日本最強、錆白兵の友達   作:113(いちいちさん)

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第拾伍話 今後の方針

 上弦による刀鍛冶の里襲撃から一週間後。

 蝶屋敷にて療養中の炭治郎は、刀鍛冶の里が”空里(からざと)”と呼ばれる予備の拠点へと移転し復興を開始している事を見舞いに来た隠の”後藤(ごとう)”から聞かされていた。

 彼は何かと炭治郎達と縁があり、こうして話をする程親密になっていた。

 因みに、襲撃中も刀を研いでいた鋼鐵塚は一刻の猶予もない移転作業中ですら研ぐのを止めず、見かねた黒兵衛が護衛に付き空っぽの里で三日三晩研ぎ続け、全ての工程を終えた後とても安らかな表情で眠りについたらしい。

 

「恋さんと霞さん、二日眠ってその後三日でほぼ全快だったって?」

「はい!尊敬します!」

「(お前も段々と近付いてんだよ・・・段々とな・・・)」

 

 後藤は柱の驚異的な回復力と、それに近付く炭治郎に畏敬の念を抱いていた。

 

「あっ!これ一番聞きたかったんだわ!妹がえらいことになってるらしいけど大丈夫なのか?」

「あっはい!太陽の下トコトコ歩いてますね」

「やばくね?それマジでやばくねぇか?」

 

 禰豆子の件は混乱を防ぐため既に隊士達全員に通達されている。彼女も既に鬼殺隊の一員として認められている証である。

 

 

 

 

 

 同時刻、産屋敷邸では緊急柱合会議の為に、現在任務から帰還中の伊黒、実弥以外の全柱が集結していた。

 

「甘露寺、時透、上弦の討伐実に見事であった」

「うん、二人共偉いよ」

「えへへ、ありがとう!」

「特に時透!単独での上弦討伐実に見事だ!俺も精進しなければならないな!」

「いえ、煉獄さんは上弦の参相手に二百人の乗員を守り切りました。僕なんか一人助けるだけで精一杯だった・・・」

「何言ってんだ?俺なんか陸相手に数人がかりで苦労したんだ。派手に凄ぇよお前は」

 

 柱達がそれぞれ二人の活躍を祝う。

 

「俺達が最後かァ?」

「待たせたようだ、申し訳ない」

「おう!ご苦労だったな二人共」

 

 そこに任務から帰還した実弥と伊黒が現れた。二人はそのまま自分の席に着き甘露寺と時透に話しかける。

 

「甘露寺と時透は上弦とやりあったらしいな?」

「うん!凄かったよ!みんなで力を合わせて!」

「甘露寺と時透、その後身体の方はどうだ?」

「あっうん!ありがとう随分良くなったよ!(キャッ!!心配してくれてる!!)」

「僕も・・・まだ本調子じゃないですけど・・・」

「今回のお二人ですが、傷の治りが異常に早い。何があったんですか?」

「その件も含めてお館様からお話があるだろう」

 

「大変お待たせ致しました」

 

 全員が揃ったタイミングで襖が開かれ、産屋敷耀哉ではなく、その妻あまねが現れる。

 

「本日の柱合会議、産屋敷耀哉の代理を産屋敷あまねが務めさせていただきます」

 

 そう言って彼女達は頭を下げる。

 

「そして当主の耀哉が病状の悪化により今後皆様の前へ出る事が不可能となった旨心よりお詫び申し上げます」

 

 あまねの言葉を聞き、黒兵衛を含む全員が悲痛な面持ちで頭を下げる。

 

「承知・・・お館様が一日でも長くその命の灯火燃やしてくださることを祈り申し上げる・・・あまね様も御心強く持たれますよう・・・」

「柱の皆様には心より感謝申し上げます」

 

 柱を代表して悲鳴嶼が発言し、あまねが感謝を述べる。

 彼女の口から禰豆子をめぐり無惨との大規模な総力戦が想定される事、そして甘露寺、時透の二人に発現したの正体について語られる。

 

「戦国の時代、鬼舞辻無惨をあと一歩という所まで追い詰めた始まりの呼吸の()()()。彼らは全員に鬼の文様と似た痣が発現していたそうです」

「「「!?」」」

「伝え聞くなどして、御存じの方は御存じです」

 

 その言葉に反応を示す煉獄と悲鳴嶼。そこに実弥が発言する。

 

「俺は初耳です。何故伏せられていたのです?」

「痣が発現しない為思い詰めてしまう方が随分いらっしゃいました。それ故に、痣については伝承が曖昧な部分が多いです。当時は重要視されていなかったせいかもしれませんし、鬼殺隊がこれまで何度も壊滅されかけ、その過程で継承が途切れたからかもしれません」

