転生したら黒蝕竜だった件   作:転スラ好きのライズ民

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57:伝説は舞い降りた

天蝕宮で、私は死んだように眠っていた。

それほど龍属性の力は深く、私にダメージを残したということ。

……落ち込んでいるとも言う。

逆に言えばこの力なら奴――フォティアに通じるということなのだろうが。

あのフォティアにダメージを与えたというだけで龍属性はすごいと分かる。

私もまた龍属性を喰らうから、持っているのは私だけじゃないのだ。

それがとても憂鬱で、怖い。

私はほとんどの攻撃が効かなくなったと自負しているが、龍属性は別である。

後はリムルの"虚無"とか。

こうしてみると、情報遮断防御領域(シャットオフサンクチュアリ)を超える新たな結界を開発したくなるな。

どうにかできないだろうか。

 

《開発を進めますね》

 

傷はもう治っている。

だが、動きたくない。

とはいえ動かなくてはどうにもならない。

そんなことを思っていると、傷が治ってもうじうじとしている私を動かす気配を発見した。

ミリムのいる場所――そこに、オベーラさんとオーマの気配が出現しているのだ。

何故か気配が微弱で、私がこっそり付与していた鱗粉が強く反応している。

鱗粉が反応しているということ、それは死にかけたということに他ならない。

オベーラさんだけでなく、その部下もいるようだ。

私が付与した鱗粉は、死にそうになった時は生命を保護し、囮を創造するというものだが……。

恐らく全員がそういう危険な目にあったのだろう。

反応の強さからして、私が進化していなければ鱗粉の力が足りずにオベーラさん以外は死んでいた計算になる。

私は天蓋のついたベッドから勢いよく起き上がり、装備をつけて"瞬間移動"した。

景色が切り替わると、休憩所のような場所に来た。

オーマが座っている。

 

「オベーラさん!どこだ!?」

「……!?貴女は……シャガリ殿?」

「オーマ、オベーラさんは?」

「……そこのベッドに。傷が深いのです」

 

オーマに言われ、ベッドを見るとオベーラさんが寝ていた。

かなりエネルギーを消耗しているようだ。

命に別状はなさそうだが……。

話を聞くなら治すべきだな。

世界創造(イツワリノセカイ)――「創造」

「いにしえの秘薬」

体力とスタミナを最大まで回復させる幻の薬である。

これなら適しているだろう。

存在値が一千万を超えていても全回復できるようなイカれた薬だ。

龍属性によってズタボロになっている訳でもないし、何とかなるはず。

粉状にすりつぶし、慎重にオベーラさんの口へと入れた。

これでも内用薬だからな。

 

「う……ううん?シャガリ……?」

 

どうやらしっかり成功したようである。

私はホッと胸をなでおろし、椅子に座った。

さて、それじゃあ話を聞くことにしようか。

――オベーラさんは何があったのかを話してくれた。

 

オベーラさんの裏切りに気付いたミカエルが襲撃してきたという話から始まる。

そこでオベーラさんの部下達は的確に陣形を作り、ミカエルを撃退しようとした。

何故か王宮城塞(キャッスルガード)が発動しなかったため攻撃を加えていたらしいが、途中で氷の結界によって全ての攻撃が防がれるようになったとのこと。

そこからは灼熱竜覇加速危機(カーディナルアクセラレーション)によって半数が瀕死寸前まで追い込まれ、何とか私の鱗粉によって逃げ出してきたらしい。

私の鱗粉が空気感染するタイプでよかったよ。

オベーラさんの部下全員に感染していたようで、全員が無事だ。

ミカエルは全員殺したと思ったようで去っていったらしい。

だが、心配事が一つあるとのこと。

あの場所には私の鱗粉が大量に設置してあり、それに当てられて"ヤツ"が目覚めるかもしれない、と。

"ヤツ"とは、滅界竜イヴァラージェ。

かなり危険な奴のようだ。

だったら私が鱗粉を片付けてくるか。

とりあえず、オベーラさんが無事でよかった。

 

「貴女も、フェルドウェイに飛ばされても生きているとは」

「あれはオベーラさんのおかげだな。私を友と呼んでくれてありがとう」

「フフッ。私こそ、貴女と友になってよかった」

 

私はオベーラさんと言葉を交わして異界へと向かった。

そこに、どんな奴がいるとも知らず。

 

 

 

 

 

