転生したら黒蝕竜だった件 作:転スラ好きのライズ民
数々のハンターが集まる、大きなギルド。
その内の一つに「龍歴院」という施設がある。
そこに猛き炎は訪れていた。
龍歴院には「龍識船」という便利な移動装置があるためだ。
「王国」の間でも飛行船が作られているが、龍識船ほどの高性能の船ではない。
龍識船を目の当たりにして、猛き炎は感嘆の声を漏らす。
これが竜人族の少年が作ったというのだから、世界は広いものだ……と。
「こんにちは。お待たせしました」
「あの龍歴院のエリートハンターさんと一緒なんて、光栄です!」
「こちらこそ、あの猛き炎さんと出会えてうれしいですよ」
そのため、各地の高名なハンター達に声をかけ――
同行することが決まった内の一人が彼、通称「交わる絆」
四つの村を巡り、数々の依頼を解決し、骸を纏う龍を討伐。
はるか上空、
最強の古龍と古文書に記されていた
その討伐もしたことがあるとのことで、未経験の猛き炎も頼りにする存在である。
「すまない。遅くなった」
片や歴戦の英雄、片やエリート研究員、和気あいあいとしたハンター同士の空気が構築されていたころ、突如して空から何かが降ってくる。
それは星のように輝きながら地面に着地した。
彼女は、普段は"新大陸"の調査を任されているハンターの中でも指折りの強者、「青い星」である。
その実力は古龍を複数体討伐するのは当たり前で、禁忌のモンスターでさえ敵ではないという。
そして、特殊な訓練を受けているためにドリンクが必要ないハンターの一人である。
「それじゃあ、一狩り行きましょうか、皆さん」
「今回の
「禁忌ってそんな軽い感じで行っていいものなのかな……」
三人が乗り込み、龍識船は発射する。
空の彼方、神域こと「別世界」へ。
かつて傀異克服
ゲームには参加しないが、世界の秩序は保つ必要性があったのだ。
そのため――神域は「基軸世界」と深く繋がっている。
――――――――
ネーロは戦場を観察していた。
今起こっている信じがたい出来事の過去の記録を読みながら。
散らばった武器、建造物、魔素、そういったものへと擬態した玉座の上に座って。
シャガリに脅されていたダグリュールが、消失によってどんな行動を起こすのか、それがこの戦場では未知数だった。
幸い、現れたヴェルドラがダグリュールを牽制していることによって大事には至っていない。
その場にはルミナスとシオンもいて、シオンはほぼ死にかけといった雰囲気だった。
しかし、新しい力に覚醒したのかヴェルドラを差し置いてダグリュールと鍔迫り合う。
あんなにも死にそうだったのに、ヴェルドラから魔素を奪い、すぐに起き上がって突貫していた。
ユニークスキル「
シオンの研ぎ澄まされた技術とその「確定結果」の権能が、時の止まった世界で結果を最優先させてダグリュールにダメージを与えていた。
しかし、ダグリュールは竜種に匹敵する存在値を持つ怪物だ。
時が再び動き出した時、因果は複雑化しシオンを襲う。
シオンは戦うが、やはりただ地に伏すのみ。
そして……リムルが消失した。
だが、それによってシオンに科せられていた枷が解き放たれる。
ユニークスキルは暴虐なる力を持つ
会議が終わってこの場に駆け付け、それを目撃したネーロは驚愕する。
フウガが振るう因果を破壊するその力をシオンが振るっていたのだ。
その記録を読み終えた頃、戦場ではヴェルドラとダグリュールが対峙していた。
シオンの一撃によって一度は膝をついたダグリュールだったが、その
本来の姿、とヴェルドラが口にした。
ダグリュールの元に三兄弟が集合する。
そして――合わさった。
そこに顕現したのは古の破壊神。