 

「ただ一つ、はっきりと記し残されていた言葉があります。”痣の者が一人現れると共鳴するように周りの者達にも痣が現れる”

 

この世代で最初に痣が発現したのは炭治郎であったが、本人にも発現方法はわからなかったので今回柱である二人に教示を願い出たのである。

 しかし・・・

 

「ぐあああ~って来ました!グッてしてぐぁーって!心臓とかがばくんばくんして耳もキーンてして!メキメキメキィッて!!」

「「「・・・???」」」

「ハァ・・・」

「・・・ははっ」

 

 甘露寺も炭治郎と同じタイプだった為まともに答えることができず、頭を抱える伊黒と苦笑いする黒兵衛であった。

 そこで今度は時透の説明が始まった。彼は言語化することに長けており、痣を発現させる具体的な方法の説明を始めた。

 

「あの時の心拍数は二百を超えていたと思います。さらに体は燃えるように熱く体温の数字は三十九度以上になっていた筈です」

「(そうなんだ・・・)」

「そんな状況で動けますか?命にも関わりますよ?」

「そうですね、だからそこが篩にかけられる所だと思います。そこで死ぬか死なないかが、恐らく痣が出る者と出ない者の分かれ道です」

 

 時透の解説に感心する甘露寺と、医療知識があるがゆえに驚愕するカナエ。

 

「では、痣の発現が柱の急務となりますな!!」

「御意。何とか致します故、お館様には御安心召されるようお伝えくださいませ」

「ありがとうございます・・・ただ一つ、痣の訓練につきましては皆様にお伝えしなければならないことがあります」

「何でしょうか・・・?」

 

 あまねは一呼吸置いて話し出す。

 

「もう既に痣が発現してしまった方は選ぶことができません・・・痣が発現した方は、どなたも例外無く・・・()()()の歳を迎える前に亡くなります

「「「・・・ッ!?」」」

 

 彼女の口から語られた衝撃の事実に、さしもの柱達でさえ動揺を隠せなかった。

 

「そうかい・・・なら、俺や行冥、真菰はどうなっちまうんだろうな?」

「「・・・」」

 

 黒兵衛の呟きに表情は変わらないが僅かに反応する二人。

 沈黙が続く中、意外な人物?から声が上がる。

 

「少し宜しいでござるか?」

白鴉様?」

 

 その人物とは、部屋の外から会議を聴いていた黒兵衛の鎹鴉、白鴉であった。

 

「一介の鎹鴉が口を挟んで申し訳ない。先程の話、本当に()()は無いのでござるか?」

「はい、()()()()()()()()()は例外無く」

「成る程、ならばその例外ができたでござるな」

 

 白鴉につられて悲鳴嶼以外の全員が黒兵衛の方を向く。

 

「黒兵衛には既に痣が発現しているでござる」

「!?」

「本当ですか!?」

 

 白鴉の言葉に驚愕する柱達。しかし、当の本人は身に覚えが無いようで首を傾げる。

 

「俺が?」

「覚えて無いでござるか?槇寿郎殿を折檻した時の事を」

「あーあの時か」

 

 黒兵衛は槇寿郎に対してプッツンした時の事を思い出した。あの時は怒りに身を任せていたが、よくよく考えると確かに時透の言っていた事に当てはまっていた様な気がした。

 

「あの時は拙者の見間違いかと思うたが、今回の件で確信したでござる」

「成る程!それで父は黒兵衛の兄ぃの名前を口にしたのですね!」

「羨ましいことだぜェ。怒るだけで良いなんてなァ?」

「じゃあ何で艶の旦那はピンピンしてんだ?」

 

 白鴉の言葉に納得する杏寿郎と羨む実弥、そして当然の疑問を口にする宇髄。

 そこに先程から深考していたカナエが口を開く。

 

「詳しい事が分かりませんので私の憶測になりますがよろしいでしょうか?」

「お願いします」

「先ず、痣の発現には命に関わる程の負担が掛かります。それにより身体は急激に疲弊して行き寿命も削れ長くても二十五までしか生きられない。いうなれば寿命の前借りですかね」

「それで?ただ単に旦那の身体が頑丈なだけってんじゃねぇだろうな?」

「それもあるかもしれませんが、恐らく短時間の発現であれば身体への負担は抑えられ、寿命の短縮は免れないでしょうが直ぐ様死に至るという事は無いのではないかと考えられます」

 

 カナエの考察に真剣に耳を傾ける柱達。

 

「何にせよ、鬼舞辻無惨を倒すには痣の発現は必須。鬼殺隊に入った時点で既に覚悟は決まっている」

「うん、そうだね」

 