「……暗いな。こんなに暗かったか?」

 

異界。

妖魔族(ファントム)蟲魔族(インセクター)幻獣族(クリプテッド)が恒久的に勢力争いを繰り広げている世界。

魔素に満たされており、精神生命体が存在しやすい。

別次元には悪魔が暮らす「地獄」がある。

確かに暗いのは間違いないのだが……。

いつもより何故か暗闇が濃い気がする。

私の置いた鱗粉の気配を探すと、少し向かった先にあることが分かる。

感知が上手く働かないが、どうなっているんだろうか。

 

暗い異界を進み、鱗粉がある場所まで来た。

禍々しい気配が漂っている。

何か、凄まじく嫌な予感がするような――

 

「あら?うふふ、誰かしら」

 

声が聞こえた。

表面上は優しげに、しかし奥に潜む闇を隠しきれていない。

それは私の後ろ。

何かが、いる。

 

「古龍のようね。何故いるのか分からないけれど、ゲームの参加者かしら」

 

……プロトの知り合いか?

だが、プロトのような神々しさと恐ろしさ、そして優しさが共存する感じではない。

後ろの奴からはただただ、禍々しい気配を感じる。

 

天廻龍(シャガルマガラ)に似ているということは"紅"?ズルが好きな"煉"なら、ルール違反をしていそうなものだけれど」

「お前は、何だ」

 

私はゆっくりと後ろを振り向く。

何故か、体の震えを止められない。

プロトに会った時、フォティアに会った時、そんな、そんな気配が――

 

「私はモイラ。ただの龍よ」

 

そこにいたのは、プロトそっくりの少女だった。

黒い服、黒い髪、しかし、血のように赤く光る眼光。

纏う装備(ドレス)は星空のように瞬いている。

……それだけではない。

この黒いドレスの少女、モイラは――

 

私とそっくりなのだ。

 

プロトを反転したような黒ずくめの少女。

口は弧を描き、神々しさよりも恐怖が勝つ。

違う、違う違う。

コイツは私ではない。

私は私だ。

不気味に、親しげに、モイラは私に話しかけてくる。

 

「貴女、私にそっくりね。黒色が好きなの?うふふ、私は好きな方よ」

 

恐怖に負けていては調査もできやしない。

周囲に感覚を広げ、イヴァラージェを探す。

覚醒してないといいが……。

 

「あぁ、その子は私が貰ったわ。貴女は私と敵対したくないでしょう?手を引きなさい」

 

不味い。

これは不味いぞ。

モイラがイヴァラージェを保有しているだと?

私にはそれを止める手段が無いし、ここで確実にコイツに勝てると断言もできない。

ここは一旦去るべきか……。

 

「うふふ、懸命ね」

「チッ、面倒だぜ」

 

流石にここで死闘を繰り広げるのは止める。

それは誰も得しない。

異界から瞬間移動で脱出をした。

一刻も速くここから抜け出すべきだと叫ぶ本能に従って。

 

「サヨナラ。新たな禁忌さん」

 

 

 

逃げ帰った先は迷宮。

私の家のようなものだ。

もし私が人間のままであったのなら、呼吸荒く錯乱していただろう。

それほど怖かったし、もう行きたくもない。

だが、アイツは私の前に立ちふさがる時が来るだろう。

そういう確信があった。

そして、アイツだけは何なのかがしっかりと分かる。

今まで、私が恐怖を感じた者達。

そいつらには共通点があった。

等しくすさまじい存在感を放ち、私を恐怖へと陥れたのだが――

そいつらは、「禁忌」のモンスターなのではないか。

プロトは、分からない。

フォティアも、どのモンスターだろう。

"紅"という奴もよく分からない。

"煌"は、伝説に聞く煌黒龍(アルバトリオン)だろう。

そして、全身が黒いアイツ。

身体的特徴からなんとなく何なのかが分かる。

伝説の黒龍、運命の邪龍。

 

――黒龍(ミラボレアス)

 

だが、震えて縮こまっているだけではダメだ。

私だって、渾黒龍(ミラ・マガラ)なのだから。

バチバチと舞う紅い雷を見て落ち着きを取り戻した。

たとえ私と禁忌が敵対することになったとしても、撃退くらいはしてやる。

決意を固めると、それに応えるように雷が瞬いた気がした。

 

「油断だけは、しちゃいけないな」

 

震える体は、決意と恐怖に揺れていた。

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