転生したら黒蝕竜だった件   作:転スラ好きのライズ民

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60:王の消失(リムル=テンペスト)

ミカエルを倒した俺に、息を休める暇もなく各地からの報告が届く。

ダグリュールの裏切りだとか、ヴェルザードの出現だとか。

ちょっとは休ませてほしいものだが、さっさと解決しないと不味いな。

ダグリュールの近くにいたシャガリを一旦呼び戻す。

一応アイツも魔国連邦(テンペスト)の最高戦力だから、遊ばせておくわけにはいかない。

何か細工をしたのか、ダグリュールは心配ないと言ってきた。

流石は最高戦力というか、一体何をしたらそんな自信が出てくるんだ。

とりあえず、緊急事態だから悠長に話している暇はない。

一人で決めるのは流石にまずいので、会議を開くと提案した。

だが、シャガリは瞬間移動をしてヴェルザードの元へ行ってしまった。

止める間もなく、焦った様子で。

 

妹様(シャガリ)は強いので、ヴェルザードとミリムを同時に相手するくらいならいけると思いますよ。耐久性能なら間違いなく主様(マスター)より上です》

 

シエルはそう言ってくれたので、俺はシャガリに時間稼ぎを頼むことにした。

シャガリがどちらかを相手してくれるだけでも、俺の負担はグッと減る。

そもそも、アイツの権能の「情報世界」がチートすぎるんだよな。

あれで地形を囲むだけで防御は完璧になる。

地形破壊を気にせず戦えるわけで、俺がミリムを止めるのも楽だろう。

後、シャガリの配下にも色々動いてもらうか。

シャガリの配下は、シャガリとの繋がりによってほぼ無尽蔵にエネルギーを使える。

再生能力も共有できるらしいので、最悪の場合壁になってもらう手筈になっていた。

魔素増殖炉とかいう、シエルさんすらまだ再現できてない権能を貸し与えまくってるのはやばいなとも毎回思っている。

シャガリとその配下は魔素を無限に生み出せるから、そういう役割にはめっぽう強いのだ。

前にヴェルドラが支配された時、ラミリスの迷宮への魔素供給が途絶えたことがあった。

その時もシャガリが対応してくれたらしいが、やはり防衛においてアイツはずば抜けている。

情報世界で囲った場所はラミリスの迷宮のような不死性が付与されるようなので、実質どこでもラミリスの迷宮を展開できるのと同じなのだ。

そして、ピンチな場所に駆け付けるのも速い。

瞬間移動によって様々な場所へポンポン飛んでいるのは俺も羨ましい。

シエルに解析を頼んでいるが、実用化するのはいつになるか。

シャガリが負けるイメージが浮かばないほどに、アイツは頼りになるのだ。

源蟲五神と呼ばれている配下はゼギオン級の強者がいっぱいいるとか。

それより弱いが、究極能力(アルティメットスキル)を持っている配下が三万名いると聞いた時の俺の顔はヤバかったと思う。

九名に究極の力を与えていたルドラのことはオカシイと思ったものだが、シャガリはそれの上をいく。

存在値が一億を超えるらしいので、納得の魔素保有量ではあるのだが。

俺がミカエルと対峙した時も、シャガリの方が手ごわいなと思ったものである。

唯一驚いたのは、時間停止を使ってきたことだ。

既にシャガリにやられた時に解析をしていたとはいえ、危なかった。

それ以外は簡単に完封できてしまった。

龍属性なんて面倒なものを使ってくる気配もなかったのである。

俺の護衛として連れていたクロエと共に素早く倒した。

この時にシャガリが助けに来なかったのは、クロエの能力(スキル)の進化を見越していたのではないかと思うほどだ。

 

そんな頼りになるシャガリだが、俺は送り出したことを後悔することになる。

 

素早く会議を終え、俺はユーラザニアに転移する。

そこには、謎の黒いドレスを着た少女とシャガリが対面していた。

嫌な予感を感じ取った俺は、黒いドレスの少女を止めようとして飛び立つ。

しかし、それは敵わなかった。

炎が舞い、シャガリを呑みこむ。

 

《「虚空之神(アザトース)」で喰らえば、あるいは――》

 

全力で権能を行使し、俺は炎を喰らおうとした。

しかし、その炎は既にシャガリに触れていて――

時間と空間を越えて発動した「魂暴食」は、さらに勢いを増した炎の一部を喰らうことで精一杯だった。

 

シャガリとの"魂の回廊"が燃え尽きたのを感じた。

 

それと同時に、パリンという音を立てて何かが割れる。

それは、ユーラザニアを覆っていた情報世界。

地形を保護していた膜が、跡形もなく消滅してゆく。

それと同時に、ミリムが吠えた。

シャガリを失ったことによって、激怒したようなのだが――

今はやめてほしい!

シャガリがいなくなった、つまりは戦力が半減したということ。

悲しむ暇もなく、ヴェルザードの猛攻が襲い掛かってくる。

ロッサがシャガリの力を借りてこの場を熱したようだが、それも敢え無く再び全てが氷に覆われた。

それによって、ミリムの配下達が再び凍り――

ミリムの勢いがさらに激しくなったのを感じた。

すぐさまギィを呼び、ヴェルザードの相手を任せるよう頼む。

シャガリがいれば必要ないはずだったんだが、いないとなれば呼ばなくては世界が滅ぶだろう。

これだけでも滅茶苦茶忙しいのだが、さらにフェルドウェイまで現れた。

ミリムを王権発動(レガリアドミニオン)によって支配したのを見ると殺意が湧いたのは言うまでもない。

余計なことしやがって……。

これで強敵が四人いるのか……と思ったが、シャガリを消滅させた黒いドレスの少女はもういなかった。

 

