日本最強、錆白兵の友達   作:113(いちいちさん)

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第玖話 鬼の棲む遊郭

「おっ!小芭内じゃねぇか」

「あっ黒兵衛さん」

 

 無限列車の一件から四ヶ月後、(黒兵衛)は任務の帰り道に伊黒小芭内と出会い話をしていた。

 この四ヶ月の間に色々な事があった。

 まず炭治郎達が正式に杏寿郎の継子となった。療養後は杏寿郎にビシバシ鍛えられているらしく、グングン実力を伸ばしていると杏寿郎が楽しそうに話していた。 

 それと炭治郎がヒノカミ神楽の事を訊きに煉獄家に向かった所、槇寿郎と鉢合わせし大喧嘩になったらしい。

 何でも炭治郎が()()()()()() ()の呼吸”の使いであるとか。

 俺には呼吸の事はよくわからないが、他にも痣がどうとか言っていてその事で何故か炭治郎と共に俺の事も侮辱されたらしく、その事にキレた炭治郎が槇寿郎に頭突きをしたそうだ。

 アイツに一撃食らわせるとはかなり腕を上げているみたいで感心する。

 そういえば俺がプッツンして槇寿郎をボコボコにした時に、気絶する寸前に俺の顔を見て痣がどうとか言っていた気がするが・・・まあいつか会う決心がついた時に聞いてみるか。

 だが、頼みの綱である"歴代炎柱の書"は槇寿郎がズタズタに破ってしまっており、結局有益な情報は得られなかったそうだ。

 

 因みに汽車が脱線した際に、炭治郎の手から離れた日輪刀が地面と車体に挟まれて折れてしまったらしく、阿修羅と化した”鋼鐵塚(はがねづか)”に半日近く追いかけ回されたらしい。

 

 

 

「お、そうだ!実はいい甘味処を見つけたんだ、今度蜜璃ちゃんと一緒に行くといい」

「はい、機会があれば・・・」

 

 小芭内と世間話をしていると、ビャクと小芭内の鎹鴉が急いで飛んできた。

 

「宇髄殿より報告。吉原遊廓”花街”にて上弦の鬼潜伏の可能性あり、黒兵衛、伊黒殿両名は至急向かわれたし」

「!?」

「ここからなら夜明けまでには着く筈だ・・・行くぞ!」

「はい!」

 

 ビャクの指令を聞いて俺達は走り出した。

 

 

 

 

 

 時は数日前に遡る。

 炭治郎が任務を終えて蝶屋敷に帰って来ると、何やら揉め事が起きていた。

 

「アオイとなほを離して下さい宇随様!!いくら柱でも横暴です!!」

「うるせぇな胡蝶妹、任務で女の隊士がいるんだ。継子じゃねぇコイツらなら胡蝶姉の許可も必要ねぇだろ」

 

 蝶屋敷の職員である”神埼(かんざき)アオイ”と”高田(たかだ)なほ”を担いで連れて行こうとする音柱・宇髄天元と、胡蝶しのぶが言い争っていた。

 しのぶの背後には涙を浮かべる”寺内(てらうち)きよ”と”中原(なかはら)すみ”、そして固まる”栗花落(つゆり)カナヲ”の三人がいた。

 

「二人は非戦闘員です!任務なら私が行きます!」

「だからお前を連れてくには胡蝶姉の許可がいるっつんてんだろ」

「(任務・・・命令・・・上官・・・アオイ・・・なほ・・)」

 

 言い争う二人を見て混乱して動けないカナヲは行動を決めるための銅貨を投げようとするが、炭治郎の言葉を思い出すと咄嗟にアオイの腕となほを服の端を掴んだ。

 

「カナヲ・・・!」

「地味に引っ張るんじゃねぇよ、お前は先刻(さっき)指令が来てるだろうが」

「ほら!カナヲもそう言ってるじゃないですか!!」

「いやコイツ一言も喋ってねぇだろうが!!」

「カナヲが初めて自分から意思表示したんですよ!!だから二人を降ろして下さい!!」

「いや俺には関係ねぇから!!」

 

 カナヲの行動により更にヒートアップする二人であったが、そこに炭治郎が割って入る。

 

「話は聞かせてもらいました!アオイさん達の代わりに俺達が行く!!」

「俺達?」

 

 炭治郎の言葉に疑問を持つ宇髄の左右に、任務から帰ってきた善逸と伊之助が現れる。

 

「今帰った所だが俺は力が有り余ってる!行ってやってもいいぜ!」

「アアアアアオイちゃん達を放してもらおうか!たとえアンタが筋肉の化け物でも俺は一歩もひひひ引かないぜ!」

「三人とも・・・」

 

 柱である宇髄に立ち向かう三人を見て彼らの成長を実感し感動するしのぶ。

 

「私も行きます。姉さんがいればきっと許可を出してくれたでしょうし、蝶屋敷はこの子達がいれば機能します」

「・・・・・・」

 

俺も行こう

 

「「!?」」

 

 突然聞こえた予想外の声に驚き振り返るしのぶと宇髄。

 そこには何と冨岡義勇が立っていた。

 

「「冨岡さん!?」」

 

 突然の登場に驚愕するしのぶと炭治郎。

 宇髄は五人を見渡すと口を開く。

 

「・・・戦力としては十分だな、じゃあ五人一緒に来ていただこうかね」

 

 こうして一悶着あったが、宇髄の指揮のもと行動する事になった五人。

 伊之助が目的地を訊くと宇髄振り返り応える。

 

