転生したら黒蝕竜だった件 作:転スラ好きのライズ民
――目が見えない。
――体が重い。
あぁ、私は――
《起きましたか。
深い暗闇から、私は引き戻されるようにして覚醒する。
唐突に視界が開け、周囲から情報が入ってきた。
それは権能によって的確に処理され、分かりやすい範囲で私へ還元される。
っと?今はどういう状況なんだ?
なんとなく重く感じる体は、今は普通に軽かった。
……というか、私に肉体が無い。
精神生命体本来の姿なのか、私は鱗粉の集合体のような人の形をしていた。
拳を握ったり開いたりするが、それは普通に感じられた。
意志の力で現象を起こしている、みたいな感じなんだろうか。
私はなんでこうなってるんだっけ?
《お忘れですか?
……あぁ、そういえばそうだった。
段々と情報が整理され、私は状況を理解する。
あの炎によってほとんどの権能が焼かれ、私は満身創痍だった。
あのままでは死にそうだったから、苦肉の策として逃げてきたわけだ。
アイツが追ってこないように、わざわざ時間停止を活用して。
時間停止と時間停止を掛け合わせ、"時空転送"として逃げてきたのだ。
どこに飛ぶかも定かではないが、少なくとも死ぬよりはましだと判断して。
で、結局ここはどこなんだ?
《ここは"時空の果て"、もしくは"始まり"ですね》
全てが暗い。
いや、ただ周囲の情報を処理できないだけだな。
情報子を飛ばしても虚空に消えるだけで、何も分からない。
だが、周囲に発生している情報子の波は知覚できる。
情報子が発生し、その周辺は時間が流れ、そして消える。
それによって、時間が流れていないこの空間でも時間が流れているように感じるようだ。
あれは、世界……か?
《さて、これからどうしますか?》
これからどうしますかと言われてもな。
私は今どうなっているのか分からないし、そもそも権能は復活しているのか?
あと、私は一体どれくらい意識を失っていたんだ。
《権能は全て修復が完了しています。とはいえ、今がいつか分からないのでどれくらいかは分かりませんね》
いつの間にやら、私の権能は全て修復が完了していたらしい。
じゃあ、今私には肉体が無いみたいだし肉体を用意できるか?
精神生命体には肉体が必要だからな。
いや、この情報子が永遠に拡散していくような世界で何で私が無事なのか分からないけど。
《ならば、"本体"がありますよ。不死性は保証しますので、憑依してみては?》
確かに、この何もない世界なら本体を展開しても問題ないだろう。
本体解放は最後の手段として残しておいたのだが、こんな状況だと出し渋っても意味ないからな。
"情報世界"の中に保存してあった本体を取り出す。
私の命令とはいえかなり封印が施されているな。
鍵穴があるから、そこに一定量の私の情報を流せば開くはずだ。
かなりの量が必要だったはずなので、若干心配だが……。
そんなことを思って私は鍵穴に触れた。
――ピシリ
触れた瞬間、封印が粉々に砕け散った。
そして、本体が私に吸い込まれるようにして同化する。
封じられていた
大規模な時空嵐が辺りに吹き荒れ、圧で周囲にあったいくつもの世界が滅びる。
えぇ、怖ぁ……。
だが、体に力が満ちるのは事実。
並列存在も全員集合してるみたいだからな。
いや、ラミリスに一体残してたか。
"魂の回廊"は焼き切れてるっぽいが、薄っすらと繋がりのようなものは感じる。
だがもうほぼ私とは別物だな。
ラミリスに完全に同化したものと見える。
勿論、"魂の回廊"を再び繋げば「片魂不滅」は復活するだろうけどな。
「あら、意外と元気そうね」
おっと、後ろから声が聞こえたぞ。
コイツならここまで来るんじゃないかという予感はしたが、やはり来たか。
私はゆっくり後ろを振り向く。
そこにはやはりプロトがいた。
「貴女を探すのに随分かかったわ。まさかこっちに来ているとはね」
私を探してくれていたようだ。
どうやって時空をそんなに移動しまくれるのか分からないが。
こいつなら可能なんだろうな。
「"瞬間移動"の完成形、"
随分丁寧に説明をしてくれる。
私を心配してくれていたのは本当なのか?
……全く、私はゲームに巻き込まれて苦労しているのだ。
そんな顔でプロトを見ると、目を瞬かせてばつの悪そうな顔をしてきた。
そして、ゲームについて詳しく説明をし始める。
私が知りたいと思ったと、そう考えたのだろうか。
「一人一体、気に入った配下に加護を与え、成長を見守る。これがゲームの内容よ。フォティアはルールを破ると思っていたけれど、やはり破っていたわね。後、貴女の読み通り私達は禁忌のモンスターで合っているわ」
やはりそれは間違っていなかったらしい。
そして、フォティアは
海より現れし黒龍、大地の創造者、または破壊者とも表されるとタンジアに伝わっていたが……。
まさかそれがコイツだったとは。
てっきり私は
そして、
紅龍ミラボレアスという奴の遣いらしいが……。
ややこしいので、
こいつだけ憑依ではなく遣いなのは何か理由があるのか?
