転生したら黒蝕竜だった件 作:転スラ好きのライズ民
瞬きをする間に、私とフォティアは攻防を交わし合う。
フォティアは最初は素手だったが、気が付いたら斧を使っていた。
流石に素手だとまずいと思ったのだろうか。
とはいえ、私としては素手のままでいてほしかった。
斧はリーチが長く、離れたと思っても結構当たるのである。
その度に回帰再生が発動して私の体を癒す。
まあ、負けることはないからいいとしよう。
……なんて言いたい所だが、なんだか嫌な予感がするのだ。
あの斧がだんだん光り輝いている気がする。
それを何とかしようにも猛攻をいなすのに精いっぱいで、止められない。
大柄な見た目の通り、攻撃が凄まじく重いのだ。
なのに、斧を俊敏に動かして攻撃してくるのだからやばい。
「……そろそろか」
「なんだよ、時間稼ぎか?」
「フッ。全力を出すと言っているのだ」
それに、私は凄まじく嫌な予感が強まった。
このままではまずい。
だが、それを止めようがない――
「
フォティアの持つ斧が光り輝き、一本の剣へと姿を変えた。
それと同時に炎が周囲へと拡散し、私の結界を融かしてゆく。
熱変動無効を持っていてなお感じる熱気。
冷や汗が出るような感覚がする。
「神は死に、大地は炎に包まれる。美しいであろう?」
「生憎、熱いのは好きじゃないね」
「……そうか」
斧の時ほどの速さは無いが、フォティアが剣を振りかぶる。
双剣で応戦するも、斧を超える攻撃力が伝わってきた。
一発受けるだけで地面が陥没し、衝撃は私の肉体を破壊する。
ハハッ。
よく見たらスラッシュアックスじゃないか。
道理で強い訳だぜ。
しかし、スラッシュアックスであるならば剣に時間制限があるはず。
なんとか剣を耐え、斧に戻した状態で決着をつけるべきかもな。
とはいえ事はそう簡単に進まない。
剣の一撃は重く、私を融かす。
超速の攻防によって、精神が磨り減る感じがする。
しかも、あろうことかこの武器の等級は
私の
私が進化前だったら一瞬でやられていたと思うほどの威力だ。
――私は負けることだけはない。
地面に「根」を張り、溢れる情報子を
それにより、無限に傷も精神も再生し続ける。
確か、ロッサの権能だったか。
だから、斧を待たずに大技を待つ。
一見負けそうな感じを出して大技を出させてから反撃に転じてやろうと今準備をしているのだ。
一発攻撃を受けて、爆散したように見せるのが適切だろう。
私がそうやってリムルに騙されたからな。
何度か攻防を繰り返していると、フォティアが薄く笑みを浮かべた。
剣を私に突き刺し、剣に込められたエネルギーが解放される。
「零距離解放突き」
凄まじい威力の爆発が辺りを覆い、周囲の瓦礫は吹き飛び、私の肉体は原型を留めていない。
私はそれを見届け、後ろから攻撃をしかけた。
「
「……"煌"だと?」
虹色の光が纏った私の剣がフォティアに命中し、その体に傷をつける。
しかし、これだけでは再生されてしまうだろう。
若干発動している再生阻害効果はあるが、あまり役には立たないだろう。
だから、それを最適化させるのだ。
「確定結果、行動改変、幻想破壊、運命改変――「因果律操作」!」
できると確信したのは、ガビルがした行いからだ。
アイツは確か敵の再生能力を無効化していた。
その権能は「運命改変」
勿論、その効果は
後はフウガに与えた能力でも使えば、因果律を弄ることが可能となるはずだ。
その読みは外れることは無かった。
「これは……ふむ……」
悍ましいことに、その状態でも肉は集合して元の形に戻ろうとしていた。
完全な再生には至っていないようだが、間違いなく動揺しているだろう。
だが、奴もまた上手だった。
私の魔素が荒れ狂っている。
先程の
しかも、謎の力がぐるぐると渦巻き、私にダメージを与えているのだ。
これは……何なのかは分かる。
分かってしまう。
龍属性だ。
物理攻撃も精神攻撃も自然影響も聖魔属性も無効化できる私だが、唯一龍属性だけは無効化できないのだ。
耐性はあるにはあるが、無効とはいかない。
それを攻撃に転用し、出力を高めたのが禁忌の力なのだが……。
まさかフォティアも使ってくるとは……。
「シャガリ!……ユウキッ!?」
ナイスタイミング!