「日本一色と欲に塗れたド派手な場所、()()()()”遊郭”だよ」

 

 

 

 藤花の家紋の宿にて、宇髄による作戦会議が始まった。

 彼の三人の嫁である”須磨(すま)”、”まきを”、”雛鶴(ひなつる)”がそれぞれ三箇所の店に潜入していたのだが連絡が途絶えたらしい。

 途中善逸が煩かったが、宇髄により今後の方針が定められた。

 炭治郎、善逸、伊之助の三人は問題の店にそれぞれ女装して潜入し、しのぶと義勇は医者として情報収集する事となった。

 因みに唯一の女性隊士であるしのぶと美形の義勇が外された理由は、

 

「お前は顔が良すぎるし、タッパは無ぇがイイ身体をしているから派手に目立つ」

「お前の葬式みたいな面と性格じゃ潜入なんてできねぇだろ」

 

 との事。

 そんなこんなでその日の晩。須磨の居る”ときと屋”には炭治郎が、まきをの居る”荻本屋(おぎもとや)”には伊之助が、雛鶴が居る”京極屋(きょうごくや)”には善逸が潜入することに成功した。

 しのぶと義勇は医者として怪我人や病人の情報を集める為宇髄達とは別行動をしていた。

 

「どうして私と冨岡さんが”夫婦の医者”なんですか!」

「既婚者という事にして勧誘を逃れるためだろう。事実、既に何度も声をかけられている」

「そういう事じゃなくて、冨岡さんは何も思わないんですか!」

「・・・別に」

「・・・そうですか」

 

 そんなやりとりをする二人であった。

 

 

 

 次の日の昼間、炭治郎達は定期連絡の為集まっていたが、そこに善逸の姿は無かった。

 

「善逸は来ない」

「善逸が来ないってどういうことですか?」

「お前達には悪い事をしたと思ってる」

 

 炭治郎の質問に神妙な面持ちで話す宇髄。

 

「俺は嫁を助けたいがために幾つもの判断を間違えた。善逸は今行方知れずだ、昨夜から連絡が途絶えている」

「「・・・!?」」

「お前ら二人は花街(ここ)から出ろ、階級が低すぎる。ここにいる鬼が”上弦”だった場合対処できない」

 

 そう言うと宇髄は立ち上がる。

 

「消息を絶った者は死んだと見做す。後は俺と胡蝶、冨岡の三人で動く」

「いいえ宇随さん!俺達は・・・!」

「恥じるな、生きてる奴が勝ちなんだ。機会を見誤るんじゃない・・・行くぞ二人共」

「「御意」」

「待てよオッサン!!」

 

 炭治郎と伊之助を残し颯爽と姿を消す三人。

 残された炭治郎と伊之助は善逸達を救う為、宇髄の命令に背き街に残る決断をする。

 

 

 

「音柱様、調査した結果やはりここ花街は他の遊郭と比べて怪我や病気による死者が圧倒的に多く、その殆どが若く美しい女性だそうです」

「だろうな、そこまでは俺達でも調べられた」

 

 炭治郎達から離れたしのぶ達は、移動しながら宇髄への報告を行う。

 

「そしてここからが重要な情報ですが、雛鶴様の居場所が分かりました」

「!?・・・何処だ?」

「とある切見世の一室です。彼女は病気でそこに送られたそうですが、感染症の恐れがある為彼女との接触は固く禁じられているようです」

「・・・成程、分かった。俺は今夜京極屋の主人に話を訊きに行く。お前らは先行して俺が来るまでそこで待機していろ」

「「御意」」

「(どうか生きていてくれ・・・雛鶴!!)」

 

 今すぐにでも迎えに行きたい衝動を抑え、情報を集め万全な状態で動けるよう行動する宇髄であった。

 

 

 

 その日の晩、炭治郎は潜入中に大変お世話になった”鯉夏(こいなつ)花魁”に鬼狩りのことは伏せつつも正体を明かし、別れの挨拶を告げていた。

 

「いなくなった人達は必ず助け出します!」

「・・・ありがとう、少し安心できたわ。私ね、明日にはこの街を出て行くのよ」

「そうなんですか!!それは嬉しいことですね!」

「こんな私でも奥さんにしてくれる人がいて・・・今本当に幸せなの。でも・・・」

 

 鯉夏は少し不安げな表情をする。

 

「だからこそ残して行く皆の事が心配でたまらなかった。嫌な感じのする出来事があっても私には調べる術すら無い・・・」

「それは当然です。どうか気にしないで、笑顔でいて下さい」

「・・・私は貴方にもいなくなって欲しくないのよ、(すみ)ちゃん」

「・・・!」

 

 自身を気遣われた炭治郎は複雑な笑顔を浮かべ会釈する。

 

「では、行きます・・・お幸せに!」

 

 そう言うと炭治郎は部屋を出ていった。

 一人になる鯉夏。しばらくすると再び襖が開いた。

 

「何か忘れ物?」

 

 炭治郎が戻ってきたと思った鯉夏が振り返ると、

 

そうよ、忘れないように喰っておかなきゃ。アンタは今夜までしかいないから、ねぇ鯉夏?

「!?」

 

 そこには髪と帯を触手のようにうねらせた美しい女性の鬼、十二鬼月が一人上弦の陸・"堕姫(だき)"が立っていた。

 

 

 

 遂に姿を表した上弦の鬼。頼れる仲間達が離れている今、炭治郎は上弦との初の直接戦闘を経験するのであります。

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