と聞けば、
これらはある程度伝説で言及されていたな。
……で、プロトは一体何なんだ?
プロトだけは憑依とかではなく、人化した本人だと語る。
そんなことができる規格外の存在……。
やはりミラボレアスか?
「私?私もミラボレアスよ。黒龍ではないけどね」
「ややこしいな。呼び名とかないのか?」
「そうね――祖なるもの、
祖なるもの……?
――ッ!?
――災厄、天を覆いし時 黒闇、青を呑まん
霞、古都を這いて 日輪、蝕に沈む
王亡き玉座は猟の庭 いざ顕れん祖なる者
かつて、私がすごく小さかった頃。
ブレイブ装備という装備を纏った不思議な雰囲気を放つハンターに聞かされた言葉。
確か、キャラバンという所に所属していたと語ってくれた。
かなり昔の情報すぎて忘れていた。
あの謎のハンターが言っていた祖なる者とは――
《……このプロトという者という認識で合っているかと》
まさか、そんなすごいモンスターがいつも私の傍にいたとはな。
光栄ではあるが、なんで私なんかが選ばれたんだ?
「私は他の皆から制限を受けているの。数百年、数千年後の世界から逸材を見つけなさい、とね。貴女はあの"紅"の選んだ者の娘らしいじゃない。退屈しなさそうだったから選んだのよ」
なんともまあ、因果というのは複雑なものだ。
私は生まれた時から因果に組み込まれていたんだな。
運命、というほど強固なものでもないが、天を廻るという理から堕とされても生きているのは私が工夫したからだろう。
腕の一部を龍化し、
虹色の光を纏っているのは
私は
だが、
故に、私は
さて、そんなことは今はいいだろう。
私はあの世界に……リムル達がいる世界に帰ることはできるのか?
「可能よ。貴女の権能ならね。だってその権能は源流たる能力だもの」
「源流たる能力?」
「……あら?知らないで使っていたの?」
可能か不可能かで言えば、可能らしい。
それは喜ばしいが、私の権能については聞き捨てならないな。
まだコイツは何か隠してるのか?
「ならば、貴女の能力の本当の名前を教えてあげるわ。貴女の持っているその「情報世界」と「
「なんで私の能力の名前を知ってるのか分からないが、何だよ」
「
確かに、
そんな単純な理由だったとは。
ということは、私はその
「厳密には違うわ。だって、元々その能力には世界を創造する力なんて無いもの」
と思ったのだが、どうやら違うらしい。
それは無限に情報子を生み出す力なんて元々の能力には無く、保持する情報子を「例外」を除くあらゆる形に変換する権能だった。
「例外」とは、「虚無崩壊」
究極的破壊エネルギー、世界を創造するほどの力。
それは制御がほぼ不可能で、保管することも不可能だ。
……だが、私は保管してる奴を知ってるんだよなぁ。
私の兄、リムル=テンペスト。
アイツは「虚無崩壊」を持ち、なおかつ「虚数空間」でこれを保管していた。
無限に情報子を生み出すということは私もそれを再現できるのか、と聞いたが、それは不可能らしい。
究極のマイナスのエネルギーであり、プラスのエネルギーの根源である
それは残念だが、じゃあなんで私は世界を創造できるんだ?
やはり、プラスのエネルギーもマイナスのエネルギーも世界を創造するという結果の前には同じということか。
《大体あってます》
……ちなみに、情報子は今どれくらい貯まっているんだ?
《世界を何億回でも再生できるほどには貯まっていますよ。勿論、
なるほど。
道理でエネルギー問題とは無縁な訳だ。
にしても、
私はかなり最初の方から、危険な
もっとも、だからといって大人しくするわけじゃないぞ。
ちゃんと世界に戻って皆と共存してみせる。
モンスターと人間、何事もバランスが大切だとギルドナイトの人も言ってたからな。
「いい意気込みだわ。その力があれば祖龍の力も使いこなせるわね」
「色々と言いたいことはあるが、ありがとう、プロト。私はお前に拾われてよかったよ」
「あらそう?おかげで私も退屈していないわ。とても綺麗になったわね」
私から溢れた
それと同時に、鱗粉を撒いてみる。
虹銀色に輝く鱗粉は幻想的で蠱惑的な光を放ち、凶悪な神秘さを放っていた。
これなら行けそうだ。
モイラに負けたままなのは癪だし、一発くらい入れておきたいな。
さっさと基軸世界に帰るとしよう。
《あ、能力を実験していきません?》
って、覚悟を決めたのにユリアはまた……。
まあ、それくらいがちょうどいいのかもしれない。
情報世界の中で再現された様々な環境で、様々な実験を見せられた。
そうだな、よく考えたらユリアは私が目覚めるまでずっと……。
だったらこれくらい付き合ってやらないと。
プロトは「きっと退屈なんてさせないんだから」とだけ言い残して去っていった。
ここでは時間は流れていないっぽいし、ある程度一段落がついたら
心なしかウキウキしているユリアを見て、私は平和な気分になった。