ダグリュール、グラソード、フェンの三兄弟が合体し、巨神として本来の姿を現したのだ。
それに対するは竜の姿となったヴェルドラ。
竜と巨人の頂上決戦が行われようとしていた。
ネーロはその光景を見て、参戦は必要ないと確信する。
ヴェルドラの自信のある顔を見ただけで勝ちを確信した。
主の兄の友、ヴェルドラがあの顔をして負けるはずがないと。
雷が舞い、戦の火蓋は切られる。
二つの巨体が動き出した。
それを見て、ネーロは糸を周囲に放出して防御結界を作る。
淵織世界の権能により、周囲を防護する結界が構築されていった。
ルミナスの呼びかけにより先程まで敵対していた巨人達も防御結界を張っており、そこに便乗する形だ。
ヴェルドラとダグリュールの強さは見て分かる。
情報世界の保護下にもない以上、防御を張るのは当然だった。
そして安全だと確信した後、ネーロは雷を伝って二人に近づく。
そのままヴェルドラとダグリュールのほんのひと欠片を奪ってきた。
それは、破壊神の肉体の一部と竜の因子である。
主を復活させるための竜の因子、その攻撃形態。
そして、ついでに破壊神の欠片。
収穫はそれで充分だった。
ネーロはその場から離れ、再び玉座に戻る。
「危ない危ない。ヴェルダナーヴァの因子を揃えて母さんを復活させるまでは死ぬわけにはいかないからね」
時空を歪め、破壊し、疑似的なブラックホールとなっているダグリュールを記録し、データとして残しながらネーロは呟いた。
状況は良くないが、ヴェルドラが負けることはないということも確信している。
雷で牽制し合うのも、ダグリュールに大技を出させたのも、逆に小さくなって肉弾戦をしているのも。
それも全て計算の上だと、ネーロの勘が言っていた。
準備されている権能の気配は、シャガリとヴェルドラが一緒に考えていた必殺技に酷使している。
ヴェルドラが考案し、シャガリがそれを教えてもらっていた光景をネーロは覚えていた。
魔素を安定した状態に戻す、最も優しい攻撃――
『
虹色の闇が周囲を包み込むのを見て、ネーロは安心した。
ダグリュールも、地表も、ルミナス達も。
全てが虹色の闇で包まれていく。
それは、ダグリュール達三兄弟の豊潤なエネルギーを利用しつつ、この土地にヴェルドラの加護を与えるという権能だ。
魔素を攻撃的な状態から安定した状態へと戻し、ジュラの大森林のような富んだ大地へと一帯を変質させたのである。
プルチネルラと出会った世界でシャガリが行使したものよりもさらに強固に、精密に、ダグリュール達三兄弟を世界の欠けたる部分へとあてがい、自然神へと変えてみせた。
祝福にも似た力であり、
ダグリュールはシャガリの言葉を聞いて半信半疑なままヴェルドラをおびき寄せたが、まさかこんな風にして自分達を救ってくれるとは、と驚愕する。
ネーロの心配は無用で、ダグリュールはシャガリの指示に従っていたのだった。
「チッ、全部アイツの言う通りだったってことかよ」
「フェンよ、仕方ないであろう。普通魂を握って脅してくる相手を信用はできん」
「む?シャガリのことか?クアーッハッハッハ!まんまと嵌められたようだな!」
「……しかし、我らを救ってくれたことは感謝しておる」
「ふむ?まあちょっと遠くまで闇が暴発しちゃっただけで我は貴様を救おうとなど思っておらぬよ」
「あくまで白を切るか。全く、とんでもない奴よな」
こうしてダグリュールとのわだかまりも解け、和解したのだがここに乱入者が現れた。
虹色の闇をものともせずに現れた、蒼い髪をなびかせた美女――ヴェルグリンド。
彼女によってフェルドウェイがミリムに天通閣の攻撃を指示し、イヴァラージェが出てくるかもしれないという報告が齎された。
まだ、動乱は終わっていない。