わる頃、プロトはふとなんでもないことのように呟く。
しかし、私にとってはそれは重要な一言だった。
正確に言うのならば、何故か沈黙していたユリアの気配を感じられるようになった。
《おや?この人がシャガリ様の言っていた「プロト」ですか?》
「正解よ。無事に
ユリアと私は
だが、話が速くて助かる。
それに、プロトにはユリアの存在はバレているみたいだから隠すのは無理だからな。
それに、どうやら
「ユニークだと観察程度が限界だったけれど、
「お前はいつから私を見ていたんだ……?」
「うふふ、因果を感じた対象をちょこっと弄ってみただけよ」
窓際までプロトは歩き、私の問いに抽象的に答える。
今回は、いつにも増して神秘的だ――
と思ったら、バチバチと雷のようなオーラがプロトの周りには舞っていた。
怖気が走るような危険な気配と、全てを包み込むような優し気な気配が同居している。
「貴女はまだ成りたて。けれど、「その力」は使えるようね」
その力。
禁忌の力のことだろう。
何故か使える、禁忌のモンスターの力。
「霊子でもなく、虚無でもなく……「龍」の力も使いこなしているようで何よりだわ」
「龍之支配があるんだ。当然だろう?」
「私達のゲームの中でも一番の逸材かもしれないわ。うふふ、素敵ね」
ゲーム、ゲームね。
プロトにとっては私がゲームだと。
ギィにそう告げられたリムルと似たような状況にあるのか?
「
窓から空を眺めていたプロトは、くるりと振り返ると私に近づいてきた。
思わず後ずさりそうになったが、不思議と私は無防備に立ち尽くす。
それは、支配だろうか。
それとも、私が攻撃はしないと感じているからだろうか。
「そうねぇ。褒めようかしら」
どこか儚げな笑顔で、プロトは私と視線を合わせる。
思えば、私はプロトと同じ目の高さになったのか……。
――ch
「はい、ご褒美」
《――!?ゆ、許せません!》
私は、プロトがいきなりキスをしてきたことに固まる。
頬ではあるが、感触が残っていて……。
え?……えーッ!?
んなアホな。
「あ、親愛のだから勘違いしないことね」
それだけ言って、プロトはフッと消えていった。
呆然としていたが、正気に戻った私は自分の手へと視線を向ける。
何故か、紅い雷がバチバチと瞬いていた。
え?何、これ……。
「なんだったんだよ……」
天蝕宮の玉座の間に、私の呟きだけが木霊した。