『やばいのよさ、リムル!シャガリとの、シャガリとの繋がりが……!』

『あぁ、分かってる。シャガリが消えた』

『それだけじゃないの!アタシの迷宮の横にあったシャガリの迷宮も綺麗さっぱり消えちゃったのよさ!』

『クソッ、次々と非常事態が起こってくるな』

『古龍ちゃん達も消えちゃった!』

 

今思えば、シャガリの存在を前提とした作戦が多すぎる。

この星が壊れないように保護してくれていたのもシャガリだし、大戦力だから危険とはいえ頼りになる蟲の軍団の指揮をしていたのもシャガリだった。

 

主様(マスター)は最強です。ですが、やはり地形保護があると無いでは事情が変わってきますね……》

 

シエルさんからの期待に応えられるかは分からないが、ここは応えないといけないだろう。

何せ、世界が滅ぶとかそんな感じなのだ。

これまでは地形保護のおかげで世界が滅ぶとか考えなくても最大火力をぶっ放せたというのに。

シャガリは攻撃性能はそれほどでもないが、防御性能は俺を超えていた。

危険そうな感じがする「竜種核化」をやっても情報世界はビクともしなかっただろう。

しかし、それはタラレバの話。

シャガリが消えたなら、それ用の作戦を立てなければならないのだ。

 

「リムル様、私です。フウガです」

 

ヴェルザードの相手はギィに任せ、ミリムの攻撃をいなしつつ移動する俺。

サリオンにある神樹の破壊を命令されたようなので、それを阻止しなければならないのだ。

人手が足りなかったが、フウガが合流してきてくれた。

次いで、ヴェルグリンドが「星護結界(スターバリア)」を張ってくれた。

いくらフウガとはいえどミリムには敵わないだろうが……。

間違いなくシャガリの配下の中ではビアンカと並んで最強だろう。

そのビアンカはヴェガとの戦いの影響で意識を失っており、今忙しい状況に対応できるのがフウガしかいない。

ネーロはダグリュール方面の援護に向かい、スズネとロッサは戦いの反動で倒れ――

怪我をしている者達は、シャガリからのエネルギー供給が無いことによって素早く回復ができていないらしい。

フウガにはヴェルグリンドと協力して星を守る結界を強化してもらう。

シオンみたいな出鱈目な能力を持つフウガだからこそ、星粒子を防ぐことが可能なのだ。

これがネーロであれば、一瞬で吹き飛ばされていたかもしれない。

物事には得手不得手というものがあるが――

シャガリは本当に防御において必須条件だった。

 

サリオンの神樹を守ることは、結論から言えば成功した。

ベニマルとレオン、シエルさんによって味方になったザラリオ、サリオンのロボットのような兵器たちが協力し、ミリムの意識を逸らす。

その隙に、「虚空之神(アザトース)」によって支配効果を喰らった。

しかし暴走してることに変わりはないので、どこか暴れてもいい場所へと誘導する必要がある。

ダグリュールの領土である不毛の大地へとミリムを誘導し、それから考えるとしよう。

上手くいきそうになった時に時間停止をしやがったから、意趣返しだ。

そう、時間が止まっているのである。

この状態でミリムを相手にするのは危険極まりない。

幸いにも、フウガも停止世界で動けるのが助かった。

地形保護は情報世界ほど完璧でないにしろできるからな。

ネーロも動けるのだが、ルミナスとかは動けないはずなのでダグリュールの所にヴェルドラを派遣した。

色々と忙しいものである。

そんなことをしていたのだが、ふと俺は嫌な予感を覚えた。

この俺の行動が、フェルドウェイの狙い通りなのではないかという予感だ。

こういう時の俺の予感は良く当たるのである。

そう、"不毛の大地"へとミリムを誘導するしかない状況だ。

だが、この状況からどうしろと言うんだ?

 

《誰かがミリムの相手をしてくれたのならば、王権発動(レガリアドミニオン)によって支配できるのですが……》

 

天通閣が見えてくる。

強まっていた嫌な予感は、やはり正解だった。

案の定フェルドウェイが俺を待ち構えていたのだ。

フェルドウェイはミリムに向かって王権発動(レガリアドミニオン)を発動させる。

まさに俺がやりたかったことをやられた形だ。

 

「ふざけるなよ、卑怯だぞ!」

 

まさに負け犬の遠吠え。

しかし、そう言わなきゃやってられない。

シャガリの消失、ミリムの暴走――

それらがフェルドウェイの手の平の上で踊らされていたと思ったら、無性に腹が立つ。

このままだとフェルドウェイとミリムの二人を相手にすることになるが……。

そうはならなかった。

 

「無様だな、魔王リムルよ。邪魔な貴様には、ここで消えてもらうとしよう」

 

フェルドウェイは俺を嗤う。

だが、それは認めてもいたのかもしれない。

何故ならば、フェルドウェイは俺との勝負から逃げたからだ。

 

「時空の果てまで消し飛ぶがいい――"時空跳激震覇(クロノサルテーション)"――ッ!!」

 

それは見たことのある攻撃だった。

ヴェルグリンドさんを飛ばした攻撃だ。

そして、シャガリが炎から逃げるために自分に無理矢理かけた技。

あの状況では、シャガリが生きているのかも分からない。

俺まで消えてしまったら一体どうなるんだ?――と、そこまで考えて俺の意識は暗転する。

フェルドウェイの"時空転送"によって、俺は、過去、現在、未来、そのどれとも定かでもない場所へ跳ばされてしまったのだ。

どことも知れぬ、"場所"へと――

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