ピンチだった戦場にリムルが到着した。
しかし、ユウキはもう……。
私がフォティアに苦戦している時、ジャヒルと名乗ったフットマンを乗っ取った奴が火球を放った。
リムルは
……悔しい。
私は何もできなかった。
立ち上がろうとするが、龍属性に体を壊されて上手くいかない。
「全く。たかが
「負け惜しみか?」
「そう解釈してくれて構わないとも。今は引くとしようではないか。貴様も壊れかけだろう?」
どうやらフォティアは立ち去るようだ。
かなり助かる。
というか、この状況でここにいられたらマジで困る。
私は龍属性によって負った傷を治さなくては。
ここからはリムルにバトンタッチである。
離れた場所に瞬間移動で移動し、傷を癒す。
どうやら城からそこそこ離れた場所に転移してきたようだ。
見た目よりも深いな。
<気闘法>の極意みたいな感じだろうか。
練り上げるのが闘気か龍属性かの違いかも。
同じ龍属性で打ち消す作業も合わせると、結構時間がかかりそうだ。
今の状態だとランガにも負けそうだな、と自嘲する。
まあ、そういう時は逃げればいいんだが。
《今後は、
"本体解放"なぁ……。
天蝕宮に保管してあるとはいえ、危険なことに変わりはない。
あれがある限りダメージは負っても死ぬことはないんだから、このままでもいいかなとは思うが。
「グハッ!」
ゆっくり傷を治していると、何かが飛んできた。
それは人の形をしている。
というか、天使だなコイツ。
思わず隠していた気配を発してしまった。
やばいかも……と思ったが、どうやら死にかけのようだ。
「オイオイオイオイ!やっぱり俺様はついてるぜ!」
そんなことを思っていた私に冷水を浴びせるように、おぞましい声が聞こえた。
慌てて後ろを振り向くと、大柄な男が。
ヴェガだ。
一瞬にして
油断して周囲の警戒を怠るんじゃなかった。
傷は癒えてきたから応戦するか?
決して本調子ではないんだが……。
「お前も俺様の糧となって死ねェ!」
「嫌だね!」
双剣を使い、攻撃を受け流す。
だが、受け流した瞬間両腕に痛みが走る。
チィ、やっぱり本調子じゃないのはまずいな。
クマラが近くまで来ているが、クマラだとヴェガは荷が重い。
リムルー!と来てくれるはずもない兄に助けを求める。
逃げる?
よし、逃げよう!
「空間固定」
逃げようとした私の耳に、すごい嫌な予感がする声が聞こえた。
えっと……。
あの時私が見逃した、瞬間移動の使える少女だな。
ちょ、ちょっと待って!
流石に油断が裏目に出すぎてるって!
「貰ったァ!」
やばい……と思う間もなく、ヴェガの攻撃がすぐそこに。
なんとか体を捻り、地面に無様な姿を晒しながら転がる。
攻撃が私の肌を掠った。
「ぐぼぁッ!?な、なんだこのやべー力は!」
転がる私の目には、ヴェガが地面をのたうち回る光景が映る。
どうやらかつてのユウキとにたようなマネをしたらしい。
私の力を奪おうとして、掠っただけで凄まじい力が入ってきて苦しんでる……ってとこだろう。
それを見て落ち着いたので、空間固定を無理矢理破って戦場から抜け出した。
危ない……超危なかった。
管制室に突如として現れた私をラミリスが心配しているが、私はそれよりも落ち着いてきた頭で考えを纏めていた。
あの時もっと違う攻撃をしていれば普通に危なげなく勝てたかもしれないな……と。
いくら死なないとはいえ、反省だ。
――――――――
シャガリが去った戦場では、ヴェガが悶え苦しんでいた。
当然である。
ヴェガが行おうとしたのは、奇しくもシャガリの「渾暴蝕」と似た権能を用いての力の奪取。
魔素だけならまだヴェガの最大量によって耐えられた可能性が高いのだが、そこはヴェガの成長が足枷となっていた。
ヴェガの権能――「
使いこなせていないヴェガにとっては宝の持ち腐れも同然だったのだが、無意識に一部の情報子を喰らうことはできていた。
それが仇となり、出力が弱まっていた
その結果として肌に触れ、「竜の因子」によって体を蝕まれることになったのである。
苦しんでいるヴェガを無視し、瞬間移動の少女――
最終的に天星宮へと帰ってきてからも、ヴェガは苦しんだままだった。
しかし、ここでヴェガに幸運が訪れる。
「竜の因子」が体に適合してしまったのだ。
それにニヤリと笑みを浮かべるヴェガ。
やはり俺様は幸運な男だぜ――と自画自賛した。
ここで、最悪の龍が誕生しようとしていた。
とはいえ、ヴェガではその力を使いこなせず、腐らせるのみだっただろう。
ヴェガが、ヒトリだったのならば――
「ほう、いい素体だな。二体目の下僕、いや、仲間として私と組む気はないか?」
「誰だ?」
「――フォティアと呼ぶがいい」