 既に二十五を超えた悲鳴嶼と真菰が言い、他の柱達も頷く。彼らはとっくの昔に覚悟を決めており、たとえ命を落とすリスクがあったとしても痣の発現を躊躇う者など柱の中にはいなかった。

 

「もう一つ気になることがあります」

 

 そこに杏寿郎が口を開く。

 

「上弦の参との戦闘において、黒兵衛の兄ぃの日輪刀が赤く発熱しており、その刀に斬られた切断面は焼け、明らかに再生を阻害していました」

「そうなんですか黒兵衛さん?」

「いや、俺も普通に斬ってただけだからよく分からねぇな」

「黒兵衛さんって何でもかんでもできる割に分からないことだらけっすね」

「なっはっはっ!・・・面目ない」

 

 実弥の言葉に落ち込む黒兵衛。柱達は黒兵衛の適当さに呆れると同時に自然体で熟す彼の強さに改めて尊敬の念を抱く。

 

「恐らく空気との摩擦熱により発熱していたと考えられますが、あれは刀の特性と兄ぃの実力あっての事。別の方法で再現できないかと手始めに火で炙ってみたのですが効果は見られず。その後禰豆子少女の血鬼術により同様の現象が見られたと報告があり、何かしらの条件があるのだと思います」

「痣と併せて習得できれば戦力のさらなる増強となる。これも我々柱の必須技能とする」

「異論は無いぜ悲鳴嶼さん」

 

 悲鳴嶼の言葉に賛同する実弥と柱達。そして今後の方針について細かい打ち合わせを開始するのであった。

 

 

 

 

 

 場面は戻り蝶屋敷にて。

 後藤と話していた炭治郎のもとに刀を届けに鋼鐵塚がやってきた。

 

「受け取れ」

「あっはい!ありがとうございます!」

 

 刀を受け取る炭治郎。その刀は初めて持った時と同様にとても手に馴染んだ。

 

「さっさと刀身を見ろ!!」

「はい!・・・はぁ・・・凄い・・・漆黒の深さが違う・・・」

 

 鋼鐵塚に促されて刀を抜き刀身を見る炭治郎。これまでの刀とは桁違いの漆黒の刃に彼は感嘆の声を上げる。

 

「鉄も質がいいし、前の持ち主が相当強い剣士だったんだろう」

「滅の文字?」

 

 刀身に刻まれた”滅”の一文字に気づく炭治郎。そこにすかさず鋼鐵塚が解説を入れる。

 

「これを打った刀鍛冶が全ての鬼を滅する為に作った刀だ。作者名も刻まずただこの文字だけを刻んだ・・・そしてこの刀こそが、名在の刀の最初の一本、”滅刀(めっとう)(くろがね)”に間違いない!この刀から階級制度が始まり、柱だけが悪鬼滅殺の文字を刻むようになった!!」

「そうなんですね、凄い刀だ・・・」

 

 鋼鐵塚の熱量に圧倒される炭治郎。そこに鋼鐵塚が顔を寄せて言う。

 

いいか?・・・この刀が折れる時、それがお前の本当の最期だ!!

「どっちの意味ですかそれ!?」

 

 そう言うと彼は帰って行った。

 

「噂には聞いてたけどスゲェ人だな」

「今日はかなり穏やかでしたよ?相当機嫌が良いみたいです」

「マジかよ・・・」

「さっきからうるせぇんだよ・・・」

「あ、ごめん玄弥」

 

 すると隣のベッドで療養中の玄弥から苦情が来る。

 

「もう済んだから、騒がしくして悪かっ・・・」

ガッシャアァァン!!

「うおおお!?」

 

 そこに何と窓ガラスを破壊して伊之助が飛び込んで来た。

 

「ああーーー!!伊之助・・・!!何してるんだ窓割って!!」

「お前バカかよ!!しのぶ様に殺されるぞ!!」

「(部屋を別にして欲しい・・・)」

強化強化強化!!合同強化訓練が始まるぞ!!

 

 騒ぐ周りを放置して伊之助は叫ぶ。

 

「強い奴らが集まって稽古つけて・・・何たらかんたら言ってたぜ!!」

「?・・・何なんだそれ?」

「わっかんねぇ!!」

「成る程」

 

 その後伊之助は死ぬ程しのぶに怒られた。

 

 

 

 こうして鬼舞辻無惨との戦いは新たな転換期に突入し、鬼殺隊始まって以来の大規模な合同稽古が始まるのでございます。




大正コソコソ噂話
 黒兵衛の痣は両頬に二本ずつの弓形の傷跡の様なデザインです。(イメージ:イナズマイレブンの源田、ヘルシングのアンデルセン神父)
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